ファイナンス理論 · 第3回 · 動画1 · インタラクティブ教材
| 公式 | 名称 | 説明 |
|---|---|---|
| 固定為替レート | どの日付でも同じレート がすべてのキャッシュフローにかかるので、和の外にくくり出せます。 なので、符号は変わりません | |
| 円の割引係数 | 時点 の1円の今日の価格です。ドルを経由して求めます。ドルの割引係数と一致するのは のときだけです | |
| 既知の為替レートの経路 | それぞれの通貨をその通貨自身の割引係数で割り引けば、 は項ごとに打ち消し合い、今日のレートが価値全体を何倍かにするだけになります | |
| 2種類の請求権者 | 所有者は株主資本を持ち、取引相手はペーパー、つまり借用証書などの債務を持ちます。救済は請求権ごとに評価します |
ポイント:通貨は価値を何倍かにする係数であって、符号を変えるものではありません。符号の反転が起きるのは、ある通貨のキャッシュフローを別の通貨の割引係数と混ぜたときだけです。しかも固定レートのもとでは なので、この間違いは跡を残しません。
時点 の1円には、今日の時点で独自の価格があります。1円をドル経由で換算して求めましょう。
💡 市場で通用する価格はこれしかありません。時点 の1円をほかの値で評価すると、一方の通貨で借りてもう一方の通貨で貸すことで、リスクなしに利益が出せてしまいます。
このプロジェクトの今日の価値は10万ドルです。同じキャッシュフローが、円で数えると損失になることはあるでしょうか?
💡 ここまでの話はすべて、不確実性がない場合のものです。将来が不確実になると、為替レートはリスクのもう1つの要素になり、別に扱わなければなりません。
両社の株は暴落し、市場のほかの部分は上昇しました。管理下への移行が守ったのは、どの請求権だったのでしょうか?
問1 · まったく動かない為替レート
条件:不確実性がない状況で、あるプロジェクトの今日の価値が40万ドルで、為替レートはどの日付でも1ドル120円に固定されています。このプロジェクトの今日の円での価値を求めてください。
ドルでの価値を割引係数を使って書き、すべてのキャッシュフローを1つのレート で換算します。
レートがまったく動かないので、両方の通貨に同じ割引係数 が使えます。だから をかっこの外に出せるのです。、 百万ドルなので、
また、為替レートは常に正なので、
固定レートで符号がひっくり返ることはありません。変わるのは、価値を表す単位だけです。
問2 · 円のための割引係数
条件:時点2のドルの割引係数は で、為替レートは 、 円/ドルという既知の経路をたどります。円の割引係数 を求めてください。
時点2の1円の価格を、ドルを経由して求めます。
時点2では、1円は ドルです。そのドルの今日の価値は ドルで、今日のドルは で換算されます。
向きの確認: は、時点2のほうが1ドルあたりの円が多い、つまりその時点では円が安くなっているとわかっている、ということです。ですから時点2の1円の今日の円での価値は、 より小さくなるはずです。実際、 です。
もしレートが固定なら で、2つの割引係数は一致します。ドルの割引係数を使い回す間違いが、固定レートのもとでは表に出ないのはこのためです。
問3 · 同じプロジェクトを円で数える
条件:あるプロジェクトは、時点0、1、2に 、、 百万ドルを支払い、ドルの割引係数は 、 です。為替レートは、時点0と1では1ドル150円、時点2では1ドル125円という既知の経路をたどるので、キャッシュフローは百万円単位で 、、 になります。
時点2の円の割引係数はいくつですか?
このプロジェクトの今日の価値は、百万円単位でいくらですか?
ステップ1:ドルでの価値。
ステップ2:円の割引係数。時点1まではレートが動いていないので、その割引係数は変わりません。時点2ではレートが動いています。
ステップ3:円での価値。
そして で、こうならなければなりません。各項で がキャッシュフローと割引係数のあいだで打ち消し合い、ドルでの価値全体に がかかる形だけが残るからです。
ついやってしまう間違い。円のキャッシュフローをドルの割引係数で割り引くと、
となり、2,500万円の損失を出すプロジェクトに見えてしまいます。この符号の反転は実在しません。ある通貨のキャッシュフローを、別の通貨の割引係数と組み合わせたせいで生まれたものです。ほかの誤答は、違う日付のレートで換算した場合()や、まったく換算しなかった場合( はドルのまま)に出てきます。
問4 · 守られたのはどの請求権か
条件:2008年9月、ある金融会社が、ファニーメイのコマーシャル・ペーパー(短期の借用証書)を3億ドル、ファニーメイの普通株を5,000万ドル保有しています。連邦政府がファニーメイを管理下に置き、その株はほとんど無価値になり、株式市場全体は上昇します。
この金融会社の2つの保有資産はどうなりますか?
S&P500に入っているある製造業者は、このペーパーをまったく持っていません。そのニュースでこの会社の株が上がったのはなぜですか?
請求権ごとに。ファニーメイの請求権者は2つの層に分かれます。所有者は株主資本を持ち、それは損失を吸収したあとでほとんど価値がありませんでした。取引相手はペーパー、つまりコマーシャル・ペーパーなどの債務を持ち、政府が後ろ盾になったのはこのペーパーでした。ですから株主は損をし、ペーパーは全額守られました。救済が守ったのはペーパーであって、株ではなかったのです。金融会社の3億ドルは残り、5,000万ドルの株は失われます。
ほかの企業がそろって上がった理由。S&P500の企業の多くは、このペーパーをまったく持っていなかったのに株価が上がりました。ですから、その説明が自社の保有資産であるはずはありません。もしファニーメイとフレディマックの破綻が容認されていたら、そのペーパーは無価値になり、それを持つ金融機関が損失をかぶり、そうした企業が苦境に陥り、打撃は企業から企業へと市場全体に広がっていったでしょう。管理下への移行はその連鎖を断ち切り、市場はそれを、事業環境が安定し連鎖的な破綻の可能性が消えた、と読んだのです。
この読みの限界。それで誰もが安全になったわけではありません。大手の住宅ローン貸し手であり、債務担保証券(CDO)、つまり債務をプールして組み立てた証券の大口投資家でもあったリーマン・ブラザーズは、救済のあとも強い圧力にさらされ続け、管理下への移行の発表から8日後の2008年9月15日に破産を申請しました。
正解数:0 / 4