線形代数 · 第1回 · 動画4 · インタラクティブ教材

行列とベクトルの積:Ax を計算する2つの方法

I重要な公式

公式 名称 説明
(Ax)i=rowi(A)⋅x(Ax)_i = \text{row}_i(A) \cdot x 行の方法(内積の方法) AxAx の各成分は、AA の行と xx の内積
Ax=x1a1+x2a2+⋯Ax = x_1 \mathbf{a}_1 + x_2 \mathbf{a}_2 + \cdots 列の方法(一次結合の方法) AxAx は AA の列の重み付きの和
a⋅b=a1b1+a2b2\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2 内積(ドット積) 対応する成分どうしをかけて、すべてたし合わせる
AA の列空間 ={Ax:x∈Rn}= \{Ax : x \in \mathbb{R}^n\} 列空間 ありうる出力 AxAx 全体の集合

II可視化1 — 2通りのまとめ方、同じ答え

同じ計算を、行の方法は横にまとめ、列の方法は縦にまとめます。結果はまったく同じです。

行の方法 · 内積

列の方法 · 一次結合

III可視化2 — 列から Ax を組み立てる

AxAx は、AA の各列をその重み x1,x2x_1, x_2 で伸び縮みさせ、先端に次の矢印の根元をつなげてたしたものです。

💡 次への橋渡し:この2本の列は平行ではないので、重みをうまく選べば平面上のどの点にも届きます。この届く点全体の集合こそ、次に調べる列空間です。

IV可視化3 — 列空間

出力 AxAx は、AA の列が張る空間を埋め尽くします。列が独立なら平面全体、平行なら直線です。

V確認クイズ

問1 · 行の方法による計算

行の方法(内積の方法)を使って、AxAx の第一成分を計算してください。ただし、

A=[3−241],x=[25]A = \begin{bmatrix} 3 & -2 \\ 4 & 1 \end{bmatrix}, \quad x = \begin{bmatrix} 2 \\ 5 \end{bmatrix}

✅ 正解です! 1行目 · x = 3(2) + (−2)(5) = 6 − 10 = −4 です。

❌ 惜しい! A の1行目を使います。3 に 2 を、(−2) に 5 をかけて、その積をたしましょう。

解答を見る

解答:

AxAx の第一成分は、AA の1行目と xx の内積です。

Row 1⋅x=(3)(2)+(−2)(5)=6+(−10)=6−10=−4\text{Row 1} \cdot x = (3)(2) + (-2)(5) = 6 + (-10) = 6 - 10 = -4

答えは −4\mathbf{-4} です。

よくある間違い:

  • 3(2)+2(5)=163(2) + 2(5) = 16 と計算して 16 とする(−2-2 の負の符号を忘れている)
  • 3(2)+1(5)=113(2) + 1(5) = 11 と計算して 11 とする(異なる行の成分を混ぜている)

問2 · 列の方法による式

列の方法(一次結合の方法)を使うとき、次の場合の AxAx を正しく表す式はどれですか。

A=[3−241],x=[25]A = \begin{bmatrix} 3 & -2 \\ 4 & 1 \end{bmatrix}, \quad x = \begin{bmatrix} 2 \\ 5 \end{bmatrix}

✅ 正解です! A の各列に、x の対応する成分で重みをつけます。

❌ 惜しい! まず A の列(縦の並び)を取り出し、それに x の成分で重みをつけるのでしたね。

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解答:

列の方法では、次のように考えます。

Ax=x1⋅(col 1)+x2⋅(col 2)Ax = x_1 \cdot (\text{col 1}) + x_2 \cdot (\text{col 2})

AA の列は、縦の並びです。

  • 1列目 = [34]\begin{bmatrix} 3 \\ 4 \end{bmatrix}
  • 2列目 = [−21]\begin{bmatrix} -2 \\ 1 \end{bmatrix}

x1=2x_1 = 2、x2=5x_2 = 5 なので、

Ax=2[34]+5[−21]Ax = 2 \begin{bmatrix} 3 \\ 4 \end{bmatrix} + 5 \begin{bmatrix} -2 \\ 1 \end{bmatrix}

まとめて書くと 2 · [3, 4] + 5 · [−2, 1]

ほかの選択肢が誤りである理由:

  • 「2 · [3, −2] + 5 · [4, 1]」は、列ではなく行を使っている
  • 「3 · [2, 5] + (−2) · [2, 5]」は、そもそも A の列を取り出していない
  • 「[3(2)+(−2)(5), 4(2)+1(5)]」は結果を成分ごとに計算している。これは行の方法

問3 · 列空間(正誤問題)

正しいか誤りか:2×22 \times 2 行列 AA の2本の列が同じ方向を向いている(一方が他方の定数倍である)とき、AA の列空間は R2\mathbb{R}^2 全体である。

✅ 正解です! 平行な(従属な)列から作れるのは、1本の直線上のベクトルだけです。R² 全体にはなりません。

❌ 惜しい! 平行な2本のベクトルを組み合わせると何が起こるか考えてみましょう。あらゆる方向に届くでしょうか。

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解答:誤り。

一方の列が他方の定数倍なら(たとえば col2=k⋅col1\text{col}_2 = k \cdot \text{col}_1)、どんな一次結合も

x1⋅col1+x2⋅col2=x1⋅col1+x2k⋅col1=(x1+kx2)⋅col1x_1 \cdot \text{col}_1 + x_2 \cdot \text{col}_2 = x_1 \cdot \text{col}_1 + x_2 k \cdot \text{col}_1 = (x_1 + k x_2) \cdot \text{col}_1

となり、col1\text{col}_1 の定数倍にすぎません。列空間は原点を通る直線であり、R2\mathbb{R}^2 全体ではありません。

R2\mathbb{R}^2 全体を埋め尽くすには、2本の列が一次独立、つまり本当に異なる方向を向いている必要があります。上の可視化3で列を平行にして、確かめてみましょう。

問4 · Ax = b の解釈

方程式 Ax=bAx = b は、列の方法を使って捉え直すことができます。Ax=bAx = b が本当に問うていることを最もよく表しているのはどれですか。

✅ 正解です! 方程式 Ax = b は、A の列から b を作れるかどうかを問うています。これが列の方法の中心となる考え方です。

❌ 惜しい! 列の方法によれば、Ax は常に A の列の一次結合です。つまり Ax = b は、b がそうした一次結合の1つかどうかを問うているのです。

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解答:「b は A の列の一次結合か?」

列の方法では、Ax=bAx = b を次のように書き直します。

x1a1+x2a2+⋯+xnan=bx_1 \mathbf{a}_1 + x_2 \mathbf{a}_2 + \cdots + x_n \mathbf{a}_n = b

これが問うているのは、重み x1,x2,…,xnx_1, x_2, \ldots, x_n をうまく選んで、AA の列の一次結合を bb に等しくできるか、ということです。

言い換えると、bb は AA の列空間に入っているか?

この捉え直しこそ、この動画の重要な洞察です。この先の線形代数のすべてを動かしていきます。

  • 連立方程式を解く:正しい重み xx を見つけること
  • 解の存在:bb は列空間に入っているか
  • 線形変換:AA は xx を、自分の列の一次結合へ写す

AxAx を見るたびに、こう考えてください。自分はどんな A の列の組み合わせを作っているのだろう?

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