ファイナンス理論 · 第6回 · 動画1 · インタラクティブ教材

金利ではなく信用:FRBが利下げを見送り、AIGを救い、リーマンを見放した理由

I重要な公式

公式名称説明
50 bp200 bp=14\dfrac{50\ \text{bp}}{200\ \text{bp}} = \dfrac{1}{4}利下げの余地1ベーシスポイント(bp)は 0.010.01 パーセントポイントなので、2%2\% の誘導目標は、2008年当時に下限と見なされていた 0%0\% より 200200 bp 上にあります。5050 bp の利下げは、その余地の4分の1を使うことになります
1+rreal=1+rnominal1+π1 + r_{\text{real}} = \dfrac{1 + r_{\text{nominal}}}{1 + \pi}厳密な実質金利π\pi はインフレ率です。短い期間なら名目金利がインフレ率を下回ることがあり、そのとき rreal<0r_{\text{real}} \lt 0 となります
rreal=1.021.05−1≈−2.86%r_{\text{real}} = \dfrac{1.02}{1.05} - 1 \approx -2.86\%動画の例名目金利 2%2\%、例としてインフレ率 5%5\% とすると、貯めた$1で1年後に買えるのは、今日の財で約$0.97分です

ポイント:利下げが下げるのは資金のコストです。貸付は資金そのものを供給するので、資金が手に入るかどうかに直接手が届きます。FRBはどうやら、2008年9月を資金が手に入るかどうかの危機と判断したようです。だから誘導目標を2%に据え置き、AIGに最大850億ドルを貸し付けたのです。

II利下げが使う余地

誘導目標が2%なら、どの利下げも、ゼロより上にある200bpの余地の一部を使います。

IIIAIGへの貸付は何のためだったか

ロー教授が表向きの理由として示した、FRBの判断とみられるものに従えば、AIGの破綻から強制的な売りへ至る連鎖を止めるのは、利下げと貸付のどちらでしょうか?

💡 ここでのロー教授は、はっきり推測だと断っています。FRBの本当の理由は外からは分からないので、コストより資金が手に入るかどうかを重く見たというのは、あくまでFRBの判断とみられるものです。

IVインフレ率を下回る金利

名目金利がインフレ率を下回ると実質金利はマイナスになり、貯蓄した人は1年後に貧しくなっています。

V確認クイズ

問1 · 余地の4分の1

条件:2008年9月16日(火)、FFレートの誘導目標は 2%2\% で、当時は 0%0\% が下限と見なされていました。5050 ベーシスポイントの利下げは、下限より上にある余地のどれだけの割合を使ったことになるでしょうか?

✅ 正解です! 5050 bp は 0.500.50 パーセントポイントで、0.50/2=140.50 / 2 = \tfrac{1}{4} です。誘導目標は 1.50%1.50\% に下がり、余地は 150150 bp 残ります。
❌ 0.5ポイントは余地の半分ではありません。 5050 bp は1パーセントポイントの半分です。余地は 22 パーセントポイント、つまり 200200 bp なので、利下げが使うのはその 50/200=1450/200 = \tfrac{1}{4} です。
❌ 単位を確かめましょう。 140\tfrac{1}{40} は 5050 bp を 0.050.05 パーセントポイントとして扱っています。1ベーシスポイントは 0.010.01 ポイントなので、5050 bp は 0.500.50 ポイントで、0.50/2=140.50/2 = \tfrac{1}{4} です。
❌ それは残る余地です。 5050 bp 利下げした後には、200200 bp のうち 150150 bp、つまり 34\tfrac{3}{4} が残ります。利下げそのものが使うのは、残りの 14\tfrac{1}{4} です。
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1ベーシスポイントは 0.010.01 パーセントポイントなので、2%2\% の誘導目標から 0%0\% までの余地は次のとおりです。

2%−0%=2 パーセントポイント=200 bp2\% - 0\% = 2 \text{ パーセントポイント} = 200 \text{ bp}

5050 bp の利下げは、そのうち次の割合を使います。

50200=14\frac{50}{200} = \frac{1}{4}

誘導目標は 1.50%1.50\% になり、残る余地は 150150 bp です。これが、FRBが自制した理由としてロー教授が挙げた1つ目です。さらに50ベーシスポイント下げれば、後で動ける余地がほとんど残らなかったのです。

問2 · 厳密な実質金利

条件:rnominal=2%r_{\text{nominal}} = 2\%、例として π=5%\pi = 5\% とします。厳密な実質金利 rrealr_{\text{real}} を求めてください。

✅ 正解です! 1.021.05−1≈0.9714−1=−0.0286\dfrac{1.02}{1.05} - 1 \approx 0.9714 - 1 = -0.0286 で、実質金利は約 −2.86%-2.86\% です。
❌ それは引き算による近道です。 2%−5%=−3%2\% - 5\% = -3\% は近い値ですが、厳密な関係式では割り算をします:1.021.05−1≈−2.86%\dfrac{1.02}{1.05} - 1 \approx -2.86\%。
❌ 比が上下逆です。 1.051.02−1≈+2.94%\dfrac{1.05}{1.02} - 1 \approx +2.94\% はインフレ率を分子に置いています。分子に来るのは名目の係数です:1.021.05−1≈−2.86%\dfrac{1.02}{1.05} - 1 \approx -2.86\%。
❌ 1が抜けています。 25−1=−0.60\dfrac{2}{5} - 1 = -0.60 は金利の数字そのものを割っています。関係式で割るのは成長係数 1+rnominal=1.021 + r_{\text{nominal}} = 1.02 と 1+π=1.051 + \pi = 1.05 です。
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講座の前半で見た厳密な関係式を使います。

1+rreal=1+rnominal1+π=1.021.05≈0.97141 + r_{\text{real}} = \frac{1 + r_{\text{nominal}}}{1 + \pi} = \frac{1.02}{1.05} \approx 0.9714 rreal≈0.9714−1=−0.0286=−2.86%r_{\text{real}} \approx 0.9714 - 1 = -0.0286 = -2.86\%

名目金利がインフレ率を下回っているので、実質金利はマイナスです。2%で貯めた$1で1年後に買えるのは、今日の財でわずか約$0.97分です。2%−5%=−3%2\% - 5\% = -3\% という近道は近似にすぎず、金利が大きくなるほど厳密な値から離れていきます。

問3 · 貯蓄した人の実質的な損失

条件:ある人が$500を名目金利 3%3\% で1年間預けます。その1年間のインフレ率は 6%6\% です。

実質金利は、小数第2位までで何%ですか?

年末の残高は、今日の財でいくら分の価値がありますか?

✅ 正解です! 1.031.06−1≈−2.83%\dfrac{1.03}{1.06} - 1 \approx -2.83\% で、$515.00の残高で買えるのは今日の財で約$485.85分です。実質で約$14.15の損失です。
❌ それは引き算による近道です。 3%−6%=−3%3\% - 6\% = -3\% は近似で、厳密な金利は 1.031.06−1≈−2.83%\dfrac{1.03}{1.06} - 1 \approx -2.83\% です。
❌ 比が上下逆です。 1.061.03−1≈+2.91%\dfrac{1.06}{1.03} - 1 \approx +2.91\% はインフレ率を分子に置いています。インフレ率を下回る金利なら、実質金利はマイナスになります。
❌ 分母が違います。 0.03−0.061.03≈−2.91%\dfrac{0.03 - 0.06}{1.03} \approx -2.91\% は 1+rnominal1 + r_{\text{nominal}} で割っています。厳密な実質金利は rnominal−π1+π=−0.031.06≈−2.83%\dfrac{r_{\text{nominal}} - \pi}{1 + \pi} = \dfrac{-0.03}{1.06} \approx -2.83\% で、1.031.06−1\dfrac{1.03}{1.06} - 1 と同じです。
❌ 利息が抜けています。 500 / 1.06 ≈ 471.70 は、元の預金をインフレ分だけ割り戻しています。年末に手元にあるのは$515.00で、515 / 1.06 ≈ 485.85 です。
❌ それは近道の金利を使っています。 500 × 0.97 = 485.00 は −3%-3\% を当てはめています。厳密な −2.83%-2.83\% なら:500 × 0.9717 = 485.85 です。
❌ 割り戻すには割り算をします。 515 × 0.94 = 484.10 は 1−π1 - \pi を掛けています。物価は1.06倍になったので、今日の財で測った価値は 515 / 1.06 ≈ 485.85 です。
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ステップ1:実質金利。

1+rreal=1.031.06≈0.9717,rreal≈−0.0283=−2.83%1 + r_{\text{real}} = \frac{1.03}{1.06} \approx 0.9717, \qquad r_{\text{real}} \approx -0.0283 = -2.83\%

ステップ2:名目の残高。 $500は3%で$515.00に増えます。

500×1.03=515500 \times 1.03 = 515

ステップ3:1年分の6%のインフレで割り戻す。

5151.06≈485.85\frac{515}{1.06} \approx 485.85

したがって、残高で買えるのは今日の財で約$485.85分です。実質金利で検算すると:500×0.9717=485.85500 \times 0.9717 = 485.85 ✓。口座の残高は$15.00増えていますが、実質で見ると、この人は1年で$14.15貧しくなっています。

問4 · コストではなく、手に入るかどうか

条件:ある中央銀行が、提示されている金利はすでに低いのに、銀行や企業がそもそも資金を手に入れられないと判断しています。2008年9月のFRBの判断としてロー教授が示した読み方に合う対応を選んでください。

✅ 正解です! 割引窓口での貸付を増やせば資金そのものが供給され、政策金利を動かさずに金融システムにお金が流れ込みます。
❌ それはコストへの対応です。 利下げは資金のコストを下げますが、ここでの問題は、資金がそもそも手に入らないことです。しかも、FRBにほとんど残っていなかった余地を使ってしまいます。
❌ 価格は水晶玉ではありません。 市場価格は情報を含んでいますが、2008年9月には、実現しなかった利下げを織り込んでいました。それに、待っていても資金は供給されません。
❌ 破綻させても資金は供給されません。 FRBは確かにリーマンを見放しましたが、AIGには貸し付けました。FRBの判断とみられるところでは、AIGが破綻すれば、信用市場全体で強制的な売りが起きるからです。
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ロー教授の読み方(本人も推測だと断っています)は、FRBが見ていたのはコストの危機ではなく、資金が手に入るかどうかの危機(信用危機、流動性の危機)だった、というものです。

  • 利下げは資金のコストを下げます。つまり、別の問題に答えていることになります。
  • 資金を供給すれば、手に入るかどうかという問題に手が届きます。AIGへの貸付はその一つのやり方で、割引窓口で銀行がより多く、より緩い条件で借りられるようにするのがもう一つです。こちらは政策金利を変えずに済みます。他の中央銀行も、同じように資金を注入していました。

先物価格を待つことも、会社を破綻させることも資金を供給しないので、どちらも資金が手に入るかどうかの問題には対応しません。

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