ファイナンス理論 · 第18回 · 動画6 · インタラクティブ教材

ヘッジファンドXYZの771ベーシスポイント:本物のアルファか、モデルに見えないベータか

I重要な公式

公式名称説明
E[Ri]=Rf+βi (E[Rm]−Rf)\text{E}[R_i] = R_f + \beta_i\,(\text{E}[R_m] - R_f)要求リターン(証券市場線)市場ベータだけから求められるリターン。βi<0\beta_i < 0 なら RfR_f を下回ります
αi=Ri−(Rf+βi (E[Rm]−Rf))\alpha_i = R_i - \big(R_f + \beta_i\,(\text{E}[R_m] - R_f)\big)アルファ稼いだリターン − 要求リターン。証券市場線からの縦の距離です(上側が正)
(1−βi) Rf+βi E[Rm]=Rf+βi (E[Rm]−Rf)(1 - \beta_i)\,R_f + \beta_i\,\text{E}[R_m] = R_f + \beta_i\,(\text{E}[R_m] - R_f)自作のベンチマークTビルと指数を同じベータになるように組み合わせると、ちょうど要求リターンを稼ぎます
1%=100 bp1\% = 100 \text{ bp}ベーシスポイントファンドXYZ:12.54%−4.83%=7.71%12.54\% - 4.83\% = 7.71\%、つまり年 771771 bp

ポイント:資本資産価格モデル(CAPM)のベンチマークが価格づけするリスクは1つ、市場ベータだけです。流動性、為替、商品など、マーケット・ポートフォリオに表れないリスクは、どれもアルファとして表れます。アルファに見せかけたベータです。大きなアルファは、それがどのリスクから生まれたのかを問う合図です。

IIアルファは線から上への差

Rf=2.5%R_f = 2.5\%、プレミアム 5%5\% のもとでは、ファンドのベータで要求リターンが決まり、アルファはその縦の差です。

III自分で組めるベンチマーク

Tビルに 1−β1 - \beta、指数に β\beta を持つと、どんなベータでも、ちょうど証券市場線の要求リターンを稼ぎます。

IV滑らかさはアルファではない

シミュレーションした市場の推移では、Tビルがいちばん滑らかな線で、稼ぐのは α=0\alpha = 0 です。ボラティリティそのものは、価格のつくリスクではありません。

💡 経路はシミュレーションで、ファンドXYZの実際の実績ではありません。確認クイズに出てくるのと同じ、β=0.15\beta = 0.15、期待リターン年 9.2%9.2\% の仮想のファンドを、期待リターン年 7.5%7.5\%、ボラティリティ 15%15\% の指数と並べています。どちらの線が高く終わるかは推移ごとに変わりますが、証券市場線に照らして測った、ファンドに組み込まれたアルファは、どの推移でも同じです。

V確認クイズ

問1 · 要求リターン

条件: β=0.15\beta = 0.15 のヘッジファンドがあり、無リスク金利は Rf=2.5%R_f = 2.5\%、市場リスクプレミアムは E[Rm]−Rf=5%\text{E}[R_m] - R_f = 5\% で、どれも年率です。CAPMがこのファンドに要求するリターンを求めてください。

✅ 正解です! 年 2.5%+0.15×5%=3.25%2.5\% + 0.15 \times 5\% = 3.25\% です。ベータが低ければ、無リスク金利をわずかに上回るリターンしか求められません。
❌ ベータにかけるのは、市場リターンではなくプレミアムです。 0.15×7.5%0.15 \times 7.5\% では、無リスク金利を2回数えてしまいます。E[Rm]−Rf=5%\text{E}[R_m] - R_f = 5\% を使いましょう。
❌ それはリスクプレミアムの部分だけです。 0.15×5%=0.75%0.15 \times 5\% = 0.75\% はベータが上乗せする分です。要求リターンは Rf=2.5%R_f = 2.5\% から始まります。
❌ それは市場自体のリターンです。 7.5%7.5\% はベータ 11 に要求されるリターンです。このファンドのベータは 0.150.15 です。
❌ 惜しい! 証券市場線を使いましょう:RfR_f + ベータ × 市場リスクプレミアム です。
解答を見る

証券市場線から、ファンドの市場ベータが求めるリターンがわかります:

E[R]=Rf+β (E[Rm]−Rf)=2.5%+0.15×5%=2.5%+0.75%=3.25%\text{E}[R] = R_f + \beta\,(\text{E}[R_m] - R_f) = 2.5\% + 0.15 \times 5\% = 2.5\% + 0.75\% = 3.25\%

このファンドに要求されるのは年 3.25%3.25\% で、Tビルを 0.750.75 パーセントポイント上回るだけです。市場リスクをほとんど負っていないからです。

問2 · 超過リターンではなく、アルファ

条件: 同じファンド(β=0.15\beta = 0.15、Rf=2.5%R_f = 2.5\%、プレミアム 5%5\%)の平均リターンは年 9.2%9.2\% でした。このファンドのCAPMのアルファを求めてください。

✅ 正解です! 9.2%−3.25%=5.95%9.2\% - 3.25\% = 5.95\%、つまり証券市場線より年 595595 ベーシスポイント上です。
❌ それはTビルに対する超過リターンです。 9.2%−2.5%9.2\% - 2.5\% は、ファンドのベータが求める 0.75%0.75\% を無視しています。アルファでは、要求リターン全体を引きます。
❌ それは市場をベンチマークにしています。 9.2%−7.5%9.2\% - 7.5\% が正しいのは β=1\beta = 1 の場合だけです。β=0.15\beta = 0.15 なら、要求リターンはずっと低くなります。
❌ 無リスク金利が抜けています。 9.2%−0.75%9.2\% - 0.75\% は、ベータによるプレミアムしか引いていません。要求リターンは 2.5%+0.75%2.5\% + 0.75\% です。
❌ 惜しい! アルファは、稼いだリターンから、証券市場線が要求するリターンを引いたものです。
解答を見る

まず証券市場線から要求リターンを求め、次にその差をとります:

E[R]=2.5%+0.15×5%=3.25%\text{E}[R] = 2.5\% + 0.15 \times 5\% = 3.25\% α=9.2%−3.25%=5.95%=595 bp(年率)\alpha = 9.2\% - 3.25\% = 5.95\% = 595 \text{ bp(年率)}

市場リスクだけを基準に測ると、このファンドは β=0.15\beta = 0.15 で、証券市場線より 5.955.95 パーセントポイント上にあります。

問3 · 自作のベンチマーク

条件: Rf=2.5%R_f = 2.5\%、E[Rm]=7.5%\text{E}[R_m] = 7.5\%(指数)で、β=0.15\beta = 0.15 のファンドがあります。ファンドと同じベータをもつ、Tビルと指数の組み合わせを求め、その組み合わせの期待リターンへの指数の寄与を求めてください。

ウェイトはいくつですか?

指数の寄与はいくつですか?

✅ 正解です! 2.125%+1.125%=3.25%2.125\% + 1.125\% = 3.25\% です。この組み合わせはちょうど証券市場線の要求リターンを稼ぐので、アルファは、どんな投資家にも組めるポートフォリオを基準に測られていることになります。
❌ ウェイトが逆です。 指数のウェイトはベータに等しく 0.150.15 で、残りの 1−0.151 - 0.15 がTビルです。
❌ ウェイトの合計は1でなければなりません。 100%+15%100\% + 15\% では資金の 115%115\% を投じることになります。Tビルのウェイトは 1−β=85%1 - \beta = 85\% です。
❌ 符号の誤りです。 指数の空売りが対応するのは、ファンドXYZのような負のベータです。このファンドのベータは +0.15+0.15 です。
❌ ウェイトを確かめましょう。 指数のウェイトは β\beta、Tビルのウェイトは 1−β1 - \beta です。
❌ それはベータが上乗せするプレミアムで、指数の寄与ではありません。 指数のポジションは指数のリターン全体を稼ぐので、0.15×7.5%0.15 \times 7.5\% です。
❌ それはTビルの寄与です。 指数の分は 0.15×7.5%0.15 \times 7.5\% です。
❌ ベンチマークが持つのは指数で、ファンドではありません。 指数の期待リターン 7.5%7.5\% を使いましょう。
❌ 寄与を確かめましょう。 指数のウェイトに、指数の期待リターンをかけます。
解答を見る

指数にウェイト ww、Tビルに 1−w1 - w を置いた組み合わせのベータは w×1+(1−w)×0=ww \times 1 + (1 - w) \times 0 = w なので、β=0.15\beta = 0.15 に合わせるには w=0.15w = 0.15 が必要です:

Tビル:1−0.15=85%,指数:15%\text{Tビル:} 1 - 0.15 = 85\%, \qquad \text{指数:} 15\%

期待リターンへの寄与:

0.85×2.5%=2.125%,0.15×7.5%=1.125%0.85 \times 2.5\% = 2.125\%, \qquad 0.15 \times 7.5\% = 1.125\% 2.125%+1.125%=3.25%=2.5%+0.15×5%2.125\% + 1.125\% = 3.25\% = 2.5\% + 0.15 \times 5\%

この組み合わせは証券市場線の要求リターンを稼ぐので、ファンドの 595595 bp のアルファは、市場へのエクスポージャーが同じポートフォリオを上回って稼いだ分です。

問4 · アルファに見せかけたベータ

条件: このファンドのCAPMのアルファは年 5.95%5.95\% です(リターン 9.2%9.2\%、要求リターン 3.25%3.25\%)。後の研究で、そのリターンのうち年 2.22.2 パーセントポイントは、マーケット・ポートフォリオに表れない流動性リスクを負ったことへの対価だと推定されました。アルファのうち、なお腕前によるものと認められる分は最大でいくらか、求めてください。

✅ 正解です! 最大で 5.95%−2.2%=3.75%5.95\% - 2.2\% = 3.75\% です。為替や商品へのエクスポージャーのような、ほかの見えないリスクがあれば、さらに小さくなりえます。
❌ CAPMは流動性リスクの分を一度も差し引いていません。 そのベンチマークが調整するのは市場ベータだけなので、2.22.2 ポイントは 5.95%5.95\% のアルファの中に含まれています。
❌ 向きが逆です。 ベンチマークが見落としたリスクへの対価は、測られたアルファの一部です。アルファに上乗せするのではなく、アルファから差し引きます。
❌ 要求リターンが抜けています。 9.2%−2.2%9.2\% - 2.2\% には、市場ベータが求める 3.25%3.25\% がまだ含まれています。アルファ 5.95%5.95\% から始めましょう。
❌ 惜しい! 流動性への対価はアルファとして数えられていました。それをアルファから取り除きましょう。
解答を見る

市場だけを基準に測ると、証券市場線より上はすべてアルファとして数えられます。マーケット・ポートフォリオに表れないリスクへの対価も含めてです:

5.95%=2.2%⏟流動性リスク+3.75%⏟それ以外5.95\% = \underbrace{2.2\%}_{\text{流動性リスク}} + \underbrace{3.75\%}_{\text{それ以外}}

腕前と洞察に残るのは、最大で年 3.75%3.75\%、つまり 375375 bp です。それも、ファンドがほかに価格のついていないリスクを負っていない場合に限ります。2.22.2 ポイントは、アルファに見せかけたベータです。

正解数:0 / 4