ファイナンス理論 · 第18回 · 動画8 · インタラクティブ教材

切片ひとつを検定する:バイオジェン、モトローラとアルファはゼロか

I重要な公式

回帰式形CAPM の予測
Ri−Rf=αi+βi(Rm−Rf)+ϵR_i - R_f = \alpha_i + \beta_i(R_m - R_f) + \epsilon超過リターンαi=0\alpha_i = 0
Ri=αi+βiRm+ϵR_i = \alpha_i + \beta_i R_m + \epsilonトータル・リターンαi=Rf(1−βi)\alpha_i = R_f(1 - \beta_i)
α=切片−Rf(1−β)\alpha = \text{切片} - R_f(1 - \beta)トータル・リターンの回帰から求めるアルファ推定値と予測の差
α/SE(α)\alpha / \text{SE}(\alpha)ゼロから標準誤差何個分か慣例の目安は約 22

ポイント:すべての項は同じ期間の単位でそろえなければなりません。月次の回帰では、無リスク金利は年率を 1212 で割ったものです。また、E[ϵ]=0\text{E}[\epsilon] = 0 だからこそ、期待値をとると価格の式に戻るのです。

II可視化1 — CAPM は切片をどこに置くか

トータル・リターンでは、CAPM の直線はどれも (Rf,Rf)(R_f, R_f) を軸に回転するので、予測される切片は Rf(1−β)R_f(1 - \beta) です。

III可視化2 — 株 A:標準誤差で測ったアルファ

株 A(月次):β=0.8\beta = 0.8、切片 0.9%0.9\%(SE 0.6%0.6\%)、年率 Rf=3.6%R_f = 3.6\%。そのアルファはゼロと区別できるでしょうか。

💡 経済的な大きさと統計的な精度は別の問題です。年およそ 21%21\% というバイオジェンのアルファも、同じように決め手になりませんでした。

IV確認クイズ

問1 · 予測される切片

条件:株 B の月次トータル・リターンを、市場の月次トータル・リターンに回帰すると(Ri=αi+βiRm+ϵR_i = \alpha_i + \beta_i R_m + \epsilon)、β=1.25\beta = 1.25 が得られました。無リスク金利は年 3.6%3.6\% です。CAPM が予測する切片を、月あたりで求めてください。

✅ 正解です! β>1\beta \gt 1 では直線が β=1\beta = 1 より急なので、縦軸とはゼロより下で交わります:0.3%×(1−1.25)=−0.075%0.3\% \times (1 - 1.25) = -0.075\%。
❌ 符号を確かめましょう。 予測は Rf(1−β)R_f(1 - \beta) であって、Rf(β−1)R_f(\beta - 1) ではありません。β=1.25\beta = 1.25 では、因数 1−β1 - \beta は負です。
❌ 惜しい! 切片ゼロは超過リターンの回帰に対する予測です。この回帰はトータル・リターンなので、CAPM の予測は Rf(1−β)R_f(1 - \beta) です。
❌ 単位が合っていません。 これは年率の 3.6%3.6\% を使っています。回帰は月次なので、無リスク金利は 3.6%/12=0.3%3.6\% / 12 = 0.3\%(月率)でなければなりません。
解答を見る

価格の関係式をトータル・リターンで展開すると Ri=Rf+βiRm−βiRf+ϵR_i = R_f + \beta_i R_m - \beta_i R_f + \epsilon となるので、CAPM の切片は Rf(1−βi)R_f(1 - \beta_i) です。

回帰は月次なので、まず金利を換算します。

Rf=3.6%12=0.3%(月率)R_f = \frac{3.6\%}{12} = 0.3\% \text{(月率)} Rf(1−β)=0.3%×(1−1.25)=0.3%×(−0.25)=−0.075%(月率)R_f(1 - \beta) = 0.3\% \times (1 - 1.25) = 0.3\% \times (-0.25) = -0.075\% \text{(月率)}

問2 · 年率の落とし穴

条件:問1と同じ株 B(β=1.25\beta = 1.25)で、推定された切片は月 −0.1%-0.1\%(標準誤差 0.5%0.5\%)です。あるアナリストは、年率の 3.6%3.6\% をそのまま Rf(1−β)R_f(1 - \beta) に代入します。彼女が使う予測切片と、正しいアルファを求めてください。

彼女が使う予測切片

正しいアルファ

✅ 正解です! 彼女の予測 −0.9%-0.9\% は、ほぼゼロのアルファを −0.1%−(−0.9%)=+0.8%-0.1\% - (-0.9\%) = +0.8\%(月率)に変え、見かけ上は標準誤差 1.61.6 個分になります。単位をそろえれば、アルファは月 −0.025%-0.025\% にすぎません。
❌ 惜しい! 彼女は年率の数字のまま 3.6%×(1−1.25)3.6\% \times (1 - 1.25) を計算します。
❌ 因数を確かめましょう。 それは 3.6%×(−1.25)3.6\% \times (-1.25) で、−β-\beta をかけています。予測で使うのは 1−β=−0.251 - \beta = -0.25 です:3.6%×(−0.25)=−0.9%3.6\% \times (-0.25) = -0.9\%。
❌ 符号を確かめましょう。 β=1.25\beta = 1.25 では因数 1−β1 - \beta が負なので、彼女の(単位を誤った)予測も負になります:−0.9%-0.9\%。
❌ それは正しい予測で、彼女の予測ではありません。彼女は 1212 で割るのを飛ばしました。
❌ 惜しい! アルファは、推定された切片から月次の予測 Rf(1−β)=−0.075%R_f(1 - \beta) = -0.075\% を引いたものです。
❌ 惜しいですが… トータル・リターンの回帰では、切片そのものはアルファではありません。先に CAPM の予測 −0.075%-0.075\% を引きましょう。
❌ それはアナリストの数字です。 年率の 3.6%3.6\% を月次の切片にぶつけています。
❌ 引き算を確かめましょう。 負の予測を引くことは、足すことになります:−0.1%−(−0.075%)=−0.1%+0.075%-0.1\% - (-0.075\%) = -0.1\% + 0.075\%。
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彼女の予測(年率のまま、誤り):

3.6%×(1−1.25)=3.6%×(−0.25)=−0.9%3.6\% \times (1 - 1.25) = 3.6\% \times (-0.25) = -0.9\%

彼女は −0.1%−(−0.9%)=0.8%-0.1\% - (-0.9\%) = 0.8\%(月率)と報告することになり、これは標準誤差 0.8/0.5=1.60.8 / 0.5 = 1.6 個分です。単位が生み出した見せかけのシグナルです。

正しくは(月率):Rf=3.6%/12=0.3%R_f = 3.6\% / 12 = 0.3\% なので、予測は 0.3%×(−0.25)=−0.075%0.3\% \times (-0.25) = -0.075\% で、

α=−0.1%−(−0.075%)=−0.025%(月率)\alpha = -0.1\% - (-0.075\%) = -0.025\% \text{(月率)}

問3 · 株 B は CAPM を棄却するか

条件:株 B の正しいアルファは月 −0.025%-0.025\% で、推定された切片の標準誤差は 0.5%0.5\% です。アルファがゼロから標準誤差何個分離れているかと、その判定を求めてください。

ゼロから標準誤差何個分か

判定

✅ 正解です! ゼロから標準誤差の20分の1しか離れていない推定値は、まさに α=0\alpha = 0 にノイズが乗ったときの姿です。
❌ 惜しい! 推定値をその標準誤差で割ります:α/SE\alpha / \text{SE}。
❌ 惜しいですが… それは切片 −0.1%-0.1\% をそのまま割っています。検定の対象はアルファ、つまり切片から CAPM の予測を引いたものです。
❌ 逆です。 数えるのは推定値÷標準誤差、−0.025/0.5-0.025 / 0.5 で、その逆ではありません。
❌ それは単位を誤ったアルファ 0.8%0.8\% を 0.5%0.5\% で割ったものです。正しいアルファを使いましょう。
❌ 惜しい! 真のアルファがゼロでも、推定値がちょうどゼロになることはありません。大事なのは、標準誤差で測ったゼロからの距離です。ここでは 0.050.05 で、目安は約 22 です。
❌ 惜しい! トータル・リターンでは、CAPM は切片ゼロを予測しません。予測は Rf(1−β)=−0.075%R_f(1 - \beta) = -0.075\% です。検定の対象はアルファ −0.025%-0.025\% で、ゼロから標準誤差 0.050.05 個分しか離れていません。
❌ 必要ありません。 検定に使うのは回帰の出力と無リスク金利だけです。アルファ =−0.025%= -0.025\% はゼロから標準誤差 0.050.05 個分で、約 22 をはるかに下回ります。
❌ 惜しい! 推定値がちょうどゼロになることはありません。問題は、それが標準誤差に比べてゼロから遠いかどうかで、目安は約 22 です。
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αSE=−0.025%0.5%=−0.05\frac{\alpha}{\text{SE}} = \frac{-0.025\%}{0.5\%} = -0.05

アルファはゼロより標準誤差 0.050.05 個分下にあるだけで、慣例の目安である約 22 には遠く及びません。株 B は、モトローラと同じように CAPM と整合的です。

問4 · 同じアルファ、より精密な推定

条件:株 A のアルファは月 0.84%0.84\% です(切片 0.9%0.9\%、β=0.8\beta = 0.8、Rf=0.3%R_f = 0.3\%(月率))。より長い標本で同じ推定値が得られ、切片の標準誤差だけが 0.6%0.6\% から 0.35%0.35\% に下がったとします。新しい標準誤差の個数と判定を求めてください。

ゼロから標準誤差何個分か

判定

✅ 正解です! 判定を動かしたのは大きさではなく精度です。同じ 0.84%0.84\% が、いまやゼロから標準誤差 2.42.4 個分離れています。
❌ 惜しい! 変わらないアルファを、新しい標準誤差で割ります。
❌ それは以前の個数 0.84/0.60.84 / 0.6 です。新しい標準誤差 0.35%0.35\% を使いましょう。
❌ 惜しいですが… それは切片 0.9%0.9\% を割っています。アルファは 0.9%−0.06%=0.84%0.9\% - 0.06\% = 0.84\% です。
❌ 逆です。 数えるのは推定値÷標準誤差で、標準誤差÷推定値ではありません。
❌ 惜しい! 推定値は変わりませんが、判定は標準誤差に対する推定値の大きさで決まります。0.84/0.35=2.40.84 / 0.35 = 2.4 は、いまや約 22 の目安を超えています。
❌ 惜しい! 経済的な大きさだけでは何も決まりません。同じ年 ≈10%\approx 10\% でも、標準誤差 1.41.4 個分のときは棄却できませんでした。棄却をもたらしたのは、標準誤差 2.42.4 個分という距離です。
❌ 惜しい! 標準誤差はアルファを変えません。アルファは 0.84%0.84\% のままです。標準誤差が小さくなると、同じアルファがゼロから標準誤差より多くの個数分離れることになります:2.42.4 で、約 22 の目安を超えます。
❌ 惜しい! 判定は、標準誤差で測ったアルファで決まります。経済的な大きさは、検定が棄却できなかった標準誤差 1.41.4 個分のときも同じでした。
解答を見る

アルファは変わりません:0.9%−0.3%×(1−0.8)=0.9%−0.06%=0.84%0.9\% - 0.3\% \times (1 - 0.8) = 0.9\% - 0.06\% = 0.84\%(月率)。

0.84%0.35%=2.4\frac{0.84\%}{0.35\%} = 2.4

標準誤差 2.42.4 個分なら推定値は慣例の目安である約 22 を超えるので、株 A について α=0\alpha = 0 は棄却されます。年率に直すと 0.84%×12≈10.1%0.84\% \times 12 \approx 10.1\% です。標準誤差 1.41.4 個分のときにはゼロと区別できなかったのと、同じ経済的な大きさです。

正解数:0 / 4