ファイナンス理論 · 第6回 · 動画3 · インタラクティブ教材

利回り三ベーシスポイント:質への逃避と、FRBが決められない金利

I重要な公式

公式名称説明
P0,T=F(1+r0,T)TP_{0,T} = \dfrac{F}{(1+r_{0,T})^T}米国短期国債の価格短期国債はクーポンを払わないので、価格は額面を割り引いたものです。3か月物なら T=14T = \tfrac14 で、F=100F = 100 のとき、利回り0.84%なら価格は約99.79、利回り0.03%なら約99.9925です
r0,T=(FP0,T)1/T−1r_{0,T} = \left(\dfrac{F}{P_{0,T}}\right)^{1/T} - 1価格から求める利回り同じ関係式を金利について解いたものです。T=14T = \tfrac14 なら指数は4なので、$100あたり$99.99を超える価格では、利回りは約4ベーシスポイント(bp)以下になります
r0,T=[(1+R1)(1+R2)⋯(1+RT)]1/T−1r_{0,T} = \big[(1+R_1)(1+R_2)\cdots(1+R_T)\big]^{1/T} - 1幾何平均としてのスポットレートTT が整数の年数なら、スポットレートは1年物金利 R1,…,RTR_1, \dots, R_T の平均です。スポットレートを TT に対してプロットしたものが、イールドカーブです
r0,T+1>r0,T  ⟺  RT+1>r0,Tr_{0,T+1} > r_{0,T} \iff R_{T+1} > r_{0,T}イールドカーブの傾きカーブが右上がりになるのは、新しく加わる年の金利がそれまでの年の平均を上回るとき、そしてそのときに限ります。予想として読むなら、右上がりのカーブは1年物金利が上がると予想されていることを意味します

ポイント:FRBが誘導目標を定めるのは、ただ一つの金利、翌日物のフェデラル・ファンド金利です(2008年9月は2%)。カーブを形づくる短期国債や長期国債の利回りは、市場が決めます。2008年9月17日、3か月物の短期国債の利回りは0.03%だったのに対し、翌日物のフェデラル・ファンド金利は平均2.80%でした。

II3ベーシスポイントは、価格が$100に近いということ

3か月物の短期国債の利回りは (100/P)4−1(100/P)^4 - 1 です。利回りが約4ベーシスポイント以下になるのは、価格が$100まで1セント以内に迫ったときだけです。

III質への逃避が向かった先

2008年9月16日から17日にかけて、カーブの短期ゾーンは崩れ落ち、長期ゾーンは動きませんでした。

💡 最初の段差の先では、カーブは右上がりです。インフレのためか、危機が経済に及ぼす影響のためか、パニックが過ぎれば金利は再び上がると市場は予想していたのです。傾きが急なほど、予想される上昇は速く、大きくなります。

IVFRBが誘導目標とする金利と、市場が決める金利

FRBが誘導目標とするのは翌日物のフェデラル・ファンド金利です。その週は翌日物の金利でさえ誘導目標から外れ、短期国債の利回りは独自の動きをしました。

💡 これらの線のどれも公定歩合ではありません。公定歩合は別の金利で、FRB自身が割引窓口(ディスカウント・ウィンドウ)で銀行に貸すときの金利です。

V確認クイズ

問1 · 3か月物の短期国債の価格を求める

条件:2026年9月17日時点で、3か月物の米国短期国債の利回りは約4.12%です。3か月後に$100を支払う短期国債の価格を、年1回複利の P0,T=F/(1+r0,T)TP_{0,T} = F/(1+r_{0,T})^T を使って求めてください。

✅ 正解です! T=14T = \tfrac14 なので (1.0412)1/4≈1.010144(1.0412)^{1/4} \approx 1.010144、100/1.010144≈98.996100/1.010144 \approx 98.996 で、短期国債の価格は約$99.00です。
❌ それは丸1年分割り引いています。 100/1.0412≈96.04100/1.0412 \approx 96.04 は1年物の短期国債の価格です。3か月物は4分の1年分だけ割り引くので、指数は T=14T = \tfrac14 です。
❌ 指数が上下逆です。 100/(1.0412)4≈85.09100/(1.0412)^4 \approx 85.09 は4年分割り引いています。3か月は1年の T=14T = \tfrac14 なので、分母は (1.0412)1/4(1.0412)^{1/4} です。
❌ それは金利を4等分しています。 100/(1+0.0412/4)=100/1.0103≈98.98100/(1 + 0.0412/4) = 100/1.0103 \approx 98.98 は4.12%を四半期ごとの単利として扱っています。年1回複利なら、4分の1年の成長係数は (1.0412)1/4≈1.010144(1.0412)^{1/4} \approx 1.010144 で、1.0103よりわずかに小さくなります。
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短期国債はクーポンを払わないので、価格は額面を、支払いまでの1年に満たない期間の分だけ割り引いたものです:F=100F = 100、T=14T = \tfrac14、r0,T=0.0412r_{0,T} = 0.0412。

P0,T=100(1.0412)1/4≈1001.010144≈98.996P_{0,T} = \frac{100}{(1.0412)^{1/4}} \approx \frac{100}{1.010144} \approx 98.996

価格は約$99.00です。買い手は3か月で$100につき約$1.00を得て、それを1年にわたって複利で計算すると4.12%になります。

問2 · 価格から利回りを読む

条件:$100を支払う3か月物の短期国債が$99.95で取引されています。年率の利回り r0,Tr_{0,T} を求めてください。

✅ 正解です! r0,T=(100/99.95)4−1≈(1.00050025)4−1≈0.0020025r_{0,T} = (100/99.95)^4 - 1 \approx (1.00050025)^4 - 1 \approx 0.0020025 で、年約0.20%、つまり20ベーシスポイントです。
❌ それは年率の利回りではなく、3か月間の収益率です。 100/99.95−1≈0.05%100/99.95 - 1 \approx 0.05\% は買い手が4分の1年で得る分です。利回りは年率なので、その成長係数を 1/T=41/T = 4 乗します。
❌ 指数が逆になっています。 (100/99.95)1/4−1≈0.0125%(100/99.95)^{1/4} - 1 \approx 0.0125\% は四半期の収益率をさらに小さくしています。P=F/(1+r)1/4P = F/(1+r)^{1/4} を rr について解くと、1+r=(F/P)41 + r = (F/P)^4 です。
❌ 価格と額面が入れ替わっています。 (99.95/100)4−1≈−0.20%(99.95/100)^4 - 1 \approx -0.20\% では、買い手が損をすることになります。買い手は$99.95を払って$100を受け取るので、成長係数は F/P=100/99.95>1F/P = 100/99.95 > 1 です。
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短期国債の価格の関係式を、金利について解きます。P0,T=F/(1+r0,T)1/4P_{0,T} = F/(1+r_{0,T})^{1/4} から:

1+r0,T=(FP0,T)4=(10099.95)4≈(1.00050025)4≈1.00200251 + r_{0,T} = \left(\frac{F}{P_{0,T}}\right)^4 = \left(\frac{100}{99.95}\right)^4 \approx (1.00050025)^4 \approx 1.0020025

したがって r0,T≈0.20%r_{0,T} \approx 0.20\%、約20ベーシスポイントです。3か月で買い手が得るのは$100につきわずか5セントで、その四半期の収益率を4回複利で重ねると年率の利回りになります。2008年9月17日には、価格はさらに$100に近い約$99.9925で、利回りは3ベーシスポイントでした。

問3 · カーブを右上がりにするもの

条件:スポットレートが r0,2=2.00%r_{0,2} = 2.00\%、r0,3=2.50%r_{0,3} = 2.50\% です。これらのスポットレートが示す、3年目の1年物金利 R3R_3 を求めてください。

✅ 正解です! 1+R3=(1.025)3/(1.02)2=1.076890625/1.0404≈1.0350741 + R_3 = (1.025)^3/(1.02)^2 = 1.076890625/1.0404 \approx 1.035074。新しく加わる年の金利、約3.51%は、最初の2年の平均2.00%を上回っています。r0,3>r0,2r_{0,3} > r_{0,2} となるのは、まさにそのためです。
❌ それはスポットレートの変化で、金利そのものではありません。 スポットレートは0.50ポイント上がりましたが、r0,3r_{0,3} は3年分の平均なので、3年目の金利が2年分の平均2.00%を2.50%まで引き上げなければなりません。それには2.50%をかなり上回る金利が必要です。
❌ それは2つのスポットレートの平均です。 3年目の金利はその間にはありません。2.00%の平均を2.50%に引き上げるには、加わる年の金利は両方を上回っていなければなりません。
❌ 加わる年の金利は、新しいスポットレートではありません。 もし R3R_3 が2.50%なら、3年物スポットレートは [(1.02)2(1.025)]1/3−1=(1.066410)1/3−1≈2.17%\big[(1.02)^2(1.025)\big]^{1/3} - 1 = (1.066410)^{1/3} - 1 \approx 2.17\% で、2.50%にはなりません。2.50%の年が1年加わっても、3年分の平均は2.50%までの3分の1ほどしか上がらないのです。
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スポットレートは1年物金利の幾何平均なので、(1+r0,3)3=(1+R1)(1+R2)(1+R3)=(1+r0,2)2(1+R3)(1 + r_{0,3})^3 = (1+R_1)(1+R_2)(1+R_3) = (1 + r_{0,2})^2 (1 + R_3) です。R3R_3 について解くと:

1+R3=(1.025)3(1.02)2=1.0768906251.0404≈1.0350741 + R_3 = \frac{(1.025)^3}{(1.02)^2} = \frac{1.076890625}{1.0404} \approx 1.035074

したがって R3≈R_3 \approx 3.51% です。これが傾きの条件の働きです。R3≈3.51%>r0,2=2.00%R_3 \approx 3.51\% > r_{0,2} = 2.00\% だから、カーブは T=2T = 2 から T=3T = 3 にかけて右上がりになります。予想として読むなら、右上がりのカーブは1年物金利が上がると予想されていることを意味します。

問4 · FRBが決めたのはどの金利か

条件:2008年9月17日、フェデラル・ファンド金利の誘導目標は2%、翌日物の実際の金利(実効フェデラル・ファンド金利)は平均2.80%、3か月物の米国短期国債の利回りは0.03%でした。正しい記述はどれですか?

✅ 正解です! フェデラル・ファンド金利は、銀行どうしが準備預金を翌日物で貸し借りするときの金利です。FRBはこれに誘導目標を定め、証券を売買して実際の金利を誘導します。短期国債の利回りは短期国債の価格から読み取る市場金利で、FRBが直接決めることはできません。
❌ 短期国債の利回りは市場金利です。 利回りが急落したのは、質への逃避でお金が短期国債に流れ込み、価格を$100まで1セント以内に押し上げたからです。FRBは9月16日に誘導目標を2%に据え置きました。利下げをすればインフレを招いていたことも、その理由の一つです。
❌ それは別の金利です。 2.80%は実効フェデラル・ファンド金利、つまり銀行どうしが翌日物で実際に付けた金利です。FRB自身が銀行に貸すときの金利である公定歩合は、それとは別です。
❌ 誘導目標は目標であって、固定された価格ではありません。 FRBは実際の翌日物金利を目標へと誘導しますが、その週は金利が目標から外れました:16日は1.98%、17日は2.80%、19日は1.48%です。
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3つの異なる金利が関わっています。

  • フェデラル・ファンド金利の誘導目標、2%。 FRBが決めるただ一つの数字で、銀行どうしが準備預金を翌日物で貸し借りするときの金利に対する誘導目標です。
  • 実効フェデラル・ファンド金利、2.80%。 銀行が実際に付けた金利です。FRBは証券を売買してこれを目標へ誘導しますが、9月17日には目標を80ベーシスポイント上回りました。
  • 3か月物の短期国債の利回り、0.03%。 短期国債の取引で決まる市場金利です。質への逃避で、短期国債の価格は$100あたり約$99.9925まで押し上げられました。その価格が、そのままこの利回りを意味します。

したがって答えは(a)です。公定歩合、つまりFRBが割引窓口で銀行に貸すときの金利は4つ目の金利で、このどれでもありません。

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