線形代数 · 第20回 · 動画1 · インタラクティブ教材

向きを変えないベクトル:固有値が明かす行列の本当の姿

I重要な公式

公式 名称 説明
Ax=λxA\mathbf{x} = \lambda \mathbf{x} 固有値の方程式 x≠0\mathbf{x} \neq \mathbf{0} が固有ベクトル、λ\lambda がその固有値
λ1+λ2+⋯+λn=tr(A)\lambda_1 + \lambda_2 + \cdots + \lambda_n = \text{tr}(A) 固有値の和 トレース(対角成分の和)に等しい
λ1⋅λ2⋯λn=det⁡(A)\lambda_1 \cdot \lambda_2 \cdots \lambda_n = \det(A) 固有値の積 行列式に等しい
λ=0  ⟺  A\lambda = 0 \iff A は特異 特異性の判定 固有値 0 があれば det⁡(A)=0\det(A) = 0

II可視化1 — 向きを変えない方向

A=(2112)A = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} が自分の直線の上に残すのはどの方向で、その倍率 λ\lambda はいくつでしょうか?

💡 AA は対称行列なので、2つの固有ベクトルの方向は直交し、固有値は必ず実数になります。

III可視化2 — 固有値はそれぞれの軸を伸び縮みさせる

各固有値は、1本の固有ベクトルの軸に沿って空間を伸ばし、裏返し、あるいはつぶします。もう一方の軸には影響しません。

IV可視化3 — 回転には実数の固有ベクトルがない

純粋な回転はすべてのベクトルを同じ角度だけ回すので、自分の直線に戻ってくる実数の方向はありません。

💡 それ以外の角度では固有値は複素数 e±iθe^{\pm i\theta} になります。実数の行列でも複素数が避けられないのは、このためです。

V確認クイズ

問1 · 固有値の方程式

AA を 2×22 \times 2 行列とし、x≠0\mathbf{x} \neq \mathbf{0} を固有値 λ=−3\lambda = -3 に対する AA の固有ベクトルとします。

正しいのはどれですか?

✅ 正解です! 負の固有値は固有ベクトルを裏返し、長さは ∣λ∣|\lambda| 倍になります。

❌ 惜しい! Ax=λxA\mathbf{x} = \lambda \mathbf{x} を思い出しましょう。λ\lambda が負なら、出力は同じ直線の上にありますが向きが反対で、長さは元の ∣λ∣|\lambda| 倍です。

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解答:

固有値の方程式は Ax=λxA\mathbf{x} = \lambda \mathbf{x} です。λ=−3\lambda = -3 なら:

Ax=−3 xA\mathbf{x} = -3\,\mathbf{x}

  • 大きさは x\mathbf{x} の長さの ∣−3∣=3|-3| = 3 倍です。
  • 符号が負なので、AxA\mathbf{x} は反対の向きを向きます。
  • それでも x\mathbf{x} と同じ直線の上にあります(裏返っただけ)。ですから垂直でもなく、零でもありません。

問2 · トレースと行列式

3×33 \times 3 行列 AA の固有値は λ1=4\lambda_1 = 4, λ2=−1\lambda_2 = -1, λ3=2\lambda_3 = 2 です。

AA のトレースと行列式はいくつですか?

✅ 正解です! 固有値の和 = トレース、固有値の積 = 行列式です。

❌ 惜しい! tr(A)=∑λi\text{tr}(A) = \sum \lambda_i(和)、det⁡(A)=∏λi\det(A) = \prod \lambda_i(積)を思い出しましょう。

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解答:

  • トレース = 固有値の和:4+(−1)+2=54 + (-1) + 2 = 5
  • 行列式 = 固有値の積:4⋅(−1)⋅2=−84 \cdot (-1) \cdot 2 = -8

よって tr(A)=5\text{tr}(A) = 5、det⁡(A)=−8\det(A) = -8 です。

よくある間違い:トレースと行列式を取り違えること、あるいは演算(和と積)を取り違えることです。

問3 · ゼロ固有値

正しいか誤りか:λ=0\lambda = 0 が行列 AA の固有値ならば、AA は必ず特異である(つまり det⁡(A)=0\det(A) = 0)。

✅ 正解です! 行列式は固有値の積なので、固有値に 0 があれば必ず det⁡(A)=0\det(A) = 0 になります。

❌ 惜しい! det⁡(A)=∏λi\det(A) = \prod \lambda_i でした。どれか1つでも λi=0\lambda_i = 0 なら、積は 0 です。

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解答:

行列式はすべての固有値の積に等しくなります: det⁡(A)=λ1⋅λ2⋯λn\det(A) = \lambda_1 \cdot \lambda_2 \cdots \lambda_n

固有値が1つでも 0 なら積全体が 0 になるので、det⁡(A)=0\det(A) = 0 で、AA は特異です。

言い換えると、λ=0\lambda = 0 は Ax=0A\mathbf{x} = \mathbf{0} を満たす 0 でない x\mathbf{x} があるということです。つまり AA の零空間は非自明で、これこそ特異行列の目印です。

問4 · 固有ベクトルを見分ける

A=(0110)A = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} とします(動画に出てきた入れ替え行列)。

次のうち、AA の固有ベクトルはどれですか?

✅ 正解です! A[−1,1]T=[1,−1]T=−1⋅[−1,1]TA[-1,1]^T = [1,-1]^T = -1 \cdot [-1,1]^T なので、λ=−1\lambda = -1 です。

❌ 惜しい! 出力 AxA\mathbf{x} は x\mathbf{x} のスカラー倍でなければなりません。出力が x\mathbf{x} をある1つの数で何倍かしただけになっているか確かめましょう。

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解答:

ベクトル x\mathbf{x} が AA の固有ベクトルであるとは、Ax=λxA\mathbf{x} = \lambda \mathbf{x} となること、つまり出力が入力のスカラー倍になることです。

選択肢を1つずつ確かめます:

  • A[2,3]T=[3,2]TA[2,3]^T = [3,2]^T. [3,2]=λ[2,3][3,2] = \lambda [2,3] となるでしょうか? それには λ=3/2\lambda = 3/2 かつ λ=2/3\lambda = 2/3 が必要です。❌ 固有ベクトルではありません。
  • A[1,0]T=[0,1]TA[1,0]^T = [0,1]^T. [0,1]=λ[1,0][0,1] = \lambda [1,0] となるでしょうか? 0=λ⋅10 = \lambda \cdot 1 かつ 1=λ⋅01 = \lambda \cdot 0 が必要で、これは不可能です。❌
  • A[−1,1]T=[1,−1]TA[-1,1]^T = [1,-1]^T. [1,−1]=λ[−1,1][1,-1] = \lambda [-1,1] となるでしょうか? はい、λ=−1\lambda = -1 で成り立ちます。✅ 固有値 −1-1 の固有ベクトルです。
  • A[1,2]T=[2,1]TA[1,2]^T = [2,1]^T. [2,1]=λ[1,2][2,1] = \lambda[1,2] となるでしょうか? λ=2\lambda = 2 かつ λ=1/2\lambda = 1/2 が必要です。❌

したがって条件を満たすのは [−1,1][-1, 1] だけで、これが λ=−1\lambda = -1 の固有ベクトルです。

VIまとめ

固有値と固有ベクトルの核心となる考えをまとめます:

これらの考え方は、ページランク、主成分分析(PCA)、振動解析など、多くの応用を支えています。

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