ファイナンス理論 · 第18回 · 動画5 · インタラクティブ教材

リターンもボラティリティも同じ、アルファは違う:ベータでマネージャーを評価する

I重要な公式

公式名称説明
E[Ri]=Rf+βi(E[Rm]−Rf)\text{E}[R_i] = R_f + \beta_i(\text{E}[R_m] - R_f)証券市場線どんな資産、プロジェクト、ファンドにも要求されるリターン。リスクの尺度は βi\beta_i で、σi\sigma_i ではありません
αi=E[Ri]−{Rf+βi(E[Rm]−Rf)}\alpha_i = \text{E}[R_i] - \{R_f + \beta_i(\text{E}[R_m] - R_f)\}アルファ実際に上げたリターン − 要求されるリターン。証券市場線からの縦の距離で、線より上ならプラス、下ならマイナスです
βi=Cov[Ri,Rm]Var[Rm]=ρim σiσm\beta_i = \dfrac{\text{Cov}[R_i, R_m]}{\text{Var}[R_m]} = \rho_{im}\,\dfrac{\sigma_i}{\sigma_m}相関から求めるベータボラティリティが同じでも、市場との相関が違えば、ベータは大きく違いえます
ρ=1  ⇒  βp=σpσm\rho = 1 \;\Rightarrow\; \beta_p = \dfrac{\sigma_p}{\sigma_m}効率的ポートフォリオTビルと MM の組み合わせは ρ=1\rho = 1 なので、証券市場線と資本市場線は同じ要求リターンを与えます

ポイント:平均リターンもボラティリティも同じ2つのファンドが、符号の逆のアルファを持つことがあります。証券市場線はそれぞれにベータに応じたリターンを求め、市場と相関しないボラティリティには報酬を与えないからです。

II縦の距離としてのアルファ

アルファは、ファンドの平均リターンと、そのベータでの証券市場線の要求リターンとの、縦の差です。

IIIボラティリティは同じ、ベータは違う

ボラティリティを 25%25\% に固定すると、市場との相関だけでベータが決まり、それとともに要求リターンも決まります。

IV確認クイズ

問1 · ベータの高いマネージャーのアルファ

条件(年率): Rf=3.5%R_f = 3.5\%、市場リスクプレミアム E[Rm]−Rf=6.5%\text{E}[R_m] - R_f = 6.5\% です。あるマネージャーは、β=1.4\beta = 1.4 で平均 11%11\% を上げてきました。証券市場線に照らした、このマネージャーのアルファを求めてください。

✅ 正解です! これだけの市場リスクに対して、線が要求するのは 3.5%+1.4×6.5%=12.6%3.5\% + 1.4 \times 6.5\% = 12.6\% です。11%11\% はそれに 1.61.6 ポイント届かないので、このマネージャーは証券市場線より下にいます。
❌ 切片が抜けています。 11%−1.4×6.5%=1.9%11\% - 1.4 \times 6.5\% = 1.9\% は RfR_f を落としています。要求リターンは RfR_f にリスクプレミアムを足したもので、3.5%+9.1%=12.6%3.5\% + 9.1\% = 12.6\% です。
❌ 符号を確かめましょう。 アルファは、上げたリターン − 要求リターン、つまり 11%−12.6%11\% - 12.6\% で、逆ではありません。線より下のファンドのアルファはマイナスです。
❌ 市場リターンではなく、プレミアムです。 11%−1.4×10%=−3%11\% - 1.4 \times 10\% = -3\% は、β\beta に市場リターン全体 E[Rm]=10%\text{E}[R_m] = 10\% をかけ、RfR_f を落としています。β\beta にかけるのはプレミアム 6.5%6.5\% で、そこに RfR_f を足します。
❌ 惜しい! まず要求リターン Rf+β(E[Rm]−Rf)R_f + \beta(\text{E}[R_m] - R_f) を計算し、それを 11%11\% から引きましょう。
解答を見る

証券市場線から、β=1.4\beta = 1.4 の投資に要求されるリターンがわかります:

Rf+β(E[Rm]−Rf)=3.5%+1.4×6.5%=3.5%+9.1%=12.6%R_f + \beta(\text{E}[R_m] - R_f) = 3.5\% + 1.4 \times 6.5\% = 3.5\% + 9.1\% = 12.6\%

アルファは、マネージャーが上げたリターンから、その要求を引いたものです:

α=11%−12.6%=−1.6%\alpha = 11\% - 12.6\% = -1.6\%

ファンドが負う市場リスクを考えると、このマネージャーは年 1.61.6 パーセントポイント、期待を下回っています。

問2 · リターンもリスクも同じか?

条件(年率): Rf=3.5%R_f = 3.5\%、市場リスクプレミアム 6.5%6.5\% です。3人のマネージャーはそろって、ボラティリティ σ=25%\sigma = 25\% で平均 11%11\% を上げました。ベータは 0.40.4、1.11.1、1.41.4 です。正しいのはどれですか?

✅ 正解です! β\beta が 0.40.4 なら、要求されるのは 3.5%+2.6%=6.1%3.5\% + 2.6\% = 6.1\% だけなので、11%11\% は線を 4.94.9 ポイント上回ります。ほかの2人は α=+0.35%\alpha = +0.35\% と α=−1.6%\alpha = -1.6\% です。
❌ σ\sigma が同じでも、リスクが同じとは限りません。 シャープ・レシオは等しいものの、証券市場線はリスクを β\beta で価格づけします。3人に要求されるのは 6.1%6.1\%、10.65%10.65\%、12.6%12.6\% なので、アルファは異なります。
❌ 逆です。 市場リスクが多いほど要求リターンは上がり、12.6%12.6\% になります。ですから同じ 11%11\% でも不足で、α=−1.6%\alpha = -1.6\% です。
❌ 線の上にいるのは当然の水準で、腕前ではありません。 α=11%−10.65%=+0.35%\alpha = 11\% - 10.65\% = +0.35\% ということは、このマネージャーは自分の β\beta が要求するリターンをほぼそのまま稼いでいるだけです。Tビルと市場を持てば、誰にでもできます。
❌ 惜しい! 各マネージャーの要求リターンをその β\beta から計算し、アルファを比べましょう。
解答を見る

各マネージャーの要求リターン 3.5%+β×6.5%3.5\% + \beta \times 6.5\% とアルファ 11%−要求リターン11\% - \text{要求リターン}:

  • β=0.4\beta = 0.4:3.5%+2.6%=6.1%3.5\% + 2.6\% = 6.1\% なので、α=11%−6.1%=+4.9%\alpha = 11\% - 6.1\% = +4.9\%
  • β=1.1\beta = 1.1:3.5%+7.15%=10.65%3.5\% + 7.15\% = 10.65\% なので、α=11%−10.65%=+0.35%\alpha = 11\% - 10.65\% = +0.35\%
  • β=1.4\beta = 1.4:3.5%+9.1%=12.6%3.5\% + 9.1\% = 12.6\% なので、α=11%−12.6%=−1.6%\alpha = 11\% - 12.6\% = -1.6\%

σ\sigma で測ると3人はまったく同じで、シャープ・レシオも同じ 7.5/25=0.37.5/25 = 0.3 です。証券市場線に照らして測ると、市場リスクが要求する以上のリターンを上げているのは、ベータの低いマネージャーだけです。

問3 · ベータから相関へさかのぼる

条件(年率): 市場のボラティリティは σm=17.5%\sigma_m = 17.5\% で、上の各マネージャーは σp=25%\sigma_p = 25\% です。β=0.4\beta = 0.4 と β=1.4\beta = 1.4 のそれぞれが意味する、市場との相関を求めてください。

β=0.4\beta = 0.4 のときの相関は?

β=1.4\beta = 1.4 のときの相関は?

✅ 正解です! ρ=β σm/σp=β×0.7\rho = \beta\,\sigma_m/\sigma_p = \beta \times 0.7 で、0.280.28 と 0.980.98 です。ボラティリティは同じでも、市場との連動の度合いはまったく違います。
❌ ベータは相関ではありません。 β=ρ σp/σm\beta = \rho\,\sigma_p/\sigma_m には、ボラティリティの比 25/17.525/17.5 もかかっています。相関は決して 11 を超えませんが、ベータは超えることがあります。
❌ 比が上下逆です。 β=ρ σp/σm\beta = \rho\,\sigma_p/\sigma_m を ρ\rho について解くと ρ=β σm/σp\rho = \beta\,\sigma_m/\sigma_p で、分子は σm=17.5%\sigma_m = 17.5\% です。11 を超える値が出たら、逆にした確かなしるしです。
❌ ベータが抜けています。 17.5/25=0.717.5/25 = 0.7 はボラティリティの比だけで、どのマネージャーでも同じです。これに各マネージャーの β\beta をかけましょう。
❌ 1つ目の相関を確かめましょう。 β=0.4\beta = 0.4 として ρ=β σm/σp\rho = \beta\,\sigma_m/\sigma_p を使います。
❌ 2つ目の相関を確かめましょう。 β=1.4\beta = 1.4 として ρ=β σm/σp\rho = \beta\,\sigma_m/\sigma_p を使います。
解答を見る

β=ρ σpσm\beta = \rho\,\dfrac{\sigma_p}{\sigma_m} を相関について解きます:

ρ=β σmσp=β×17.525=β×0.7\rho = \beta\,\frac{\sigma_m}{\sigma_p} = \beta \times \frac{17.5}{25} = \beta \times 0.7 β=0.4: ρ=0.4×0.7=0.28β=1.4: ρ=1.4×0.7=0.98\beta = 0.4:\ \rho = 0.4 \times 0.7 = 0.28 \qquad \beta = 1.4:\ \rho = 1.4 \times 0.7 = 0.98

どちらのファンドも年 25%25\% の幅で振れますが、市場とほぼ足並みをそろえて動くのは2つ目だけです。ベータの低いファンドのボラティリティは大部分がそのファンド固有のもので、証券市場線はそれに何の報酬も払いません。

問4 · ボラティリティが価格を決める唯一の場合

条件(年率): Rf=3.5%R_f = 3.5\%、市場リスクプレミアム 6.5%6.5\%、σm=17.5%\sigma_m = 17.5\% です。Tビルとマーケット・ポートフォリオ MM を組み合わせた効率的ポートフォリオがあり、σp=25%\sigma_p = 25\% です。そのベータと、要求される期待リターンを求めてください。

ベータはいくつですか?

要求される期待リターンはいくつですか?

✅ 正解です! 効率的ポートフォリオは ρ=1\rho = 1 なので、βp=25/17.5≈1.43\beta_p = 25/17.5 \approx 1.43 となり、証券市場線と資本市場線は約 12.79%12.79\% で一致します。3人のマネージャーも同じ σ\sigma ですが、ρ<1\rho < 1 なので、誰も 12.79%12.79\% を要求されません。基準を決めるのは、ボラティリティではなくベータです。
❌ 比が上下逆です。 ρ=1\rho = 1 なら βp=σp/σm=25/17.5\beta_p = \sigma_p/\sigma_m = 25/17.5 です。17.5/25=0.717.5/25 = 0.7 はその逆数です。
❌ 市場そのものではありません。 β=1\beta = 1 になるのは、全額を MM に投じたポートフォリオだけです。ボラティリティ 25%25\% が市場の 17.5%17.5\% を上回るということは、RfR_f で借り入れて、MM に約 143%143\% を投じているということです。
❌ ポジション全体が効いてきます。 0.430.43 は借り入れた部分にすぎません。MM に投じた約 143%143\% のすべてが市場リスクを負うので、βp=25/17.5≈1.43\beta_p = 25/17.5 \approx 1.43 です。
❌ それは市場のリターンです。 3.5%+6.5%=10%3.5\% + 6.5\% = 10\% は β=1\beta = 1 に対する要求です。このポートフォリオは MM より多くの市場リスクを負っています。
❌ 切片が抜けています。 2517.5×6.5%≈9.29%\tfrac{25}{17.5} \times 6.5\% \approx 9.29\% はリスクプレミアムの部分だけです。Rf=3.5%R_f = 3.5\% を足しましょう。
❌ 比が上下逆です。 3.5%+0.7×6.5%=8.05%3.5\% + 0.7 \times 6.5\% = 8.05\% は σm/σp\sigma_m/\sigma_p を使っています。プレミアムにかける乗数は σp/σm\sigma_p/\sigma_m です。
❌ ベータを確かめましょう。 効率的ポートフォリオでは ρ=1\rho = 1 なので、βp=σp/σm\beta_p = \sigma_p/\sigma_m です。
❌ 要求リターンを確かめましょう。 E[Rp]=Rf+σpσm(E[Rm]−Rf)\text{E}[R_p] = R_f + \dfrac{\sigma_p}{\sigma_m}(\text{E}[R_m] - R_f) を使います。
解答を見る

Tビルと MM の組み合わせは市場とぴったり同じに動くので、ρ=1\rho = 1 で

βp=ρ σpσm=1×2517.5=107≈1.43\beta_p = \rho\,\frac{\sigma_p}{\sigma_m} = 1 \times \frac{25}{17.5} = \frac{10}{7} \approx 1.43

資本市場線と証券市場線は同じ要求リターンを与えます:

E[Rp]=3.5%+107×6.5%=3.5%+657%≈3.5%+9.29%=12.79%\text{E}[R_p] = 3.5\% + \frac{10}{7} \times 6.5\% = 3.5\% + \frac{65}{7}\% \approx 3.5\% + 9.29\% = 12.79\%

問2のマネージャーたちは同じ σp=25%\sigma_p = 25\% ですが、相関が 11 を下回るので、効率的ではありません。彼らにとって σ\sigma は価格のつくリスクを過大に示します。正しい物差しは、各マネージャー自身の β\beta を使った証券市場線です。

正解数:0 / 4