ファイナンス理論 · 第3回 · 動画9 · インタラクティブ教材

銀行はなぜ複利にするのか:APR・実効年利率・連続複利

I重要な公式

公式名称説明
rn\dfrac{r}{n}1期あたりの金利年率表示金利(APR)rr を、1年に nn 回ある利息の計上日に割り振る。r=6%r = 6\%、n=12n = 12 なら月 0.5%0.5\%
rEAR≡(1+rn)n−1r_{\text{EAR}} \equiv \left(1 + \dfrac{r}{n}\right)^{n} - 1実効年利率各期の利息がその年の残りの期間にさらに利息を生むとして、1年間に実際に得られる収益率
(1+r6)2=1.10  ⟹  r6=1.10−1≈4.881%(1 + r_{6})^{2} = 1.10 \;\Longrightarrow\; r_{6} = \sqrt{1.10} - 1 \approx 4.881\%預け直しても得にならない半年金利何度引き出して預け直しても、預金者の収益がちょうど 10%10\% になる金利。複利の慣行が、この金利の代わりになる
rEAR=lim⁡n→∞(1+rn)n−1=er−1r_{\text{EAR}} = \lim\limits_{n \to \infty}\left(1 + \dfrac{r}{n}\right)^{n} - 1 = e^{r} - 1連続複利どの頻度でも超えられない上限。r=10%r = 10\% なら e0.10−1≈10.517%e^{0.10} - 1 \approx 10.517\%

ポイント:APR が決めるのは1期あたりの金利 r/nr/n で、1年間の収益率ではありません。年率を期間で按分すると、預金者は引き出して預け直すことで、提示された金利より多く受け取れてしまいます。複利は、nn 期の予定をあらかじめ口座に組み込んで、この抜け穴をふさぐ慣行です。銀行にお金を貸している預金者には有利に働き、借り手はまったく同じ理由で利息についた利息を支払うことになります。

II按分された金利を出し抜く

途中で引き出し、その場で預け直せば、預金者は提示された 10%10\% を上回れるでしょうか。

💡 銀行はこの選択を預金者に任せません。1年に nn 回、r/nr/n で利息を計上します。これで nn 回の預け入れの予定が口座に組み込まれるので、誰も支店に通って利息を集める必要がありません。

III複利の頻度を増やすと、どこで止まるか

頻度を一段上げるたびに増える分は前の段より小さくなり、その増加は er−1e^{r} - 1 で止まります。

IVAPR は頻度がなければ不完全

提示された四つの APR のうち、最も高いものが1年間で最も少なく払い、最も低いものがほぼ最も多く払います。

💡 預金口座では、実効年利率は年換算利回り(APY)として開示され、法律によって複利の頻度が反映されます。ローンで開示が義務づけられているのは APR だけなので、明示されないまま残るのは借り手が実際に負担する年利率のほうです。

V確認クイズ

問1 · APR から EAR へ

条件:ある普通預金は、APR r=12%r = 12\%、四半期ごとの複利と提示しています。その実効年利率を求めてください。

✅ 正解です! (1.03)4=1.1255088(1.03)^{4} = 1.1255088 なので、1年間の収益率は 12.5509%12.5509\% です。APR を上回る 0.550.55 パーセントポイントは、最初の三つの四半期の利息が生んだ利息です。
❌ それは APR です。 複利を含まない提示金利です。最初の四半期の利息は3月に計上され、残りの9か月間に利息を生みます。
❌ それは r/nr/n です。 3%3\% は四半期1回分の金利です。四半期を4回重ねると 12%12\% より大きくなり、3%3\% にはなりません。
❌ 惜しい!それは n=12n = 12 の場合です。 (1+0.12/12)12−1=12.6825%(1 + 0.12/12)^{12} - 1 = 12.6825\% は月複利です。四半期ごとなら1年は4期です。
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四半期ごとの複利なので n=4n = 4 です。各四半期には、1期あたりの金利

rn=12%4=3%\frac{r}{n} = \frac{12\%}{4} = 3\%

が支払われます。1年間そのまま置いておいた1ドルには、四半期ごとに1回ずつこれがかけられます。

rEAR=(1+0.124)4−1=(1.03)4−1=1.1255088−1=12.5509%r_{\text{EAR}} = \left(1 + \frac{0.12}{4}\right)^{4} - 1 = (1.03)^{4} - 1 = 1.1255088 - 1 = 12.5509\%

小数第2位までで 12.55%12.55\% です。差の大きさを確かめます。$1,000 に対する 12%12\% の単利は $120.00 ですが、四半期ごとの複利では $125.51 です。余分な $5.51 は、最初の3回の四半期の利息が生んだ利息です。

問2 · 按分すると銀行はいくら損するか

条件:ある銀行は年 12%12\% を提示して期間で按分し、6か月の預け入れには 6%6\% を払います。ある預金者が $5,000 を預け、6か月後に残高を全額引き出して、その場で預け直します。年末の残高が提示どおりの $5,600 よりいくら多いかを求めてください。

✅ 正解です! 後半の半年は $5,000 ではなく $5,300 に 6%6\% がつきます。余分な $18.00 は、前半の利息 $300 の 6%6\% です。
❌ 元本が変わっています。 6か月後に預け直すのは $5,300 なので、2回目の 6%6\% は1回目より大きな残高にかかります。
❌ それは利息についた利息を2倍にしています。 2回目の 6%6\% が余分につくのは前半の半年に得た $300 だけで、$300 の 6%6\% は $18.00 です。
❌ それは元本に対する半年分の利息全体です。 $300 は最初の6か月に支払われる額です。問われているのは、利息が生んだ利息の部分だけです。
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6か月の預け入れにはそれぞれ按分された金利 12%/2=6%12\%/2 = 6\% が払われるので、残高には2回かけ算が行われます。

$5,000×1.06=$5,300$5,300×1.06=$5,618.00\text{\textdollar}5{,}000 \times 1.06 = \text{\textdollar}5{,}300 \qquad \text{\textdollar}5{,}300 \times 1.06 = \text{\textdollar}5{,}618.00

提示された 12%12\% なら $5,600.00 なので、

$5,618.00−$5,600.00=$18.00=6%×$300\text{\textdollar}5{,}618.00 - \text{\textdollar}5{,}600.00 = \text{\textdollar}18.00 = 6\% \times \text{\textdollar}300

実際の年間収益率は (1.06)2−1=12.36%(1.06)^{2} - 1 = 12.36\% で、12%12\% ではありません。銀行がこの差をなくすには、預け直しても得にならない半年金利 1.12−1≈5.830%\sqrt{1.12} - 1 \approx 5.830\% を払うか、実際に使われている慣行のとおり、12%12\% を年2回の複利として提示し、12.36%12.36\% を払うことを認めるかのどちらかです。

問3 · 二つの提示金利を比べる

条件:P銀行は APR 6.00%6.00\%・月複利、Q銀行は APR 5.95%5.95\%・日次複利と提示しています。1年間でどちらの口座が多く払うか、またその勝った口座の実効年利率を求めてください。

1年間でどちらの口座が多く払いますか。

勝った口座の実効年利率はいくらですか。

✅ 正解です! P銀行の収益率は (1.005)12−1=6.1678%(1.005)^{12} - 1 = 6.1678\% で、Q銀行の 6.1301%6.1301\% を上回ります。APR の 0.050.05 ポイントの差のほうが、毎月から毎日の計上に変わる効果より大きいのです。
❌ ここでは頻度の効果のほうが小さいのです。 APR 6%6\% で月複利から日次複利に変えても、増えるのは 0.01530.0153 パーセントポイントだけです。一方、P銀行の APR はもともと 0.050.05 ポイント高いのです。
❌ 約0.04ポイントの差があります。 0.03770.0377 パーセントポイント、つまり残高 $10,000 なら年 $3.77 です。
❌ それはQ銀行の金利です。 6.1301%6.1301\% は 5.95%5.95\% を日次複利にしたものです。問われているのは勝った口座の金利で、P銀行の (1.005)12−1(1.005)^{12} - 1 のほうが高いのです。
❌ 指数を確かめましょう。 月複利とは 0.06/12=0.5%0.06/12 = 0.5\% の期間が12回あることで、3%3\% の期間が2回でも、APR そのものでもありません。
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それぞれの提示金利を、比較できる一つの数、つまり実効年利率に換算する必要があります。

P銀行:r=6.00%r = 6.00\%、n=12n = 12 なので、r/n=0.5%r/n = 0.5\%(月あたり)です。

rEAR=(1.005)12−1=1.0616778−1=6.1678%r_{\text{EAR}} = (1.005)^{12} - 1 = 1.0616778 - 1 = 6.1678\%

Q銀行:r=5.95%r = 5.95\%、n=365n = 365 なので、r/n≈0.0163%r/n \approx 0.0163\%(1日あたり)です。

rEAR=(1+0.0595365)365−1=1.0613006−1=6.1301%r_{\text{EAR}} = \left(1 + \frac{0.0595}{365}\right)^{365} - 1 = 1.0613006 - 1 = 6.1301\%

P銀行が 0.03770.0377 パーセントポイント上回り、$10,000 なら年 $3.77 の差です。日次複利には確かに価値がありますが、この金利水準では月複利より約 0.0150.015 パーセントポイント多いだけで、APR の 0.050.05 ポイントの差のほうがはるかに大きいのです。どちらの順位も、APR だけからは読み取れません。

問4 · 上限

条件:ある短期の貸し手は APR r=18%r = 18\% を提示し、利息を連続的に計算します。つまり n→∞n \to \infty です。実効年利率と、同じ APR を日次複利にした場合との比較を求めてください。

実効年利率はいくらですか。

同じ APR 18%18\% を代わりに日次複利にすると、実効年利率はどうなりますか。

✅ 正解です! e0.18−1=19.7217%e^{0.18} - 1 = 19.7217\% で、日次複利では 19.7164%19.7164\% です。(1+r/n)n(1 + r/n)^{n} は下から ere^{r} に近づくので、極限に約0.005ポイント届きません。
❌ それは APR です。 表示上の金利です。連続複利ではあらゆる瞬間に利息がつくので、1年間の収益はそれより多くなります。
❌ それは月複利です。 (1+0.18/12)12−1=19.5618%(1 + 0.18/12)^{12} - 1 = 19.5618\% です。nn を無限大にすると、さらに 0.160.16 ポイント加わります。
❌ 元本を引きましょう。 e0.18=1.1972e^{0.18} = 1.1972 は1ドルが何倍になるかを表す係数です。収益率はその係数から 11 を引いたものです。
❌ er−1e^{r} - 1 は上限です。 有限の nn ではどれもそこに届きません。どんな複利の頻度でも、実効年利率がこの上限を超えたり、APR を下回ったりすることはありません。
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あらゆる瞬間に複利計算するのは、nn を限りなく大きくしたときの、この慣行の極限です。

rEAR=lim⁡n→∞(1+0.18n)n−1=e0.18−1=1.1972174−1=19.7217%r_{\text{EAR}} = \lim_{n \to \infty}\left(1 + \frac{0.18}{n}\right)^{n} - 1 = e^{0.18} - 1 = 1.1972174 - 1 = 19.7217\%

日次複利は有限の nn なので、そのわずかに下に来ます。

(1+0.18365)365−1=19.7164%\left(1 + \frac{0.18}{365}\right)^{365} - 1 = 19.7164\%

差は 0.00530.0053 パーセントポイントで、$1,000 の借入なら年に約5セントです(連続複利で $1,197.22、日次複利で $1,197.16)。月複利なら 19.5618%19.5618\%、週複利なら 19.6845%19.6845\% です。この数列は er−1e^{r} - 1 に向かって増えますが、決して届きません。だからこそ、複利の頻度を増やせば必ず何かは加わりますが、それ以上になることはないのです。

正解数:0 / 4