線形代数 · 第18回 · 動画1 · インタラクティブ教材

たった三つの性質が n! 項の行列式の公式を決める

I重要な公式

公式 名称 説明
det⁡(I)=1\det(I) = 1 性質1(正規化) 単位行列の行列式は 1
行の入れ替え ⇒\Rightarrow 符号が反転 性質2(交代性) どれか2つの行を入れ替えると、行列式の符号が反転する
各行について線形 性質3(多重線形性) スカラー倍はくくり出せ、行の和は行列式を2つに分ける
det⁡(A)=∑σ∈Sn(−1)inv(σ)∏i=1nai,σ(i)\det(A) = \displaystyle\sum_{\sigma \in S_n} (-1)^{\mathrm{inv}(\sigma)} \prod_{i=1}^{n} a_{i,\sigma(i)} 大きな公式(置換による展開式) n!n! 個のすべての置換についての和。符号は転倒数で決まる

II可視化1 — 2×2 の行列式

2×22\times2 の行列式は、ちょうど2つの符号つきの置換の項からなります。a11a22a_{11}a_{22}(偶置換、++)から a12a21a_{12}a_{21}(奇置換、−-)を引いたものです。

💡 チャレンジ: 2つの行を等しくして(a11=a21a_{11}=a_{21} かつ a12=a22a_{12}=a_{22})、det⁡=0\det = 0 にしてみましょう。2つの項が打ち消し合い、行は一次従属になります。

III可視化2 — 6つの置換の項すべて

3×33\times3 の行列式は、3!=63! = 6 個の符号つきの積の和です。1つの項に1つの置換が対応し、その符号は転倒数の偶奇で決まります。

IV可視化3 — 0 が項を消す仕組み

置換の項は、その経路が 0 にぶつかった瞬間に消えます。そのため 0 があると、4!=244! = 24 個の項はみるみる減っていきます。

💡 チャレンジ: 上三角行列 を押してみましょう。生き残るのは恒等置換だけです。だから三角行列の行列式は、対角成分の積にすぎないのです。

V確認クイズ

問1 · 行列式の項を数える

大きな公式では、n×nn \times n 行列の行列式は n!n! 個の項の和です。

5×5 行列の行列式の公式には、項がいくつありますか。

✅ 正解です! 行列式の項はちょうど 5! = 120 個で、置換1つにつき1項です。

❌ 惜しい! ポイントは、各項が1つの置換に対応していて、n 個のものの置換は n! 通りあることです。

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解答:

大きな公式は、{1,2,3,4,5}\{1, 2, 3, 4, 5\} のすべての置換についての和です。置換の個数は次のとおりです:

5!=5×4×3×2×1=1205! = 5 \times 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 120

ほかの選択肢が誤りである理由:

  • 52=255^2 = 25 は行列の成分の個数で、項の個数ではない
  • 25=322^5 = 32 は行列式の公式とは無関係
  • 55=31255^5 = 3125 は、置換に絞り込む前の、列の選び方の候補の個数(5つの行がそれぞれ5つの列から自由に選ぶ)

問2 · 置換の符号

置換 σ=(2,3,1)\sigma = (2, 3, 1) は、1行目 →\to 2列目、2行目 →\to 3列目、3行目 →\to 1列目 と割り当てます。

この置換の符号 (−1)inv(σ)(-1)^{\mathrm{inv}(\sigma)} は何ですか。

復習:転倒とは、大きい列番号が小さい列番号より前に現れている位置の組のことです。

✅ 正解です! 転倒が2つ(偶数)なので、符号は +1 です。

❌ 惜しい! 転倒を丁寧に数えましょう。転倒になる組は (2,1) と (3,1) だけなので、転倒は2つ、つまり偶数です。

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解答:

σ=(2,3,1)\sigma = (2, 3, 1) について、位置の組をすべて調べます:

位置の組 値 転倒か
(位置1, 位置2) 2 と 3 いいえ(2<32 < 3)
(位置1, 位置3) 2 と 1 はい(2>12 > 1)
(位置2, 位置3) 3 と 1 はい(3>13 > 1)

転倒の総数:2(偶数)

(−1)2=+1(-1)^2 = +1

並べ替えによる検算: (2,3,1)→3 と 1 を入れ替え(2,1,3)→2 と 1 を入れ替え(1,2,3)(2,3,1) \xrightarrow{\text{3 と 1 を入れ替え}} (2,1,3) \xrightarrow{\text{2 と 1 を入れ替え}} (1,2,3)。入れ替えが2回 ⇒\Rightarrow 偶数 ⇒\Rightarrow 符号 =+1= +1。✓

問3 · 反対角単位行列の落とし穴

3×3 の反対角単位行列では det⁡=−1\det = -1、4×4 の反対角単位行列では det⁡=+1\det = +1 です。

5×5 の反対角単位行列の行列式はいくつですか。

(反対角単位行列は、反対角線上に 1、それ以外に 0 が並ぶ行列です。一般の公式は det⁡=(−1)⌊n/2⌋\det = (-1)^{\lfloor n/2 \rfloor} です。)

✅ 正解です! 入れ替えは ⌊5/2⌋ = 2 回(偶数)なので、det = +1 です。

❌ 惜しい! 注意しましょう。3×3(−1 になる)から推し量ってはいけません。公式 det = (−1)^⌊n/2⌋ を当てはめましょう。

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解答:

n×nn \times n の反対角単位行列で生き残る置換は、(n,n−1,…,2,1)(n, n{-}1, \ldots, 2, 1) だけです。

n=5n = 5 のとき、(5,4,3,2,1)(5, 4, 3, 2, 1) を (1,2,3,4,5)(1, 2, 3, 4, 5) に並べ戻します:

  1. 5↔15 \leftrightarrow 1 を入れ替え:(1,4,3,2,5)(1, 4, 3, 2, 5)
  2. 4↔24 \leftrightarrow 2 を入れ替え:(1,2,3,4,5)(1, 2, 3, 4, 5) ✓

入れ替えは ⌊5/2⌋=2\lfloor 5/2 \rfloor = 2 回(偶数)なので、det⁡=(−1)2=+1\det = (-1)^2 = +1 です。

nn ⌊n/2⌋\lfloor n/2 \rfloor det⁡\det
2 1 −1-1
3 1 −1-1
4 2 +1+1
5 2 +1+1
6 3 −1-1

⚠️ 落とし穴: n=2,3n = 2, 3(どちらも −1-1)の符号のパターンがそのまま続くと思い込んではいけません。必ず ⌊n/2⌋\lfloor n/2 \rfloor を計算しましょう。

問4 · 正しいか誤りか — 0 の列

主張: n×nn \times n 行列のある列がすべて 0 ならば、行列式の公式の置換の項はすべて 0 になり、したがって det⁡(A)=0\det(A) = 0 である。

✅ 正解です! どの置換も 0 の列から成分を1つ選ばなければならないので、どの項も因子として 0 を含みます。

❌ 惜しい! よく考えましょう。どの置換も、各列にちょうど1つの行を割り当てます。ある列がすべて 0 なら、積はどうなるでしょうか。

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解答: 正しい。

どの置換 σ\sigma も、各列にちょうど1つの行を割り当てます。jj 列目がすべて 0 なら、どんな置換 σ\sigma についても σ(i)=j\sigma(i) = j となる行 ii が存在するので、ai,j=0a_{i,j} = 0 です。

積 ∏k=1nak,σ(k)\prod_{k=1}^n a_{k,\sigma(k)} は因子 ai,j=0a_{i,j} = 0 を含むので、積全体が 0 になります。

これは n!n! 個の置換すべてについて成り立つので、どの項も 0 であり、det⁡(A)=0\det(A) = 0 です。

これは 2×2 の導出で見たのとまったく同じ仕組みです。同じ列を2回選んだ候補では、もう一方の列が空っぽ(すべて 0)になり、その項は消えました。

正解数:0 / 4