線形代数 · 第17回 · 動画4 · インタラクティブ教材

行列式の積の法則と転置:行列の積がただの掛け算になる

I重要な公式

公式 名称 説明
det⁡(AB)=det⁡(A)⋅det⁡(B)\det(AB) = \det(A) \cdot \det(B) 積の法則(性質9) 行列の積がスカラーの掛け算になる
det⁡(A−1)=1det⁡(A)\det(A^{-1}) = \frac{1}{\det(A)} 逆行列の行列式 det⁡(A)≠0\det(A) \neq 0 が必要
det⁡(cA)=cn⋅det⁡(A)\det(cA) = c^n \cdot \det(A) スカラー倍 nn = 行列のサイズ、cc = スカラー
det⁡(AT)=det⁡(A)\det(A^T) = \det(A) 転置の性質(性質10) 行についての性質 == 列についての性質

II可視化1 — cc 倍すると行列式は cnc^n 倍になる

n×nn \times n 行列の成分をすべて cc 倍すると、行列式は cc 倍ではなく cnc^n 倍になります。

III可視化2 — 変換を合成すると行列式どうしが掛け合わされる

BB を施してから AA を施すと、面積の拡大率どうしが掛け合わされます。だから det⁡(AB)=det⁡(A)⋅det⁡(B)\det(AB) = \det(A) \cdot \det(B) です。

det⁡\det には和についての法則がありません。一般に det⁡(A+B)≠det⁡(A)+det⁡(B)\det(A + B) \neq \det(A) + \det(B) です。たとえば det⁡(2I)=4\det(2I) = 4 ですが、det⁡(I)+det⁡(I)=2\det(I) + \det(I) = 2 です。

IV可視化3 — べき乗も逆行列も、1つの数で決まる

AA のべき乗と逆行列の行列式は、すべて1つの数で決まります:det⁡(Ak)=[det⁡(A)]k\det(A^k) = [\det(A)]^k、det⁡(A−1)=1/det⁡(A)\det(A^{-1}) = 1/\det(A)。

V確認クイズ

問1

AA を det⁡(A)=3\det(A) = 3 の 4×44 \times 4 行列とします。

det⁡(2A)\det(2A) はいくつですか。

✅ 正解です! 4本の行それぞれから 2 が1つずつ出てくるので、24⋅3=482^4 \cdot 3 = 48 です。

❌ 惜しい! 思い出しましょう:det⁡(cA)=cn⋅det⁡(A)\det(cA) = c^n \cdot \det(A) で、nn は行列のサイズです。ここでは c=2c = 2、n=4n = 4 です。

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解答:

det⁡(A)=3\det(A) = 3 の 4×44 \times 4 行列なので:

det⁡(2A)=24⋅det⁡(A)=16⋅3=48\det(2A) = 2^4 \cdot \det(A) = 16 \cdot 3 = 48

よくある間違い:

  • 6:2⋅32 \cdot 3 と計算した。スカラーが nn 乗されることを忘れている
  • 16:24=162^4 = 16 と計算した。det⁡(A)\det(A) を掛けるのを忘れている
  • 24:23⋅3=242^3 \cdot 3 = 24 とした。サイズを取り違えている(n=4n = 4 ではなく n=3n = 3 を使った)

問2

AA と BB がどちらも 2×22 \times 2 の単位行列 I2I_2 に等しいとします。正しいのはどれですか。

✅ 正解です! この古典的な反例から、行列式は和とかみ合わないことが分かります。

❌ 惜しい! スカラー倍の性質 det⁡(cA)=cn⋅det⁡(A)\det(cA) = c^n \cdot \det(A) を使って、det⁡(2I2)\det(2I_2) を計算しましょう。

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解答:

A=B=I2A = B = I_2 のとき:

A+B=2I2=(2002)A + B = 2I_2 = \begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 0 & 2 \end{pmatrix}

det⁡(A+B)=det⁡(2I2)=22⋅det⁡(I2)=4⋅1=4\det(A + B) = \det(2I_2) = 2^2 \cdot \det(I_2) = 4 \cdot 1 = 4

det⁡(A)+det⁡(B)=1+1=2\det(A) + \det(B) = 1 + 1 = 2

4≠24 \neq 2 なので、行列式は和に対して分配されません。これが動画で見た古典的な反例です!

問3

det⁡(A)=5\det(A) = 5 のとき、det⁡(A3)⋅det⁡(A−1)\det(A^3) \cdot \det(A^{-1}) はいくつですか。

ヒント:べき乗の法則と逆行列の法則の両方を使いましょう。

✅ 正解です! 53⋅15=255^3 \cdot \frac{1}{5} = 25 です。同じことですが、det⁡(A2)=52=25\det(A^2) = 5^2 = 25 とも計算できます。

❌ 惜しい! 分けて考えましょう:det⁡(A3)=[det⁡(A)]3\det(A^3) = [\det(A)]^3、det⁡(A−1)=1/det⁡(A)\det(A^{-1}) = 1/\det(A)。それから掛け合わせます。

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解答:

べき乗の法則と逆行列の法則を使います。

det⁡(A3)=[det⁡(A)]3=53=125\det(A^3) = [\det(A)]^3 = 5^3 = 125

det⁡(A−1)=1det⁡(A)=15\det(A^{-1}) = \frac{1}{\det(A)} = \frac{1}{5}

det⁡(A3)⋅det⁡(A−1)=125⋅15=25\det(A^3) \cdot \det(A^{-1}) = 125 \cdot \frac{1}{5} = 25

エレガントな別解:積の法則を使うと

det⁡(A3)⋅det⁡(A−1)=det⁡(A3⋅A−1)=det⁡(A2)=[det⁡(A)]2=52=25\det(A^3) \cdot \det(A^{-1}) = \det(A^3 \cdot A^{-1}) = \det(A^2) = [\det(A)]^2 = 5^2 = 25

問4

正しいか誤りか:行列の2つの行を入れ替えると行列式の符号が反転するならば、2つの列を入れ替えても行列式の符号は反転する。

✅ 正解です! 転置の性質により、行についての性質には必ず、列についての対応する性質が自動的についてきます。

❌ 惜しい! det⁡(AT)=det⁡(A)\det(A^T) = \det(A) から何が言えるか考えましょう。AA に対する列の操作は、ATA^T に対する対応する行の操作と同じです。

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解答:正しい

転置の性質により、det⁡(AT)=det⁡(A)\det(A^T) = \det(A) です。

AA に対する列の操作は、ATA^T に対する対応する行の操作と同じです。det⁡(AT)=det⁡(A)\det(A^T) = \det(A) なので、行について成り立つ性質は、自動的に列についても成り立ちます。

具体的には:AA の第 ii 列と第 jj 列を入れ替えることは、ATA^T の第 ii 行と第 jj 行を入れ替えることと同じです。この行の入れ替えで det⁡(AT)\det(A^T) の符号が反転します。ところが det⁡(AT)=det⁡(A)\det(A^T) = \det(A) なので、列の入れ替えで det⁡(A)\det(A) の符号も反転します。

行の規則には必ず列の双子があり、しかもただで手に入るのです!

正解数:0 / 4