ファイナンス理論 · 第20回 · 動画6 · インタラクティブ教材

二つのリスクに二つの割引率:石油の探鉱リスクが無リスク金利で割り引かれる理由

I重要な公式

公式ステップ使う率
V1=CF21+rprodV_1 = \dfrac{CF_2}{1 + r_{\text{prod}}}探鉱が成功した場合の t=1t = 1 での価値生産の率(高い β\beta)
E[V1]=p V1+(1−p)⋅0E[V_1] = p\,V_1 + (1 - p)\cdot 0探鉱の結果についての期待値なし:割引ではなく確率による重みづけ
NPV=p CF2(1+rprod)(1+Rf)−C0\text{NPV} = \dfrac{p\,CF_2}{(1 + r_{\text{prod}})(1 + R_f)} - C_02段階のNPV(掘削費用 C0C_0 は t=0t = 0 に支払う)探鉱には RfR_f(β=0\beta = 0)
rt=Rf+βt (E[Rm]−Rf)r_t = R_f + \beta_t\,(E[R_m] - R_f)各段階をそれ自身のベータで価格づけする段階ごとのCAPM

ポイント:キャッシュフローの割引率は、そのキャッシュフローのシステマティック・リスクに見合ったものです。空振りのリスクは固有リスク(β=0\beta = 0)なので、それが解消される年は RfR_f で割り引きます。石油価格のリスクは市場と連動するので、生産には業界の率が求められます。

II可視化1 — 2つの段階を逆向きに解く

価値は t=2t = 2 から3つの手順でさかのぼります。生産の率で割り引き、期待値をとり、RfR_f で割り引きます。

III可視化2 — 探鉱の年にはどの率を使うか

ここで変わるのは探鉱の年の率だけです。その率を Rf=3%R_f = 3\% に定めるのは、ベータがゼロであることです。

IV可視化3 — 空振りのリスクに価格がつかない理由

独立な油田を数多く掘れば、石油を掘り当てる割合は p=0.25p = 0.25 に近づいていきます。

💡 分散投資している投資家は、多くの会社のプロジェクトを保有することでこの平均化を手に入れます。ですから、油田を1つしかもたない会社の空振りのリスクにも、プレミアムはつきません。石油価格のリスクはすべての油田に共通で、平均化されて消えることはありません。だから生産には15%の率が残るのです。

V確認クイズ

問1 · 2つの率によるNPV

条件:ある鉱山会社が1年間探鉱を行います。確率 p=0.4p = 0.4 で鉱石が見つかり、それは2年目のうちに採掘・販売されて、t=2t = 2 に期待値で6,900万ドルの税引後キャッシュフローを生みます(探鉱が失敗すれば何もありません)。探鉱のリスクは β=0\beta = 0、Rf=3%R_f = 3\%、鉱山の生産の率は 15%15\% です。探鉱の費用を無視して、t=0t = 0 でのプロジェクトの価値を求めてください。

✅ 正解です! 生産のキャッシュを 15%15\% で割り引き、次に期待値をとり、最後にベータがゼロの年を 3%3\% で割り引きます。
❌ 惜しい! それは探鉱の年も 15%15\% で割り引いています。成功か失敗かの賭けは β=0\beta = 0 なので、1年目に求められるのは RfR_f だけです。
❌ 惜しい! それは2年目のキャッシュフローも RfR_f で割り引いています。鉱石が見つかったあとのキャッシュは金属価格のリスクを負い、そのリスクは市場と連動するので 15%15\% で価格がつきます。
❌ 惜しい! それは鉱石が確実に見つかるかのように評価しています。成功した場合の価値に p=0.4p = 0.4 の重みをつけましょう。失敗の枝の価値は0ドルです。
❌ 惜しい! 逆向きに解きましょう。15%15\% で割り引き、pp で重みをつけ、3%3\% で割り引きます。
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ステップ1(生産の年、15%15\%):鉱石が見つかった場合の t=1t = 1 での価値:

V1=691.15=60(単位:100万ドル)V_1 = \frac{69}{1.15} = 60 \quad (\text{単位:100万ドル})

ステップ2(探鉱の結果):t=1t = 1 での期待値:

E[V1]=0.4×60+0.6×0=24E[V_1] = 0.4 \times 60 + 0.6 \times 0 = 24

ステップ3(探鉱の年、β=0\beta = 0 なので Rf=3%R_f = 3\%):

NPV=241.03≈23.30\text{NPV} = \frac{24}{1.03} \approx 23.30

探鉱の費用を引く前のプロジェクトの価値は約2,330万ドルです。探鉱の費用があれば、この金額から差し引きます。

問2 · 1つの率で割り引く誤り

条件:ある油田は確率 p=0.25p = 0.25 で t=1t = 1 に成功し、成功すれば t=2t = 2 に1億350万ドルの生産のキャッシュが得られます。探鉱のリスクは β=0\beta = 0、Rf=3%R_f = 3\%、生産の率は 15%15\% です。あるアナリストは両方の年を 15%15\% で割り引きます。このアナリストはプロジェクトの価値をどれだけ過小評価していますか?

✅ 正解です! キャッシュフローもリスクも同じで、違うのはベータがゼロの年に当てはめる率だけです。それで約228万ドルの差が生じます。
❌ 惜しい! リスクは同じですが、アナリストは探鉱の賭けを、生産と同じ高いベータをもつかのように価格づけしています。1年目の率が高ければ、価値は低くなります。
❌ 惜しい! それは E[V1]E[V_1] に 1212 ポイントの率の差をかけています。2つの価値は E[V1]/1.03E[V_1]/1.03 と E[V1]/1.15E[V_1]/1.15 です。その差をとりましょう。
❌ 惜しい! それは成功した場合の価値を p=0.25p = 0.25 で重みづけせずに、2通りの割引を比べています。
❌ 惜しい! 同じ E[V1]E[V_1] から両方の価値を計算し、差をとりましょう。
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どちらの方法も、最初の2つのステップは共通です(単位:100万ドル):

V1=103.51.15=90,E[V1]=0.25×90=22.5V_1 = \frac{103.5}{1.15} = 90, \qquad E[V_1] = 0.25 \times 90 = 22.5

2つの率(探鉱は RfR_f):22.51.03≈21.845\dfrac{22.5}{1.03} \approx 21.845。

1つの率(1年目も 15%15\%):22.51.15≈19.565\dfrac{22.5}{1.15} \approx 19.565。

21.845−19.565≈2.2821.845 - 19.565 \approx 2.28

1つの率では、価値を約228万ドル過小評価します。分散投資している投資家が負わないリスクに対して、市場リスクプレミアムを課しているからです。

問3 · 損益分岐となる成功確率

条件:探鉱の費用は1,000万ドルで、t=0t = 0 に支払います。t=1t = 1 に成功すれば t=2t = 2 に9,600万ドルの生産のキャッシュが得られ、失敗すれば何も得られません。探鉱のリスクは β=0\beta = 0、Rf=3%R_f = 3\%、生産の率は 15%15\% です。プロジェクトのNPVが負にならない最小の成功確率 pp を求めてください。

✅ 正解です! p≈12.3%p \approx 12.3\% では、2回割り引いたペイオフの期待値が、探鉱の費用1,000万ドルをちょうど埋め合わせます。
❌ 惜しい! それは今日の1,000万ドルと2年後の9,600万ドルを、割り引かずに比べています。比べる前に両方の年を割り引く必要があります。
❌ 惜しい! それは探鉱の年を 15%15\% で割り引いています。探鉱は β=0\beta = 0 なので、1年目には Rf=3%R_f = 3\% を使い、そうすると損益分岐となる確率は下がります。
❌ 惜しい! それは探鉱の年の割引を省いています。1,000万ドルは t=0t = 0 に支払うので、E[V1]E[V_1] はさらに 3%3\% で1年分さかのぼらせる必要があります。
❌ 惜しい! NPV=0\text{NPV} = 0 とおいて pp について解きましょう。
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単位を100万ドルとすると、NPVは

NPV=−10+p×96(1.15)(1.03)\text{NPV} = -10 + \frac{p \times 96}{(1.15)(1.03)}

これをゼロとおいて pp について解きます:

p∗=10×1.15×1.0396=11.84596≈0.123p^{*} = \frac{10 \times 1.15 \times 1.03}{96} = \frac{11.845}{96} \approx 0.123

検算:p∗p^{*} では E[V1]=p∗×961.15=11.8451.15=10.3E[V_1] = p^{*} \times \dfrac{96}{1.15} = \dfrac{11.845}{1.15} = 10.3 で、10.3/1.03=1010.3/1.03 = 10 となり、ちょうど費用に一致します。✓

成功確率が約12.3%以上であれば、このプロジェクトは実行する価値があります。

問4 · 新薬1つのバイオテック企業

条件:新薬を1つだけもつバイオテック企業が、t=1t = 1 に臨床試験が成功したかどうかを知ります(p=0.4p = 0.4)。成功するかどうかは生物学の問題で、市場とは無関係です。株主は十分に分散されたポートフォリオを保有しています。承認されれば、売上のキャッシュフロー(景気と連動します)が t=2t = 2 に入り、15%15\% で価格がつきます。Rf=3%R_f = 3\% です。CFOは「新薬が1つしかないので、試験のリスクは分散できない。1年目には少なくとも 15%15\% が必要だ」と言います。試験の年にどの率を使うべきですか?

✅ 正解です! 価格を決めるのはシステマティック・リスクで、その価格を決めるのは、こうした賭けを数多く保有している会社の投資家です。会社自体が分散されている必要はありません。これは、試験の結果が市場と無関係である(β=0\beta = 0)ことが前提です。もし試験のリスクがシステマティックなら、1年目にはそれ自身のベータに見合った率を使います。
❌ 惜しい! リスクが大きいことと、価格がつくことは別です。市場が報酬を払うのは分散によって消せないリスクだけで、試験の結果は市場と無関係です。
❌ 惜しい! 重要な分散投資は、会社の中ではなく株主のポートフォリオの中で起こります。市場と無関係なリスク(β=0\beta = 0)に求められるのは、会社がどれほど集中していても RfR_f です。
❌ 惜しい! 確率は割引率ではなく、期待値 E[V1]E[V_1] を通じて入ります。各段階の率は、それ自身のベータから決まります。
❌ 惜しい! 試験の結果のベータがいくつかを考えましょう。
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キャッシュフローの率は、そのキャッシュフローのシステマティック・リスクから決まります:r1=Rf+β試験(E[Rm]−Rf)r_1 = R_f + \beta_{\text{試験}}(E[R_m] - R_f)。

試験の成否は生物学によって決まり、市場が上がるか下がるかには左右されないので、β試験=0\beta_{\text{試験}} = 0、r1=Rf=3%r_1 = R_f = 3\% です。会社には新薬が1つしかありませんが、株主は互いに独立な試験を抱える多くの会社を保有しています。株主のポートフォリオ全体では、大数の法則によって試験の結果が平均化されて消えるので、株主はそのリスクを負うことにプレミアムを求めません。

t=2t = 2 の売上のキャッシュフローは景気と連動するので、15%15\% の率のままです。確率 p=0.4p = 0.4 は、期待値 E[V1]=0.4 V1E[V_1] = 0.4\,V_1 を通じてのみ入ります。

この答えは、ベータがゼロであることにかかっています。もし試験の結果が市場と連動するなら、試験の年はそれ自身のベータに見合った率 Rf+β試験(E[Rm]−Rf)R_f + \beta_{\text{試験}}(E[R_m] - R_f) で割り引くことになり、その率が売上の率と等しくなる理由はありません。

石油の例と同じく、2つのリスクには2つの率が必要です。試験の年には Rf=3%R_f = 3\%、売上の年には 15%15\% です。

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