ファイナンス理論 · 第20回 · 動画5 · インタラクティブ教材

プロジェクトが会社全体の評価を変えるとき:動き続ける割引率

I重要な公式

公式名称用途
会社にとっての価値=NPV単独+PV(シナジー)\text{会社にとっての価値} = \text{NPV}_{\text{単独}} + \text{PV}(\text{シナジー})プロジェクトとその相互作用クロスセルや人材の共有が、単独のNPVには表れない価値を加える
PV=Sr\text{PV} = \dfrac{S}{r}毎年 SS の永久年金(初回は t=1t = 1)いつまでも続く一定額のシナジー
V=Cr,倍率=VC=1rV = \dfrac{C}{r}, \quad \text{倍率} = \dfrac{V}{C} = \dfrac{1}{r}一定額で永久に続くキャッシュフロー CC の価値と、その1ドルあたりの価値既存事業に高い率が課されると倍率が下がり、その低い倍率がキャッシュフローのすべてに適用される
NPV=CF0+∑t=1TCFt(1+rt)t,rt=Rf,t+プレミアム\text{NPV} = CF_0 + \displaystyle\sum_{t=1}^{T} \frac{CF_t}{(1 + r_t)^t}, \quad r_t = R_{f,t} + \text{プレミアム}時点ごとの率を使うNPV土台となる無リスク金利は、時間とともに、また期間によって変わる

ポイント:プロジェクトの価値は、単独のNPVに、それが会社のほかの部分にもたらす影響を加えたものです。シナジーはその価値を押し上げます。会社全体の資本コストが上がっても、投資家が単独で評価できる小さな事業部なら何の損失にもならないはずですが、規模が大きくなれば、会社全体の評価の見直しは現実の価値の破壊です。そして RfR_f は動くので、同じキャッシュフローでも、ある年には採択に値し、翌年にはそうでなくなることがあります。

II可視化1 — 単独のNPVに上乗せされるシナジー

単独では基準を満たさないプロジェクトでも、会社とのシナジーを数に入れれば価値を生むことがあります。

III可視化2 — 事業部は会社のほかの部分の評価を変えるか

既存事業に高い率を課せば、その価値は下がります。その損失をプロジェクトに負担させるべきかどうかは、プロジェクトの規模によります。(ここでの例:会社のほかの部分は年9,000万ドルを永久に稼ぎ、そのリスクに見合う率は9%。新しい事業部自身の率は13%。)

IV可視化3 — 無リスク金利が動くときの同じプロジェクト

プレミアムが5%で一定でも、RfR_f が2%から4.5%に上がると、同じキャッシュフローの判定が採択から棄却に変わることがあります。

V確認クイズ

問1 · シナジーを数に入れる

条件:新しい事業部の単独のNPVは −250万ドルです。この事業部はクロスセルによって既存事業に年36万ドルをもたらし、それは1年後に始まっていつまでも続きます。この追加のキャッシュフローは 9%9\% で割り引きます。会社にとってのプロジェクトの価値を求めてください。

✅ 正解です! シナジーは永久年金で、その価値は36万ドル ÷ 0.09 = 400万ドルです。これで単独のNPVの −250万ドルを十分に埋め合わせられます。
❌ それは1年分のシナジーを、割り引かずに数えています。 36万ドルは毎年永久に入ってくるので、その価値は永久年金 S/rS / r です。
❌ それはシナジーだけです。 事業部自身のキャッシュフローは、現在価値で250万ドルの損失のままです。2つを足しましょう。
❌ それは単独で見た場合です。 シナジーは事業部自身のキャッシュフローには現れませんが、プロジェクトがある場合とない場合を比べた、会社の増分キャッシュフローです。
解答を見る

シナジーは t=1t = 1 に始まる定額の永久年金で、その価値は S/rS / r です:

PV(シナジー)=0.360.09=4.0(単位:100万ドル)\text{PV}(\text{シナジー}) = \frac{0.36}{0.09} = 4.0 \text{(単位:100万ドル)}

会社にとっての価値 = 単独のNPV + PV(シナジー):

−2.5+4.0=1.5(単位:100万ドル)-2.5 + 4.0 = 1.5 \text{(単位:100万ドル)}

このプロジェクトは150万ドルの価値を加えるので、単独の子会社としてなら棄却されるとしても、採択すべきです。

問2 · 事業部にはどの率を使うか

条件:ある会社の既存事業の資本コストは 9%9\% です。この会社は、よりリスクの高い小さな事業部を検討しており、その事業部自身の(専業企業から求めた)資本コストは 13%13\% です。事業部には今日1,000万ドルかかり、1年後から年117万ドルの税引後キャッシュフローを永久に生むと見込まれます。シナジーは無視します。事業部のNPVと、その判断を求めてください。

✅ 正解です! 事業部自身の 13%13\% では、その価値は117万ドル ÷ 0.13 = 900万ドルで、費用の1,000万ドルを下回ります。
❌ それは会社の 9%9\% で割り引いています。 117万ドル ÷ 0.09 = 1,300万ドルですが、既存事業の率が反映しているのは既存事業のリスクです。プロジェクトは、それ自身のシステマティック・リスクに見合った率、ここでは 13%13\% で割り引きます。
❌ NPVは正しいのですが、理由づけが違います。 この事業部に資本を提供する投資家は、会社のほかの部分がいくらで調達していようと、そのリスクに対して 13%13\% を要求します。正しい率でNPVが負なら、棄却です。
❌ 符号を確認しましょう。 キャッシュフローの価値は900万ドル、費用は1,000万ドルなので、NPV =9.0−10=−1.0= 9.0 - 10 = -1.0(単位:100万ドル)です。
解答を見る

事業部は単独で、それ自身のリスクに見合った率 13%13\% で評価します。会社の 9%9\% ではありません:

NPV=−10+1.170.13=−10+9.0=−1.0(単位:100万ドル)\text{NPV} = -10 + \frac{1.17}{0.13} = -10 + 9.0 = -1.0 \text{(単位:100万ドル)}

会社の 9%9\% で割り引くと −10+1.17/0.09=+3.0-10 + 1.17/0.09 = +3.0(100万ドル)に見えてしまいます。この400万ドルの誤差は、すべて割引率の誤りから生じたものです。現在価値で100万ドルを超えるシナジーを示せない限り、この事業部は棄却します。

問3 · 時点ごとの率

条件:今日の1年物の無リスク金利は 2%2\%、2年物の無リスク金利は年 4.5%4.5\% です。プロジェクトのリスクプレミアムはどちらの期間でも 5%5\% なので、r1=7%r_1 = 7\%、r2=9.5%r_2 = 9.5\% です。プロジェクトの費用は1,600万ドルで、1年後に700万ドル、2年後に1,100万ドルを生みます。そのNPVを求めてください。

✅ 正解です! 2年目のキャッシュフローをそれ自身の率 9.5%9.5\% で割り引くと、プロジェクトは約 $284,000 足りなくなるので、棄却されます。
❌ それは両方の時点に1年物の率を使っています。 2年目のキャッシュフローの期間は2年なので、r2=9.5%r_2 = 9.5\% を使います。11/1.095211/1.095^2 であって、11/1.07211/1.07^2 ではありません。
❌ それは両方の時点に 9.5%9.5\% を使っています。 1年目のキャッシュフローは1年物の率 r1=7%r_1 = 7\% で割り引きます。
❌ それは無リスク金利だけで割り引いています。 プロジェクトのキャッシュフローにはリスクがあります。それぞれの率は Rf,tR_{f,t} に 5%5\% のプレミアムを加えたものです。
解答を見る

各キャッシュフローを、それ自身の時点の率で割り引きます:

NPV=−16+71.07+111.0952\text{NPV} = -16 + \frac{7}{1.07} + \frac{11}{1.095^2} ≈−16+6.5421+9.1741≈−0.2838(単位:100万ドル)\approx -16 + 6.5421 + 9.1741 \approx -0.2838 \text{(単位:100万ドル)}

NPVは約 −$284,000 なので棄却します。両方の時点に1年物の率を使うと、2年目の項は 11/1.072≈9.607811/1.07^2 \approx 9.6078 となり、NPVは約 +$150,000 で、誤った判断になります。

問4 · 会社の評価を変えるほど大きな事業部

条件:ある会社の既存事業は年4,500万ドルを永久に生み、それ自身の 9%9\% で評価されています。大きなトレーディング事業部は、それ自身の 13%13\% で評価すると、単独のNPVが +2,500万ドルです。これを採択すると、事業部が会社のあまりに大きな部分を占めるようになり、投資家は既存事業のキャッシュフローもすべて 13%13\% で評価するようになります。この事業部を採択することによる会社の価値の変化を求めてください。

✅ 正解です! 既存事業の価値は5億ドルから約3億4,615万ドルに下がります。約1億5,385万ドルの損失は、事業部の +2,500万ドルをはるかに上回ります。
❌ それは単独のNPVだけです。 投資家が単独で評価する小さな事業部なら、それが答えです。ここでは事業部が会社のほかの部分の評価を変えるので、その損失はプロジェクトに帰属します。
❌ それは評価の見直しによる損失だけです。 事業部自身も +2,500万ドルをもたらします。2つを差し引きしましょう。
❌ 評価の見直しは利益ではなく損失です。 同じ年4,500万ドルに高い率を当てはめれば、その価値は下がります:45/0.13<45/0.0945/0.13 \lt 45/0.09。
解答を見る

既存事業をそれぞれの率で評価します(永久年金、単位:100万ドル):

450.09=500450.13≈346.15\frac{45}{0.09} = 500 \qquad \frac{45}{0.13} \approx 346.15

ほかの部分で失われる価値は約 500−346.15=153.85500 - 346.15 = 153.85 です。言い換えると、年間キャッシュフロー1ドルあたりの倍率が 1/0.09≈11.111/0.09 \approx 11.11 から 1/0.13≈7.691/0.13 \approx 7.69 に下がり、その低い倍率がキャッシュフローのすべてに適用されます。

Δ価値≈25−153.85=−128.85(単位:100万ドル)\Delta \text{価値} \approx 25 - 153.85 = -128.85 \text{(単位:100万ドル)}

この事業部は約1億2,885万ドルの価値を破壊します。これは動画の自己勘定取引の例を、ここでの数値で表したものです。投資家が会社をリスクの高い事業と見なすようになると、低い倍率が会社のキャッシュフローのすべてに適用されます。同じ事業部でも、投資家の会社の見方を変えないほど小さければ、単に2,500万ドルを加えるだけです。

正解数:0 / 4