ファイナンス理論 · 第21回 · 動画3 · インタラクティブ教材
規模が収益率を変える:資本予算をNPVのドル額で行う理由
I重要な公式
ポイント:小さな投資家は収益率を動かせないので、収益率で書かれた理論がうまく機能します。企業は、投資する額によってプロジェクトの収益率を動かしてしまいます。ですから企業はプロジェクトをNPVのドル額で判断し、限界的な1ドルごとのNPVが正である間だけ、規模を拡大し続けます。
II収益率を動かすのは誰か
投資家が買っても市場の収益率は変わりませんが、企業自身の投資は、その事業部の収益率を押し下げます。
IIIトランシェを1つずつ
500万ドルずつの各トランシェ(投資の1回分)が生むNPVは、前のトランシェより少なくなります。合計が最大になるのは、NPVが正である最後のトランシェのところです。
IV限界便益 = 限界費用
利益 B(x)−C(x) が最大になるのは、その傾きがゼロになるところ、つまり B′(x∗)=C′(x∗) です。
💡 ここでの曲線は説明用のものです。動画の要点は、企業に B′ と C′ を教えてくれる指数はない、ということです。x∗ を見つけられるほど正確にそれらを測ることこそが、難しいところです。
V確認クイズ
問1 · いくつのトランシェに投資するか
条件:ある事業部は、500万ドルずつのトランシェに分けて規模を拡大でき、どのトランシェも今日投資します。各トランシェのキャッシュフローは1年後に一度だけ入り、1つ目のトランシェは708.5万ドル、2つ目は577.7万ドル、3つ目は534.1万ドル、4つ目は490.5万ドルです。資本コストは 9% です。企業がいくら投資すべきかを求めてください。
✅ 正解です! 最初の2つのトランシェは、NPVをそれぞれ150万ドル、30万ドル加えます。3つ目は10万ドル減らすので、企業は1,000万ドルで止め、NPVの合計は180万ドルになります。
❌ 惜しい! 収益率が最も高いのは1つ目のトランシェですが、2つ目もまだNPVを30万ドル加えます。最も良いトランシェで止めると、NPVが正のドルを投資しないまま残すことになります。
❌ 惜しい! 3つ目のトランシェは500万ドルより多くを返しますが、上回るのは
6.82% だけで、
9% の資本コストに届きません。その現在価値は
5.341/1.09=4.9(単位:100万ドル)なので、NPVは −10万ドルです。
❌ 惜しい! 2,000万ドルでのNPVの合計はまだ正(120万ドル)ですが、1,000万ドルでの180万ドルより低くなります。3つ目と4つ目のトランシェは、それぞれ価値を破壊しているのです。累計ではなく、限界的なトランシェで判断しましょう。
❌ 惜しい! 各トランシェの受取額を
9% で割り引き、その費用500万ドルを引いて、NPVが正のトランシェにだけ投資しましょう。
解答を見る
各トランシェの受取額の現在価値(単位:100万ドル)と、費用500万ドルを引いた後のNPV:
1.097.085=6.5,1.095.777=5.3,1.095.341=4.9,1.094.905=4.5
NPV1=1.5,NPV2=0.3,NPV3=−0.1,NPV4=−0.5
限界的なトランシェのNPVは、企業が多く投資するほど下がり、3つ目のトランシェで負になります。累計は、500万ドルで150万ドル、1,000万ドルで180万ドル、1,500万ドルで170万ドル、2,000万ドルで120万ドルです。
企業は1,000万ドル(2つのトランシェ)を投資すべきで、NPVの合計は180万ドルです。
問2 · 最も高い収益率が、最善の規模とは限らない
条件:ある事業部の1年間のプロジェクトは、投資した全額に対して収益率 r を生みますが、r は企業が選ぶ規模によって変わります。500万ドル投資すれば r=21%、1,000万ドルでは 17%、1,500万ドルでは 15%、2,000万ドルでは 12% です。資本コストは 9% です。NPVを最大にする規模を求めてください。
✅ 正解です! 1,500万ドルでのNPVは約82.6万ドルで、ほかのどの規模よりも大きくなります。収益率は、500万ドルや1,000万ドルのときより低いにもかかわらず、です。
❌ 惜しい! それは
r にこだわった答えです。500万ドルの規模は収益率が最も高いのですが、投じるドルが少ないので、NPV(約55.0万ドル)は1,000万ドルや1,500万ドルのときより小さくなります。
❌ 惜しい! 1,000万ドルから1,500万ドルに増やすと、収益率は
17% から
15% に下がります。しかし追加の500万ドルは、なお
11% を生み、
9% の資本コストを上回ります。NPVは約73.4万ドルから約82.6万ドルに増えるので、企業は1,000万ドルで止めるべきではありません。
❌ 惜しい! どの規模でも収益率は
9% を上回りますが、それは判断の基準ではありません。1,500万ドルから2,000万ドルに増やすと、今日の投資は500万ドル増えますが、翌年の受取額は515万ドルしか増えません。追加のドルに対する収益率は
3% で、NPVは約55.0万ドルに下がります。
❌ 惜しい! 各規模でのドルのNPV
NPV=−x+1.09x(1+r) を計算して、比べましょう。
解答を見る
1年間のプロジェクトでは、NPV=−x+1.09x(1+r)=1.09x(r−0.09) です(x の単位は100万ドル):
1.095(0.12)≈0.550,1.0910(0.08)≈0.734,1.0915(0.06)≈0.826,1.0920(0.03)≈0.550
限界的に見ても、同じ答えになります。1,000万ドルから1,500万ドルに増やすと、今日の投資は500万ドル増え、翌年の受取額は 17.25−11.7=5.55(単位:100万ドル)増えます。追加のドルに対する収益率は 11% で、9% を上回ります。1,500万ドルから2,000万ドルに増やすと、増えるのは 22.4−17.25=5.15 で、収益率はわずか 3% です。
NPVが最大になるのは1,500万ドルです。企業自身の投資が r を動かすので、r だけでは規模を選べません。
問3 · MB = MC となる点を求める
条件:ある事業部に x(単位:100万ドル)を投資すると、便益の現在価値は B(x)=2.4x−0.035x2、費用の現在価値は C(x)=x です(どちらも単位は100万ドル)。
NPVの合計が最大になるのは、どの規模ですか?
x=30 では、NPVの合計と、限界的な1ドルのNPVはいくらですか?
✅ 正解です! MB = MC となるのは2,000万ドルで、そこでのNPVの合計は1,400万ドルです。3,000万ドルでも合計はまだ正ですが、追加の1ドルごとに70セントを失います。損失が表に出ないまま、企業は最適な点を通り過ぎているのです。
❌ 惜しい! それは
B′(x)=0 となる点で、便益だけを最大にする規模です。投資する1ドルごとに1ドルの費用もかかるので、目指すべきは
B′(x)=C′(x)=1 です。
❌ 惜しい! 4,000万ドルでは
B(x)=C(x) となり、NPVの合計はゼロに戻ります。それは、プロジェクトが利益を生まなくなるまで投資するということです。あるいは、
B′(x) を
2.4−0.035x としてしまったのかもしれません。
0.035x2 の導関数は
0.07x です。
❌ 惜しい! 限界便益と限界費用を等しくおきましょう:
B′(x)=2.4−0.07x、
C′(x)=1。
❌ 惜しい! +0.30 は
B′(30)、つまり限界便益だけです。限界的な1ドルのNPVは
B′(30)−C′(30)=0.3−1 です。
❌ 惜しい! それは
x∗=20 での値で、
x=30 での値ではありません。
B(30)−C(30) と
B′(30)−C′(30) を計算しましょう。
❌ 惜しい! 合計には
B(30)−C(30) を、限界的な1ドルには
B′(30)−C′(30) を計算しましょう。
解答を見る
ステップ1:MB = MC。
B′(x)=2.4−0.07x,C′(x)=1⇒2.4−0.07x∗=1⇒x∗=0.071.4=20
Profit(20)=2.4(20)−0.035(400)−20=48−14−20=14
ステップ2:x=30 で計算する。
Profit(30)=72−31.5−30=10.5,B′(30)−C′(30)=2.4−2.1−1=−0.7
最善の規模は2,000万ドル(NPVの合計は1,400万ドル)です。3,000万ドルでもNPVの合計はまだ1,050万ドルですが、限界的な1ドルは $0.70 を失います。損失が表に出る(4,000万ドルで)のを待つ企業は、そのはるか前に最適な点を通り過ぎているのです。
問4 · 投資家と企業
条件:ある退職者が、S&P500のインデックス・ファンドに $50,000 を投じます。ある企業は、1つの事業部の拡大に1億5,000万ドルを投じます。動画が企業の判断を、収益率ではなくNPVのドル額で評価するのはなぜですか?
✅ 正解です! CAPMは、どの投資家も小さく、収益率を与えられたものとして受け入れると仮定しています。1つの事業部に資本を注ぎ込む企業は
r そのものを変えてしまうので、価値をドルで測り、限界的な1ドルのNPVがゼロになるところで止めなければなりません。
❌ 惜しい! 規模の効果は逆向きに働きます。企業が1つの投資機会に投じる額が大きいほど、次の1ドルの収益率は低くなります。最も高い収益率は、ふつう最小の投資額で得られるもので、最大のNPVをもたらすわけではありません。
❌ 惜しい! 動画でも、プロジェクトの割引率を計算する目安としては、株式市場を使っています。企業の中で成り立たなくなるのは、プロジェクトの収益率を与えられたものとして受け入れることです。
❌ 惜しい! 投資全体の収益率が資本コストまで下がったとき、プロジェクト全体では損益がちょうど釣り合うだけです(1年間のプロジェクトなら、NPVの合計はゼロ)。つまり、最初のほうのドルで稼いだNPVは、すべて吐き出されています。最善の規模はそれより手前の、限界的な1ドルのNPVがゼロになるところにあります。
❌ 惜しい! 収益率を動かせるのは誰でしょうか。退職者ですか、企業ですか?
解答を見る
CAPMは、小さな投資家を前提に導かれています。小さな投資家は価格に影響を与えないので、収益率にも影響を与えず、収益率で書かれた理論がうまく機能します。$50,000 では、S&P500は動きません。
1つの事業部に1億5,000万ドルを投資する企業は、そのプロジェクトの収益率を劇的に変えうるもので、投資が増えるにつれて収益率は下がります。ですから、ある規模で計算した収益率は、最善の規模について何も教えてくれません。ドルで測るNPVは、規模を無視しません。企業は、限界的な1ドルのNPVが正である間は投資を続け、限界便益が限界費用に等しくなるところで止めます。
答えは(c)です。選択肢 (d) が述べているのは、NPVの合計がゼロに戻ってしまった点で、最適な点をはるかに過ぎています。
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