線形代数 · 第10回 · 動画3 · インタラクティブ教材

行列もベクトル:部分空間の道具はそのまま行列に使える

I重要な公式

概念 公式 n=3n = 3 のとき
n×nn \times n 行列全体 MM dim⁡=n2\dim = n^2 99
上三角行列 dim⁡=n(n+1)2\dim = \frac{n(n+1)}{2} 66
対称行列 dim⁡=n(n+1)2\dim = \frac{n(n+1)}{2} 66
対角行列 dim⁡=n\dim = n 33

重要な関係:上三角 ∩\cap 対称 == 対角

II可視化1 — 行列はどこに住むか

対角線より下の成分を 0 にすれば上三角行列、上の成分を鏡に映したものにすれば対称行列、その両方をすれば対角行列になります。

M(3×3)

III可視化2 — 1つのベクトル、2つの衣装

対角行列 aE1+bE2+cE3aE_1 + bE_2 + cE_3 と列ベクトル (a,b,c)(a, b, c) は、まったく同じ3つの数を運んでいます。

aE₁ + bE₂ + cE₃(行列)

R³ の座標ベクトル

💡 座標は同じ3つで、違うのは包み方だけです。3×33 \times 3 の対角行列全体と R3\mathbb{R}^3 はどちらも 33 次元で、++ とスカラー倍のもとでまったく同じようにふるまいます。これがベクトル空間の同型です。

IV可視化3 — 自由な成分の個数が次元

部分空間の次元とは、独立に選べる成分の個数にほかなりません。nn とともにそれぞれの個数がどう増えるか見てみましょう。

💡 ★ は自由な成分、= は対称性で決まる成分、0 は 0 に固定される成分です。上三角行列と対称行列の次元はいつも同じ n(n+1)2\tfrac{n(n+1)}{2} ですが、両者は異なる部分空間です。

V確認クイズ

問1

4×44 \times 4 行列全体のなすベクトル空間の次元はいくつでしょうか?

✅ 正解です! 4×4 行列には独立な成分が16個あるので、次元は16です。

❌ 惜しい! 4×4 のマス目にある成分の総数を数えてみましょう。どの成分も自由パラメータです。

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解答:

n×nn \times n 行列全体の空間の次元は n2n^2 です。n2n^2 個の成分のそれぞれが、独立な自由パラメータだからです。

n=4n = 4 のとき、dim⁡=42=16\dim = 4^2 = \mathbf{16} です。

基底は、1か所だけが 1 でほかはすべて 0 である16個の行列からなります。

問2

正しいか誤りか:行列の集合がベクトル空間をなすためには、行列の積について閉じていなければならない。

✅ 正解です! 意味をもつのは加法とスカラー倍だけです。行列の積は、ベクトル空間の構造とは無関係です。

❌ 惜しい! ベクトル空間の公理に実際に現れる演算はどれか、見直してみましょう。

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解答:誤り。

ベクトル空間に必要なのは、次のものだけです。

  • 加法について閉じていること
  • スカラー倍について閉じていること
  • 零元(加法の単位元)と、加法の逆元があること

ベクトル空間の公理では、行列の積はまったく出番がありません。これは動画の重要な洞察です。ベクトル空間は、加法とスカラー倍だけで定義されます。

問3

3×33 \times 3 の対称行列全体のなす部分空間の基底は、いくつの要素からなるでしょうか?

✅ 正解です! 対角成分が3つと、対角線より上の成分が3つで、自由パラメータは6個です。

❌ 惜しい! 対称行列では、対角線より下の成分は、上の成分を鏡に映したものです。本当に独立な成分だけを数えましょう。

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解答:

3×33 \times 3 の対称行列は aij=ajia_{ij} = a_{ji} を満たすので、対角線より下の成分は、上の成分によって完全に決まります。

自由な成分:

  • 対角成分3つ:位置 (1,1),(2,2),(3,3)(1,1), (2,2), (3,3)
  • 対角線より上の成分3つ:位置 (1,2),(1,3),(2,3)(1,2), (1,3), (2,3)

自由な成分の総数 =3+3=6=3(3+1)2= 3 + 3 = 6 = \frac{3(3+1)}{2}

次元は 6 なので、基底は6個の要素からなります。

問4

次のうち、3×33 \times 3 行列全体の空間の部分空間でないものはどれでしょうか?

✅ 正解です! 零行列は可逆ではないので、正則行列全体の集合は、部分空間の最も基本的な条件を満たしません。

❌ 惜しい! 最も基本的な条件、つまり零行列を含むことを満たさない集合はどれか、考えてみましょう。

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解答:正則行列。

部分空間は零ベクトル(ここでは零行列)を含まなければなりません。零行列の行列式は 0 なので、零行列は可逆ではありません。したがって、正則行列全体は部分空間をなしえません。

さらに、正則行列全体は加法について閉じていません。I+(−I)=OI + (-I) = O(零行列)は可逆ではないからです。

ほかの3つは、どれも部分空間の条件を満たします。

  • 上三角行列:++ と c ⋅c\,\cdot について閉じていて、OO を含む ✓
  • 対称行列:++ と c ⋅c\,\cdot について閉じていて、OO を含む ✓
  • 対角行列:++ と c ⋅c\,\cdot について閉じていて、OO を含む ✓

正解数:0 / 4