ファイナンス理論 · 第7回 · 動画1 · インタラクティブ教材

1口97セント:MMFの取り付けが米国短期国債の利回りを動かした

I重要な公式

公式名称説明
P0,T=F(1+y)TP_{0,T} = \dfrac{F}{(1+y)^T}利回りから求める短期国債の価格FF は額面、TT は満期までの年数です。3か月物なら T=14T = \tfrac14 なので、y=0.49%y = 0.49\% のとき価格は額面 $100 あたり 100(1.0049)1/4≈99.88\dfrac{100}{(1.0049)^{1/4}} \approx 99.88 です
(1+y)1/4−1(1+y)^{1/4} - 11四半期の収益率提示される利回りは年率換算です。(1.04)1/4−1≈0.985%(1.04)^{1/4} - 1 \approx 0.985\% で1四半期あたり 1%1\% をわずかに下回り、(1.0049)1/4−1≈0.122%(1.0049)^{1/4} - 1 \approx 0.122\% は $100 につき約12セントです
1(1+π)30\dfrac{1}{(1+\pi)^{30}}30年後の購買力π\pi はインフレ率です。例として π=2.5%\pi = 2.5\% とすると 1(1.025)30≈0.48\dfrac{1}{(1.025)^{30}} \approx 0.48 なので、30年後に支払われる $1 で買えるのは、今日の約 $0.48 分です
1.00−0.97=0.03=3%1.00 - 0.97 = 0.03 = 3\%元本割れ1口 $0.97 なら、1ドルにつき3セント少なく戻ります。$1,000 が $970 になって返ってきます

ポイント:米国債には名目ベースのデフォルト・リスクがないので、その利回りはデフォルトを測るものではありません。短期国債の利回りが記録したのはパニックです。プライムMMFからの取り付けが短期国債の価格を押し上げ、利回りを3ベーシスポイント(bp)まで押し下げました。米国債の保有者が実際に負うリスクは、インフレと金利の変動です。

II3か月物短期国債の価格と利回り

年率換算の利回りが上がると短期国債の価格は下がります。3 bp から49 bp への上昇で、$100 あたり約11セント値下がりしました。

IIIイールドカーブ全体が上昇した

2008年9月17日から24日にかけて、どの満期の利回りも上がり、30年債の上昇がいちばん小さかったのです。

💡 30年債の32ベーシスポイントの一部は、7,000億ドルの資産買い取り計画を受けたインフレ・プレミアムの上乗せと読むのが妥当でしょう。ただ、それより短いどの満期もさらに大きく上がったので、この上昇は期待インフレ率を純粋に測ったものとは言えません。

IVなぜ全員が一斉に解約するのか

保有資産の価値が1口 $0.97 しかないとき、1口を $1.00 で払い戻すたびに、残っている人の取り分が減ります。

💡 $0.97 は、リザーブ・プライマリー・ファンドが保有するリーマンのコマーシャル・ペーパー7億8,500万ドルの評価をゼロとしたあとの1口の価値です。解約の進み方は説明のための例で、実際のファンドはまもなく払い戻しを凍結しました。

V確認クイズ

問1 · 9月18日の短期国債

条件:2008年9月18日、3か月物短期国債の利回りは年率換算で 2323 ベーシスポイントでした。P0,T=F(1+y)TP_{0,T} = \dfrac{F}{(1+y)^T} に T=14T = \tfrac14 を使って、額面 $100 の短期国債の価格を求めてください。

✅ 正解です! 100(1.0023)1/4≈99.94\dfrac{100}{(1.0023)^{1/4}} \approx 99.94。満期まで4分の1年なので、価格は額面より6セント安くなります。
❌ 惜しい! 1001.0023≈99.77\dfrac{100}{1.0023} \approx 99.77 は丸1年分割り引いています。この短期国債は3か月で満期を迎えるので、指数は T=14T = \tfrac14 です。
❌ 単位を確かめましょう。 1ベーシスポイントは 0.01%0.01\% なので、2323 bp は 0.000230.00023 ではなく 0.23%=0.00230.23\% = 0.0023 です。
❌ 惜しい! 価格が額面の $100 を上回るなら、利回りはマイナスということになります。(1+y)T(1+y)^T を掛けるのではなく、割ってください。
❌ 惜しい! P=100(1+y)TP = \dfrac{100}{(1+y)^{T}} に y=0.0023y = 0.0023 と T=14T = \tfrac14 を使ってください。
解答を見る

2323 ベーシスポイントは 0.23%0.23\% なので y=0.0023y = 0.0023、3か月は T=14T = \tfrac14 年です:

P0,1/4=100(1.0023)1/4=1001.0005745≈99.94P_{0,1/4} = \frac{100}{(1.0023)^{1/4}} = \frac{100}{1.0005745} \approx 99.94

価格は額面 $100 あたり約 $99.94 で、額面より6セント低くなります。

問2 · 四半期ではなく年率

条件:1962年から2002年まで、3か月物短期国債の利回りは平均で約 6%6\% でした。これは年1回複利の年率換算利回りで表示されたものです。利回りがちょうど 6%6\% の短期国債が、3か月で稼ぐ収益率を求めてください。

✅ 正解です! 1四半期で (1.06)1/4−1≈1.467%(1.06)^{1/4} - 1 \approx 1.467\% です。これを4四半期複利で重ねると、ちょうど 6%6\% に戻ります。
❌ 惜しい! 6%6\% は年率換算の表示です。3か月物短期国債が稼ぐのは、そのうち4分の1年分だけです。
❌ 惜しいですが… 6%/4=1.5%6\% / 4 = 1.5\% は複利を無視しています。1.5%1.5\% で4四半期重ねると (1.015)4−1≈6.14%(1.015)^4 - 1 \approx 6.14\% となり、6%6\% を超えてしまいます。4で割るのではなく、4乗根をとってください。
❌ 惜しい! (1.06)4−1≈26.25%(1.06)^4 - 1 \approx 26.25\% は、6%6\% を4年にわたって複利で重ねたものです。1四半期なら指数は 14\tfrac14 です。
❌ 惜しい! (1+y)1/4−1(1+y)^{1/4} - 1 で換算してください。
解答を見る

提示される利回りは年率換算です。利回り yy で1年たつと、$1 は 1+y1+y に増えます。1四半期は1年の4分の1なので:

(1.06)1/4−1≈1.014674−1≈1.467%(1.06)^{1/4} - 1 \approx 1.014674 - 1 \approx 1.467\%

検算:(1.014674)4≈1.06(1.014674)^4 \approx 1.06。同じ計算で、動画の 4%4\% は1四半期あたり約 0.985%0.985\% となり、1%1\% をわずかに下回ります。

問3 · 保証が発表された日

条件:2008年9月18日(木)、3か月物短期国債の利回りは 2323 ベーシスポイントでした。米国財務省がマネー・マーケット・ファンドへの保証を発表した9月19日(金)には、9999 ベーシスポイントでした。額面 $100 あたりで、9月19日の価格と、その日の値下がり幅を求めてください。

9月19日の価格は?

9月18日から19日にかけての値下がり幅は?

✅ 正解です! 利回りは 7676 bp 上がり、価格は $100 あたり19セント下がりました。0.760.76 のおよそ4分の1です。満期まで残り4分の1年しかないからです。
❌ 惜しい! 1001.0099≈99.02\dfrac{100}{1.0099} \approx 99.02 は丸1年分割り引いています。T=14T = \tfrac14 を使ってください。
❌ 惜しい! 100−0.99100 - 0.99 は、年率換算の利回りを価格から差し引くドル額として扱っています。価格は 100(1.0099)1/4\dfrac{100}{(1.0099)^{1/4}} です。
❌ 惜しい! 99.9499.94 は 2323 bp だった9月18日の価格です。利回りが上がったので、価格はそれより下がりました。
❌ 価格を確かめましょう。 P=100(1.0099)1/4P = \dfrac{100}{(1.0099)^{1/4}} です。
❌ 惜しい! 99−23=7699 - 23 = 76 bp は、価格ではなく年率換算の利回りの変化です。2つの価格の差をとってください。
❌ 惜しい! それは、どちらか1日の価格と額面 $100 との差(満期までに稼ぐ額)です。値下がり幅は、9月18日の価格から9月19日の価格を引いたものです。
❌ 差を確かめましょう。 9月18日の価格から9月19日の価格を引いてください。
解答を見る

9月18日(y=0.0023y = 0.0023):100(1.0023)1/4≈99.94\dfrac{100}{(1.0023)^{1/4}} \approx 99.94。

9月19日(y=0.0099y = 0.0099):

100(1.0099)1/4=1001.0024659≈99.75\frac{100}{(1.0099)^{1/4}} = \frac{100}{1.0024659} \approx 99.75

値下がり幅:額面 $100 あたり 99.94−99.75=0.1999.94 - 99.75 = 0.19。

動画で注意したとおり、資産買い取り計画と空売り禁止も同じ日に発表されたので、この急上昇を保証だけの効果とみなすことはできません。

問4 · 長期の米国債が抱えるリスク

条件:30年物の米国債は、満期に $1,000 を支払います。例として、物価が30年間ずっと年 3%3\% 上がるとします。

その $1,000 で買えるのは、今日のモノに換算しておよそ

保有者が負うのはどのリスクですか?

✅ 正解です! $1,000 は名目では確実ですが、インフレ率 3%3\% では今日のモノで約 $412 分しか買えません。この目減りこそがリスクで、だからこそ30年債の利回りの上昇はインフレ・プレミアムとして読めるのです。
❌ 惜しい! $1,000 は名目の支払額で、これは確実です。問われているのは、3%3\% のインフレが30年続いたあとに、それで何が買えるかです。
❌ 惜しい! 1000(1−30×0.03)=1001000(1 - 30 \times 0.03) = 100 は、毎年当初の価値の 3%3\% を差し引いています。インフレは複利で効くので、(1.03)30(1.03)^{30} で割ってください。
❌ 惜しいですが… 1000×(0.97)30≈4011000 \times (0.97)^{30} \approx 401 は、1−π1 - \pi を 11+π\dfrac{1}{1+\pi} と同じものとして使っています。正確な係数は 1(1.03)30\dfrac{1}{(1.03)^{30}} です。
❌ 購買力を確かめましょう。 1000(1.03)30\dfrac{1000}{(1.03)^{30}} を計算してください。
❌ 惜しい! ドルを発行しているのは米国自身なので、支払うためのドルはいつでも新たにつくり出せます。名目ベースでは、少なくとも誰の知る限り、デフォルト・リスクはありません。
❌ 惜しい! デフォルト・リスクがないことは、リスクがないことではありません。この債券はドルで支払われ、そのドルで何が買えるかは不確かです。
❌ 惜しい! それはプライムMMFの中にあったリスクです。米国債は企業の証券ではなく、ドルを発行する政府の借用証書(IOU)です。そのリスクは、そのドルで何が買えるかにあります。
❌ リスクを確かめましょう。 名目の債券が約束するのはモノではなく、ドルです。
解答を見る

30年間で物価は (1.03)30(1.03)^{30} 倍になるので、その $1,000 で買えるのは

1000(1.03)30=10002.4273≈411.99\frac{1000}{(1.03)^{30}} = \frac{1000}{2.4273} \approx 411.99

ドルで今日買えるもの、つまり約 $412 分です。支払いそのものに名目のデフォルト・リスクはありません。リスクはインフレと、満期前に売却する場合の金利の変動です。

正解数:0 / 4