ファイナンス理論 · 第7回 · 動画4 · インタラクティブ教材

解がないなら取引がある:過剰決定系としての債券アービトラージ

I重要な公式

公式名称必要なもの
Pi=Ci1P0,1+Ci2P0,2+⋯+CiTP0,TP_i = C_{i1} P_{0,1} + C_{i2} P_{0,2} + \cdots + C_{iT} P_{0,T}債券1本につき方程式1本(i=1,…,ni = 1, \ldots, n)既知:市場価格 PiP_i とキャッシュフロー CitC_{it}。未知:全銘柄に共通する TT 個の割引債価格 P0,tP_{0,t}
n>Tn > T過剰決定系支払日より債券の数が多い状態:米国中期国債と米国長期国債は合わせて353銘柄(2026年8月31日時点)。これに対し、支払日は年1回なら多くて30、実際の支払日でもおよそ230です
(C31,C32)=w1(C11,C12)+w2(C21,C22)(C_{31}, C_{32}) = w_1 (C_{11}, C_{12}) + w_2 (C_{21}, C_{22})複製のウェイト係数の行が比例していない2本の債券があれば、ウェイトは必ず存在します
P3=w1P1+w2P2P_3 = w_1 P_1 + w_2 P_2解が存在する条件(一次従属)同じウェイトを価格に当てはめたもの。これが成り立たなければ、連立方程式に解はありません

ポイント: P3>w1P1+w2P2P_3 > w_1 P_1 + w_2 P_2 なら、債券3を売り、債券1を w1w_1、債券2を w2w_2 だけ買います。将来の支払いはすべて相殺され、今日 P3−(w1P1+w2P2)P_3 - (w_1 P_1 + w_2 P_2) が手元に残ります。P3<w1P1+w2P2P_3 < w_1 P_1 + w_2 P_2 なら、すべてのポジションを反対にします。解がないということは、リスクのない取引があるということです。

II未知数2つに方程式3本

各債券は (P0,1,P0,2)(P_{0,1}, P_{0,2}) 平面上の1本の直線で、解とはすべての直線上にある点のことです。

IIIリスクのない取引を組み立てる

3本の債券をどれだけ持てば、今日手元に現金が入り、将来の支払いがすべて相殺されるでしょうか?

ポジション(ドル、額面$100)今日1年目2年目
正味

💡 チャレンジ:提示価格が100.66なら、6%の債券は割安です。今日1.00を受け取り、どちらの年にも支払いが残らないポジションを見つけてください。

IV確認クイズ

問1 · 割引債価格から債券を価格づけする

条件: 動画の2%と10%の債券から、P0,1=0.96P_{0,1} = 0.96、P0,2=0.90P_{0,2} = 0.90 が導かれます。3本の方程式が矛盾しないような、クーポン4%の2年債(額面$100、利払いは年1回)の価格を求めてください。

✅ 正解です! 4(0.96)+104(0.90)=3.84+93.60=97.444(0.96) + 104(0.90) = 3.84 + 93.60 = 97.44。各キャッシュフローを、その日付の割引債価格で評価します。
❌ 惜しい! 4(0.90)+104(0.96)=103.444(0.90) + 104(0.96) = 103.44 は、1年目のクーポンに P0,2P_{0,2}、2年目の支払いに P0,1P_{0,1} を組み合わせています。時点 tt の支払いには P0,tP_{0,t} を使います。
❌ 惜しい! 4(0.96)+100(0.90)=93.844(0.96) + 100(0.90) = 93.84 では、2年目のクーポンが抜けています。この債券の最後の支払いはクーポンと額面の合計、4+100=1044 + 100 = 104 です。
❌ 惜しい! 104(0.90)=93.60104(0.90) = 93.60 は最後の支払いしか評価していません。1年目のクーポン4の今日の価値 4(0.96)=3.844(0.96) = 3.84 を足す必要があります。
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4%の債券は1年目に4、2年目に 104104 を払うので、連立方程式のその行は次のようになります。

P4=4 P0,1+104 P0,2=4(0.96)+104(0.90)=3.84+93.60=97.44P_4 = 4\,P_{0,1} + 104\,P_{0,2} = 4(0.96) + 104(0.90) = 3.84 + 93.60 = 97.44

複製からも同じ価格が出ます。(4,104)=34(2,102)+14(10,110)(4, 104) = \tfrac{3}{4}(2, 102) + \tfrac{1}{4}(10, 110) なので、価格は 34(93.72)+14(108.60)=70.29+27.15=97.44\tfrac{3}{4}(93.72) + \tfrac{1}{4}(108.60) = 70.29 + 27.15 = 97.44 でなければなりません。それ以外の提示価格では、連立方程式は矛盾します。

問2 · 取引はどちら向きか

条件: 動画と同じく、2%の債券は$93.72、10%の債券は$108.60で取引されていますが、6%の債券の提示価格は$100.76です。裁定になるポジションはどれですか?

✅ 正解です! 最初の2本から評価すると6%の債券は101.16なので、100.76では0.40割安です。2本買うと201.52かかり、残りの2本を売ると202.32入ります。今日0.80が手元に残り、1年目のキャッシュフロー(12−2−1012 - 2 - 10)も2年目のキャッシュフロー(212−102−110212 - 102 - 110)も0です。
❌ それは動画の取引ですが、価格のずれの向きが逆です。 100.76では、6%の債券は価値の101.16を下回っています。2本売ると201.52入りますが、残りの2本には202.32かかるので、今日0.80を払うことになります。割安な債券を買い、割高な2本を売ります。
❌ 惜しい! 向きは正しいのですが、数量が違います。1年目の正味は 6−2−10=−66 - 2 - 10 = -6、2年目の正味は 106−102−110=−106106 - 102 - 110 = -106 で、後で支払いが残ります。6%の債券のキャッシュフローはほかの2本の平均なので、ほかの2本を1本ずつ売るなら、それに見合うのは6%の債券2本です。
❌ 惜しい! 市場価格はデータであって、直すべき宿題の答えではありません。3本の方程式に共通の解がないとき、元手ゼロで今日現金が入り、後で何も支払わずに済む債券の組み合わせがあります。それが裁定です。
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最初の2本から P0,1=0.96P_{0,1} = 0.96、P0,2=0.90P_{0,2} = 0.90 なので、6%の債券の価値は 6(0.96)+106(0.90)=101.16=12(93.72+108.60)6(0.96) + 106(0.90) = 101.16 = \tfrac{1}{2}(93.72 + 108.60) です。提示価格の100.76は0.40低すぎます。

ウェイト w1=w2=12w_1 = w_2 = \tfrac{1}{2} を2倍して、6%の債券を2本買い、ほかの2本を1本ずつ売ります。

ポジション今日1年目2年目
6%の債券を2本買う−201.52-201.52+12+12+212+212
2%の債券を1本売る+93.72+93.72−2-2−102-102
10%の債券を1本売る+108.60+108.60−10-10−110-110
正味+0.80+0.800000

利益は 2×0.40=0.802 \times 0.40 = 0.80 で、どちらの年にも支払いは残りません。持っていない2%と10%の債券を売るのは空売りなので、この取引は空売りが認められていることが前提です。

問3 · 2本で解き、3本目を確かめる

条件: 額面$100、利払い年1回の2年債が3本あります。債券Aはクーポン2%で$91.66、債券Bはクーポン8%で$102.64で取引されていて、債券Cはクーポン5%で提示価格は$97.50です。債券AとBから P0,2P_{0,2} を求め、債券Cが誤って値付けされているかどうかを判断してください。

P0,2P_{0,2} はいくらですか?

債券Cの提示価格から何がわかりますか?

✅ 正解です! P0,1=0.95P_{0,1} = 0.95、P0,2=0.88P_{0,2} = 0.88 でCを評価すると 5(0.95)+105(0.88)=97.155(0.95) + 105(0.88) = 97.15 なので、提示価格は0.35高すぎます。Cを2本売ってAとBを買えば、将来の支払いはすべて相殺され、今日 195.00−194.30=0.70195.00 - 194.30 = 0.70 が手元に残ります。
❌ 惜しい! 0.950.95 は P0,1P_{0,1}、つまり1年目に支払われる1の価格です。まず1年目の項を消去しましょう。4×4 \times(Aの行)−-(Bの行)とすると、P0,2P_{0,2} だけが残ります。
❌ 惜しい! 0.900.90 は、動画に出てきた別の債券についての値です。この連立方程式を解きましょう。4(91.66)−102.64=2644(91.66) - 102.64 = 264、4(102)−108=3004(102) - 108 = 300 です。
❌ 惜しい! 91.66/10291.66 / 102 は債券Aだけを使い、1年目のクーポン2を無視しています。方程式1本では2つの未知数は決まりません。AとBを組み合わせましょう。
❌ P0,2P_{0,2} を確認しましょう。 Aの方程式を4倍してBの方程式を引くと、1年目の項が打ち消し合います。
❌ 向きを確認しましょう。 Cの価値は97.15ですが、提示価格は97.50です。提示価格が価値を上回っているので、売るべきなのはCです。
❌ 数量を確認しましょう。 Cを1本売るだけだと、1年目は −5+2+8=5-5 + 2 + 8 = 5、2年目は −105+102+108=105-105 + 102 + 108 = 105 となり、将来のキャッシュフローが相殺されません。Cのキャッシュフローは、Aの半分とBの半分の和なので、AとBの1組に対してCを2本売ります。1本あたりのずれは 97.50−97.15=0.3597.50 - 97.15 = 0.35 です。
❌ 惜しい! クーポンがAとBの間にあるというのは、複製のウェイトが正になるというだけのことです。矛盾がないためには、Cの提示価格が 12(91.66)+12(102.64)=97.15\tfrac{1}{2}(91.66) + \tfrac{1}{2}(102.64) = 97.15 に等しくなければなりませんが、実際は97.50です。
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債券AとBから、方程式が2本得られます。

2 P0,1+102 P0,2=91.66,8 P0,1+108 P0,2=102.642\,P_{0,1} + 102\,P_{0,2} = 91.66, \qquad 8\,P_{0,1} + 108\,P_{0,2} = 102.64

1本目を4倍して2本目を引くと、1年目の項が打ち消し合います。

(408−108) P0,2=366.64−102.64  ⇒  300 P0,2=264  ⇒  P0,2=0.88(408 - 108)\,P_{0,2} = 366.64 - 102.64 \;\Rightarrow\; 300\,P_{0,2} = 264 \;\Rightarrow\; P_{0,2} = 0.88 P0,1=91.66−102(0.88)2=91.66−89.762=0.95P_{0,1} = \frac{91.66 - 102(0.88)}{2} = \frac{91.66 - 89.76}{2} = 0.95

債券Cの価値は 5(0.95)+105(0.88)=4.75+92.40=97.155(0.95) + 105(0.88) = 4.75 + 92.40 = 97.15 です。言い換えると、(5,105)=12(2,102)+12(8,108)(5, 105) = \tfrac{1}{2}(2, 102) + \tfrac{1}{2}(8, 108) なので、Cは 12(91.66+102.64)=97.15\tfrac{1}{2}(91.66 + 102.64) = 97.15 で取引されなければなりません。提示価格の97.50は0.35高すぎるので、連立方程式に解はありません。

Cを2本 195.00195.00 で売り、AとBを1本ずつ 194.30194.30 で買います。今日:+0.70+0.70。1年目:−10+2+8=0-10 + 2 + 8 = 0。2年目:−210+102+108=0-210 + 102 + 108 = 0。

問4 · 範囲の外にある債券を複製する

条件: 動画の2%の債券(P1=93.72P_1 = 93.72)と10%の債券(P2=108.60P_2 = 108.60)があります。クーポン12%の2年債(額面$100、利払いは年1回)は (12,112)(12, 112) を払います。これを複製する、2%の債券のウェイト w1w_1 と10%の債券のウェイト w2w_2、および連立方程式が矛盾しない価格を求めてください。

(12,112)(12, 112) を複製するウェイトはどれですか?

3本の方程式が矛盾しない価格はいくらですか?

✅ 正解です! −0.25(2,102)+1.25(10,110)=(12,112)-0.25(2, 102) + 1.25(10, 110) = (12, 112) なので、12%の債券は、10%の債券1.25本と、2%の債券0.25本の空売りを組み合わせたものです。その価値は −0.25(93.72)+1.25(108.60)=112.32-0.25(93.72) + 1.25(108.60) = 112.32 です。
❌ 惜しい! 半分ずつだと (6,106)(6, 106)、つまり動画の6%の債券になります。1年目の行は 2w1+10w2=122w_1 + 10w_2 = 12 を満たす必要があります。
❌ 惜しい! 2つの係数の行は比例していないので、ウェイトは必ず存在します。範囲の外では一方のウェイトが負になり、それは空売りを意味します。
❌ ウェイトを確認しましょう。 2年目から1年目を引くと 100(w1+w2)=100100(w_1 + w_2) = 100 なので、w1+w2=1w_1 + w_2 = 1 です。そのうえで 2w1+10w2=122w_1 + 10w_2 = 12 を解きます。
❌ 惜しい! 12(0.90)+112(0.96)=118.3212(0.90) + 112(0.96) = 118.32 は、2つの割引債価格を入れ替えています。1年目のクーポンには P0,1=0.96P_{0,1} = 0.96 を使います。
❌ 惜しい! 1.25(108.60)=135.751.25(108.60) = 135.75 は買いの部分しか評価していません。2%の債券0.25本の空売りで 0.25(93.72)=23.430.25(93.72) = 23.43 が入るので、その分だけ費用が下がります。
❌ 惜しい! 159.18159.18 は 0.25(93.72)0.25(93.72) を引かずに足しています。2%の債券のウェイトは負です。
❌ 価格を確認しましょう。 ウェイトを価格に当てはめます:w1(93.72)+w2(108.60)w_1(93.72) + w_2(108.60)。
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両方の日付でキャッシュフローを一致させます。

2w1+10w2=12,102w1+110w2=1122w_1 + 10w_2 = 12, \qquad 102w_1 + 110w_2 = 112

2本目から1本目を引くと 100w1+100w2=100100w_1 + 100w_2 = 100 なので、w1+w2=1w_1 + w_2 = 1 です。すると 2(1−w2)+10w2=122(1 - w_2) + 10w_2 = 12 より 8w2=108w_2 = 10 となり、w2=1.25w_2 = 1.25、w1=−0.25w_1 = -0.25 です。

連立方程式が要求する価格は次のとおりです。

−0.25(93.72)+1.25(108.60)=−23.43+135.75=112.32-0.25(93.72) + 1.25(108.60) = -23.43 + 135.75 = 112.32

割引債価格で検算すると、12(0.96)+112(0.90)=11.52+100.80=112.3212(0.96) + 112(0.90) = 11.52 + 100.80 = 112.32 です。提示価格が112.32を上回っていれば、12%の債券を売り、10%の債券を1.25本買い、2%の債券を0.25本空売りします。下回っていれば、その反対です。

正解数:0 / 4