線形代数 · 第26回 · 動画1 · インタラクティブ教材
の対称行列 が正定値であるかどうかを判定する、同値な 4 つの判定法は次のとおりです。
| 判定法 | 条件 |
|---|---|
| 固有値 | がともに成り立つ |
| 左上の小行列式(左上の主小行列式) | かつ |
| ピボット | かつ |
| 二次形式 | 任意の に対して |
この 4 つの判定法は論理的に同値です。一つに合格すれば、すべてに合格。一つで不合格なら、すべて不合格です。
対称行列のどの成分を変えても、4 つの判定法の結論はいっせいに切り替わります。
を固定すると、鞍の形とお椀の形を分けるのは の符号だけです。
問1 · 判定法を使う
次の対称行列を考えます。
は正定値でしょうか。
✅ 正解です! 左上の小行列式がどちらも正なので、 は正定値です。
❌ 惜しい! 公式は ではなく です。また、非対角成分が 0 でなくてもまったく問題ありません。正定値行列のほとんどは、0 でない非対角成分をもっています。
解答:
左上の小行列式による判定を使います。
左上の小行列式がどちらも正なので、 は正定値です。
固有値で確かめることもできます。トレース 、 なので となり、 です。どちらも正です。
二次形式で確かめても同じです。 なら です。
問2 · 行列式の落とし穴
ある学生が次のように主張しました。「 ならば、 は必ず正定値である。」
この主張は正しいでしょうか、誤りでしょうか。
✅ 正解です! 行列 の行列式は ですが、この行列は負定値です。左上の小行列式がすべて正でなければなりません。
❌ 惜しい! を考えてみましょう。行列式は ですが、固有値は 2 つとも負です。負の数どうしの積は正になるのです!
解答:
誤りです。行列式が正というだけでは、正定値であることは示せません。
反例:
この行列は ですが、固有値は 2 つとも です。つまり は負定値で、正定値とは正反対です。
行列では、左上の小行列式がすべて正でなければなりません。
最後の一つだけでなく、両方の条件が必要です。なぜなら、固有値が 2 つとも負でも、その積(行列式)は正になりますが、行列は負のエネルギーを生むからです。
問3 · 行列を分類する
次の行列を考えます。
で を計算すると になります。
この 1 回の計算から、 について何がわかるでしょうか。
✅ 正解です! が一度でも負になれば、正定値ではないと言えます。(実際、この行列は不定値で、固有値の一つが正、もう一つが負です。)
❌ 惜しい! 正定値であるためには、0 でない任意の に対して でなければなりません。負になる が一つ見つかれば、それで正定値は否定されます。
解答:
が一度でも負の値をとれば、その時点で正定値の可能性は消えます。定義は、0 でない任意の に対して を要求しているからです。反例が一つあれば、判定は不合格です。
が見つかったので、行列 は正定値ではありません。不定値か負定値のどちらかです(ここではトレース なので少なくとも一つの固有値は正であり、不定値だとわかります)。
ほかの判定法でも確かめてみましょう。
4 つの判定法の結論は一致します。 は不定値です。
問4 · 二次形式の幾何
対称行列 について、 上の のグラフは曲面になります。等高線 が楕円になるのは、ちょうどどの場合でしょうか。
✅ 正解です! 正定値 ⟺ グラフがお椀の形 ⟺ 等高線が楕円。軸の長さは固有値で、軸の向きは固有ベクトルで決まります。
❌ 惜しい! 鞍の形なら双曲線、谷の形なら平行な 2 本の直線になり、伏せたお椀の形では高さ の実数の等高線は存在しません。閉じた楕円になるのは、お椀の形(正定値)のときだけです。
解答:
等高線 が楕円になるのは、 が正定値のとき、かつそのときに限ります。
幾何的な対応は次のとおりです。
| の種類 | 曲面の形 | 等高線 |
|---|---|---|
| 正定値 | お椀(0 で狭義の最小) | 楕円(閉曲線) |
| 半正定値 | 谷(平らな底をもつ溝) | 平行な 2 本の直線 |
| 不定値 | 鞍 | 双曲線 |
| 負定値 | 伏せたお椀 | 空集合(実数解なし) |
が正定値のとき、固有値 は楕円の半軸の長さの二乗の逆数です。固有ベクトルは主軸の方向を向いています。楕円が円になるのは のときだけです。
正定値行列がいたるところに現れるのは、この幾何的な姿があるからです。最適化では狭義の最小値を保証し、統計学では共分散行列をきちんと意味のあるものにし、物理学では安定な釣り合いをもたらします。
正解数:0 / 4