線形代数 · 第1回 · 動画3 · インタラクティブ教材

Ax = b はいつでも解けるのか

I重要な公式

公式 名称 成り立つ場合
Ax=x1a1+x2a2+⋯+xnanA\mathbf{x} = x_1\mathbf{a}_1 + x_2\mathbf{a}_2 + \cdots + x_n\mathbf{a}_n AxA\mathbf{x} の列の見方(列ピクチャー) 常に成り立つ — AxA\mathbf{x} は列の一次結合(線形結合)
x=A−1b\mathbf{x} = A^{-1}\mathbf{b} 逆行列による解の公式 AA が正則(可逆)のときに限る
独立な列 ⇒\Rightarrow Rn\mathbb{R}^n 全体を張る 正則 Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} がすべての b\mathbf{b} に対して解ける
従属な列 ⇒\Rightarrow 部分空間しか張らない 特異 Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} が一部の b\mathbf{b} に対してしか解けない

II可視化1 — 列を組み合わせて目標に届く

AxA\mathbf{x} は、定数倍した列を、矢印の先に次の矢印の根元をつなげて並べたものです。重み x1,x2x_1,x_2 を選んで、b=(5,4)\mathbf{b}=(5,4) にぴったり届かせましょう。

💡 チャレンジ:b\mathbf{b} にぴったり届かせてみましょう(重みは x1=2, x2=1x_1=2,\ x_2=1 です)。a1=(2,1)\mathbf{a}_1=(2,1) と a2=(1,2)\mathbf{a}_2=(1,2) は独立な方向を向いているので、重みをうまく選べば、R2\mathbb{R}^2 のどの点にも届きます。

III可視化2 — 行列式と特異性

a1,a2\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2 がつくる平行四辺形の面積は ∣det⁡A∣|\det A| です。この面積は、列が従属になったときに限って 0 につぶれます。

💡 det⁡A=0\det A = 0 のとき、届く範囲は平面全体から、a1\mathbf{a}_1 を通る1本の直線へとつぶれます。このとき行列は特異です。

IV可視化3 — b は列空間に入っているか

この特異行列の列空間は、平面 b3=b1+b2b_3=b_1+b_2 です。Ax=bA\mathbf{x}=\mathbf{b} が解けるのは、b\mathbf{b} が対角線の上に乗るときだけです。

💡 a3=a1+a2\mathbf{a}_3=\mathbf{a}_1+\mathbf{a}_2 なので、3本の列はすべて1枚の平面に乗っています。そのため、平面から外れた b\mathbf{b} には決して届きません。

V確認クイズ

問1

A=(1324)A = \begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 2 & 4 \end{pmatrix}、x=(21)\mathbf{x} = \begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix} のとき、列の見方を使って AxA\mathbf{x} を計算してください。

ヒント:Ax=x1⋅(1列目)+x2⋅(2列目)A\mathbf{x} = x_1 \cdot (\text{1列目}) + x_2 \cdot (\text{2列目})

✅ 正解です! 1列目を x1=2x_1 = 2 倍、2列目を x2=1x_2 = 1 倍して、たし合わせます。

❌ 惜しい! 思い出しましょう:Ax=x1⋅(1列目)+x2⋅(2列目)A\mathbf{x} = x_1 \cdot (\text{1列目}) + x_2 \cdot (\text{2列目})。それぞれの列に対応する重みをかけてから、たし合わせます。

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解答:

AA の列は a1=(12)\mathbf{a}_1 = \begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix} と a2=(34)\mathbf{a}_2 = \begin{pmatrix}3\\4\end{pmatrix} です。

列の見方を使うと:

Ax=x1a1+x2a2=2(12)+1(34)=(24)+(34)=(58)A\mathbf{x} = x_1 \mathbf{a}_1 + x_2 \mathbf{a}_2 = 2\begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix} + 1\begin{pmatrix}3\\4\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}2\\4\end{pmatrix} + \begin{pmatrix}3\\4\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}5\\8\end{pmatrix}

答えは (5, 8) です。

よくある間違い:

  • (7, 10) は、重みを入れ替えた結果です:1⋅a1+2⋅a21 \cdot \mathbf{a}_1 + 2 \cdot \mathbf{a}_2
  • (4, 10) は、列に重みをかけるかわりに、各列と x\mathbf{x} の内積をとった結果です

問2

正しいか誤りか:3×33 \times 3 行列で a3=2a1−a2\mathbf{a}_3 = 2\mathbf{a}_1 - \mathbf{a}_2 が成り立つならば、その行列は正則(可逆)である。

✅ 正解です! ある列がほかの列の組み合わせで書けるとき、列は従属で、行列は特異です。

❌ 惜しい! a3=2a1−a2\mathbf{a}_3 = 2\mathbf{a}_1 - \mathbf{a}_2 なら、3列目は何も新しいものを加えません。ほかの列の組み合わせなので、列は従属になります。

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解答:

a3=2a1−a2\mathbf{a}_3 = 2\mathbf{a}_1 - \mathbf{a}_2 なら、3列目は1列目と2列目の一次結合です。

つまり、列は従属です。

従属な列⇒特異(可逆でない)⇒A−1 は存在しない\text{従属な列} \Rightarrow \text{特異(可逆でない)} \Rightarrow A^{-1} \text{ は存在しない}

この主張は誤りです。

問3

4×44 \times 4 行列 AA が特異であることがわかっています。方程式 Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} について正しいのはどれですか。

✅ 正解です! 特異とは、列空間が R⁴ 全体を埋め尽くさないということです。届く目標もありますが、決して届かない目標もあります。

❌ 惜しい! 動画を思い出しましょう。特異だからといって、解がないわけではありません。列が空間全体を張らないので、一部の右辺にしか届かない、という意味です。

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解答:

特異行列は従属な列をもつので、次のことが言えます。

  • 列空間は R4\mathbb{R}^4 の真部分空間である(全体ではない)
  • b\mathbf{b} が列空間の中にあるとき → Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} は解をもつ
  • b\mathbf{b} が列空間の外にあるとき → Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} は解をもたない

動画の重要な洞察:特異 ≠\neq「解がまったくない」。特異とは「すべての b\mathbf{b} に届くわけではない」という意味です。列空間の中にある目標もあれば(解ける)、その外にある目標もあります(解けない)。

答えは「Ax = b は、一部の b に対しては解けるが、すべての b に対して解けるわけではない」です。

問4

各成分をでたらめに選んで、100×100100 \times 100 行列をつくります。この行列について、最も起こりやすいのはどれですか。

✅ 正解です! 特異行列は「測度ゼロ」です。列が従属になるには、とてつもなくありえない偶然が必要です。でたらめな行列は、ほぼ確実に可逆です。

❌ 惜しい! 動画のたとえを思い出しましょう。列が従属になるには、でたらめに選んだベクトルが、もっと低い次元の部分空間にぴったり乗らなければなりません。それが起こるのは確率ゼロです。

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解答:

でたらめな行列が特異になるには、列がきわめて精密な関係を満たさなければなりません。ある列が、ほかの列で張られる部分空間にぴったり乗っている必要があるのです。

動画のたとえで考えましょう。100次元空間では、100番目の列にとって「まずい」方向は、100次元空間の中の99次元の超平面をなします。でたらめに選んだベクトルがその超平面に乗るのは、確率ゼロの出来事です。でたらめに投げたダーツが、厚みのまったくない面にちょうど当たるのと同じです。

でたらめな正方行列は、大きさにかかわらずほぼ確実に正則(可逆)です。

答えは「ほぼ確実に正則である」です。

正解数:0 / 4