線形代数 · 第25回 · 動画2 · インタラクティブ教材

フーリエ行列の逆行列がほぼタダで求まる理由

I重要な公式

公式 名称 説明
w=e2πi/nw = e^{2\pi i / n} 1 の原始 nn 乗根 nn は wn=1w^n = 1 となる最小の指数
(Fn)ij=wij(F_n)_{ij} = w^{ij} フーリエ行列の成分 添字は i,j=0,…,n−1i,j = 0, \ldots, n-1
⟨u,v⟩=∑kuk‾ vk\langle u, v \rangle = \sum_k \overline{u_k}\, v_k エルミート内積 先に共役をとってから掛ける
Fn−1=1nFnHF_n^{-1} = \frac{1}{n} F_n^{H} フーリエ行列の逆行列 共役転置を 1/n1/n 倍したもの

II可視化1 — 1 の冪根

w=e2πi/nw = e^{2\pi i/n} のべき乗は、単位円上に等間隔に並ぶ nn 個の点に乗ります。

💡 ww を掛けるたびに 2π/n2\pi/n だけ回転し、nn 回で wn=w0=1w^n = w^0 = 1 に戻ります。この巡回的な対称性が FnF_n を満たしています。

III可視化2 — フーリエ行列の成分

どの成分 (Fn)ij=wij(F_n)_{ij} = w^{ij} も ww のべき乗で、0 行目と 0 列目はすべて 1 です。

IV可視化3 — 列どうしの内積

F4F_4 の異なる列は直交し、内積は 00 です。列とそれ自身の内積は n=4n = 4 になります。

💡 異なる列どうしは打ち消し合って 00 に、同じ列どうしは nn になります。だから FnHFn=nIF_n^H F_n = nI で、Fn−1=1nFnHF_n^{-1} = \tfrac{1}{n} F_n^H です。

V確認クイズ

問1

w=e2πi/4=iw = e^{2\pi i/4} = i を 1 の原始 4 乗根とします。w6w^6 はいくつですか。

✅ 正解です! w6=w6 mod 4=w2=−1w^6 = w^{6 \bmod 4} = w^2 = -1 です。

❌ 惜しい! 指数を、まず 4 で割った余りに置き換えましょう。w4=1w^4 = 1 だからです。

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解答:

w4=1w^4 = 1 なので、指数を 4 で割った余りに置き換えられます。 w6=w6 mod 4=w2=i2=−1w^6 = w^{6 \bmod 4} = w^2 = i^2 = -1

フーリエ行列の成分は、まさにこうして埋めていきます。ww のどんなべき乗も、w0,w1,w2,w^0, w^1, w^2, または w3w^3 のどれかに直せます。

問2

列の番号を 0 から数えて、F4F_4 の列 1 と列 3 を考えます。

u=(1,i,−1,−i)u = (1, i, -1, -i) と v=(1,−i,−1,i)v = (1, -i, -1, i) です。

エルミート内積 ⟨u,v⟩=∑kuk‾vk\langle u, v \rangle = \sum_k \overline{u_k} v_k を使うと、⟨u,v⟩\langle u, v \rangle はいくつですか。

✅ 正解です! FnF_n の異なる列は、エルミート内積について直交します。

❌ 惜しい! 共役をとるステップを飛ばしたのかもしれません。エルミート内積では、1つ目のベクトルの共役をとります。

❌ 惜しい! まず uu の共役をとり、それから成分ごとに掛けて足しましょう。

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解答:

まず uu の共役をとります:uˉ=(1,−i,−1,i)\bar{u} = (1, -i, -1, i)。

次に、v=(1,−i,−1,i)v = (1, -i, -1, i) と成分ごとに掛けて足します。

⟨u,v⟩=(1)(1)+(−i)(−i)+(−1)(−1)+(i)(i)\langle u, v \rangle = (1)(1) + (-i)(-i) + (-1)(-1) + (i)(i) =1+i2+1+i2=1−1+1−1=0= 1 + i^2 + 1 + i^2 = 1 - 1 + 1 - 1 = 0

エルミート内積について、これらの列は直交しています。これが FnHFn=nIF_n^H F_n = nI の鍵となる事実です。

問3

正しいか誤りか:4×44 \times 4 のフーリエ行列 F4F_4 について、行列 F4HF4F_4^H F_4 は 4I4I(単位行列の4倍)に等しい。

✅ 正解です! まさにこのために、F4−1=14F4HF_4^{-1} = \frac{1}{4}F_4^H となるのです。

❌ 惜しい! 各列の長さの二乗は 4 で、異なる列は直交しているので、F4HF4F_4^H F_4 は対角線に 4 が並ぶ対角行列です。

❌ 惜しい! もう一度考えてみましょう。上のヒントが役に立ちます。

解答を見る

解答:

成分 (F4HF4)ij(F_4^H F_4)_{ij} は、F4F_4 の列 ii と列 jj のエルミート内積です。

  • 対角成分(i=ji = j):各列の長さの二乗は ∣1∣2+∣i∣2+∣−1∣2+∣−i∣2=4|1|^2 + |i|^2 + |-1|^2 + |-i|^2 = 4 です。
  • 非対角成分(i≠ji \ne j):異なる列は直交しているので、内積は 00 です。

したがって F4HF4=4IF_4^H F_4 = 4I で、4 で割ると次のようになります。 F4−1=14F4HF_4^{-1} = \frac{1}{4} F_4^H

問4

一般の n×nn \times n フーリエ行列 FnF_n について、Fn−1F_n^{-1} はどれですか。

✅ 正解です! FnHFn=nIF_n^H F_n = nI なので、逆行列は 1nFnH\frac{1}{n}F_n^H です。

❌ 惜しい!倍率が抜けています。 各列の長さの二乗は 1 ではなく nn なので、1/n1/n の係数が必要です。

❌ 惜しい! 鍵となる関係式は FnHFn=nIF_n^H F_n = nI です。これを Fn−1F_n^{-1} について解きましょう。

解答を見る

解答:

FnF_n の列はエルミート内積について互いに直交し、どの列も長さの二乗は nn です(∣wkj∣2=1|w^{kj}|^2 = 1 となる成分が nn 個あるからです)。

したがって、 FnHFn=nI  ⟹  Fn−1=1nFnHF_n^H F_n = nI \implies F_n^{-1} = \frac{1}{n} F_n^H

逆離散フーリエ変換が、順方向の離散フーリエ変換と本質的に同じなのはこのためです。共役をとって nn で割るだけで、ガウスの消去法はいりません。この同じ直交性が、高速フーリエ変換(FFT)や JPEG の画像圧縮、偏微分方程式の数値解法を支えています。

正解数:0 / 4