ファイナンス理論 · 第23回 · 動画2 · インタラクティブ教材

誰が取引するかで市場の効率性が決まる:S&P系列相関の百年

I重要な公式

公式名称必要なもの
ρ1=Cov(Rt, Rt−1)Var(Rt)\rho_1 = \dfrac{\mathrm{Cov}(R_t,\, R_{t-1})}{\mathrm{Var}(R_t)}一次の自己相関今月のリターンと先月のリターン
Cov(Rt,Rt−1)=E[(Rt−μ)(Rt−1−μ)]\mathrm{Cov}(R_t, R_{t-1}) = \mathsf{E}[(R_t - \mu)(R_{t-1} - \mu)],  Var(Rt)=E[(Rt−μ)2]\ \mathrm{Var}(R_t) = \mathsf{E}[(R_t - \mu)^2]偏差から組み立てる平均リターン μ=E[Rt]\mu = \mathsf{E}[R_t]
(Rt+c)−(μ+c)=Rt−μ(R_t + c) - (\mu + c) = R_t - \mu一定の平均は消える毎月同じだけのシフト cc
ρ^1=∑t=2n(Rt−Rˉ)(Rt−1−Rˉ)∑t=1n(Rt−Rˉ)2\hat\rho_1 = \dfrac{\sum_{t=2}^{n} (R_t - \bar R)(R_{t-1} - \bar R)}{\sum_{t=1}^{n} (R_t - \bar R)^2}1つの窓での推定値nn か月分のリターン(たとえば5年なら n=60n = 60)

ポイント:ランダムウォークは、どの窓でも ρ1≈0\rho_1 \approx 0 を予測します。ところが、S&P総合指数(1871〜2003年)の5年ローリングの系列相関は大きく揺れ動きます。1800年代後半の40〜50%から、1990年代の急上昇を経て、2003年までの低い水準へ。効率性は循環し、それを決めるのは誰が取引しているかです。

II可視化1 — 1つの窓に1つの数字

固定した窓をリターンに沿ってずらしていくと、1つの自己相関が、自己相関の歴史に変わります。

💡 4つの時代に設定した値 0.30、−0.05、0.30、0.15 は私たちが選んだものです。動画の棒はシラーのS&Pデータによるもので、同じような上昇と下降を示し、ゼロに向かう着実な傾向は見られません。

III可視化2 — プラスの平均リターンは相関を生むか?

毎月に同じ定数を足すと、平均が動き、価格の上昇トレンドは急になりますが、どの偏差も変わりません。

IV確認クイズ

問1 · 相関から共分散へ

条件: 60か月の窓で、月次リターンの標準偏差は σ=5%\sigma = 5\%、一次の自己相関は ρ1=−0.05\rho_1 = -0.05 です。Cov(Rt,Rt−1)\mathrm{Cov}(R_t, R_{t-1}) を、パーセントの二乗を単位として求めてください。

✅ 正解です! Cov=ρ1⋅Var=−0.05×25=−1.25\mathrm{Cov} = \rho_1 \cdot \mathrm{Var} = -0.05 \times 25 = -1.25。小さな負の共分散で、ランダムウォークのゼロに近い値です。
❌ 惜しいですが… ρ1\rho_1 は共分散を分散 σ2=25\sigma^2 = 25 で割ったもので、σ=5\sigma = 5 で割ったものではありません。−0.05-0.05 に 2525 をかけましょう。
❌ 符号を確かめましょう。 分母の分散は正なので、共分散の符号は ρ1\rho_1 の符号と同じです。
❌ 惜しい! それは Var/ρ1=25/(−0.05)\mathrm{Var}/\rho_1 = 25 / (-0.05) です。定義から Cov=ρ1×Var\mathrm{Cov} = \rho_1 \times \mathrm{Var} になります。
解答を見る

分散は標準偏差の二乗で、単位はパーセントの二乗です:

Var(Rt)=σ2=52=25\mathrm{Var}(R_t) = \sigma^2 = 5^2 = 25

定義 ρ1=Cov(Rt,Rt−1)/Var(Rt)\rho_1 = \mathrm{Cov}(R_t, R_{t-1}) / \mathrm{Var}(R_t) を変形します:

Cov(Rt,Rt−1)=ρ1⋅Var(Rt)=−0.05×25=−1.25\mathrm{Cov}(R_t, R_{t-1}) = \rho_1 \cdot \mathrm{Var}(R_t) = -0.05 \times 25 = -1.25

共分散は −1.25-1.25(パーセントの二乗)です。

問2 · レバレッジと系列相関

条件: 120か月の窓で、指数の月次リターン RtR_t の一次の自己相関は ρ1\rho_1 です。レバレッジをかけたファンドは、毎月 Rt′=2Rt−0.4%R'_t = 2R_t - 0.4\% を得ます(指数のリターンの2倍から、一定の0.4%の資金調達コストを引いたもの)。ファンドの一次の自己相関 ρ1′\rho'_1 はどうなりますか?

✅ 正解です! 一定のコストはどの偏差でも打ち消し合い、係数2は分子と分母を同じように 22=42^2 = 4 倍します。
❌ 惜しい! 各偏差が2倍になるので、共分散は 2×2=42 \times 2 = 4 倍になり、分散も同じく4倍になります。比は変わりません。
❌ 惜しいですが… 共分散はたしかに4倍になりますが、分母の分散も4倍になります:Var(2Rt)=4 Var(Rt)\mathrm{Var}(2R_t) = 4\,\mathrm{Var}(R_t)。
❌ 惜しい! 毎月から差し引かれる定数は、平均を同じだけずらすので、偏差 Rt′−μ′R'_t - \mu' には決して影響しません。
解答を見る

ファンドの平均は μ′=2μ−0.4%\mu' = 2\mu - 0.4\% なので、各偏差は次のとおりです。

Rt′−μ′=(2Rt−0.4%)−(2μ−0.4%)=2(Rt−μ)R'_t - \mu' = (2R_t - 0.4\%) - (2\mu - 0.4\%) = 2(R_t - \mu)

共分散と分散は、どちらも4倍になります:

Cov(Rt′,Rt−1′)=E[2(Rt−μ)⋅2(Rt−1−μ)]=4 Cov(Rt,Rt−1),Var(Rt′)=4 Var(Rt)\mathrm{Cov}(R'_t, R'_{t-1}) = \mathsf{E}[2(R_t - \mu)\cdot 2(R_{t-1} - \mu)] = 4\,\mathrm{Cov}(R_t, R_{t-1}), \qquad \mathrm{Var}(R'_t) = 4\,\mathrm{Var}(R_t) ρ1′=4 Cov(Rt,Rt−1)4 Var(Rt)=ρ1\rho'_1 = \frac{4\,\mathrm{Cov}(R_t, R_{t-1})}{4\,\mathrm{Var}(R_t)} = \rho_1

レバレッジによって、ファンドのリターンの振れ幅は2倍になりますが、予測しやすくはなりません:ρ1′=ρ1\rho'_1 = \rho_1。

問3 · 窓を先へずらす

条件: 連続する7か月の月次リターン(%)は 11、−1-1、22、44、33、33、11 です。重要な公式にある1つの窓の公式を n=6n = 6 で使って、窓A(1〜6か月目)の ρ^1\hat\rho_1 を推定し、次に窓を1か月先へずらして、窓B(2〜7か月目)でも推定します。両方の推定値を求めてください。

✅ 正解です! 6/16=0.3756/16 = 0.375、次に 2/16=0.1252/16 = 0.125 です。窓を1か月動かしただけで、推定値は3分の1になります。だから短い窓の棒は、ひどくばらつくのです。
❌ それは平均の仕業です。 26/4026/40 と 30/4030/40 は生のリターンを使っています。まず各月から窓の平均(どちらも2%)を引きましょう。そうしないと、プラスの平均が推定値を膨らませます。
❌ 惜しいですが… 6/156/15 と 2/72/7 は、各窓の最初の月を分母から落としています。二乗和は6か月すべてにわたってとります。
❌ 惜しい! 窓Bは1か月目を7か月目と入れ替えるので、両端の隣り合う積が変わります。偏差と積を計算し直しましょう。
解答を見る

窓A(1〜6か月目):Rˉ=(1−1+2+4+3+3)/6=12/6=2\bar R = (1 - 1 + 2 + 4 + 3 + 3)/6 = 12/6 = 2 なので、偏差は −1-1、−3-3、00、22、11、11 です。

積:(−3)(−1)+(0)(−3)+(2)(0)+(1)(2)+(1)(1)=3+0+0+2+1=6\text{積:} (-3)(-1) + (0)(-3) + (2)(0) + (1)(2) + (1)(1) = 3 + 0 + 0 + 2 + 1 = 6 二乗:1+9+0+4+1+1=16,ρ^1=616=0.375\text{二乗:} 1 + 9 + 0 + 4 + 1 + 1 = 16, \qquad \hat\rho_1 = \frac{6}{16} = 0.375

窓B(2〜7か月目):Rˉ=(−1+2+4+3+3+1)/6=12/6=2\bar R = (-1 + 2 + 4 + 3 + 3 + 1)/6 = 12/6 = 2 なので、偏差は −3-3、00、22、11、11、−1-1 です。

積:(0)(−3)+(2)(0)+(1)(2)+(1)(1)+(−1)(1)=0+0+2+1−1=2\text{積:} (0)(-3) + (2)(0) + (1)(2) + (1)(1) + (-1)(1) = 0 + 0 + 2 + 1 - 1 = 2 二乗:9+0+4+1+1+1=16,ρ^1=216=0.125\text{二乗:} 9 + 0 + 4 + 1 + 1 + 1 = 16, \qquad \hat\rho_1 = \frac{2}{16} = 0.125

推定値は窓Aで 0.3750.375、窓Bで 0.1250.125 です。6か月のうち5か月は共通なのに、推定値は3分の2も下がります。これほど月数が少ないと、どの推定値もばらつきが非常に大きくなります。だからこそ、動画の図は60か月の窓を使っているのです。

問4 · 循環を読む

条件: ある市場の120か月ローリングの系列相関は、順に続く3つの10年間で、期間Aが 0.300.30、期間Bが −0.05-0.05、期間Cが 0.150.15 でした。動画の議論に合う解釈はどれですか?

✅ 正解です! 効率性は、ρ1\rho_1 がゼロにどれだけ近いかで読み取ります。∣−0.05∣|-0.05| が最も小さい値です。期間Cでふたたび上がったのは循環で、それを決めるのは取引する人々の顔ぶれです。
❌ 惜しい! 従来の見方が予測するのは、ゼロまで下がってそこにとどまる動きです。−0.05-0.05 から 0.150.15 へ戻る上昇は、むしろ動画が説明する循環です。
❌ 惜しい! 何かをかけ合わせる前に、すべてのリターンから平均が引かれます。ですから、平均リターンが高くても系列相関は生まれません。
❌ 物差しを確かめましょう。 ランダムウォークでは ρ1≈0\rho_1 \approx 0 です。予測可能性を測るのは符号ではなくゼロからの距離で、−0.05-0.05 は3つの中で最もゼロに近い値です。
解答を見る

ランダムウォーク仮説のもとでは、一次の自己相関は統計的にゼロと区別できません。ですから、効率性は ∣ρ1∣|\rho_1| で判断します:

∣0.30∣>∣0.15∣>∣−0.05∣|0.30| > |0.15| > |-0.05|

期間Bが最も効率的で、期間Aが最も効率的でありません。この系列は下がってから上がっているので、従来の見方のような、ゼロへの着実な低下ではありません。動画は、こうした揺れを、誰が取引しているかに帰しています。洗練された投資家は相関を利用し、競争によって消していきます(1990年代のあとのように)。一方、個人投資家であふれた市場(1990年代のように)では、相関がより多く現れます。一定の平均リターンは ρ1\rho_1 から消えるので、ある10年間の平均リターンでは0.30を説明できません。

正解数:0 / 4