線形代数 · 第12回 · 動画3 · インタラクティブ教材

三つの法則が一つの方程式に:あらゆるネットワークを貫く隠れた対称性

I重要な公式

ステップ 公式 名称 説明
1. 幾何 e=Axe = Ax 電位差 AA = 接続行列。各行は出発点に −1-1、到着点に +1+1
2. 物理 y=Cey = Ce オームの法則 CC = コンダクタンスを並べた対角行列。yk=ck eky_k = c_k \, e_k
3. 保存 A⊤y=fA^\top y = f キルヒホッフの電流則 各節点での正味の電流 = 外部の電源
まとめた式 A⊤CA x=fA^\top C A \, x = f 釣り合いの方程式 ステップ1と2をステップ3に代入する

対称性:(A⊤CA)⊤=A⊤C⊤(A⊤)⊤=A⊤CA(A^\top C A)^\top = A^\top C^\top (A^\top)^\top = A^\top C A です。CC は対角行列なので C⊤=CC^\top = C であり、また (A⊤)⊤=A(A^\top)^\top = A だからです。

II可視化1 — 接続行列を組み立てる

向きのついた辺の1本1本が、AA の1つの行になります。出発点に −1-1、到着点に +1+1 が入ります。

💡 AA が表すのはネットワークのつながり方だけです。物理(コンダクタンス)は、あとで CC を通して初めて入ってきます。

III可視化2 — 3つのステップの流れ

節点の電位は e=Ax→y=Ce→A⊤y=fe = Ax \to y = Ce \to A^\top y = f と流れていきます。そして、節点にかかる力の合計はいつでも 0 です。

💡 チャレンジ:4つの電位をすべて同じ値にしてみましょう。なぜ電圧降下 ee、電流 yy、力 ff がすべて 0 になるのでしょうか?

IV可視化3 — A⊤CAA^\top C A の対称性

コンダクタンスをどう選んでも、K=A⊤CAK = A^\top C A は自分自身の転置に等しくなります。

💡 対称性は式の構造から来ています。(A⊤CA)⊤=A⊤C⊤(A⊤)⊤=A⊤CA(A^\top C A)^\top = A^\top C^\top (A^\top)^\top = A^\top C A が成り立つのは、C⊤=CC^\top = C がどんな対角行列 CC でも成り立つからです。まさにこの性質が、固有値が実数であることとコレスキー分解が使えることを保証しています。

V確認クイズ

問1

節点が4つのネットワークで、向きのついた辺が節点3から節点1へ向かっています。接続行列 AA の対応する行はどれでしょうか?

✅ 正解です! 出発点の節点3に −1-1、到着点の節点1に +1+1 が入ります。

❌ 惜しい! 思い出しましょう。出発点に −1-1、到着点に +1+1 です。この辺は 3 から 1 へ向かいます。

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解答:

規則は、出発点の節点の列に −1-1、到着点の節点の列に +1+1 を置く、というものです。

  • 出発点 = 節点3 → 3列目に −1-1
  • 到着点 = 節点1 → 1列目に +1+1

行=[+1⏟n1,  0⏟n2,  −1⏟n3,  0⏟n4]\text{行} = [\underbrace{+1}_{\text{n}_1}, \; \underbrace{0}_{\text{n}_2}, \; \underbrace{-1}_{\text{n}_3}, \; \underbrace{0}_{\text{n}_4}]

問2

釣り合いの方程式 A⊤CA x=fA^\top C A \, x = f で、対角行列 CC は何を表しているでしょうか?

✅ 正解です! CC には各辺の材料の性質(コンダクタンス、剛性など)が入ります。辺どうしは互いに無関係なので、対角行列になります。

❌ 惜しい! 幾何・物理・保存の3つのステップのうち、材料の性質を持ち込むのはどれかを考えましょう。

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解答:

A⊤CA x=fA^\top C A \, x = f では、それぞれの記号が別々の役割を担っています。

記号 表すもの
AA つながり方 — 各辺がどの節点を結ぶか(幾何)
CC 材料の性質 — 各辺のコンダクタンス、剛性、管のコンダクタンス(物理)
ff 外からの入力 — 各節点に注ぎ込まれる電流、力、流量
xx 未知数 — 各節点の電位、変位、圧力

各辺の材料の性質はほかの辺とは無関係なので、CC は対角行列です。登場するのはステップ2(物理)の y=Cey = Ce です。

問3

動画に出てきた、節点が4つのネットワークを考えます。辺3は節点1から節点3へ向かうので、AA のその行は [−1,  0,  +1,  0][-1, \; 0, \; +1, \; 0] です。

節点の電位が x1=4x_1 = 4, x2=2x_2 = 2, x3=−1x_3 = -1, x4=0x_4 = 0 のとき、辺3での電圧降下 e3e_3 はいくらでしょうか?

✅ 正解です! e3=x3−x1=−1−4=−5e_3 = x_3 - x_1 = -1 - 4 = -5 です。この辺に沿って電位は下がります。

❌ 惜しい! 公式 e3=(+1)⋅x3+(−1)⋅x1=x3−x1e_3 = (+1) \cdot x_3 + (-1) \cdot x_1 = x_3 - x_1 を使いましょう。符号に注意してください!

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解答:

辺3は節点1から節点3へ向かいます。AA のその行は [−1,  0,  +1,  0][-1, \; 0, \; +1, \; 0] です。

電圧降下は、この行と xx の内積です。

e3=(−1)(x1)+(0)(x2)+(+1)(x3)+(0)(x4)=x3−x1e_3 = (-1)(x_1) + (0)(x_2) + (+1)(x_3) + (0)(x_4) = x_3 - x_1

e3=(−1)−4=−5e_3 = (-1) - 4 = -5

公式はいつでも到着点 − 出発点です:ek=x到着点−x出発点e_k = x_{\text{到着点}} - x_{\text{出発点}}。

負の符号は、節点1から節点3へ向かって電位が下がることを意味します。

問4

正しいか誤りか:行列 A⊤CAA^\top C A が対称になるのは、すべての辺のコンダクタンスが等しいときだけである(つまり C=cIC = cI(cc はスカラー)のときだけである)。

✅ 正解です! 対称性は、どんな対角行列 CC でも成り立ちます。II のスカラー倍に限りません。証明に必要なのは C⊤=CC^\top = C だけで、これはすべての対角行列で成り立ちます。

❌ 惜しい! 対称性の証明を見直しましょう。実際に使っているのは CC のどんな性質でしょうか? その性質は C=cIC = cI のときに限られるでしょうか?

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解答:誤り

A⊤CAA^\top C A は、成分が正の対角行列 CC ならどんなものでも対称です。コンダクタンスが等しい必要はありません。

証明:

(A⊤CA)⊤=A⊤⋅C⊤⋅(A⊤)⊤(A^\top C A)^\top = A^\top \cdot C^\top \cdot (A^\top)^\top

それぞれを簡単にします。

  1. (A⊤)⊤=A(A^\top)^\top = A — 二回転置すると、もとの行列に戻ります
  2. C⊤=CC^\top = C — 対角行列はどれでも対称です(cIcI に限りません)

これを代入すると、

=A⊤⋅C⋅A=A⊤CA✓= A^\top \cdot C \cdot A = A^\top C A \quad\checkmark

対称性は、A⊤CAA^\top C A という式の形が保証する構造的な性質であり、CC の値どうしの特別な関係から来るものではありません。

上の可視化3で確かめてみましょう。コンダクタンスをどう組み合わせても成り立ちます!

正解数:0 / 4