ファイナンス理論 · 第21回 · 動画4 · インタラクティブ教材

IRRはプロジェクトの最終利回り:NPVと一致するための四つの条件

I重要な公式

公式名称必要なもの
I0=CF11+IRR+CF2(1+IRR)2+⋯+CFt(1+IRR)tI_0 = \dfrac{CF_1}{1+\text{IRR}} + \dfrac{CF_2}{(1+\text{IRR})^2} + \cdots + \dfrac{CF_t}{(1+\text{IRR})^t}IRR:プロジェクトの最終利回り投資額 I0=−CF0I_0 = -CF_0 と、その後のキャッシュフロー
採択の条件:IRR≥IRR∗\text{採択の条件:} \text{IRR} \ge \text{IRR}^*IRR法(投資型のキャッシュフロー)資本コスト RR に等しく設定したハードルレート IRR∗\text{IRR}^*
採択の条件:IRR<R\text{採択の条件:} \text{IRR} < Rローン型のキャッシュフロー(今日が ++、後が −-)IRR は自分が払う金利なので、低いほど有利
CF0 y2+CF1 y+CF2=0,y=1+IRRCF_0\,y^2 + CF_1\,y + CF_2 = 0,\quad y = 1 + \text{IRR}2期間の IRR の方程式実数の IRR があるには CF12−4 CF0 CF2≥0CF_1^2 - 4\,CF_0\,CF_2 \ge 0 が必要

ポイント:IRR法が NPV と同じ判断を下すのは、(1) キャッシュ・アウトフローが t=0t = 0 の1回だけ、(2) 検討するプロジェクトが1つだけ、(3) 資本の機会費用がどの期でも同じ、(4) IRR∗\text{IRR}^* がその資本コストに等しい、という4つの条件がそろうときです。ローンも、IRR が存在しない場合も、条件 (1) が崩れることから生じます。

II鏡像のキャッシュフロー:IRR は同じ、答えは正反対

投資と、その鏡像であるローンは同じ IRR を持ちますが、IRR法が正しくなりうるのはそのうち片方だけです。

IIIIRR が存在しないとき

2期間なら IRR の方程式は y=1+IRRy = 1 + \text{IRR} についての二次方程式になり、その判別式で IRR が存在するかどうかが決まります。

💡 すべての符号を反転させることは、方程式に −1-1 をかけることにあたります。根は変わらないので、IRR(または IRR がないこと)もそのままですが、NPV による判断は逆になります。

IV確認クイズ

問1 · IRR を求める

条件:あるプロジェクトは、今日 $140 かかり、1年目の終わりに $52、2年目の終わりに $169 を支払います。その IRR を求めてください。

✅ 正解です! 30%30\% で割り引くと、2回の受け取りの今日の価値は 40+100=14040 + 100 = 140 で、支払った価格にぴったり等しくなります。30%30\% がこのプロジェクトの最終利回りです。
❌ 惜しい! (52+169−140)/140/2≈28.93%(52 + 169 - 140)/140/2 \approx 28.93\% は2年間の利益の合計を平均しただけで、それぞれのドルがいつ入ってくるかを無視しています。IRR は、2回の受け取りを割り引いてちょうど 140140 に戻す率です。
❌ 惜しい! (52+169)/140−1≈57.86%(52 + 169)/140 - 1 \approx 57.86\% は2年間の割り引かないトータルの収益率で、1期あたりの率ではありません。
❌ 根の選び方が違います。 二次方程式にはもう1つの根 y=−1314y = -\tfrac{13}{14} がありますが、y=1+IRRy = 1 + \text{IRR} は正でなければなりません。−100%-100\% を下回る率は、金利として何の意味も持ちません。
解答を見る

NPV をゼロとおき、y=1+IRRy = 1 + \text{IRR} と書きます。

−140+52y+169y2=0⟹−140y2+52y+169=0.-140 + \frac{52}{y} + \frac{169}{y^2} = 0 \quad\Longrightarrow\quad -140y^2 + 52y + 169 = 0.

a=−140a = -140、b=52b = 52、c=169c = 169 とすると、

b2−4ac=2,704+94,640=97,344=3122,y=−52±312−280.b^2 - 4ac = 2{,}704 + 94{,}640 = 97{,}344 = 312^2,\qquad y = \frac{-52 \pm 312}{-280}.

根は y=1.3y = 1.3 と y=−1314y = -\tfrac{13}{14} です。率として使えるのは y=1.3y = 1.3 だけなので、IRR=30%\text{IRR} = 30\% です。

検算:521.3+1691.69=40+100=140\dfrac{52}{1.3} + \dfrac{169}{1.69} = 40 + 100 = 140 ✓。このプロジェクトのアウトフローは t=0t = 0 の1回だけなので、資本コストが 6%6\% なら、IRR法の判断(30%>6%30\% > 6\% で採択)は NPV(≈+59.47\approx +59.47)と一致します。

問2 · 供給業者からの融資

条件:供給業者が融資を申し出ています。今日 $175 を受け取り、1年後に $189 を返済します。あなたの資本の機会費用は 6%6\% です。この融資を採択するかどうかを判断してください。

✅ 正解です! 8%8\% という IRR は、あなたが払う金利です。資本コストが 6%6\% のときに 8%8\% で借りれば、価値が失われます。
❌ それは投資の基準をローンに当てはめています。 キャッシュフローは ++ のあとに −- なので、条件 (1) が崩れています。IRR は自分が払う金利で、ローンを受ける価値があるのは IRR<R\text{IRR} < R のときだけです。
❌ 符号を確かめましょう。 今日 175175 を受け取り(++)、後で 189189 を返済します(−-)。符号を逆に書くと、取引を貸し手の側から評価することになります。
❌ 惜しい! IRR は存在します。175=1891+IRR175 = \tfrac{189}{1 + \text{IRR}} から 8%8\% です。ローンは IRR法の向きを逆にするだけで、IRR をなくすわけではありません。
解答を見る

キャッシュフローは CF0=+175CF_0 = +175、CF1=−189CF_1 = -189 で、ローンの形です。

175=1891+IRR⟹IRR=189175−1=8%.175 = \frac{189}{1 + \text{IRR}} \quad\Longrightarrow\quad \text{IRR} = \frac{189}{175} - 1 = 8\%. NPV(割引率)6%=175−1891.06≈175−178.30=−3.30.\text{NPV(割引率)} 6\% = 175 - \frac{189}{1.06} \approx 175 - 178.30 = -3.30.

NPV が負なので棄却です。ローンの基準でも同じ結論になります。採択するのは IRR<R\text{IRR} < R のときだけですが、ここでは 8%>6%8\% > 6\% です。通常の IRR法(8%>6%8\% > 6\% なので採択)では、判断が逆になってしまいます。

問3 · IRR は存在するか

条件:あるプロジェクトのキャッシュフローは CF0=−48CF_0 = -48、CF1=130CF_1 = 130、CF2=−90CF_2 = -90(単位:千ドル)で、資本コストは 6%6\% です。

y=1+IRRy = 1 + \text{IRR} についての IRR の二次方程式の判別式 b2−4acb^2 - 4ac はいくつですか?

企業はどうすべきですか?

✅ 正解です! 判別式が負なので、2つの根はどちらも複素数で、IRR は存在しません。それでも NPV で判断でき、NPV はどの率でもゼロを下回ります。
❌ 符号の間違いです。 4ac=4(−48)(−90)=+17,2804ac = 4(-48)(-90) = +17{,}280 です。負と負の積は正で、それを引きます。
❌ 引く順序を確かめましょう。 判別式は b2−4ac=16,900−17,280b^2 - 4ac = 16{,}900 - 17{,}280 で、逆ではありません。
❌ 惜しい! 16,90016{,}900 は b2b^2 だけです。まだ 4ac4ac の項を引く必要があります。
❌ 判別式を確かめましょう。 a=CF0a = CF_0、b=CF1b = CF_1、c=CF2c = CF_2 を使います。
❌ それは率ではありません。 根は y≈1.354±0.203 iy \approx 1.354 \pm 0.203\,i です。虚部を捨てても、複素数が金利になるわけではありません。
❌ それでも NPV は答えを出します。 実数の根がなければ NPV はゼロを横切らないので、その符号はどの割引率でも同じです。
❌ 惜しい! ローンの基準でも、RR と比べる IRR が必要です。ここでは IRR がないので、代わりに NPV の符号を見ます。
❌ 惜しい! IRR が存在しないとき、NPV はどの率でも同じ符号を保ちます。
解答を見る

−48+130y−90y2=0-48 + \dfrac{130}{y} - \dfrac{90}{y^2} = 0 に y2y^2 をかけます。

−48y2+130y−90=0,a=−48, b=130, c=−90.-48y^2 + 130y - 90 = 0,\qquad a = -48,\ b = 130,\ c = -90. b2−4ac=16,900−4(−48)(−90)=16,900−17,280=−380<0.b^2 - 4ac = 16{,}900 - 4(-48)(-90) = 16{,}900 - 17{,}280 = -380 < 0.

根 y=65±95 i48≈1.354±0.203 iy = \dfrac{65 \pm \sqrt{95}\,i}{48} \approx 1.354 \pm 0.203\,i は複素数なので、IRR はありません。

NPV はゼロに届かないので、どの率でも CF0CF_0 と同じ符号を保ちます。6%6\% では、

NPV=−48+1301.06−901.062≈−48+122.64−80.10=−5.46.\text{NPV} = -48 + \frac{130}{1.06} - \frac{90}{1.06^2} \approx -48 + 122.64 - 80.10 = -5.46.

最も有利な率(約 38.46%38.46\%)でも、NPV は約 −1.06-1.06 にとどまります。棄却です。

問4 · 安全マージンを上乗せしたハードル

条件:ある企業の資本の機会費用は、どの年も 6%6\% です。CFO は「安全マージンとして」IRR のハードルを IRR∗=7.5%\text{IRR}^* = 7.5\% に設定しています。検討中のプロジェクトは1つだけで、今日 $210 かかり、今後3年間、毎年末に $80 を支払います。その IRR は約 6.99%6.99\% です(この率で割り引くと、3回の支払いの今日の価値は約 210210 になります)。

正しい判断はどれですか?

4つの条件のうち、崩れているのはどれですか?

✅ 正解です! 条件 (1)〜(3) は成り立っています。上乗せしたハードルが条件 (4) を崩し、価値を生むプロジェクトを退けてしまいます。
❌ それは上乗せした基準が出す答えです。 7.5%7.5\% と比べるとプロジェクトは棄却されますが、このプロジェクトは、資本に実際にかかるコストの 6%6\% より多く稼ぎます。
❌ 割引率が違います。 NPV は資本の機会費用 6%6\% で割り引きます。7.5%7.5\% のハードルは恣意的な基準値です。
❌ 常にではありません。 両者が一致するのは4つの条件がすべてそろうときだけで、ここではハードルが資本コストと違っています。
❌ 惜しい! 3回の支払いを資本の機会費用で割り引きましょう。
❌ その条件は成り立っています。 アウトフローは t=0t = 0 の1回だけ、プロジェクトは1つ、資本コストはどの年も 6%6\% です。IRR∗\text{IRR}^* がどう設定されたかを見ましょう。
解答を見る
NPV(割引率)6%=−210+801.06+801.062+801.063≈−210+213.84=+3.84>0⟹採択.\text{NPV(割引率)} 6\% = -210 + \frac{80}{1.06} + \frac{80}{1.06^2} + \frac{80}{1.06^3} \approx -210 + 213.84 = +3.84 > 0 \quad\Longrightarrow\quad \text{採択}.

条件を確かめます。(1) アウトフローは t=0t = 0 の1回だけ ✓、(2) プロジェクトは1つ ✓、(3) どの年も 6%6\% ✓、(4) IRR∗=7.5%≠R=6%\text{IRR}^* = 7.5\% \ne R = 6\% ✗。

ハードルを IRR∗=6%\text{IRR}^* = 6\% に設定していれば、IRR法は 6.99%>6%6.99\% > 6\% で採択となり、NPV と一致します。正の NPV を持つプロジェクトをこの基準が棄却してしまうのは、安全マージンのせいです。

正解数:0 / 4