線形代数 · 第10回 · 動画2 · インタラクティブ教材

一回の行簡約で四つの基底

I重要な公式

部分空間 基底の取り方 次元 属する空間
列空間 C(A)C(A) A のピボット列(元の行列から!) rr Rm\mathbb{R}^m
零空間 N(A)N(A) R から求めた特殊解 n−rn - r Rn\mathbb{R}^n
行空間 C(AT)C(A^T) R の 0 でない行 rr Rn\mathbb{R}^n
左零空間 N(AT)N(A^T) 零行に対応する E の行(EA=REA = R) m−rm - r Rm\mathbb{R}^m

次元定理: r+(n−r)=nr + (n - r) = n、r+(m−r)=mr + (m - r) = m

II可視化1 — 行簡約を一歩ずつ

AA を、1回に1つの操作ずつ簡約行階段形へと簡約していきます。ピボットはどこに現れ、どの列が自由列として残るでしょうか。

ピボット 自由列 零行

💡 AA の1行目と3行目は同じなので、1つの行が 0 につぶれます。階数は r=2r = 2 で、ピボットは1〜2列目にあり、3〜4列目は自由列です。

III可視化2 — 列空間を決めるのは AA であって RR ではない

AA のピボット列の一次結合は (1,1,1)(1,1,1) に届きます。では、RR の列の一次結合で同じことができるでしょうか。

A のピボット列

R の列

💡 RR のどの列も第3成分が 0 なので、どんな一次結合でも (1,1,1)(1,1,1) には届きません。行簡約は行空間を保ちますが、列空間は変えてしまいます。だからこそ、C(A)C(A) の基底は AA から読み取らなければならないのです。

IV可視化3 — 1回の簡約から4つの基底

AA を RR へ簡約し、あわせて EE を記録しておくと、それぞれの基本部分空間の基底が手に入ります。AA、RR、EE のどの部分が、どの基底を与えるのでしょうか。

選んだ部分空間の基底

💡 階数 r=2r = 2 が、すべての次元を決めます。r+(n−r)=nr + (n - r) = n、r+(m−r)=mr + (m - r) = m なので、4つの部分空間は2つの組になって釣り合います。

Vまとめ:1回の計算で4つの基底すべて

A=[123111211231]A = \begin{bmatrix} 1 & 2 & 3 & 1 \\ 1 & 1 & 2 & 1 \\ 1 & 2 & 3 & 1 \end{bmatrix}、R=[101101100000]R = \begin{bmatrix} 1 & 0 & 1 & 1 \\ 0 & 1 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{bmatrix}、E=[−1201−10−101]E = \begin{bmatrix} -1 & 2 & 0 \\ 1 & -1 & 0 \\ -1 & 0 & 1 \end{bmatrix}、階数 r=2r = 2 のとき:

部分空間 基底 次元 取り方
列空間 C(A)C(A) {(1,1,1),  (2,1,2)}\{(1,1,1),\; (2,1,2)\} r=2r = 2 A のピボット列
零空間 N(A)N(A) {(−1,−1,1,0),  (−1,0,0,1)}\{(-1,-1,1,0),\; (-1,0,0,1)\} n−r=2n - r = 2 R から求めた特殊解
行空間 C(AT)C(A^T) {(1,0,1,1),  (0,1,1,0)}\{(1,0,1,1),\; (0,1,1,0)\} r=2r = 2 R の 0 でない行
左零空間 N(AT)N(A^T) {(−1,0,1)}\{(-1,0,1)\} m−r=1m - r = 1 零行に対応する E の行

次元の検算: 2+2=4=n2 + 2 = 4 = n ✓、2+1=3=m2 + 1 = 3 = m ✓

VI確認クイズ

問1

行簡約のあとで列空間の基底を取り出すとき、ピボット列の位置は RR から読み取ります。では、実際の基底ベクトルはどの行列から取りますか。

✅ 正解です! R はどの列がピボット列かを教えてくれますが、実際の基底ベクトルは A から取ります。

❌ 惜しい! 行基本変形は列空間を変えてしまうので、R の列のベクトルは A の列とは違います。

解答を見る

解答:

列空間の基底は、元の行列 A から取らなければなりません。

行簡約からわかるのは、どの列がピボット列か(その位置)です。実際の基底ベクトルは AA から取る必要があり、RR から取ってはいけません。

なぜでしょうか。 行基本変形は列空間を変えてしまうからです。たとえば:

  • AA の1列目:(1,1,1)(1, 1, 1) — 当然 C(A)C(A) に入っています
  • RR の1列目:(1,0,0)(1, 0, 0) — まったく別のベクトルです

RR のどの列も第3成分が 00 なので、RR の列をどう組み合わせても (1,1,1)(1, 1, 1) は作れません。したがって C(A)≠C(R)C(A) \neq C(R) です。

規則: RR が位置を教え、AA がベクトルを与えます。

問2

動画の 3×43 \times 4 行列 AA(階数 r=2r = 2)について、零空間 N(A)N(A) の次元はいくつですか。

✅ 正解です! dim N(A) = n - r = 4 - 2 = 2 です。自由変数1つにつき、特殊解が1つあります。

❌ 惜しい! 思い出しましょう:零空間の次元 = n - r です。ここで n は(行ではなく)列の数です。

解答を見る

解答:

零空間の次元の公式は次のとおりです:

dim⁡N(A)=n−r\dim N(A) = n - r

ここで nn は列の数、rr は階数です:

dim⁡N(A)=4−2=2\dim N(A) = 4 - 2 = 2

2つの基底ベクトル(特殊解)は、自由変数を順に1つずつ 1 とおいて得られます:

  • x3=1, x4=0x_3 = 1,\, x_4 = 0:後退代入して s1=(−1,−1,1,0)\mathbf{s}_1 = (-1, -1, 1, 0) を得ます
  • x3=0, x4=1x_3 = 0,\, x_4 = 1:後退代入して s2=(−1,0,0,1)\mathbf{s}_2 = (-1, 0, 0, 1) を得ます

自由列1つが、特殊解をちょうど1つ与えます。

問3

正しいか誤りか:行基本変形は行列の行空間を保つ。つまり、AA とその簡約行階段形 RR は同じ行空間をもつ。

✅ 正解です! 行基本変形は、元に戻せる行の一次結合なので、行空間は変わりません。

❌ 惜しい! 行基本変形がそれぞれ何をするか考えましょう。ある行を、今ある行の一次結合で置き換えます。しかも E は可逆なので、この操作は元に戻せます。

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解答:正しい

行基本変形が行空間を保つ理由は次のとおりです:

  1. 行基本変形はどれも、ある行を今ある行の一次結合で置き換えます。ですから、新しい行は古い行の張る空間の中にとどまります。
  2. 消去行列 EE は可逆なので(EA=REA = R、A=E−1RA = E^{-1}R)、この操作は元に戻せます。新しい行から古い行を復元できるのです。

どちらの行の組も、もう一方の張る空間の中にあるので、2つの行空間は一致します:C(AT)=C(RT)C(A^T) = C(R^T)。

重要な対比: 行基本変形は列空間を保ちません!この非対称性があるから、行空間の基底は RR から(0 でない行)、列空間の基底は AA から(元の行列のピボット列)読み取るのです。

問4

この例の消去行列は E=[−1201−10−101]E = \begin{bmatrix} -1 & 2 & 0 \\ 1 & -1 & 0 \\ -1 & 0 & 1 \end{bmatrix} で、EA=REA = R です。左零空間 N(AT)N(A^T) の基底になるのはどのベクトルですか。また、それはなぜですか。

✅ 正解です! R の零行が、それに対応する E の行を指し示し、その行が左零空間の基底ベクトルになります。

❌ 惜しい! R の零行はどれでしょうか。それに対応する E の行が、左零空間の基底ベクトルです。(E のその行)かける A が零行になるからです。

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解答:

左零空間の基底は、EE の行のうち、RR の零行に対応するものから得られます。

EA=REA = R なので、EE の各行に AA を掛けると、対応する RR の行が得られます:

  • EE の1行目に AA を掛けたもの = RR の1行目 = (1,0,1,1)≠0(1, 0, 1, 1) \neq \mathbf{0}
  • EE の2行目に AA を掛けたもの = RR の2行目 = (0,1,1,0)≠0(0, 1, 1, 0) \neq \mathbf{0}
  • EE の3行目に AA を掛けたもの = RR の3行目 = (0,0,0,0)=0(0, 0, 0, 0) = \mathbf{0} ✓

したがって、EE の3行目 (−1,0,1)(-1, 0, 1) は (−1,0,1)⋅A=0T(-1, 0, 1) \cdot A = \mathbf{0}^T を満たします。

検算: (−1)[1231]+(0)[1121]+(1)[1231]=[0000](-1)\begin{bmatrix}1 & 2 & 3 & 1\end{bmatrix} + (0)\begin{bmatrix}1 & 1 & 2 & 1\end{bmatrix} + (1)\begin{bmatrix}1 & 2 & 3 & 1\end{bmatrix} = \begin{bmatrix}0 & 0 & 0 & 0\end{bmatrix}

AA の1行目と3行目は同じなので、その差は消えます。左零空間の次元は m−r=3−2=1m - r = 3 - 2 = 1 です。

正解数:0 / 4