線形代数 · 第17回 · 動画1 · インタラクティブ教材

三つの規則がすべての行列式を決める

I重要な公式

性質 内容 意味
1. 正規化 det⁡(I)=1\det(I) = 1 単位行列の行列式は 1
2. 行の入れ替え 2つの行を入れ替える ⇒det⁡\Rightarrow \det の符号が反転する 入れ替えるたびに行列式に −1-1 が掛かる
3A. スカラー倍 1つの行を tt 倍する ⇒det⁡\Rightarrow \det も tt 倍になる 行列式は各行に比例する
3B. 行の加法性 1つの行を和に分ける ⇒det⁡\Rightarrow \det も和に分かれる 1つの行が和のとき、行列式も足し算になる

II可視化1 — 行をスカラー倍すると面積もスカラー倍になる

1つの行をスカラー tt 倍すると、平行四辺形の符号つきの面積、つまり行列式も同じ tt 倍になります。

性質3A:det⁡(t r1, r2)=t det⁡(r1, r2)\det(t\,\mathbf{r}_1,\ \mathbf{r}_2) = t\,\det(\mathbf{r}_1,\ \mathbf{r}_2)。t=0t = 0 では2つの行が平行になり、面積はつぶれて 0 になります。

III可視化2 — 行を入れ替えると符号が反転する

行列式は、2つの行が張る平行四辺形の符号つきの面積です。行を入れ替えると、その向きが逆になります。

性質2:行を1回入れ替えるたびに、det⁡\det に −1-1 が掛かります。その帰結として、2つの行が等しいと、入れ替えても何も変わらないのに det⁡\det の符号は反転しなければならず、det⁡=0\det = 0 が導かれます。

IV可視化3 — 行列式は足し算を保たない

A=IA = I、B=kIB = kI のとき、det⁡(A+B)\det(A+B) は det⁡(A)+det⁡(B)\det(A) + \det(B) に等しいでしょうか。

2つが一致するのは k=0k = 0 のときだけです。差はちょうど (1+k)2−(1+k2)=2k(1+k)^2 - (1+k^2) = 2k で、これは行ごとの線形性では扱えない交差項です。

V確認クイズ

問1

3×33 \times 3 の単位行列は det⁡(I)=1\det(I) = 1 です。行の入れ替えを2回行います。まず1行目と3行目を、次に2行目と3行目を入れ替えます。

できあがる置換行列の行列式はいくつですか。

✅ 正解です! 2回の入れ替えで符号が2回反転します:(+1)→(−1)→(+1)(+1) \to (-1) \to (+1)。偶置換の行列式は必ず det⁡=+1\det = +1 です。

❌ 惜しい! 1回の入れ替えで符号は1回反転します。2回反転すると、元の符号に戻ります。

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解答:

det⁡(I)=1\det(I) = 1(性質1)から始めます。

  • 1回目の入れ替え(1行目 ↔\leftrightarrow 3行目):行列式は反転して −1-1 になる(性質2)
  • 2回目の入れ替え(2行目 ↔\leftrightarrow 3行目):行列式は反転して +1+1 になる(性質2)

2回の入れ替え = 2回の符号の反転:1×(−1)×(−1)=+11 \times (-1) \times (-1) = +1。

これは偶置換(入れ替えの回数が偶数)なので、det⁡=+1\det = +1 です。

問2

正しいか誤りか: 任意の n×nn \times n 行列 AA、BB に対して、det⁡(A+B)=det⁡(A)+det⁡(B)\det(A + B) = \det(A) + \det(B) である。

✅ 正解です! 行列式は各行についてそれぞれ別々に線形なのであって、行列全体について線形なのではありません。

❌ 惜しい! A=B=IA = B = I で試してみましょう。det⁡(I+I)=det⁡(I)+det⁡(I)\det(I + I) = \det(I) + \det(I) は成り立つでしょうか。

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解答:誤り。

反例: A=B=I2×2A = B = I_{2 \times 2} とします。

  • det⁡(A)=1\det(A) = 1,   det⁡(B)=1\;\det(B) = 1,   ⇒  det⁡(A)+det⁡(B)=2\;\Rightarrow\; \det(A) + \det(B) = 2
  • A+B=(2002)A + B = \begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 0 & 2 \end{pmatrix},   ⇒  det⁡(A+B)=4\;\Rightarrow\; \det(A + B) = 4
  • 4≠24 \neq 2 ✗

性質3が許すのは、ほかの行をすべて固定したまま一度に一つの行を分けることです。行列全体を足すとすべての行が同時に変わってしまいます。これは公理が許していることではありません。

問3

M=(6413)M = \begin{pmatrix} 6 & 4 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} の1行目は 2⋅[3,2]2 \cdot [3, 2] と書けます。

性質3A(スカラー倍)を使うと、det⁡(M)\det(M) はいくつですか。

✅ 正解です! 1行目から 2 をくくり出し、簡単になった行列式(= 7)を計算してから掛けます:2×7=142 \times 7 = 14。

❌ 惜しい! まず1行目からスカラー 2 をくくり出し(性質3A)、簡単になった行列の行列式を計算して、最後に掛けましょう。

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解答:

1行目 =[6,4]=2⋅[3,2]= [6, 4] = 2 \cdot [3, 2] です。性質3Aより:

det⁡(6413)=2⋅det⁡(3213)\det\begin{pmatrix} 6 & 4 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} = 2 \cdot \det\begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 1 & 3 \end{pmatrix}

計算すると:det⁡(3213)=3×3−2×1=9−2=7\det\begin{pmatrix} 3 & 2 \\ 1 & 3 \end{pmatrix} = 3 \times 3 - 2 \times 1 = 9 - 2 = 7。

したがって:det⁡(M)=2×7=14\det(M) = 2 \times 7 = \mathbf{14}。

検算: 6×3−4×1=18−4=146 \times 3 - 4 \times 1 = 18 - 4 = 14 ✓

問4

ある正方行列には等しい行が2つあります。その行列式が 0 でなければならないことを直接導く性質はどれですか。

✅ 正解です! 等しい行を入れ替えると符号は反転するのに、行列は変わりません。よって det⁡=−det⁡\det = -\det となり、det⁡=0\det = 0 が導かれます。

❌ 惜しい! 行の入れ替えを扱う性質はどれかを考えましょう。入れ替える2つの行が等しいとき、何が起こるでしょうか。

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解答:性質2(行の入れ替えで符号が反転する)。

次のような見事な議論です:

  1. MM には等しい行が2つある(ii 行目と jj 行目)とします。
  2. ii 行目と jj 行目を入れ替えます。性質2より、det⁡(M入れ替え後)=−det⁡(M)\det(M_{\text{入れ替え後}}) = -\det(M)。
  3. ところが2つの行は等しいので、入れ替えても何も変わりません:M入れ替え後=MM_{\text{入れ替え後}} = M。
  4. したがって det⁡(M)=−det⁡(M)\det(M) = -\det(M)。
  5. 自分自身のマイナスに等しい数は 0 しかありません。

det⁡(M)=−det⁡(M)  ⟹  2det⁡(M)=0  ⟹  det⁡(M)=0\det(M) = -\det(M) \;\Longrightarrow\; 2\det(M) = 0 \;\Longrightarrow\; \det(M) = 0

正解数:0 / 4