線形代数 · 第23回 · 動画1 · インタラクティブ教材
| 公式 | 名称 | 説明 |
|---|---|---|
| マルコフ行列の列の規則 | のどの列も成分の和が 1 | |
| 定常状態の方程式 | に対応する固有ベクトル | |
| 左零空間の恒等式 | 1 が並んだ行は を消す | |
| 転置の原理 | と は同じ固有値をもつ |
を引くと対角成分がそれぞれ 1 ずつ減り、マルコフ行列の列の和はどれも からちょうど に下がります。
💡 のどの列も和が なので、行 に を掛けるとすべて 0 になります。1 が並んだ行は の左零空間に属しているのです。
確率単体のどこから出発して を掛け続けても、すべての軌跡はただ一つの不動点に引き寄せられます。
💡 この共通の極限が定常状態、つまり の右の零空間に属する固有ベクトルです。これは ではありません。1 が並んだ行が属するのは左零空間です。
構造だけを使った7つのステップが、「列の和が 」から「 は固有値」まで一気につなぎます。
💡 この鎖は、列の和についての構造的な推論だけで にたどり着きます。固有多項式も、行列式の展開も使いません。
問1
次の行列を考えます。
行列式も固有多項式も計算せずに、すぐにわかる固有値はどれですか。
✅ 正解です! どんなマルコフ行列も を固有値にもちます。
❌ 惜しい! これがマルコフ行列であること(成分が 0 以上で、列の和が 1)を確かめ、必ず存在する固有値を思い出しましょう。
解答:
がマルコフ行列であることを確かめます。
はマルコフ行列なので、 は自動的に固有値になります。構造的な理由はこうです。 の列の和は になるので です。したがって は特異で、 となり、 は固有方程式の解になります。
問2
正しいか誤りか:どんなマルコフ行列 についても、行ベクトル は定常状態の固有ベクトルである。つまり が成り立つ。
✅ 正解です! が属するのは の左零空間で、右の零空間ではありません。定常状態を与えるのは右の零空間です。
❌ 惜しい! 1 が並んだ行は を左から消すのに対し、固有ベクトルは右側で を満たすことを思い出しましょう。
解答:
答えは誤りです。1 が並んだ行 が属するのは の左零空間です。
積の各成分は の列の和であり、マルコフ行列の列の和は を引くと 0 になるからです。
定常状態の固有ベクトル は右の零空間に属します。つまり 、言い換えると です。一般には です。
たとえば のとき、定常状態ベクトルはおよそ で、 ではありません。
問3
がマルコフ行列の固有値であることの証明は、次の鎖を使います。
ステップ4に入る主張はどれですか。また、ステップ4からステップ5へ進む根拠となる事実は何ですか。
✅ 正解です! 転置の原理こそが要です。これがなければ、左の零空間のベクトルを見つけても、行列が特異であることの証明には役立ちません。
❌ 惜しい! 左零空間に 1 が並んだ行があることが行について何を教えてくれるか、そしてそれを列に移すにはどの事実を使えばよいかを考えましょう。
解答:
抜けているステップは「 の行は一次従属」です。これはステップ3から直接わかります。ゼロでない左の零空間のベクトル は、和がゼロになる行の一次結合を与えるので、行は従属です。
「行が従属」から「列が従属」への橋渡しには、転置の原理を使います。
同じことですが、行列とその転置は階数が等しいので、行階数と列階数は一致します。行が従属なら階数はフルランクより小さく、したがって列も従属でなければなりません。
ほかの選択肢は誤りです。
問4
を のマルコフ行列、 をその定常状態の確率ベクトルとします(つまり で、 の成分は 0 以上、和は 1)。正しい主張はどれですか。
✅ 正解です! 定常状態は の右の零空間に属し、 のどのべき乗を掛けても変わりません。
❌ 惜しい! を零空間についての主張に書き直し、そのうえで を繰り返し掛けると何が起こるかを考えましょう。
解答:
を書き直すと となり、 は の右の零空間に属します。
なので、 を掛けても は変わりません。
これこそが「定常状態」の意味です。
ほかの選択肢について:
正解数:0 / 4