線形代数 · 第18回 · 動画3 · インタラクティブ教材

一が並ぶ三重対角行列の行列式は、なぜ 1, 0, −1 しかないのか

I重要な公式

公式 名称 説明
det⁡(An)=det⁡(An−1)−det⁡(An−2)\det(A_n) = \det(A_{n-1}) - \det(A_{n-2}) 行列式の漸化式 余因子展開が直前の2項だけにまとまる
det⁡(A1)=1,    det⁡(A2)=0\det(A_1) = 1, \;\; \det(A_2) = 0 初めの値 漸化式の出発点
1,  0,  −1,  −1,  0,  1,  1,  0,  …1,\; 0,\; {-1},\; {-1},\; 0,\; 1,\; 1,\; 0,\; \ldots 周期 6 の巡回 数列は 6 項ごとに繰り返す
det⁡(An)\det(A_n) は n mod 6n \bmod 6 で決まる 余りによる表引き 割り算 1 回で、行列式をまるごと計算する手間が省ける

II可視化1 — 1 が並ぶ三重対角行列

主対角線とその両隣の対角線に 1 が並び、ほかはすべて 0 です。この行列の行列式は、どこまで大きくなるでしょうか。

💡 0 ばかりのこの疎な形こそが、余因子展開をわずか2項にまとめてくれます。それが可視化2の漸化式です。

III可視化2 — 漸化式が数列を作る

各行列式は、直前の値からその一つ前の値を引いたものです。そのため値は 1,0,−1,−1,0,11, 0, -1, -1, 0, 1 と巡ります。

💡 とりうる値は 3 つだけで、各項は直前の二項で決まるので、数列は繰り返すしかありません。ここでは 66 項ごとです。

IV可視化3 — 合同算術で表を引く

数列の周期が 66 なので、n mod 6n \bmod 6 を求める割り算 1 回で、行列式をまるごと計算する手間が省けます。

💡 どんな nn でも、たとえ nn が何千であっても、割り算 1 回で決まります。行列式の計算はまったく要りません。

V確認クイズ

問1

漸化式 det⁡(An)=det⁡(An−1)−det⁡(An−2)\det(A_n) = \det(A_{n-1}) - \det(A_{n-2}) と初めの値 det⁡(A1)=1\det(A_1) = 1、det⁡(A2)=0\det(A_2) = 0 を使うと、det⁡(A5)\det(A_5) はいくつですか。

✅ 正解です! det(A₅) = det(A₄) − det(A₃) = (−1) − (−1) = 0.

❌ 惜しい! 漸化式を丁寧に 3 回使いましょう。まず det(A₃)、次に det(A₄)、最後に det(A₅) を求めます。

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解答:

初めの値から、漸化式を一段ずつ使います。

det⁡(A3)=det⁡(A2)−det⁡(A1)=0−1=−1\det(A_3) = \det(A_2) - \det(A_1) = 0 - 1 = -1

det⁡(A4)=det⁡(A3)−det⁡(A2)=−1−0=−1\det(A_4) = \det(A_3) - \det(A_2) = -1 - 0 = -1

det⁡(A5)=det⁡(A4)−det⁡(A3)=−1−(−1)=−1+1=0\det(A_5) = \det(A_4) - \det(A_3) = -1 - (-1) = -1 + 1 = 0

答えは 0 です。

問2

1 が並ぶ三重対角行列の行列式の漸化式は、フィボナッチの漸化式に似ています。正しい式はどれですか。

✅ 正解です! 1 行目に沿って余因子展開すると、2 番目の項にマイナスの符号がつきます。

❌ 惜しい! (1,2)(1,2) 成分の余因子には、市松模様の符号パターンからマイナスの符号がつきます。足し算を引き算に変えたフィボナッチです。

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解答:

det⁡(An)\det(A_n) を 1 行目に沿って展開します。AnA_n の 1 行目は (1,1,0,0,…,0)(1, 1, 0, 0, \ldots, 0) です。

  • 1 番目の成分(a11=1a_{11} = 1、余因子の符号は正):残る小行列がちょうど An−1A_{n-1} なので、+det⁡(An−1)+\det(A_{n-1}) を与えます。
  • 2 番目の成分(a12=1a_{12} = 1、余因子の符号は負):対応する小行列式は、その 1 列目に沿って展開すると det⁡(An−2)\det(A_{n-2}) になるので、−det⁡(An−2)-\det(A_{n-2}) を与えます。
  • 残りの成分はすべて 0 なので、何も寄与しません。

したがって、 det⁡(An)=det⁡(An−1)−det⁡(An−2)\det(A_n) = \det(A_{n-1}) - \det(A_{n-2})

これはフィボナッチ(fn=fn−1+fn−2f_n = f_{n-1} + f_{n-2})に似ていますが、足し算の代わりに引き算になっています。

問3

det⁡(A100)\det(A_{100}) はいくつですか。

ヒント:行列式の数列の周期は 6 です。100 mod 6100 \bmod 6 を求めて、巡回表を引きましょう。

n mod 6n \bmod 6 1 2 3 4 5 0
det⁡(An)\det(A_n) 1 0 −1 −1 0 1

✅ 正解です! 100 mod 6 = 4 で、巡回表の 4 の欄から det = −1 です。

❌ 惜しい! まず 100 ÷ 6 = 16 余り 4 を求め、次に巡回表の 4 の欄を引きましょう。

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解答:

100 mod 6100 \bmod 6 を求めます。

100=16×6+4⟹100 mod 6=4100 = 16 \times 6 + 4 \qquad \Longrightarrow \qquad 100 \bmod 6 = 4

巡回表の 4 の欄を引きます。

n mod 6n \bmod 6 1 2 3 4 5 0
det⁡(An)\det(A_n) 1 0 −1 −1 0 1

det⁡(A100)=−1\boxed{\det(A_{100}) = -1}

行基本変形はいりません。100×100 行列でも、割り算 1 回と表を引くだけです!

問4

正しいか誤りか:各 det(A_n) は -1, 0, 1 のどれかにしかならないので、隣り合う二項の組は多くても 9 通りです。そのため行列式の数列は、いずれ必ず周期的になります。鳩の巣原理により、組はいつか必ず重複し、そこから先の数列全体が繰り返すことになります。

✅ 正解です! 鳩の巣原理が周期性を保証します。隣り合う二項の組は 9 通りしかないので、最初の 10 組(11 項)のうちに必ず重複が起こります。

❌ 惜しい! 隣り合う二項の組が有限個しかなく、漸化式で次の項が一通りに決まるとき、いずれ何が起こるはずか考えてみましょう。

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解答:正しい

推論を順に追うと、次のとおりです。

  1. 値が限られる:各行列式は {−1,0,1}\{-1, 0, 1\} のどれかで、とりうる値は 3 つだけです。
  2. 直前の二項で決まる:det⁡(An)=det⁡(An−1)−det⁡(An−2)\det(A_n) = \det(A_{n-1}) - \det(A_{n-2}) なので、各項は直前の二項だけで決まります。
  3. 組は有限個:隣り合う二項の組 (det⁡(An−1),det⁡(An−2))(\det(A_{n-1}), \det(A_{n-2})) は、多くても 3×3=93 \times 3 = 9 通りです。
  4. 鳩の巣原理:連続する 11 項(隣り合う組は 10 組)以内に、隣り合う値の組のどれかが必ず重複します。
  5. 先は一通りに決まる:漸化式は次の項を一通りに決めるので、組が一度重複すると、その後の項はすべて一致するしかなく、永久に続く巡回が生まれます。

具体的には、(det⁡(A6),det⁡(A7))=(1,1)=(det⁡(A0),det⁡(A1))(\det(A_6), \det(A_7)) = (1, 1) = (\det(A_0), \det(A_1)) となり、巡回の周期がちょうど 6 であることが確かめられます。

正解数:0 / 4