線形代数 · 第15回 · 動画2 · インタラクティブ教材

完全な解がないとき:誤差を2乗すると最良近似直線が見つかるわけ

I重要な公式

公式 名称 説明
y=C+Dty = C + Dt 最良近似直線 切片 CC、傾き DD
E=∥Ax−b∥2=∑ei2E = \|Ax - b\|^2 = \sum e_i^2 二乗誤差の総和 残差の二乗和
ATAx^=ATbA^T A \hat{x} = A^T b 正規方程式 これを解いて最良のパラメータ x^\hat{x} を求める
e=b−Ax^⊥Col(A)e = b - A\hat{x} \perp \text{Col}(A) 直交性 誤差は列空間に垂直

II可視化1 — 最小二乗法の最小値

(1,1)(1,1)、(2,2)(2,2)、(3,2)(3,2) に最もよく当てはまる直線とは、残差の2乗を文字どおりの正方形として描いたとき、その面積の合計が最も小さくなる直線です。

💡 面積の合計がいちばん小さくなる直線は、ちょうど正規方程式 ATA x^=ATbA^T A\,\hat{x} = A^T b の解になっています。

III可視化2 — なぜ誤差を2乗するのか

傾き DD を動かしながら、残差を合計する3つの方法を比べます。なめらかな曲線になり、微分積分で求められるただ1つの最小値をもつのは、2乗した場合だけです。

💡 2乗した曲線の傾きを 0 とおいた式 dEdD=0\frac{dE}{dD} = 0 は一次方程式です。これこそが ATA x^=ATbA^T A\,\hat{x} = A^T b の表している内容です。

IV可視化3 — 外れ値への敏感さ

2乗するとその1つの大きな誤差が増幅されるので、外れた点が1つあるだけで当てはめ全体が傾いてしまいます。

💡 ロバストな当てはめ(最小絶対偏差法、フーバー損失)は、大きな誤差を2乗しないことでこの影響を和らげます。公式を信じる前に、必ずデータをプロットしてみましょう。

V確認クイズ

問1

データ点 (1,1)(1, 1)、(2,2)(2, 2)、(3,2)(3, 2) に対して、連立方程式 Ax=bAx = b は次の行列とベクトルを使います:

A=[111213],b=[122]A = \begin{bmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 2 \\ 1 & 3 \end{bmatrix}, \quad b = \begin{bmatrix} 1 \\ 2 \\ 2 \end{bmatrix}

ATAA^T A は何ですか。

✅ 正解です! 左上 = 1 の和 = 3、非対角成分 = t の値の和 = 6、右下 = t² の和 = 1 + 4 + 9 = 14 です。

❌ 惜しい! A^T A の各成分は、A の列どうしの内積です。右下の成分を計算してみましょう:1² + 2² + 3² = ?

解答を見る

解答:

AT=[111123]A^T = \begin{bmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 1 & 2 & 3 \end{bmatrix}

行かける列で掛けます:

  • 左上:1 ⁣⋅ ⁣1+1 ⁣⋅ ⁣1+1 ⁣⋅ ⁣1=31\!\cdot\!1 + 1\!\cdot\!1 + 1\!\cdot\!1 = 3
  • 右上:1 ⁣⋅ ⁣1+1 ⁣⋅ ⁣2+1 ⁣⋅ ⁣3=61\!\cdot\!1 + 1\!\cdot\!2 + 1\!\cdot\!3 = 6
  • 左下:1 ⁣⋅ ⁣1+2 ⁣⋅ ⁣1+3 ⁣⋅ ⁣1=61\!\cdot\!1 + 2\!\cdot\!1 + 3\!\cdot\!1 = 6(対称)
  • 右下:1 ⁣⋅ ⁣1+2 ⁣⋅ ⁣2+3 ⁣⋅ ⁣3=1+4+9=141\!\cdot\!1 + 2\!\cdot\!2 + 3\!\cdot\!3 = 1 + 4 + 9 = 14

ATA=[36614]A^T A = \begin{bmatrix} 3 & 6 \\ 6 & 14 \end{bmatrix}

問2

同じデータに対する正規方程式は、次のようになります:

3C+6D=5かつ6C+14D=113C + 6D = 5 \qquad \text{かつ} \qquad 6C + 14D = 11

消去法で解くと、最小二乗法による最良近似直線 y=C+Dty = C + Dt はどうなりますか。

✅ 正解です! 最良近似直線は y=23+12ty = \frac{2}{3} + \frac{1}{2}t で、切片は C=23C = \frac{2}{3}、傾きは D=12D = \frac{1}{2} です。

❌ 惜しい! 消去法を使いましょう。1つ目の式を2倍して2つ目の式から引けば、D だけが残ります。

解答を見る

解答:

正規方程式から: 3C+6D=5(1)6C+14D=11(2)3C + 6D = 5 \quad (1) \qquad 6C + 14D = 11 \quad (2)

ステップ1: (1)(1) を2倍します:  6C+12D=10\;6C + 12D = 10

ステップ2: これを (2)(2) から引きます:(6C+14D)−(6C+12D)=11−10(6C + 14D) - (6C + 12D) = 11 - 10 より 2D=12D = 1、よって D=12D = \tfrac{1}{2} です。

ステップ3: (1)(1) に後退代入します:3C+3=53C + 3 = 5 より C=23C = \tfrac{2}{3} です。

y=23+12 t\boxed{y = \tfrac{2}{3} + \tfrac{1}{2}\,t}

問3

正しいか誤りか: 微分積分による方法(∂E∂C=0\frac{\partial E}{\partial C} = 0 と ∂E∂D=0\frac{\partial E}{\partial D} = 0 とおく)からは、線形代数の正規方程式 ATAx^=ATbA^T A \hat{x} = A^T b とは異なる方程式が得られる。

✅ 正解です! どちらの方法からも同じ正規方程式が得られます。2つの道が同じ目的地にたどり着くのは、どちらも同じ二次の目的関数を最小にしているからです。

❌ 惜しい! どちらの方法も、同じもの、つまり二乗誤差の総和を最小にしています。同じ目的関数から、異なる最適性の条件が出てくることがありうるか考えましょう。

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答え:誤り。どちらの方法からもまったく同じ方程式が得られます。

微分積分のルート:E=(C+D−1)2+(C+2D−2)2+(C+3D−2)2E = (C + D - 1)^2 + (C + 2D - 2)^2 + (C + 3D - 2)^2 を展開し、∂E∂C=0\frac{\partial E}{\partial C} = 0 と ∂E∂D=0\frac{\partial E}{\partial D} = 0 とおきます。整理すると:

3C+6D=56C+14D=113C + 6D = 5 \qquad 6C + 14D = 11

線形代数のルート:ATAx^=ATbA^T A \hat{x} = A^T b を直接計算します:

[36614][CD]=[511]\begin{bmatrix} 3 & 6 \\ 6 & 14 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} C \\ D \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 5 \\ 11 \end{bmatrix}

この2つはまったく同じです。根本的な理由は、一次式を2乗して微分すると必ず一次方程式が出てくることにあります。それこそが ATAx^=ATbA^T A \hat{x} = A^T b の表している内容です。

問4

ある最小二乗法の当てはめには、誤差がそれぞれ約 1 のおとなしい点が3つと、誤差が 8 の外れ値が1つ含まれています。二乗誤差の総和のうち、外れ値1つだけから来る割合はおよそどれだけですか。

✅ 正解です! 8² = 64 は 3 × 1² = 3 よりはるかに大きいので、外れ値1つだけで二乗誤差の総和のおよそ 96% を占めます。

❌ 惜しい! 比べる前に、各誤差を2乗するのを忘れないようにしましょう。外れ値の寄与は 8² = 64 ですが、おとなしい3点の寄与は合わせても 3 にすぎません。

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解答:約 96%。

二乗誤差を計算します:

  • おとなしい3点:12+12+12=31^2 + 1^2 + 1^2 = 3
  • 外れ値:82=648^2 = 64
  • 合計:3+64=673 + 64 = 67

外れ値の割合:6467≈95.5%≈96%\dfrac{64}{67} \approx 95.5\% \approx 96\%

2乗すると、大きな誤差が不釣り合いに増幅されます。外れ値は4つのデータ点のうちの1つにすぎないのに、総和のおよそ 96% を占めます。だからこそ、極端な値が1つあるだけで、最小二乗法の当てはめ全体が支配されてしまうのです。

正解数:0 / 4