ファイナンス理論 · 第20回 · 動画4 · インタラクティブ教材

会社ではなくプロジェクトで割り引く:専業企業のベータで評価するブルームバーグ・プレス

I重要な公式

公式名称必要なもの
Rˉproject=Rf+βproject(Rˉm−Rf)\bar{R}_{\text{project}} = R_f + \beta_{\text{project}}\left(\bar{R}_m - R_f\right)プロジェクトの資本コスト(CAPM)無リスク金利、プロジェクトのベータ、市場リスクプレミアム
βproject≈βpure play\beta_{\text{project}} \approx \beta_{\text{pure play}}専業企業による推定プロジェクトと同じ事業だけを営む上場企業
NPV=CF0+CF11+Rˉproject+⋯+CFT(1+Rˉproject)T\text{NPV} = CF_0 + \dfrac{CF_1}{1 + \bar{R}_{\text{project}}} + \cdots + \dfrac{CF_T}{(1 + \bar{R}_{\text{project}})^T}プロジェクト自身の率でのNPVプロジェクトのキャッシュフローと、それ自身の割引率

ポイント:ベータは会社ではなく、プロジェクトに属するものです。全社一律の率は水平な直線になり、ベータの低いプロジェクトにはハードルを高くしすぎ、ベータの高いプロジェクトには低くしすぎます。

IIプロジェクトのハードルと全社一律の率

β=1.6\beta = 1.6 の親会社は一律に 13.9%13.9\% の率を使いますが、各プロジェクト自身のハードルは証券市場線に沿って上がっていきます。

III類似企業から幅をとる

完全に一致する類似企業はありません。類似企業ごとの β\beta から推定値が1つずつ得られ、その幅の中から判断で率を選びます。

💡 コングロマリットの β\beta はすべての事業の価値加重平均なので、出版だけについてはほとんど何も教えてくれません。問4でその中身を分解します。

IV確認クイズ

問1 · 専業企業の率

条件:β=1.6\beta = 1.6 のテクノロジー企業が、出版のレーベルを検討しています。最も近い専業の出版社は β=0.85\beta = 0.85 で、Rf=3.5%R_f = 3.5\%、Rˉm−Rf=6.5%\bar{R}_m - R_f = 6.5\% です。このレーベルの資本コストを求めてください。

✅ 正解です! 3.5%+0.85×6.5%=9.025%3.5\% + 0.85 \times 6.5\% = 9.025\% です。レーベルは親会社の率ではなく、出版社の率で割り引きます。
❌ それはリスクプレミアムだけです。 0.85×6.5%=5.525%0.85 \times 6.5\% = 5.525\% は、プロジェクトが無リスク金利を上回って稼ぐ分です。Rf=3.5%R_f = 3.5\% を足しましょう。
❌ それは親会社の率です。 3.5%+1.6×6.5%=13.9%3.5\% + 1.6 \times 6.5\% = 13.9\% はテクノロジー事業の率で、出版の率ではありません。専業企業の β\beta を使いましょう。
❌ 惜しい! β\beta に市場のリターン全体をかけて 0.85×10%0.85 \times 10\% とすると、RfR_f の扱いを誤ります。プレミアム Rˉm−Rf\bar{R}_m - R_f だけが β\beta 倍されます。
❌ 惜しい! Rˉproject=Rf+βproject(Rˉm−Rf)\bar{R}_{\text{project}} = R_f + \beta_{\text{project}}(\bar{R}_m - R_f) に、専業企業の β\beta を使いましょう。
解答を見る

プロジェクトのベータは専業企業のベータで推定し、βproject≈0.85\beta_{\text{project}} \approx 0.85 とします。親会社の 1.61.6 ではありません:

Rˉproject=0.035+0.85×0.065=0.035+0.05525=0.09025=9.025%\bar{R}_{\text{project}} = 0.035 + 0.85 \times 0.065 = 0.035 + 0.05525 = 0.09025 = 9.025\%

親会社自身の率 0.035+1.6×0.065=13.9%0.035 + 1.6 \times 0.065 = 13.9\% を使うと、レーベルのハードルを 4.8754.875 パーセントポイント過大に見積もることになります。

問2 · 全社一律の率の落とし穴

条件:問1のレーベルは今日 $2,000,000 かかり、毎年末に $200,000 を永久に生むと見込まれます。正しい割引率でのNPVと、その判断を求めてください。

✅ 正解です! レーベル自身の 9.025%9.025\% では、この永久年金の価値は約 $2,216,066 で、費用の $2,000,000 を上回ります。
❌ それは親会社の13.9%を使っています。 これこそ、全社一律の率が誤って棄却してしまうベータの低いプロジェクトです。自身のハードルは越えています。
❌ それは市場の10%で割り引いています。 レーベルの β\beta は 0.850.85 で 11 より小さいので、その率は市場の率より低くなります。
❌ それはコングロマリットの12.6%を使っています。 β\beta の 1.401.40 にはほかの事業のリスクが混ざっています。出版を測るのは専業企業の 0.850.85 です。
❌ 惜しい! プロジェクトの率で永久年金を C/rC/r として評価し、そこから費用を引きましょう。
解答を見る

1年後から始まる定額の永久年金の価値は C/rC / r です。ドル単位で、r=9.025%r = 9.025\% では:

PV=200,0000.09025≈2,216,066,NPV≈2,216,066−2,000,000=216,066\text{PV} = \frac{200{,}000}{0.09025} \approx 2{,}216{,}066, \qquad \text{NPV} \approx 2{,}216{,}066 - 2{,}000{,}000 = 216{,}066

NPV ≈ +$216,066 > 0 なので採択します。親会社の 13.9%13.9\% では、同じキャッシュフローの価値は 200,000/0.139≈1,438,849200{,}000 / 0.139 \approx 1{,}438{,}849 で、NPVは約 −$561,151 となり、価値を生むプロジェクトが棄却されてしまいます。

問3 · 判断が効くところ

条件:ほかに2つの専業出版社があり、β=0.95\beta = 0.95(大手)と β=1.05\beta = 1.05(小規模)です。したがって、専業企業による推定値は β=0.85\beta = 0.85 から 1.051.05 にわたります。RfR_f、プレミアム、レーベルは上と同じです。この幅の上端での資本コストと、そこでのレーベルのNPVを求めてください。

β=1.05\beta = 1.05 での資本コスト

その率でのレーベルのNPV

✅ 正解です! NPVは β=0.85\beta = 0.85 と 0.950.95 では正ですが、1.051.05 では負になります。幅の中で符号が変わるので、判断で率をどこに置くかがプロジェクトの採否を決めます。
❌ それは幅の中央です。 3.5%+0.95×6.5%=9.675%3.5\% + 0.95 \times 6.5\% = 9.675\% は大手出版社の β\beta を使っています。幅の上端は β=1.05\beta = 1.05 です。
❌ それはリスクプレミアムだけです。 1.05×6.5%=6.825%1.05 \times 6.5\% = 6.825\% です。Rf=3.5%R_f = 3.5\% を足しましょう。
❌ それはコングロマリットの率です。 3.5%+1.40×6.5%=12.6%3.5\% + 1.40 \times 6.5\% = 12.6\% は、β=1.05\beta = 1.05 で終わる専業企業の幅の外にあります。
❌ 率が違います。 それは幅の上端ではなく中央、9.675%9.675\%(β=0.95\beta = 0.95)でのNPVです。
❌ 率が違います。 それは幅の下端、9.025%9.025\%(β=0.85\beta = 0.85)でのNPVです。
❌ 率が違います。 それはコングロマリットの 12.6%12.6\% でのNPVです。10.325%10.325\% を使いましょう。
❌ 率を確認しましょう。 Rf+1.05×6.5%R_f + 1.05 \times 6.5\% です。プレミアムは 6.825%6.825\% で、これに Rf=3.5%R_f = 3.5\% を足す必要があります。
❌ NPVを確認しましょう。 $200,000 を 0.103250.10325 で割り、費用の $2,000,000 を引きます。
解答を見る
Rˉ=0.035+1.05×0.065=0.035+0.06825=0.10325=10.325%\bar{R} = 0.035 + 1.05 \times 0.065 = 0.035 + 0.06825 = 0.10325 = 10.325\%

ドル単位で:

PV=200,0000.10325≈1,937,046,NPV≈1,937,046−2,000,000=−62,954\text{PV} = \frac{200{,}000}{0.10325} \approx 1{,}937{,}046, \qquad \text{NPV} \approx 1{,}937{,}046 - 2{,}000{,}000 = -62{,}954

幅全体で見ると、NPVは 9.025%9.025\% で約 +$216,066、9.675%9.675\% で約 +$67,183、10.325%10.325\% で約 −$62,954 です。NPVがちょうどゼロになるのは 10%10\%、つまり β=1\beta = 1 の率です。判断は、このレーベルが類似企業と比べてどれだけリスクが高いかの見極めにかかっています。

問4 · コングロマリットのベータの中身

条件:類似企業のコングロマリットは β=1.40\beta = 1.40 です。出版はコングロマリットの総時価の 60%60\% を占め、専業企業と同じ β=0.85\beta = 0.85 をもちます。残りの 40%40\% は格付け・データ事業です。企業の β\beta は、各事業のベータの価値加重平均です。格付け・データ事業の β\beta を求めてください。

✅ 正解です! その要求収益率は 3.5%+2.225×6.5%=17.9625%3.5\% + 2.225 \times 6.5\% = 17.9625\% です。コングロマリットの 12.6%12.6\% は 9.025%9.025\% の事業とこの事業を平均したものなので、出版の評価を誤らせるのです。
❌ 惜しい! 1.40−0.851.40 - 0.85 ではウェイトを無視しています。1.40=0.6×0.85+0.4 βother1.40 = 0.6 \times 0.85 + 0.4\,\beta_{\text{other}} を解きましょう。
❌ 惜しい! 1.40/0.41.40 / 0.4 では、先に出版の寄与分 0.6×0.85=0.510.6 \times 0.85 = 0.51 を除くのを忘れています。
❌ ウェイトが入れ替わっています。 60%60\% のウェイトをもつのは出版で、もう一方の事業は 40%40\% です。
❌ 惜しい! コングロマリットの β\beta を加重平均として書き、未知数について解きましょう。
解答を見る
1.40=0.6×0.85+0.4 βother  ⇒  βother=1.40−0.510.4=0.890.4=2.2251.40 = 0.6 \times 0.85 + 0.4\,\beta_{\text{other}} \;\Rightarrow\; \beta_{\text{other}} = \frac{1.40 - 0.51}{0.4} = \frac{0.89}{0.4} = 2.225

その資本コストは 0.035+2.225×0.065=0.179625≈18.0%0.035 + 2.225 \times 0.065 = 0.179625 \approx 18.0\% です。検算:0.6×9.025%+0.4×17.9625%=5.415%+7.185%=12.6%0.6 \times 9.025\% + 0.4 \times 17.9625\% = 5.415\% + 7.185\% = 12.6\% となり、コングロマリット自身の率に一致します。出版のリスクを β=1.40\beta = 1.40 から読み取ると、β\beta が出版の約 2.62.6 倍の事業が混ざってしまいます。

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