ファイナンス理論 · 第8回 · 動画3 · インタラクティブ教材

信用スプレッドは何への対価か:デフォルト・プレミアム、リスクプレミアム、そして証券化へ

I重要な公式

公式名称説明
スプレッド=yBaa−y米国債(10年)\text{スプレッド} = y_{\text{Baa}} - y_{\text{米国債(10年)}}測定される信用スプレッドまだ投資適格に数えられる最も低い等級、ムーディーズのBaa格の債券の利回りを、非常に安全な10年物米国債の利回りと比べます
yprom=(FP)1/T−1,yexp=(E[ペイオフ]P)1/T−1y_{\text{prom}} = \left(\dfrac{F}{P}\right)^{1/T} - 1, \qquad y_{\text{exp}} = \left(\dfrac{E[\text{ペイオフ}]}{P}\right)^{1/T} - 1約束最終利回りと期待最終利回り(ゼロクーポン債)約束利回り:債券がデフォルトしなかった場合の利回りで、額面 FF 全額から求めます。期待利回り:起こり得る利回りを確率で加重平均したもので、動画のゼロクーポン債の例では期待ペイオフから計算します
DP=yprom−yexp,RP=yexp−yf\text{DP} = y_{\text{prom}} - y_{\text{exp}}, \qquad \text{RP} = y_{\text{exp}} - y_fデフォルト・プレミアムとリスクプレミアムyfy_f は、満期とクーポンが近い、デフォルト・リスクのない債券の利回りです
yprom−yf=(yprom−yexp)+(yexp−yf)=DP+RPy_{\text{prom}} - y_f = (y_{\text{prom}} - y_{\text{exp}}) + (y_{\text{exp}} - y_f) = \text{DP} + \text{RP}利回りスプレッドの分解2つのプレミアムを足すと、期待利回りが打ち消し合います

ポイント:動画の例では、デフォルト・リスクのない金利が8%で、リスクプレミアムが期待利回りを9%に、デフォルト・プレミアムが約束利回りを12%に押し上げます。4パーセントポイントのスプレッドは、リスクプレミアム1ポイントとデフォルト・プレミアム3ポイントの和です。

IIスプレッドを積み上げる

リスクのあるゼロクーポン債の価格と期待ペイオフで2つのプレミアムが決まり、その和はいつもスプレッドに等しくなります。

💡 この例では、4ポイントのうち3ポイントがデフォルトです。動画が紹介した研究では、実際のスプレッドのうちデフォルトが説明するのは半分をはるかに下回ります。10年物のA格の事業会社債で17.8%(エルトンら、2001年)、5〜22%(デリアネディスとゲスキー、2001年)、20〜30%(ファンとファン、2002年)です。

IIIスプレッドはどれだけ動くか

Baa格債と米国債の利回りのスプレッドは、1930年代の約7.5パーセントポイントから2026年の約1.43まで、大きく振れます。

IV誰がローンを持つのか

証券化は、間に立つ銀行を外します。借り手の負債が証券になり、それを投資家が直接買うのです。

V確認クイズ

問1 · スプレッドを分ける

条件:ある社債の約束最終利回りは 11.0%11.0\%、期待最終利回りは 8.5%8.5\% で、満期とクーポンが近いデフォルト・リスクのない債券の利回りは 7.0%7.0\% です。デフォルト・プレミアムとリスクプレミアムを求めてください。

✅ 正解です! DP=11.0−8.5=2.5%\text{DP} = 11.0 - 8.5 = 2.5\%、RP=8.5−7.0=1.5%\text{RP} = 8.5 - 7.0 = 1.5\% で、合わせて 4.0%4.0\% のスプレッドになります。
❌ 名前が入れ替わっています。 デフォルト・プレミアムは上の層で、約束利回り − 期待利回り(11.0−8.511.0 - 8.5)です。リスクプレミアムは下の層で、期待利回り − デフォルト・リスクのない利回り(8.5−7.08.5 - 7.0)です。
❌ 惜しい! 4.0%4.0\% はスプレッド全体 11.0−7.011.0 - 7.0 です。デフォルト・プレミアムは、期待利回りより上の部分だけです:11.0−8.511.0 - 8.5。
❌ 惜しい! 4.0%4.0\% は約束利回り − デフォルト・リスクのない利回り、つまりスプレッド全体です。リスクプレミアムは期待利回りから測ります:8.5−7.08.5 - 7.0。
解答を見る
DP=yprom−yexp=11.0%−8.5%=2.5%\text{DP} = y_{\text{prom}} - y_{\text{exp}} = 11.0\% - 8.5\% = 2.5\% RP=yexp−yf=8.5%−7.0%=1.5%\text{RP} = y_{\text{exp}} - y_f = 8.5\% - 7.0\% = 1.5\%

検算:DP+RP=2.5%+1.5%=4.0%=11.0%−7.0%\text{DP} + \text{RP} = 2.5\% + 1.5\% = 4.0\% = 11.0\% - 7.0\% で、利回りスプレッド全体に等しくなります。

問2 · 期待利回りにはどのペイオフを使うか

条件:ABCが発行した5年物のゼロクーポン債は、額面$1,000で、$620.92で売られています。デフォルトを考慮した期待ペイオフは$870.87です。この債券の期待最終利回りを求めてください。

✅ 正解です! (870.87/620.92)1/5−1=0.07(870.87/620.92)^{1/5} - 1 = 0.07 です。期待利回りに使うのは、額面ではなく期待ペイオフです。
❌ それは約束利回りです。 (1000/620.92)1/5−1=10%(1000/620.92)^{1/5} - 1 = 10\% は額面全額を使っていて、これが得られるのはABCがデフォルトしない場合だけです。期待利回りには、期待ペイオフの870.87を使います。
❌ 年率になっていません。 870.87/620.92−1≈40.3%870.87/620.92 - 1 \approx 40.3\% は、5年間全体の伸びです。先に5乗根をとりましょう:(870.87/620.92)1/5−1(870.87/620.92)^{1/5} - 1。
❌ 複利が無視されています。 40.3%/5≈8.05%40.3\% / 5 \approx 8.05\% は、5年間の伸びを複利を考えずに均等に割っています。最終利回りは複利で増えるので、5乗根をとりましょう:(870.87/620.92)1/5−1(870.87/620.92)^{1/5} - 1。
解答を見る

期待利回りでは、額面の代わりに、デフォルトを考慮したうえで期待されるペイオフを使います:

yexp=(870.87620.92)1/5−1=(1.40255)0.2−1=1.0700−1=7.00%y_{\text{exp}} = \left(\frac{870.87}{620.92}\right)^{1/5} - 1 = (1.40255)^{0.2} - 1 = 1.0700 - 1 = 7.00\%

比較のために求めると、約束利回りは (1000620.92)1/5−1=(1.61051)0.2−1=10.00%\left(\frac{1000}{620.92}\right)^{1/5} - 1 = (1.61051)^{0.2} - 1 = 10.00\% です。

問3 · 価格から2つのプレミアムを求める

条件:問2のABCの債券(額面$1,000、価格$620.92、期待ペイオフ$870.87、5年物、ゼロクーポン)と、$783.53で売られている額面$1,000の5年物ストリップス債があります。デフォルト・プレミアムとリスクプレミアムを求めてください。

デフォルト・プレミアム

リスクプレミアム

✅ 正解です! 積み上げると、デフォルト・リスクのない利回りが 5%5\%、期待利回りが 7%7\%、約束利回りが 10%10\% です。RP=2%\text{RP} = 2\% と DP=3%\text{DP} = 3\% で、5%5\% のスプレッドになります。
❌ それはスプレッド全体です。 10%−5%10\% - 5\% は、デフォルト・リスクのない利回りから約束利回りまでです。デフォルト・プレミアムは、期待利回りより上の部分だけです:10%−7%10\% - 7\%。
❌ それはリスクプレミアムです。 7%−5%=2%7\% - 5\% = 2\% は、期待利回り − デフォルト・リスクのない利回りです。デフォルト・プレミアムは、約束利回り − 期待利回りです。
❌ それは利回りで、プレミアムではありません。 7%7\% はABCの期待利回りそのものです。プレミアムは2つの利回りの差で、ここでは約束利回り − 期待利回りです。
❌ それはスプレッド全体です。 10%−5%10\% - 5\% には、デフォルト・プレミアムが含まれています。リスクプレミアムは期待利回りから測ります:7%−5%7\% - 5\%。
❌ それはデフォルト・プレミアムです。 10%−7%=3%10\% - 7\% = 3\% は、約束利回り − 期待利回りです。リスクプレミアムは、期待利回り − デフォルト・リスクのない利回りです。
❌ それは利回りで、プレミアムではありません。 7%7\% は期待利回りです。デフォルト・リスクのない 5%5\% を引くと、リスクを負うことへの上乗せが求まります。
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ステップ1:3つの利回り

yf=(1000783.53)1/5−1=(1.27628)0.2−1=5.00%y_f = \left(\frac{1000}{783.53}\right)^{1/5} - 1 = (1.27628)^{0.2} - 1 = 5.00\% yexp=(870.87620.92)1/5−1=7.00%,yprom=(1000620.92)1/5−1=10.00%y_{\text{exp}} = \left(\frac{870.87}{620.92}\right)^{1/5} - 1 = 7.00\%, \qquad y_{\text{prom}} = \left(\frac{1000}{620.92}\right)^{1/5} - 1 = 10.00\%

ステップ2:2つのプレミアム

DP=10%−7%=3%,RP=7%−5%=2%\text{DP} = 10\% - 7\% = 3\%, \qquad \text{RP} = 7\% - 5\% = 2\%

検算:DP+RP=5%=10%−5%\text{DP} + \text{RP} = 5\% = 10\% - 5\% で、利回りスプレッド全体に等しくなります。

問4 · 実際のスプレッドのうち、デフォルトの分はどれだけか

条件:2026年9月半ば、Baa格債と米国債の利回りのスプレッドは約 1.431.43 パーセントポイントでした。そのうち 17.8%17.8\% をデフォルトが占めるとします。これは、エルトンら(2001年)が10年物のA格の事業会社債について見いだした割合です。デフォルトが説明するのは、スプレッドの約何パーセントポイントですか。

✅ 正解です! 1.43×0.178≈0.251.43 \times 0.178 \approx 0.25 ポイントです。残りの 1.181.18 ポイントは、税の効果とシステマティック・リスク・プレミアムへの対価です。
❌ それはもう一方の部分です。 1.43−0.25=1.181.43 - 0.25 = 1.18 は、デフォルトでは説明できない部分、つまり税の効果とシステマティック・リスク・プレミアムです。
❌ 惜しい! 17.8%17.8\% はスプレッドに占める割合で、ポイント数ではありません。掛け算しましょう:1.43×0.1781.43 \times 0.178。
❌ 割合が違います。 1.071.07 は 1.431.43 の 75%75\% で、これは動画のXYZの例でのデフォルトの割合(44 ポイントのうち 33)です。あの例は計算の練習のために作られたもので、研究では、デフォルトの割合は半分をはるかに下回ります。
解答を見る
デフォルトの部分=0.178×1.43=0.25454≈0.25 パーセントポイント\text{デフォルトの部分} = 0.178 \times 1.43 = 0.25454 \approx 0.25 \text{ パーセントポイント} 残り=1.43−0.25=1.18 パーセントポイント\text{残り} = 1.43 - 0.25 = 1.18 \text{ パーセントポイント}

デフォルトの割合を推定している3つの研究(17.8%、5〜22%、20〜30%)では、デフォルトが説明するのはスプレッドの半分をはるかに下回ります。スプレッドの大部分は、税やシステマティック・リスク・プレミアムなど、ほかのものへの対価なのです。

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