線形代数 · 第22回 · 動画2 · インタラクティブ教材

左半平面の法則:減衰する系と爆発する系を分けるもの

I重要な公式

公式 名称 説明
∣eλt∣=eRe⁡(λ) t\lvert e^{\lambda t} \rvert = e^{\operatorname{Re}(\lambda)\,t} 大きさの法則 虚部は回転させるだけ。増大か減衰かは実部が決める
dudt=Au\frac{du}{dt} = Au が安定   ⟺  Re⁡(λ)<0\iff \operatorname{Re}(\lambda) < 0(すべての λ\lambda について) 連続時間の安定性 すべての固有値が左半平面にある
trace⁡(A)<0\operatorname{trace}(A) < 0 かつ det⁡(A)>0\det(A) > 0 2×22\times 2 行列の近道 2×22\times 2 行列が安定であるための必要十分条件
Ak→0  ⟺  ∣λ∣<1A^k \to 0 \iff \lvert \lambda \rvert < 1(すべての λ\lambda について) 離散時間の安定性 すべての固有値が単位円の内側にある

II可視化1 — 固有値の位置と減衰

eλte^{\lambda t} が減衰するか爆発するかを決めるのは、λ=a+bi\lambda = a + bi の実部だけです。

💡 チャレンジ:固有値をまっすぐ上下にドラッグしてみましょう。減衰の包絡線はまったく動きません。Im⁡(λ)\operatorname{Im}(\lambda) が決めるのは回転の速さだけだからです。

III可視化2 — トレース・行列式平面

2×22\times 2 の系の固有値は、トレースと行列式だけで決まります。そして、系の運命も決まります。

💡 チャレンジ:点を破線の放物線 det⁡=14trace⁡2\det = \tfrac{1}{4}\operatorname{trace}^2 の上に乗せてみましょう。そこでは2つの固有値がぶつかって重根になります。結節点と渦状点の境目です。

IV可視化3 — 連続時間と離散時間の安定性

同じ λ\lambda でも、dudt=Au\tfrac{du}{dt}=Au では左半平面、AkA^k では単位円の内側を基準に判定されます。

💡 写像 z=eλz = e^{\lambda} は、左半平面を単位円の内側へ写します。だからこそ、安定性の境界は直線から円へと曲がるのです。

V確認クイズ

問1

線形の系 dudt=Au\frac{du}{dt} = Au の固有値が λ1=−4+10i\lambda_1 = -4 + 10i と λ2=−1−7i\lambda_2 = -1 - 7i です。

t→∞t \to \infty のとき、u(t)→0u(t) \to 0 となるでしょうか?

✅ 正解です! 実部がどちらも負なので、eλte^{\lambda t} の項はどれも減衰します。

❌ 惜しい! 虚部は回転させるだけで、その大きさは 1 です。大きくなったり小さくなったりするのは、実部だけです。

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解答:

大きさの法則より、∣eλt∣=eRe⁡(λ) t\lvert e^{\lambda t}\rvert = e^{\operatorname{Re}(\lambda)\,t} です。

  • λ1=−4+10i\lambda_1 = -4 + 10i のとき:∣eλ1t∣=e−4t→0\lvert e^{\lambda_1 t}\rvert = e^{-4t} \to 0。
  • λ2=−1−7i\lambda_2 = -1 - 7i のとき:∣eλ2t∣=e−t→0\lvert e^{\lambda_2 t}\rvert = e^{-t} \to 0。

どちらの部分も減衰するので、u(t)→0u(t) \to 0 です。虚部(10i10i と −7i-7i)は、縮んでいく解を回転させるだけで、縮むかどうかは変えません。

問2

次の行列を考えます。 A=(−3421).A = \begin{pmatrix} -3 & 4 \\ 2 & 1 \end{pmatrix}.

系 dudt=Au\frac{du}{dt} = Au は安定でしょうか?

✅ 正解です! 行列式が負なら、トレースが負でも安定にはなりません。

❌ 惜しい! トレース <0<0 だけでは足りません。トレース <0<0 かつ 行列式 >0>0 が必要です。det⁡(A)=ad−bc\det(A) = ad - bc を計算しましょう。

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解答:

2×22\times 2 行列の近道を使います。トレース <0<0 と 行列式 >0>0 の両方が必要です。

  • trace⁡(A)=−3+1=−2<0\operatorname{trace}(A) = -3 + 1 = -2 < 0 ✓
  • det⁡(A)=(−3)(1)−(4)(2)=−3−8=−11<0\det(A) = (-3)(1) - (4)(2) = -3 - 8 = -11 < 0 ✗

行列式が負なので、固有値は互いに逆の符号をもちます(鞍点):λ1λ2=−11<0\lambda_1 \lambda_2 = -11 < 0。

トレースが負でわかるのは、固有値の平均が負だということだけです。固有値の1つはまだ正で、それが eλte^{\lambda t} を無限大へと押し上げます。

問3

正しいか誤りか:行列 AA が dudt=Au\frac{du}{dt} = Au について安定ならば、−A-A も安定である。

✅ 正解です! AA の符号とともに固有値の符号も反転するので、安定は完全な不安定に変わります。

❌ 惜しい! 固有値の方程式で考えましょう。Ax=λxAx=\lambda x なら、(−A)x(-A)x は何に等しいでしょうか?

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解答:

Ax=λxAx = \lambda x なら、(−A)x=−λx(-A)x = -\lambda x です。したがって −A-A の固有値は、ちょうど −λ1,−λ2,…-\lambda_1, -\lambda_2, \ldots です。

すべての Re⁡(λi)<0\operatorname{Re}(\lambda_i) < 0(つまり AA が安定)なら、すべての Re⁡(−λi)>0\operatorname{Re}(-\lambda_i) > 0 となり、−A-A は完全に不安定です。どのモードも発散します。

これは動画に出てきた「時間を逆にすれば、安定性も逆になる」という考え方です。便利な確認方法でもあります。AA の符号を反転させても系がまだ安定なら、どこかで符号を間違えています。

問4

行列 BB の固有値が λ1=0.6+0.5i\lambda_1 = 0.6 + 0.5i と λ2=−0.4\lambda_2 = -0.4 です。

正しいのはどれでしょうか?

✅ 正解です! ∣λ1∣≈0.78<1|\lambda_1| \approx 0.78 < 1(離散時間で安定)ですが、Re⁡(λ1)=0.6>0\operatorname{Re}(\lambda_1) = 0.6 > 0(連続時間で不安定)です。

❌ 惜しい! べき乗 BkB^k では大きさ ∣λ∣<1|\lambda|<1 を、dudt=Bu\frac{du}{dt}=Bu では実部 Re⁡(λ)<0\operatorname{Re}(\lambda)<0 を調べます。それぞれの固有値について両方を計算しましょう。

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解答:

同じ固有値に対して、2種類の安定性の判定を行います。

離散時間(Bk→0B^k \to 0):すべての固有値について ∣λ∣<1|\lambda| < 1 が必要です。

  • ∣λ1∣=0.62+0.52=0.36+0.25=0.61≈0.78<1|\lambda_1| = \sqrt{0.6^2 + 0.5^2} = \sqrt{0.36 + 0.25} = \sqrt{0.61} \approx 0.78 < 1 ✓
  • ∣λ2∣=0.4<1|\lambda_2| = 0.4 < 1 ✓

よって Bk→0B^k \to 0。離散時間で安定です。

連続時間(dudt=Bu\frac{du}{dt}=Bu):すべての固有値について Re⁡(λ)<0\operatorname{Re}(\lambda) < 0 が必要です。

  • Re⁡(λ1)=0.6>0\operatorname{Re}(\lambda_1) = 0.6 > 0 ✗

よって u(t)u(t) は発散します。連続時間で不安定です。

同じ固有値なのに、判定は正反対です。これが動画の最後の場面の要点です。連続時間では左半平面を、離散時間では単位円の内側を使います。

正解数:0 / 4