ファイナンス理論 · 第20回 · 動画2 · インタラクティブ教材

現金で、税引後で、増分で:プロジェクトのキャッシュフローの組み立て方

I重要な公式

公式名称説明
CFt=CFtあり−CFtなしCF_t = CF_t^{\text{あり}} - CF_t^{\text{なし}}増分キャッシュフロープロジェクトがある場合とない場合とで、会社の現金が違う部分だけを数えます
NPV=CF0+CF11+r1+⋯+CFT(1+rT)TNPV = CF_0 + \frac{CF_1}{1+r_1} + \cdots + \frac{CF_T}{(1+r_T)^T}正味現在価値分子に入るのは、税引後の増分キャッシュフローです
浮いた税金t=τ×Dt\text{浮いた税金}_t = \tau \times D_t減価償却の節税効果減価償却 DtD_t が現金に影響するのは、課税所得を減らすことを通じてだけです

ポイント:埋没費用は入れません。機会費用、運転資本、そして会社のほかの事業への影響は入れます。減価償却のスケジュールが変えるのは、税金がいつ浮くかであって、いくら浮くかではありません。

II可視化1 — ありマイナスなし:カフェの出店

パン屋が、使っていない自社の倉庫にカフェを開きます。候補の項目のうち、カフェのキャッシュフローに入るのはどれでしょうか?

💡 金額はすべて税引後キャッシュフローで、カフェは5年間、割引率は年 8%8\% です。運転資本は、カフェの在庫と売掛金がなくなる t=5t = 5 で全額回収されると仮定しています。市場調査の費用はカフェを開いても開かなくてもかかり、倉庫の賃料はカフェを開かない場合にだけ入ってきます。

III可視化2 — 節税の合計は同じ、タイミングが違う

カフェの $80,000 のオーブンを τ=20%\tau = 20\% で償却する3つのスケジュールは、同じ額の税金を、違う時点で浮かせます。

💡 合計が一致するのは、費用が最終的に全額控除され(残存価値も途中での売却もない)、税率が変わらず、会社に毎年の控除を使い切るだけの課税所得がある場合だけです。会社がどのスケジュールを使えるかは税法が決めます。3段を並べているのは、タイミングを比べるためだけです。

IV確認クイズ

問1 · カフェの1年分

条件:パン屋のカフェ出店の2年目に、カフェ自身は $85,000 の税引後の現金を生みます。カフェがなければ、パン屋はカフェが使っている遊休倉庫を税引後で年 $25,000 で貸し出せます。また、既存店は毎年 $30,000 の税引後の現金をカフェに奪われます。$40,000 の市場調査の費用は、カフェの開店の2年前に支払い済みです。このプロジェクトの2年目のキャッシュフローを求めてください。

✅ 正解です! カフェがあると、パン屋にはカフェの $85,000 が入りますが、賃料と既存店の $30,000 を失います。カフェがなければ、その両方が残ります。差は $85,000 − $25,000 − $30,000 = $30,000 です。
❌ 倉庫はただではありません。 カフェがなければ、パン屋は $25,000 の賃料を受け取れます。カフェはそれをあきらめるので、あきらめた賃料はプロジェクトの費用です。
❌ 市場調査は埋没費用です。 意思決定の前に支払われていて、カフェを開いても開かなくても戻ってきません。ですから2年目にも、比較のほかのどの年にも入りません。
❌ 既存店も会社の一部です。 既存店がカフェに奪われる $30,000 は、カフェがなければ会社にあり、カフェがあればない現金です。ですから、カフェのキャッシュフローから差し引きます。
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カフェがある場合とない場合とで、パン屋の2年目の現金を比べます(単位:千ドル):

  • カフェ自身の税引後の現金:ありで 8585、なしで 00、差は +85+85。
  • 倉庫の賃料:ありで 00、なしで 2525、差は −25-25(機会費用)。
  • 既存店:カフェがあると 3030 少なく、差は −30-30。
  • 市場調査:どちらの場合もすでに支払い済みで、差は 00(埋没費用)。
CF2=85−25−30=30CF_2 = 85 - 25 - 30 = 30

このプロジェクトの2年目のキャッシュフローは $30,000 です。

問2 · 開店日のキャッシュフロー

条件:カフェの内装工事には $110,000 かかり、t=0t = 0 で支払います。開店日から、在庫と売掛金が $60,000 余分に必要で、これも t=0t = 0 です。$40,000 の市場調査の費用は、意思決定の前の先月に支払い済みです。このプロジェクトの t=0t = 0 でのキャッシュフローを求めてください。

✅ 正解です! 内装工事と運転資本は、どちらもカフェを進める場合にだけ会社から出ていきます。調査はすでに支払い済みです。$110,000 + $60,000 = $170,000 の流出です。
❌ それは埋没した市場調査を足しています。 $40,000 はカフェを開いても開かなくても使われているので、ありマイナスなしで打ち消し合います。済んだことは済んだことです。
❌ 運転資本は資本的支出です。 在庫や売掛金は損益計算書の費用ではありませんが、開店日から $60,000 の現金を拘束するので、t=0t = 0 に数えます。
❌ ここでは2つの原則が両方とも逆になっています。 その数字は埋没した $40,000 の調査を数え、$60,000 の運転資本を外しています。逆にすべきです。
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t=0t = 0 で、カフェがある場合とない場合とでパン屋の現金が違う項目は、次のとおりです(単位:千ドル):

  • 内装工事:−110-110(カフェがある場合にだけ支出)。
  • 運転資本(在庫と売掛金):−60-60。カフェがその現金を拘束するので、資本的支出として扱います。
  • 市場調査:00、埋没費用です。
CF0=−110−60=−170CF_0 = -110 - 60 = -170

t=0t = 0 でのキャッシュフローは −$170,000 です。ふつうそうであるように、プロジェクトの終わりに在庫と売掛金がなくなるなら、そのとき $60,000 が現金の流入として戻ってきます。

問3 · 3年間のポップアップ・カフェ

条件:3年間のポップアップ・カフェには、t=0t = 0 で $95,000 の内装工事と $60,000 の運転資本が必要です。運転資本は3年目の終わりに全額回収されます。カフェは1年目から3年目まで毎年 $75,000 の税引後の現金を生み、既存店は毎年 $30,000 の税引後の現金をカフェに奪われます。割引率は年 7%7\% です。このプロジェクトのNPVと判断を求めてください。

✅ 正解です! キャッシュフローは −$155,000、$45,000、$45,000、$105,000 です。その現在価値の合計はゼロを約 $12,072 上回るので、カフェは価値を生みます。
❌ 運転資本は戻ってきます。 $60,000 の在庫と売掛金は3年目の終わりに解放され、これは今日の価値で約 $48,978 の流入です。これを外すと判断が逆になり、誤って棄却してしまいます。
❌ それは運転資本をまったく入れていません。 今 $60,000 を払い、3年後に取り戻すのはただではありません。現在価値で約 $60,000 − $48,978 = $11,022 の費用がかかります。
❌ 既存店が失う現金が抜けています。 既存店が毎年失う $30,000 は、カフェがなければパン屋にあり、カフェがあればない現金です。毎年のカフェの現金から差し引きます。
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ステップ1:増分キャッシュフロー(単位:千ドル):

CF0=−95−60=−155,CF1=CF2=75−30=45,CF3=45+60=105CF_0 = -95 - 60 = -155, \qquad CF_1 = CF_2 = 75 - 30 = 45, \qquad CF_3 = 45 + 60 = 105

ステップ2:7%7\% で割り引く:

451.07≈42.0561,451.072≈39.3047,1051.073≈85.7113\frac{45}{1.07} \approx 42.0561, \qquad \frac{45}{1.07^2} \approx 39.3047, \qquad \frac{105}{1.07^3} \approx 85.7113

ステップ3:足し合わせる:

NPV≈−155+42.0561+39.3047+85.7113=12.0721NPV \approx -155 + 42.0561 + 39.3047 + 85.7113 = 12.0721

NPVは約 +$12,072 なので、パン屋はこのプロジェクトを採択すべきです。運転資本の回収を忘れると約 −$36,906 となり、誤って棄却してしまいます。

問4 · 節税効果を早く受ける

条件:パン屋が $50,000 の配達用バンを買います。このバンは、2年間の定額法(年 $25,000)で償却することも、100%の初年度控除を受けることもできます。税率は 20%20\% のまま変わらず、パン屋には十分な課税所得があり、どちらでも費用は全額控除され、割引率は年 6%6\% です。バンの耐用期間を通じて浮く税金の合計と、100%の初年度控除によって浮いた税金の現在価値がいくら増えるかを求めてください。

バンの耐用期間を通じて浮く税金の合計

100%の初年度控除による現在価値の増加

✅ 正解です! どちらのスケジュールでも、浮く税金の合計は $50,000 の 20%20\% = $10,000 です。ただし初年度控除では全額が1年目に浮くので、今日の価値は約 $9,434 で、定額法の約 $9,167 を上回ります。
❌ それは減価償却で、浮いた税金ではありません。 $50,000 の控除は課税所得を $50,000 減らし、その結果、税額が τ×50,000\tau \times 50{,}000 だけ減ります。
❌ 定額法でも、2年とも税金が浮きます。 $5,000 は1年分の節税($25,000 の 20%20\%)にすぎません。2年間では、こちらも合計 $10,000 です。
❌ それは節税を2回数えています。 どちらのスケジュールでも、$50,000 を控除するのは全体で1回だけなので、浮く税金はどちらも 0.20×50,000=10,0000.20 \times 50{,}000 = 10{,}000 です。定額法の年 $5,000 が2年続くのであって、年 $10,000 ではありません。
❌ 合計を確かめてください。 浮く税金は τ\tau に減価償却を掛けたものをバンの耐用期間で合計したもので、どちらのスケジュールでも $50,000 全額が控除されます。
❌ 合計は同じでも、タイミングが違います。 合計は一致しますが、割引率がプラスなら、1年目に浮いた1ドルの税金は、2年目に浮いた1ドルより価値が高いのです。
❌ それは浮いた税金ではなく、控除額を割り引いています。 減価償却が現金に影響するのは τ×Dt\tau \times D_t を通じてだけです。その $1,335 の差に τ=20%\tau = 20\% を掛けましょう。
❌ それは割り引く前の合計と比べています。 $10,000 − $9,434 は、割引によって初年度控除が失う分です。代わりに、定額法の節税の現在価値と比べましょう。
❌ 現在価値を確かめてください。 毎年浮く税金 τ×Dt\tau \times D_t を 6%6\% で割り引き、2つのスケジュールを比べます。
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毎年浮く税金は τ×Dt\tau \times D_t です:

  • 定額法:1年目に 0.20×25,000=5,0000.20 \times 25{,}000 = 5{,}000、2年目にも同じ額で、合計 10,00010{,}000。
  • 100%の初年度控除:1年目に 0.20×50,000=10,0000.20 \times 50{,}000 = 10{,}000 で、合計 10,00010{,}000。

6%6\% での現在価値:

定額法:5,0001.06+5,0001.062≈4,716.98+4,449.98=9,166.96\text{定額法:} \frac{5{,}000}{1.06} + \frac{5{,}000}{1.06^2} \approx 4{,}716.98 + 4{,}449.98 = 9{,}166.96 初年度控除:10,0001.06≈9,433.96\text{初年度控除:} \frac{10{,}000}{1.06} \approx 9{,}433.96 9,433.96−9,166.96=267.009{,}433.96 - 9{,}166.96 = 267.00

どちらのスケジュールでも、浮く税金の合計は $10,000 です。控除を1年目に受けると、現在価値が約 $267 増えます。税法が認めるときに会社が償却を加速するのは、このためです。

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