ファイナンス理論 · 第4回 · 動画5 · インタラクティブ教材

ドルが10%増えても豊かにならない:実質収益率と対応のルール

I重要な公式

公式名称必要なもの
(1+r名目)k=Wt+kWt(1 + r_{\text{名目}})^k = \dfrac{W_{t+k}}{W_t}名目収益率2つの時点の富
W~t+k≡Wt+k(1+π)k\widetilde{W}_{t+k} \equiv \dfrac{W_{t+k}}{(1+\pi)^k}実質の富名目の富とインフレ率
r実質=1+r名目1+π−1  ≈  r名目−πr_{\text{実質}} = \dfrac{1 + r_{\text{名目}}}{1 + \pi} - 1 \;\approx\; r_{\text{名目}} - \pi実質収益率(厳密な式と経験則)2つの率
PV=∑tCt実質(1+r実質)t=∑tCt名目(1+r名目)t\text{PV} = \sum_t \dfrac{C_t^{\text{実質}}}{(1 + r_{\text{実質}})^{t}} = \sum_t \dfrac{C_t^{\text{名目}}}{(1 + r_{\text{名目}})^{t}}対応のルール実質か名目かが明示されたキャッシュフロー

ポイント:(1+r名目)=(1+r実質)(1+π)(1 + r_{\text{名目}}) = (1 + r_{\text{実質}})(1 + \pi)。インフレはこの積のちょうど片側にだけ属します。だからこそ、実質キャッシュフローを名目金利で割り引くと、インフレが二度取り除かれてしまうのです。

IIドルを数える、バスケットを数える

来年ドルが増えても、来年何かを多く買えるとは限りません。

III割るか、引くか

経験則 r名目−πr_{\text{名目}} - \pi は、厳密な実質収益率からどこで、どれだけずれるのでしょうか。

💡 2本の曲線は π=0\pi = 0 と π=r名目\pi = r_{\text{名目}} で交わります。近道の誤差がちょうど (r名目−π) π1+π\dfrac{(r_{\text{名目}} - \pi)\,\pi}{1 + \pi} だからです。

IVキャリアの現在価値

1つのキャリアを4通りに評価します。2つの組み合わせはルールに従い、残りの2つはルールを破ります。

💡 正しく対応させた2つの方法は、合計だけでなく各項まで一致します。実質キャッシュフローに (1+π)t(1+\pi)^{t} をかけ、その割引係数にも同じ (1+π)t(1+\pi)^{t} をかけても、どの比も変わらないからです。

V確認クイズ

問1 · 名目収益率からインフレを除く

条件:あるポートフォリオの1年間の収益率は 8%8\%、その間のインフレ率は 3%3\% です。厳密な実質収益率を求めてください。

✅ 正解です! 1.081.03−1=0.048544\dfrac{1.08}{1.03} - 1 = 0.048544、つまり 4.85%4.85\% で、経験則が示す 5%5\% をわずかに下回ります。
❌ 割る代わりにかけています。 1.08×1.03−1=11.24%1.08 \times 1.03 - 1 = 11.24\% は、インフレを収益率に上乗せして複利計算しています。実質の富は、名目の富を 1+π1 + \pi で割ったものです。
❌ 分子は正しいのですが、割る数が違います。 0.050.97\dfrac{0.05}{0.97} は 1−π1 - \pi で割っています。物価は上がったのですから、割る数は 1+π=1.031 + \pi = 1.03 です。
❌ それは経験則で、厳密な値ではありません。 8%−3%8\% - 3\% は引き算です。厳密な式は 1+π1 + \pi で割るので、0.051.03=4.85%\dfrac{0.05}{1.03} = 4.85\% になります。
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名目収益率から、積み重なったインフレの分を割り算で取り除きます:

r実質=1+r名目1+π−1=1.081.03−1=1.048544−1=4.85%r_{\text{実質}} = \frac{1 + r_{\text{名目}}}{1 + \pi} - 1 = \frac{1.08}{1.03} - 1 = 1.048544 - 1 = 4.85\%

変形すると、同じものは r名目−π1+π=0.051.03=4.85%\dfrac{r_{\text{名目}} - \pi}{1 + \pi} = \dfrac{0.05}{1.03} = 4.85\% と書けます。分子は経験則と同じですが、それを 1+π1 + \pi で割っています。

ここでの近道の誤差は (0.08−0.03)(0.03)1.03=0.146\dfrac{(0.08 - 0.03)(0.03)}{1.03} = 0.146 パーセントポイントです。この誤差が小さいからこそ、近道は実務で使われ続けているのです。

問2 · 分母に入れるべき率

条件:今日の購買力で示された年金の予測があり、市場金利は 6%6\%、インフレ率は 2.5%2.5\% です。割引係数に入れるべき率を求めてください。

✅ 正解です! 予測が実質なので、率も実質でなければなりません:1.061.025−1=3.41%\dfrac{1.06}{1.025} - 1 = 3.41\%。
❌ 組み合わせが食い違っています。 予測からはすでにインフレが取り除かれています。6%6\% の市場金利にはまだインフレが含まれているので、それを使うとインフレを二度取り除くことになり、現在価値を過小評価してしまいます。
❌ インフレ率は割引率ではありません。 インフレ率は、実質と名目の単位を換算するためのものです。貨幣の時間価値は 6%6\% の中に残っていて、その分も割り引く必要があります。
❌ インフレを取り除くのではなく、上乗せしています。 実質金利は、市場金利からインフレを割り算で取り除いたもの、1.061.025−1\dfrac{1.06}{1.025} - 1 であって、1.06×1.025−11.06 \times 1.025 - 1 ではありません。
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キャッシュフローは一定の購買力で示されているので実質であり、ルールに従えば実質金利を使います:

r実質=1+r名目1+π−1=1.061.025−1=3.41%r_{\text{実質}} = \frac{1 + r_{\text{名目}}}{1 + \pi} - 1 = \frac{1.06}{1.025} - 1 = 3.41\%

経験則なら 6%−2.5%=3.5%6\% - 2.5\% = 3.5\% となり、近いものの 0.0850.085 パーセントポイント高くなります。

もう1つの方法も同じく正しく、同じ答えになるはずです。予測に (1.025)t(1.025)^{t} をかけて実際のドルに直し、6%6\% で割り引くのです。決して正しくないのは、実質と名目を1つずつ組み合わせることです。

問3 · キャリアの1年目

条件:金利は 5%5\%、インフレ率は 2%2\% で、来年の給与は今日の購買力で$102,000と予測されています。実質の割引率を求め、次にその1つのキャッシュフローの現在価値を求めてください。

実質金利はいくらですか?

そのキャッシュフローの現在価値はいくらですか?

✅ 正解です! 実質金利は 1.051.02−1=2.94118%\dfrac{1.05}{1.02} - 1 = 2.94118\% で、$102,000を 1.02941181.0294118 で割ると$99,086です。
❌ それは実質金利ではありません。 市場金利からインフレを割り算で取り除きます:1+0.051+0.02−1\dfrac{1 + 0.05}{1 + 0.02} - 1。引き算では 3.00%3.00\%、かけ算では 7.10%7.10\%、1+π1 + \pi の代わりに 1+r1 + r で割ると 2.86%2.86\% になりますが、どれもこの比ではありません。
❌ 割る数を確認しましょう。 1期先の実質キャッシュフローは 1+r実質1 + r_{\text{実質}} で割ります。1+π1 + \pi でも、丸めた 3%3\% でもありません。
❌ それは割り引いたのではなく、伸びを打ち消しただけです。 $102,000を 1.021.02 で割ると今年の給与に戻るだけで、キャッシュフローはまだ1年分、時間をさかのぼらせる必要があります。
❌ 組み合わせが食い違っています。 $102,000はすでに実質の数字なので、5%5\% の名目金利を使うとインフレを二度取り除くことになります。$97,143は$1,943低すぎます。
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ステップ1:実質金利

r実質=1.051.02−1=0.0294118つまり 2.94118%r_{\text{実質}} = \frac{1.05}{1.02} - 1 = 0.0294118 \quad\text{つまり } 2.94118\%

表示の 2.94%2.94\% は丸めた値です。計算には比そのものを使います。

ステップ2:実質キャッシュフローを実質金利で割り引く $102,000 ÷ 1.02941181.0294118 = $99,085.71で、1ドル単位に丸めると$99,086です。

検算:もう1つの道筋 実際のドルでは、来年の給与は$100,000 × 1.021.02 × 1.021.02 = $104,040で、$104,040 ÷ 1.051.05 = $99,085.71になります。同じ数字になるのは、(1+r名目)=(1+r実質)(1+π)(1 + r_{\text{名目}}) = (1 + r_{\text{実質}})(1 + \pi) だからです。

問4 · 3年間の購買力

条件:あるファンドの収益率は3年間毎年 9%9\%、その間のインフレ率は毎年 4%4\% です。3年間で購買力が何倍になるかを求めてください。

✅ 正解です! (1.091.04)3=1.1513\left(\dfrac{1.09}{1.04}\right)^{3} = 1.1513 です。インフレ率 4%4\% のもとで 9%9\% を3年間続けると、買えるものは 15.13%15.13\% 増えます。
❌ それは経験則を複利計算しています。 1.053=1.15761.05^{3} = 1.1576 は 9%−4%=5%9\% - 4\% = 5\% を使っています。厳密な実質収益率は 1.091.04−1=4.808%\dfrac{1.09}{1.04} - 1 = 4.808\% で、近道の誤差も率と一緒に複利で積み重なります。
❌ それはバスケットの数ではなく、ドルの数です。 1.093=1.29501.09^{3} = 1.2950 は、物価水準も 1.043=1.12491.04^{3} = 1.1249 倍に上がったことを無視しています。答えは比 1.29501.1249\dfrac{1.2950}{1.1249} です。
❌ それは1年分だけです。 1.091.04=1.0481\dfrac{1.09}{1.04} = 1.0481 は1期間の実質の倍率です。購買力は複利で増えるので、3乗します。
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実質の富は名目の富を物価水準で割ったものなので、3年間の2つの倍率も割り算になります:

(1+r実質)3=(1.09)3(1.04)3=1.2950291.124864=1.151276(1 + r_{\text{実質}})^{3} = \frac{(1.09)^{3}}{(1.04)^{3}} = \frac{1.295029}{1.124864} = 1.151276

購買力は 15.13%15.13\% 増えます。経験則なら 15.76%15.76\%、ドルの数では 29.50%29.50\% になるところです。

1年あたりの実質収益率は 1.091.04−1=4.808%\dfrac{1.09}{1.04} - 1 = 4.808\% で、1.048083=1.15131.04808^{3} = 1.1513 と同じ値になります。比のべき乗は、べき乗の比に等しいからです。

正解数:0 / 4