ファイナンス理論 · 第5回 · 動画2 · インタラクティブ教材
債券ディーラーはなぜ崩れるのか:薄い取引、一方通行の売り、1987年10月
I重要な公式
ポイント:ディーラーの通行料はどれだけの取引が通るかで決まり、リスクはその流れがどちら向きかで決まります。売りが一方向に偏ると、価格が下がるなかでディーラーの在庫は増え、レバレッジのもとでは値下がりのたびに、その分が薄い自己資本から削られます。1987年10月19日、ニューヨーク証券取引所のスペシャリストは、まさに本来の仕事をしていて、合計資本のおよそ3分の1を失いました。
II取引は毎分、でも同じ銘柄ではない
債券はどこかで毎分取引されていますが、一つひとつの銘柄が取引されるのはたまにだけです。
💡 実際に売買が集まっている場所:2026年第2四半期、米国の債券の1日の売買高は約1.6兆ドルで、そのうち1.17兆ドルが米国債、3,578億ドルがエージェンシーMBSでした。一方、社債は669億ドル、地方債は146億ドル、資産担保証券は26億ドルでした。
III料金所の係員と一方通行の道
ディーラーはどちら向きの流れからも通行料を得ますが、流れが一方に偏ると必ずリスクを負います。
IV1987年10月19日:下がるたびに買い続ける
価格が下がるなかで借りたお金で買い続けたスペシャリストは、値下がりのたびに、その分を薄い自己資本から払いました。
💡 2008年には、同じパターンが債券で繰り返されました。投資家が米国債に殺到する一方、売りが集中したのは住宅ローン関連債とリスクの高い社債で、どちらも店頭で、株式よりはるかにまれにしか取引されません。ふだんは間に立っていたディーラーが、レバレッジをかけた帳簿にそれを抱え込むことになりました。
V確認クイズ
問1 · 市場のどれだけが取引されるか
条件:2026年第2四半期、残高12.1兆ドルの米国社債市場の1日の売買高は約669億ドルでした。ふつうの1日に、社債残高のどれだけの割合が持ち手を変えたでしょうか?
✅ 正解です! 12,10066.9≈0.0055:12.1兆ドルの市場のうち、ふつうの1日に持ち手を変えるのはわずか0.5%ほどです。
❌ 単位を確かめてください。 12.1兆ドルは10億ドル単位で12,100であり、1,210ではありません。1,210で割ると答えが10倍大きくなります。
❌ それは市場ではなく、その日の取引に占める社債のシェアです。 1,611.966.9≈4.2% は、社債の売買高を5つのセクター全体の売買高と比べています。この問いでは残高で割ります。
❌ 10倍小さすぎます。 12.1兆ドルは10億ドル単位で12,100であり、121,000ではありません。
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2つの数字の単位をそろえます。12.1兆ドルは10億ドル単位で12,100です。すると
回転率=残高1日の売買高=12,10066.9=0.00553≈0.55% (1日あたり)
逆にすると 66.912,100≈181:このペースでは、売買高の累計が残高に達するまでに約181取引日かかります。
4.2%は別の問いへの答えです。動画の5つのセクターの1日の売買高は 合計=1,170.0+357.8+66.9+14.6+2.6=1,611.9(単位:10億ドル)、約1.6兆ドルで、社債はその 1,611.966.9≈4.2% です。これは取引がどこで行われているかであって、社債市場のどれだけが取引されるかではありません。
問2 · 一方通行の午後の通行料
条件:あるディーラーは、取引する債券1本ごとに$0.10の通行料を受け取ります。ある日の午後、売り手から400本の債券が持ち込まれ、買い手は一人も来ません。ディーラーは400本すべてを1本$100で買い、それぞれから通行料を受け取ります。大引けには価格が$97になっています。大引けの価格で債券を評価すると、この午後のディーラーの利益はいくらですか?
✅ 正解です! 通行料は$40受け取れましたが、ディーラーが売りさばけなかった400本はそれぞれ$3値下がりしました:$1,200です。一方向に大量の取引が流れる日は、良い日ではなく損失の日です。
❌ 通行料しか数えていません。 買い手がいないので、ディーラーは400本すべてを抱えたままで、大引けにはそれぞれ$3値下がりしています。在庫の項
I⋅ΔP=400×(−3) も午後の利益の一部です。
❌ 通行料は実際に成立した取引にかかります。 持ち手を変えたのは400本だけです。ディーラーが買い、1本も売っていないので、通行料は
f⋅n=0.10×400=40 で、80ではありません。
❌ 惜しい!通行料も数えます。 ディーラーは買った400本それぞれから$0.10を受け取っていて、その$40が$1,200の値下がり分の一部を相殺します。
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午後の取引は n=400 本で、すべて同じ向きなので、在庫は I=0 から I=400 に増え、価格は ΔP=97−100=−3 動きます。ドル単位で、
利益=f⋅n+I⋅ΔP=0.10×400+400×(−3)=40−1,200=−1,160
双方向の取引がある午後と比べてみましょう。売り手から400本が持ち込まれ、400本が買い手に出ていくとします。すると n=800、I=0 なので、価格がどうなろうと 利益=0.10×800=80($80)です。これが料金所の係員の理想、つまり行き来する流れから手数料をとり、リスクは負わない姿です。
問3 · 模式化したスペシャリストの1日
条件:あるスペシャリストが、担当銘柄で一方通行の売りに直面しています。取引が始まると10,000株を$50で買い、売りが続くなか、さらに10,000株を$45で、もう10,000株を$40で買います。株価は$40で引け、始値より20%低くなりました。どの買いも、自社の自己資本1に対して借入2の割合で支払われました。
大引け時点で、30,000株の損失はいくらですか?
投入した自己資本のうち、失われた割合はどれだけですか?
✅ 正解です! 株価は20%下がり、ポジションは支払った額の9分の1を失い、レバレッジ3でそれが自己資本の3分の1になりました。借りた$900,000は、全額返さなければなりません。
❌ 20%の下落が当てはまるのは最初のブロックだけです。 スペシャリストは価格が下がるなかで買い続けたので、$45で買ったブロックは1株$5の値下がり、$40で買ったブロックは値下がりなしです。各ブロックを終値$40で別々に評価してください。
❌ すべての株を$50で買ったわけではありません。 $50だったのは最初の10,000株だけで、後のブロックは$45と$40で買ったので、失う額はより小さくなります。
❌ ブロックが1つ抜けています。 $50で買った株は$100,000を失いましたが、$45で買った株も1株$5ずつ取得価格を下回っています。
❌ それはポジション全体に対する損失の割合です。 貸し手の$900,000は全額返さなければならないので、損失は$450,000の自己資本だけが負担し、割合は
L=3 倍になります。
❌ 損失は借りたお金からは出ていきません。 借りたお金は全額返す義務があり、$150,000は$450,000の自己資本から出ていきます。
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ステップ1:ブロックごとの損失。10,000株の各ブロックを終値$40で評価します:
損失=10,000×(50−40)+10,000×(45−40)+10,000×(40−40)=150,000
取得原価と評価額から求めても同じです:取得原価=10,000×(50+45+40)=1,350,000、評価額=30,000×40=1,200,000 で、損失は$150,000です。
ステップ2:自己資本。支払った$1,350,000のうち、3分の1が自社のお金でした:
自己資本=31,350,000=450,000,借入=900,000
ステップ3:失われた割合。
自己資本損失=450,000150,000=31=L⋅ポジション損失=3×91
株価は20%下がりましたが、後のブロックは安く買ったので、ポジションが失ったのは支払った額の9分の1だけです。レバレッジ3が、その9分の1を自己資本の3分の1に変えました。
問4 · 抱える余力がもっともないとき
条件:ある債券ディーラーが、自己資本1,000万ドルで、残りを借り入れて、リスクの高い社債を2億ドル保有しているとします。このディーラーは保有額を自己資本の20倍以内に保っています。一方通行の売りで、債券の価格が3%下がりました。20対1の上限内に戻るには、債券をいくら売らなければなりませんか?
✅ 正解です! 600万ドルの損失で自己資本は400万ドルになり、それで持てる債券は8,000万ドルまでなので、ディーラーは下落する市場に1億1,400万ドルを売らなければなりません。
❌ 損失は自己資本から出ています。 10194=19.4 は下落前の自己資本を使っています。600万ドルの値下がりで自己資本は400万ドルになり、自己資本の
4194=48.5 倍は上限を大きく超えています。
❌ 債券を市場価格で売っても、失った自己資本は戻りません。 債券が現金に替わるだけです。上限がかかっているのは保有額のほうで、持てる債券は最大で 20 × 400万ドル = 8,000万ドルです。
❌ 債券の価値はもう2億ドルではありません。 3%下がった後は1億9,400万ドルなので、必要な売却額は
売却額=194−80=114(単位:百万ドル)です。
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ステップ1:損失は、すべて自己資本から。単位は百万ドルで、
債券=200×0.97=194,損失=200−194=6,自己資本=10−6=4
L=10200=20 なので、レバレッジのルールでも同じ結果になります:3%の下落は自己資本の L×3%=20×3%=60%、つまり1,000万ドルのうち600万ドルを奪います。
ステップ2:新しい上限。
上限=20×4=80,売却額=194−80=114
市場価格で売っても自己資本はそれ以上減らないので、売却後のディーラーは自己資本400万ドルで8,000万ドルを保有し、ちょうど20対1になります。
3%の下落で、ディーラーが抱えられる保有額は2億ドルから8,000万ドルに減りました。間に立っていた仲介者が、同じ下落する市場に売らなければならないのです。これが動画の結論です。債券がどれだけ売りやすいかは、ディーラーにしばらく抱えておく意思と余力があるかどうかで決まります。そして、誰もが売っている市場こそ、その余力がもっともない時なのです。
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