線形代数 · 第11回 · 動画1 · インタラクティブ教材

行列空間に隠れた次元公式 ― 部分空間の「予算」はいつも釣り合う

I重要な公式

公式 名称 説明
dim⁡(Mn×n)=n2\dim(M_{n \times n}) = n^2 行列空間全体 n×nn \times n の実行列全体
dim⁡(Symn)=n(n+1)2\dim(\mathrm{Sym}_n) = \frac{n(n+1)}{2} 対称行列 AT=AA^T = A。自由な成分は対角線上と対角線より上
dim⁡(UTn)=n(n+1)2\dim(\mathrm{UT}_n) = \frac{n(n+1)}{2} 上三角行列 対角線より下は 0 に固定
dim⁡(V)+dim⁡(W)=dim⁡(V∩W)+dim⁡(V+W)\dim(V) + \dim(W) = \dim(V \cap W) + \dim(V + W) 次元公式 任意の2つの部分空間 V,WV, W について成り立つ

II可視化1 — 自由な成分を数える

行列の成分に条件を1つ課すごとに、自由に選べる成分が1つ減ります。自由な成分を数えれば、それがそのまま次元です。

💡 チャレンジ:対称行列と上三角行列の部分空間は、次元が同じです。では、その共通部分 S∩US \cap U はどんな部分空間でしょうか。

III可視化2 — A=S+UA = S + U への分解

どんな正方行列も、対称な部分 SS と狭義上三角な部分 UU の和に、ただ一通りに分解できます。

💡 チャレンジ:AA の成分を変えて、UU が零行列になるようにしてみましょう。そのとき AA はどんな行列でなければならないでしょうか。

IV可視化3 — 次元公式

集合の包除原理と同じように、2つの部分空間の次元を足すと、重なった部分が二重に数えられます。次元公式は、反対側に共通部分を置くことでそれを釣り合わせます。

V確認クイズ

問1

4×44 \times 4 の対称行列全体がつくるベクトル空間の次元はいくつですか。

ヒント:自由に選べる成分、つまり主対角線上と主対角線より上の成分を数えましょう。

✅ 正解です! 対角成分が 4 個、対角線より上の成分が 6 個で、自由な成分は合わせて 10 個です。

❌ 惜しい! 数えるのは、対角線上と対角線より上の成分だけです。対角線より下の成分は、対称性によって決まる写しにすぎません。

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解答:

4×44 \times 4 の対称行列では、自由な成分は対角線上と対角線より上にあります:

  • 対角線上:4 個 (a11,a22,a33,a44)(a_{11}, a_{22}, a_{33}, a_{44})
  • 対角線より上:(42)=6\binom{4}{2} = 6 個 (a12,a13,a14,a23,a24,a34)(a_{12}, a_{13}, a_{14}, a_{23}, a_{24}, a_{34})
  • 対角線より下:対称性により決まる (aji=aij)(a_{ji} = a_{ij})

dim⁡(Sym4)=4×52=202=10\dim(\mathrm{Sym}_4) = \frac{4 \times 5}{2} = \frac{20}{2} = 10

問2

正しいか誤りか:2つの部分空間の和集合 S∪US \cup U は、つねに部分空間である。

✅ 正解です! 和集合は加法について閉じていません。正しいつくり方は、部分空間の和 S+US + U です。

❌ 惜しい! 対称行列と上三角行列を足すとどうなるか考えましょう。その結果は、必ず和集合に入るでしょうか。

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解答:誤り

2つの部分空間の和集合は、一方が他方を含む場合を除いて、部分空間にはなりません。

動画の反例:s∈Ss \in S(対称行列)と u∈Uu \in U(上三角行列)をとります:

s=(010100000),u=(000001000)s = \begin{pmatrix} 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}, \quad u = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}

どちらも S∪US \cup U に入っています。ところが、その和

s+u=(010101000)s + u = \begin{pmatrix} 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}

は、対称でもなく(成分 (2,3)=1≠0=(2,3) = 1 \neq 0 = 成分 (3,2)(3,2))、上三角でもありません(成分 (2,1)=1≠0(2,1) = 1 \neq 0)。

したがって s+u∉S∪Us + u \notin S \cup U です。和集合は加法について閉じていないのです!

正しいつくり方は部分空間の和 S+U={s+u:s∈S,  u∈U}S + U = \{s + u : s \in S,\; u \in U\} で、これはつねに部分空間になります。

問3

VV と WW はあるベクトル空間の部分空間で、dim⁡(V)=8\dim(V) = 8、dim⁡(W)=5\dim(W) = 5、dim⁡(V∩W)=2\dim(V \cap W) = 2 であるとします。

dim⁡(V+W)\dim(V + W) はいくつですか。

✅ 正解です! dim⁡(V+W)=8+5−2=11\dim(V + W) = 8 + 5 - 2 = 11 です。重なりは二重に数えず、差し引きます。

❌ 惜しい!

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解答:

次元公式を当てはめます:

dim⁡(V)+dim⁡(W)=dim⁡(V∩W)+dim⁡(V+W)\dim(V) + \dim(W) = \dim(V \cap W) + \dim(V + W)

8+5=2+dim⁡(V+W)8 + 5 = 2 + \dim(V + W)

dim⁡(V+W)=13−2=11\dim(V + W) = 13 - 2 = 11

2 次元の共通部分は dim⁡(V)\dim(V) で1回、dim⁡(W)\dim(W) でも1回数えられているので、その分を差し引きます。包除原理とまったく同じです。

問4

3×33 \times 3 行列全体のベクトル空間の部分空間になっているのは、次のうちどれですか。

思い出しましょう:部分空間は零行列を含み、加法とスカラー倍について閉じていなければなりません。

✅ 正解です! 対角行列全体は 3 次元の部分空間です。加法とスカラー倍について閉じていて、零行列も含みます。

❌ 惜しい!

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解答:3×3 の対角行列全体

各選択肢を、部分空間の条件に照らして確かめます:

  1. det = 0:部分空間ではありません。A=diag(1,0,0)A = \mathrm{diag}(1,0,0) と B=diag(0,1,1)B = \mathrm{diag}(0,1,1) をとると、どちらも det =0= 0 ですが、A+B=IA + B = I は det =1≠0= 1 \neq 0 です。加法について閉じていません。

  2. ✅ 対角行列:部分空間です。

    • 対角行列どうしの和は対角行列 ✓
    • 対角行列のスカラー倍は対角行列 ✓
    • 零行列は対角行列 ✓
    • dim⁡=3\dim = 3
  3. 成分がすべて正:部分空間ではありません。零行列には正の成分がないので、この集合に入りません。また、(−1)⋅A(-1) \cdot A の成分はすべて負になります。

  4. 可逆な行列:部分空間ではありません。零行列は可逆ではないので、この集合に入りません。また、A+(−A)=0A + (-A) = 0 は可逆ではありません。

正解数:0 / 4