ファイナンス理論 · 第4回 · 動画3 · インタラクティブ教材

最後に並ぶ者:弁済の順位と、企業価値がゼロになる理由

I重要な関係式

関係式名称説明
E=max⁡(V−D,  0)E = \max(V - D,\; 0)株式は残余請求権株主が受け取るのは、資産の価値 VV から債権者への債務 DD をすべて差し引いた残りで、マイナスになることはありません。最後の層には、上の層が必要としなかった分からしか支払われません
S=min⁡(V,  DS)S = \min(V,\; D_S)
J=min⁡(max⁡(V−DS,  0),  DJ)J = \min\big(\max(V - D_S,\; 0),\; D_J\big)
弁済のウォーターフォールシニアの請求権 DSD_S が満額まで満たされてはじめて、ジュニアの請求権 DJD_J に1ドルでも届きます。株主はその両方の下に立ちます
R=P1−P0P0R = \dfrac{P_1 - P_0}{P_0}保有の収益率(期末の価値 − 期首の価値)÷ 期首の価値
R=0−6262=−100%R = \dfrac{0 - 62}{62} = -100\%リーマンの株式(2007年末〜2008年9月)期末の価値をちょうどゼロとすると極限のケースになり、E≥0E \ge 0 によって −100%-100\% が下限になります。株主が失いうるのは出資した分までです

ポイント:会社の内側では何も変わっていませんでした。投資銀行の担当者も、トレーダーも、資産運用の担当者も、申請の翌週は前の週と変わらず有能でした。裁判所が守らせるのは弁済の順位です。そもそも誰かが支払いを受けられるかどうかは、誰も知らなかった1つの数字、つまり資産の価値にかかっています。そして株式をゼロにしたのは、取引相手がもうこの会社と取引しようとしなくなったことでした。

II弁済の順位

すべては、誰も知らなかった1つの数字にかかっています。資産にどれだけの価値があるのか、です。

III$62からゼロへ

ほかの場合と同じように収益率を計算します。(期末の価値 − 期首の価値)÷ 期首の価値です。

IV取引相手、懸念、そして事業の価値

誰も取引しようとしない会社は、もうビジネスではありません。そしてそのビジネスの価値はゼロになります。

💡 ベア・スターンズのパニックが、大きなエクスポージャーが実際に期限を迎えたからではなく噂によって引き起こされたというのは、アンドリュー・ローによるこの出来事の見立てであって、確立された事実ではありません。とはいえ、その下にあった損傷は本物でした。サブプライム・ローン、債務担保証券(CDO)、クレジット・デフォルト・スワップに投資していたベアのヘッジファンドは、2007年夏に破綻していました。

V確認クイズ

問1 · 保有の収益率

条件:リーマンの株価は2007年末に1株$62で引けました。9か月後、その株式は実質的に無価値になっていました。期末の価値をちょうどゼロとみなすと、この保有の収益率はいくらですか?

✅ 正解です! 0−6262=−1\frac{0 - 62}{62} = -1、つまり出資分のすべてです。しかも株式は max⁡(V−D,0)\max(V - D, 0) なので、どんな株価でも収益率がそれより下がることはありません。
❌ それは収益率ではなく、ドルでの下落額です。 保有の価値は$62下がりましたが、収益率はその下落額を投資した額で割ります。−62/62=−1-62 / 62 = -1 であって、−0.62-0.62 ではありません。
❌ 引き算の向きが逆です。 期末 − 期首、つまり 0−620 - 62 であって、62−062 - 0 ではありません。収益率がプラスなら、株主は最後に豊かになっていたことになります。
❌ 計算が成り立たなくなるとすれば分母のせいですが、分母は期首の価値です。 その値は$62でゼロではないので、商はきちんと定義されます。
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定義に P0=62P_0 = 62、P1=0P_1 = 0 を当てはめます:

R=P1−P0P0=0−6262=−6262=−1=−100%R = \frac{P_1 - P_0}{P_0} = \frac{0 - 62}{62} = \frac{-62}{62} = -1 = -100\%

押さえておきたい点が2つあります。1つ目に、期末の価値は厳密にゼロではなく実質的にゼロでした。ちょうどゼロとみなすからこそ、答えがちょうど −100%-100\% になります。1株$0.25なら収益率は −99.60%-99.60\% で、整数パーセントに丸めればやはり −100%-100\% です。

2つ目に、−100%-100\% は偶然ではなく下限です。株主の請求権は E=max⁡(V−D,0)E = \max(V - D, 0) なので、資産が債務をどれだけ下回ってもゼロで止まります。債権者の不足分は、債権者が負うのです。

問2 · 誰が、いくら支払いを受けるか

条件:連邦破産法第11章の手続き中の会社があり、資産の評価額は600億ドル、シニアの請求権は400億ドル、ジュニアの請求権は400億ドルです。600億ドルはどのように分配されますか?

✅ 正解です! まずシニア層が満額まで満たされ、残った200億ドルだけがジュニア層に届きます。ジュニアの回収率は50%で、その下には何も届きません。
❌ 不足分が株主に請求されることはありません。 株式は max⁡(V−D,0)\max(V - D, 0) で、請求権はゼロで止まります。債権者が受け取れない200億ドルは債権者の損失であって、株主が負う債務ではありません。
❌ それは資産を按分していて、優先順位を無視しています。 すべての債権者に 60/80=75%60/80 = 75\% を支払うのは、2つの層が同順位の場合です。実際はそうではなく、シニアの請求権が全額満たされてから、はじめてジュニアの請求権に支払われます。
❌ 各層が等分に受け取るわけではありません。 優先順位があるので、資産は積み重ねを上から順に下っていきます。株主は最後で、すべての債権者が満たされてはじめて何かを受け取ります。
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V=60V = 60、DS=40D_S = 40、DJ=40D_J = 40(単位:10億ドル)として、ウォーターフォールを上からたどります。

シニア層:

S=min⁡(V,  DS)=min⁡(60,  40)=40S = \min(V,\; D_S) = \min(60,\; 40) = 40

ジュニア層(シニア層が残した分だけ):

J=min⁡(max⁡(60−40,  0),  40)=min⁡(20,  40)=20J = \min\big(\max(60 - 40,\; 0),\; 40\big) = \min(20,\; 40) = 20

ジュニアの請求権の回収率は 20/40=50%20/40 = 50\% です。

株主:

E=max⁡(V−D,  0)=max⁡(60−80,  0)=0E = \max(V - D,\; 0) = \max(60 - 80,\; 0) = 0

ジュニア層の結果に注目してください。全損ではなく、一部が支払われています。この評価額では、多くの債権者が損失を出す一方で、全額が守られる債権者もいます。これはまさに、2008年9月の時点で見通せなかった幅の真ん中にあたります。

問3 · より低い評価額

条件:同じ会社(シニアの請求権400億ドル、ジュニアの請求権400億ドル)ですが、資産の評価額が550億ドルに下がりました。

ジュニアの請求権のうち、何%が返済されますか?

株主は何を受け取りますか?

✅ 正解です! 400億ドルのジュニアの請求権に届くのは150億ドル、つまり 37.5%37.5\% です。その下の層は空のままで、負債も生じません。
❌ 550億ドルがどの層まで届くかを確認しましょう。 シニアの請求権がそのうち400億ドルを全額受け取り、400億ドルのジュニアの請求権に残るのは150億ドルです。すべての債権者に 55/80=68.75%55/80 = 68.75\% を支払うのが答えになるのは、2つの層が同順位の場合だけです。
❌ 株主は両方の債権者層の下にいます。 ジュニアの請求権がまだ250億ドル足りないので、株主には何も届きません。しかも E=max⁡(V−D,0)E = \max(V - D, 0) はゼロで止まり、株主が負う債務に変わることはありません。
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V=55V = 55、DS=40D_S = 40、DJ=40D_J = 40(単位:10億ドル)とすると:

S=min⁡(55,  40)=40J=min⁡(max⁡(55−40,  0),  40)=15S = \min(55,\; 40) = 40 \qquad J = \min\big(\max(55 - 40,\; 0),\; 40\big) = 15

ジュニアの回収率は

JDJ=1540=0.375=37.5%\frac{J}{D_J} = \frac{15}{40} = 0.375 = 37.5\%

で、残余請求権は

E=max⁡(55−80,  0)=0E = \max(55 - 80,\; 0) = 0

劣後債権者が受け取れない250億ドルは、彼ら自身の損失です。株主に請求し直されることはありません。株主の請求権は残余を受け取る権利であって、不足を埋め合わせる義務ではないからです。だからこそ、株式が生みうる最悪の収益率は −100%-100\% なのです。

68.75%68.75\% が誤りである理由:これは 55/8055/80、つまり550億ドルを800億ドルの請求権全体に按分した場合に、すべての債権者が得る回収率です。優先順位は、まさにこの分け方に取って代わるものです。まずシニア層が満額まで満たされ、ジュニア層は残りだけを受け取ります。

問4 · 価値はどこへ消えたか

条件:申請の翌週も、会社の投資銀行の担当者、自己勘定取引のトレーダー、資産運用の担当者は、前の週と変わらず経験豊富で知識もあり、デスクもいつもの場所にありました。事業の価値がゼロになったことを最もよく説明しているのはどれですか?

✅ 正解です! 変化は会社の外側、つまりほかの誰もがこの会社とどう付き合うつもりになったかにありました。どの取引相手も取引してくれなくなれば、もうビジネスではなく、そのビジネスの価値はゼロです。
❌ 人には何も起きていません。 翌週の彼らは、前の週と変わらず賢く、抜け目なく、経験豊富でした。だからこそ、この価値の破壊は説明を要するのです。
❌ 申請がもたらすのはそういうことではありません。 連邦破産法第11章は請求を凍結し、それを清算する順位を守らせます。通常は会社の経営陣が、占有を継続する債務者(DIP)としてそのまま残ります。決まるのは誰が先に返済を受けるかであって、事業にどれだけの価値があるかではありません。
❌ 因果関係が逆です。 存続可能性への懸念が取引相手を遠ざけ、彼らが離れたことで事業の価値が下がり、それとともに株価も下がりました。鶏が先か卵が先かという面はありますが、株価は結果を映す読み値であって、原因ではありません。
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価値の破壊を、有形の部分と無形の部分に分けて考えます。有形の部分(建物、設備、証券)は小さいほうです。大きいのは無形の部分、つまりブランドと、事業そのものの存続可能性です。

存続可能性は、会社が自分の帳簿に載せている性質ではありません。エクスポージャーの大きさが、存続可能性への懸念を広く呼び起こしました。懸念がいったん広がると、取引相手はこの会社と取引したがらなくなります。そして誰もが取引したがらなくなれば、もうビジネスではありません。ここにはループがあります。懸念が会社を傷つけ、その傷が懸念を正当化するのです。

同じ仕組みが、その年の初めにすでにベア・スターンズを倒していました。違うのは出発点の1つだけです。ローの見立てでは、ベアのパニックは、大きなエクスポージャーが実際に期限を迎えたからではなく、どうやら噂によって引き起こされたようです。リーマンのエクスポージャーははるかに大きく、その存続可能性への懸念には実際のエクスポージャーという裏付けがありましたが、ゼロへの道筋は同じでした。

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