線形代数 · 第12回 · 動画1 · インタラクティブ教材

接続行列と零空間 ― 意味をもつのは「差」だけである理由

I重要な公式

公式 名称 説明
AA の行:出発点に −1-1、到着点に +1+1、それ以外は 00 接続行列 辺ごとに1行、節点ごとに1列
(Ax)k=x到着−x出発(Ax)_k = x_{\text{到着}} - x_{\text{出発}}(辺 kk について) 離散的な微分 AA は辺をはさんだ差を計算する
ker⁡(A)=span⁡{(1,1,…,1)}\ker(A) = \operatorname{span}\{(1,1,\ldots,1)\} 零空間 一様にずらしても差はすべて 0
rank⁡(A)=n−1\operatorname{rank}(A) = n - 1 階数 節点が nn 個の連結グラフの場合

II可視化1 — 接続行列を組み立てる

向きのついた辺はそれぞれ AA の1つの行になります。出発点に −1-1、到着点に +1+1、それ以外は 0 です。

III可視化2 — 各辺をはさんだ差を読む

AA を掛けると、すべての辺について電位差 x到着−x出発x_{\text{到着}} - x_{\text{出発}} が得られます。

IV可視化3 — 零空間

4つの節点すべてに同じ定数を足しても、辺ごとの差はまったく変わりません。このずらしは ker⁡(A)\ker(A) に属しています。

💡 摂氏とケルビンが温度の差についてつねに一致するのは、このためです。2つの目盛りのあいだの一定のずれ 273273 は零空間方向のずらしで、どの引き算からも見えません。

V可視化4 — 接地で基準を決める

1つの節点を接地して電位を 0 にすると、曖昧さが消えます。零空間は直線から {0}\{0\} につぶれます。

VI確認クイズ

問1

辺 e4e_4 は節点 1 から節点 4 へ向かいます。接続行列 AA の対応する行はどれですか。

✅ 正解です! 出発点(1列目)に −1-1、到着点(4列目)に +1+1 を置きます。

❌ 惜しい! 出発点の列に −1-1、到着点の列に +1+1、それ以外は 0 でしたね。

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解答:

辺 e4e_4 は節点 1 から節点 4 へ向かいます。

  • 1列目(出発点)に −1-1 を置く
  • 4列目(到着点)に +1+1 を置く
  • 2列目と3列目は 0

e4 の行=[ −1,  0,  0,  +1 ]e_4 \text{ の行} = [\,-1, \; 0, \; 0, \; +1\,]

問2

節点の電位が x=(3,  7,  5,  1)x = (3, \; 7, \; 5, \; 1) のとき、(Ax)3(Ax)_3、つまり積 AxAx の第3成分はいくつですか。

(辺 e3e_3 は節点 1 から節点 3 へ向かう辺でした。)

✅ 正解です! 辺 e3e_3 をはさんだ差は x3−x1=5−3=2x_3 - x_1 = 5 - 3 = 2 です。

❌ 惜しい! 辺 e3e_3(節点 1 → 節点 3)について、x到着−x出発=x3−x1x_{\text{到着}} - x_{\text{出発}} = x_3 - x_1 を計算しましょう。

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解答:

AA の3行目は [−1,  0,  1,  0][-1, \; 0, \; 1, \; 0] です(辺 e3e_3:節点 1 → 節点 3)。

(Ax)3=(−1)(3)+(0)(7)+(1)(5)+(0)(1)=−3+5=2(Ax)_3 = (-1)(3) + (0)(7) + (1)(5) + (0)(1) = -3 + 5 = 2

同じことですが、x到着−x出発=x3−x1=5−3=2x_{\text{到着}} - x_{\text{出発}} = x_3 - x_1 = 5 - 3 = 2 とも計算できます。

よくある間違い:

  • −2-2 になった:引き算の順序が逆(x1−x3x_1 - x_3 を計算した。正しくは x3−x1x_3 - x_1)
  • 44 になった:別の辺を使った(e1e_1:x2−x1=7−3=4x_2 - x_1 = 7 - 3 = 4)
  • 88 になった:引き算ではなく足し算をした(x1+x3=3+5=8x_1 + x_3 = 3 + 5 = 8)

問3

正しいか誤りか:節点が nn 個の連結な有向グラフなら、どれでも、その接続行列の零空間の次元はちょうど 1 である。

✅ 正解です! 階数は n−1n-1 なので、零空間の次元はちょうど 1 残ります。零空間は全成分が 1 のベクトルで張られます。

❌ 惜しい! 連結グラフでは rank⁡(A)=n−1\operatorname{rank}(A) = n - 1 なので、零空間の次元は n−(n−1)=1n - (n-1) = 1 です。

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解答:正しい

節点が nn 個の連結グラフでは:

rank⁡(A)=n−1\operatorname{rank}(A) = n - 1

dim⁡(ker⁡(A))=n−rank⁡(A)=n−(n−1)=1\dim(\ker(A)) = n - \operatorname{rank}(A) = n - (n - 1) = 1

零空間は (1,1,…,1)(1, 1, \ldots, 1) で張られます。すべての節点に同じ定数を足しても、どの辺の差も 0 のままだからです。この1つの自由度があるために、電位を一意に決めるには基準(接地)を選ぶ必要があるのです。

注意:これは連結なグラフについての話です。連結成分が kk 個あるグラフでは、零空間の次元は kk になります。

問4

すべての節点の電位に c=100c = 100 を足して、xx を x+100⋅(1,1,1,1)Tx + 100 \cdot (1,1,1,1)^T に置き換えます。辺ごとの差のベクトル AxAx はどうなりますか。

✅ 正解です! 全成分が 1 のベクトルは零空間に属するので、AA は一様なずらしをすべて 0 に送ります。差はまったく変わりません。

❌ 惜しい! (1,1,1,1)T(1,1,1,1)^T は零空間に属していました。つまり A⋅(1,1,1,1)T=0A \cdot (1,1,1,1)^T = \mathbf{0} です。このことから A(x+c⋅1)A(x + c \cdot \mathbf{1}) について何が言えるでしょうか。

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解答:どの差もまったく変わりません。

A(x+100⋅1)=Ax+100⋅A1=Ax+100⋅0=AxA(x + 100 \cdot \mathbf{1}) = Ax + 100 \cdot A\mathbf{1} = Ax + 100 \cdot \mathbf{0} = Ax

(1,1,1,1)T(1,1,1,1)^T は AA の零空間に属するので、この行列はこれを 0 に写します。一様なずらしは、AA からはまったく見えないのです。

摂氏とケルビンが温度の差についてつねに一致するのも、同じ理由です。273 度のずれは、引き算をするたびに打ち消し合います。

373K−273K=100=100∘C−0∘C373\text{K} - 273\text{K} = 100 \quad = \quad 100^{\circ}\text{C} - 0^{\circ}\text{C}

正解数:0 / 4