ファイナンス理論 · 第9回 · 動画1 · インタラクティブ教材
普通株はなぜイノベーションを支えるのか:残余請求権・有限責任・議決権・空売り
I重要な公式
ポイント:2つの請求権は企業をぴったり分け合います:min(V,F)+max(V−F,0)=V。債券保有者の取り分に上限があるので、上値(アップサイド)はすべて株主のものになり、有限責任は株主の下値を出資額までに抑えます。そこに大勢の所有者のための議決権と、彼らを呼び込む公開市場が加われば、株式は、リスクが高く野心的な事業に資金を出すための仕組みになります。
II上限のある請求権と残余請求権
債券保有者が約束された額を超えて受け取ることはありません。株主はそれを上回る分をすべて受け取り、有限責任のもとでは、失うのは最大でも出資額までです。
III8回の倒産、そして9社目
有限責任があったから、ロー教授が紹介した講演者は8回の倒産から手を引いて次に挑めました。1回失敗したら終わりというルールなら、最初の1社で止まっていたはずです。
IV空売りが悪いニュースを価格に取り込む
株が無価値だと知っていても空売りできないトレーダーは、価格が0に近づくずっと前に、売る株がなくなってしまいます。
💡 講座の前半で取り上げた2008年9月のSECによる空売り禁止は、金融株だけが対象でした。それらの株については、この経路が断たれたことになります。
V確認クイズ
問1 · 満期に誰が何を受け取るか
条件:ある企業の債券保有者は、額面1億ドルと最終クーポン1,000万ドルを今日受け取ることになっています。企業の資産の価値は5億ドルです。株主が受け取る額を求めてください。
✅ 正解です! 債券保有者が約束された
100+10=110(単位:100万ドル)を先に受け取り、残りの
500−110=390 が株主のものになります。
❌ 惜しいですが… 債券保有者の請求権は、額面に途中のクーポンを加えた額です。額面の1億ドルだけでなく、1億1,000万ドル全体を差し引きます。
❌ 惜しい! 株主は残余請求権者です。最初に支払いを受ける債券保有者の後ろに並びます。
❌ 惜しい! 1億1,000万ドルは、上限のある債券保有者の請求権です。株主はそれ以外のすべてを受け取ります。
❌ 惜しい! まず債券保有者に約束された支払いをします。株主が受け取るのは、その残りです。
解答を見る
単位を100万ドルとすると、約束された支払いは F=100+10=110、企業の価値は V=500 です。
債券保有者=min(500, 110)=110
株主=max(500−110, 0)=390
株主が受け取るのは3億9,000万ドルです。企業の価値がもし50億ドルだったとしても、債券保有者が受け取るのは1億1,000万ドルのままで、増えた1ドル1ドルはすべて株主のものになります。債券保有者の請求権には上限があり、残余にはありません。
問2 · 失いうる最大の額
条件:あなたはあるスタートアップの普通株を$50,000分買います。そのスタートアップは、債権者に300万ドルの債務を負ったまま倒産し、資産の価値は100万ドルしかありません。株主としてあなたが失いうる最大の額を求めてください。
✅ 正解です! 有限責任です。株主が失いうるのは最大で、自分が出したお金の全部であって、持っているものすべてではありません。債権者が100万ドルの資産を受け取り、残りの損失を負担します。
❌ 惜しい! 200万ドルの不足額は債権者の損失です。株主は出資額を超えて何も負いません。
❌ 惜しい! それは無限責任のもとでの損失です。近代的な株式会社が登場する前の世界では、所有者が会社の債務を肩代わりしなければなりませんでした。
❌ 惜しい! 「全部」とは自分が出したお金の全部のことで、家や貯金や自由ではありません。それを保証するのが有限責任です。
解答を見る
単位を100万ドルとすると、債権者への債務は F=3、企業の価値は V=1 です:
債権者=min(1, 3)=1,株主=max(1−3, 0)=0
あなたの株は何も払わないので、株に払った$50,000を失いますが、それ以上は1セントも失いません。不足額 3−1=2(100万ドル)は債権者が負担します。無限責任のもとでは、その200万ドルをあなたが個人で負うことになり、昔なら、返せなければ牢屋に入れられることもありえました。
問3 · 天井のない上値と上限のある上値
条件:創業者が企業に200万ドルの自己資本を出資し、銀行が企業に500万ドルを期間1年、金利8%で貸すので、企業は540万ドルを返済しなければなりません。企業は有限責任です。以下のそれぞれのリターンを求めてください。
1年後に企業の価値が1,240万ドルなら、創業者のリターンは
代わりに企業の価値が400万ドルなら、銀行のリターンは
✅ 正解です! 良い状態では、創業者が
+250% を得る一方、銀行は上限の
+8% にとどまります。悪い状態では、銀行が400万ドル全部を受け取っても
20% の損失を出し、創業者は200万ドルの出資を失いますが、それ以上は失いません。
❌ 惜しいですが… 創業者が受け取るのは700万ドルで、出資額の
3.5× です。
リターンは出した200万ドルを差し引いて求めます:
(7.0−2.0)/2.0=250%。
❌ 惜しい! 12.4/2.0−1 は企業全体を創業者のものとして扱っています。銀行が先に540万ドルを受け取ります。
❌ 惜しい! 12.4/5.0−1 は融資額で割っています。創業者のリターンは、残余
12.4−5.4 を創業者自身の200万ドルと比べたものです。
❌ 惜しい! +8% は約束されたリターンで、銀行が得られる最大のリターンです。企業に400万ドルしかなければ、全額は支払われません。
❌ 惜しいですが… 4.0/5.4−1 は、受け取る額を約束された額と比べています。リターンは、銀行が実際に貸した500万ドルと比べて測ります。
❌ 惜しい! −100% はこの状態での創業者のリターンです。列の先頭にいる銀行は、400万ドルをすべて受け取ります。
❌ 創業者のリターンを確かめましょう。 まず銀行に540万ドルを払い、残りを200万ドルの出資額と比べます。
❌ 銀行のリターンを確かめましょう。 銀行が受け取るのは
min(V,5.4) です。それを貸した500万ドルと比べます。
解答を見る
単位を100万ドルとすると、F=5.0×1.08=5.4 です。
企業の価値が12.4の場合:銀行は min(12.4,5.4)=5.4 を受け取り、リターンは 5.4/5.0−1=8% です。創業者が受け取るのは
max(12.4−5.4, 0)=7.0,rE=2.07.0−2.0=2.50=250%
企業の価値が4.0の場合:銀行がすべてを受け取ります。min(4.0,5.4)=4.0 なので:
rB=5.04.0−5.0=−0.20=−20%
創業者が受け取るのは max(4.0−5.4,0)=0 で、リターンは −100% です。損失は200万ドルの出資額で止まります。銀行のリターンが +8% を上回ることはありませんが、創業者のリターンには天井がありません。
問4 · 悪いニュースで利益を得る
条件:あるトレーダーが200株を借り、1株$25で空売りします。悪いニュースが市場に届いて価格は$5まで下がり、トレーダーは200株を買い戻して返します。トレーダーの損益を求めてください。
✅ 正解です! 200×25=5000 で売り、
200×5=1000 で買い戻したので、$4,000の利益です。空売りは価格が下がると利益が出るので、悪いニュースを価格に押し込む働きをします。
❌ 向きを確かめましょう。 価格の下落で損をするのは、株を持っている人です。空売りをする人は先に売って後で買い戻すので、下落は利益になります。
❌ 惜しい! $5,000は空売りで得た代金ですが、借りた株は買い戻して返さなければならず、それに$1,000かかります。
❌ 惜しい! $1,000は株を買い戻す費用です。利益は、売却代金からその費用を引いたものです。
❌ 惜しい! 1株あたりの利益は
P売却−P買い戻し です。それに株数を掛けます。
解答を見る
1株あたりの利益=P売却−P買い戻し=25−5=20
利益の合計=200×20=4000
トレーダーの利益は$4,000です。空売りのたびに、トレーダーが割高だと考える株に売りの圧力が加わるので、株を持っていないトレーダーでも、価格を悪いニュースのほうへ動かせます。空売りが禁止されていれば、このトレーダーはそのニュースにまったく反応できなかったはずです。
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