線形代数 · 第10回 · 動画1 · インタラクティブ教材

一つの行列、四つの世界:階数が明かす行列の隠れた構造

I重要な公式

部分空間 記号 属する空間 次元
列空間 C(A)C(A) Rm\mathbb{R}^m rr
零空間 N(A)N(A) Rn\mathbb{R}^n n−rn - r
行空間 C(AT)C(A^T) Rn\mathbb{R}^n rr
左零空間 N(AT)N(A^T) Rm\mathbb{R}^m m−rm - r

階数(ランク) rr = 行簡約したあとのピボットの個数。つねに r≤min⁡(m,n)r \leq \min(m, n) が成り立ちます。

次元を数える: Rn\mathbb{R}^n では r+(n−r)=nr + (n - r) = n。   Rm\mathbb{R}^m では r+(m−r)=mr + (m - r) = m。

II可視化1 — 階数は各空間をどう分けるか

階数 rr は、Rn\mathbb{R}^n を行空間 ⊕\oplus 零空間に、Rm\mathbb{R}^m を列空間 ⊕\oplus 左零空間に切り分けます。

💡 チャレンジ: 2つの零空間が両方とも同時に消える(零ベクトルだけになる)には、mm、nn、rr がどんな条件を満たせばよいでしょうか。

III可視化2 — 行簡約から階数を読み取る

行簡約をすると、階数がピボットの個数として現れます。そして、このたった1つの数 rr が、4つの部分空間の次元をすべて決めます。

行列 A

階段形 U · 緑のマスがピボット

💡 チャレンジ: 一覧の中で、左零空間が自明(dim⁡0\dim 0)になる行列はどれでしょうか。また、そうなるには rr がいくつでなければならないでしょうか。

IV可視化3 — 列のレシピとしての零空間

零空間のベクトル (1,−2,1)T(1,-2,1)^T は、列を組み合わせるレシピです。c1−2c2+c3=0c_1 - 2c_2 + c_3 = \mathbf{0} なので、Ax=0A\mathbf{x} = \mathbf{0} はどんなスカラー tt に対しても成り立ちます。

A · x (x = t·(1, −2, 1)ᵀ)

どの行も打ち消し合って 0 になる

V確認クイズ

問1

行列 AA は 5×75 \times 7 で、階数は r=3r = 3 です。零空間 N(A)N(A) の次元はいくつですか。

✅ 正解です! dim N(A) = n − r = 7 − 3 = 4 です。

❌ 惜しい! 思い出しましょう:dim N(A) = n − r です。ここで n は行の数(5)ではなく、列の数(7)です。

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解答:

N(A)N(A) は Rn\mathbb{R}^n の中にあります。ここで n=7n = 7 は列の数です。

dim⁡N(A)=n−r=7−3=4\dim N(A) = n - r = 7 - 3 = 4

行簡約をすると n−r=4n - r = 4 個の自由変数が出てきて、そのそれぞれが零空間の基底ベクトルを1つずつ与えます。

問2

m×nm \times n 行列 AA について、列空間 C(A)C(A) と零空間 N(A)N(A) は、それぞれどの空間の中にありますか。

✅ 正解です! 列空間は R^m(出力側)に、零空間は R^n(入力側)にあります。

❌ 惜しい! 考えてみましょう:列は m 個の成分をもつ → C(A) ⊆ R^m。Ax = 0 のベクトル x は n 個の成分をもつ → N(A) ⊆ R^n。

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解答:

  • 列空間 C(A)C(A):各列は mm 個の成分をもつので、C(A)⊆RmC(A) \subseteq \mathbb{R}^m です(AxA\mathbf{x} が行き着く出力空間)。
  • 零空間 N(A)N(A):x\mathbf{x} のうち、Ax=0A\mathbf{x} = \mathbf{0} を満たすもの全体です。x\mathbf{x} は nn 個の成分をもつので、N(A)⊆RnN(A) \subseteq \mathbb{R}^n です(入力空間)。

m≠nm \neq n のときは、2つは異なる全体空間に属します。

問3

階数 3 の 6×46 \times 4 行列 BB について、4つの基本部分空間の次元はそれぞれいくつですか。

(順に dim C(B)、dim N(B)、dim C(B^T)、dim N(B^T))

✅ 正解です! 次元の和がきちんと合います。R⁴ では 3 + 1 = 4、R⁶ では 3 + 3 = 6 です。

❌ 惜しい! 注意:dim N(B) = n − r では列の数(4)を、dim N(Bᵀ) = m − r では行の数(6)を使います。

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解答:

BB は 6×46 \times 4 なので、m=6m = 6、n=4n = 4、r=3r = 3 です。

部分空間 公式 次元
C(B)C(B) rr 3
N(B)N(B) n−r=4−3n - r = 4 - 3 1
C(BT)C(B^T) rr 3
N(BT)N(B^T) m−r=6−3m - r = 6 - 3 3

検算: R4\mathbb{R}^4 では 3+1=43 + 1 = 4 ✓   R6\mathbb{R}^6 では 3+3=63 + 3 = 6 ✓

よくある落とし穴は「3, 3, 3, 1」という選択肢で、2つの零空間の次元を取り違えています。N(A)N(A) には nn を、N(AT)N(A^T) には mm を使うことを覚えておきましょう。

問4

正しいか誤りか:行簡約は行列の行空間を保つ(階段形は元の行列と同じ行空間をもつ)。

✅ 正解です! 行基本変形のあとも、新しい行はどれも元の行の張る空間の中にあるので、行空間は変わりません。

❌ 惜しい! 行基本変形はどれも、ある行を今ある行の一次結合で置き換えます。張る空間は変わりません。

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解答:正しい

行基本変形はどれも、ある行を今ある行の一次結合で置き換えます。新しい行の組は元の行の組と同じ空間を張るので、行空間は変わりません。

だからこそ、階段形の 0 でない行は、元の行列の行空間の基底としてそのまま使えるのです。

⚠️ 重要な対比: 行簡約は列空間を保ちません。C(A)C(A) の基底を求めるには、階段形でピボット列を見つけてから、それに対応する列を元の行列 AA から取り出す必要があります。

正解数:0 / 4