線形代数 · 第26回 · 動画2 · インタラクティブ教材

平方完成はガウスの消去法だった:正定値行列のピボット判定

I重要な公式

公式 名称 説明
xTAx=ax12+2bx1x2+cx22x^{T}Ax = ax_1^2 + 2bx_1x_2 + cx_2^2 二次形式(2×2) A=(abbc)A = \begin{pmatrix} a & b \\ b & c \end{pmatrix} は対称行列
ax12+2bx1x2+cx22=a(x1+bax2)2+(c−b2a)x22ax_1^2 + 2bx_1x_2 + cx_2^2 = a\left(x_1 + \tfrac{b}{a}x_2\right)^2 + \left(c - \tfrac{b^2}{a}\right)x_2^2 平方完成 平方和への分解
ピボット:d1=a,  d2=c−b2ad_1 = a,\ \ d_2 = c - \tfrac{b^2}{a} ガウスの消去法 平方和で平方の外に出る係数
乗数:ℓ21=ba\ell_{21} = \tfrac{b}{a} 消去の手順 平方の内側のずれ
A≻0  ⟺  A \succ 0 \iff ピボットがすべて >0> 0 正定値性の判定 行簡約から定値性を判定

II可視化1 — ピボットが形を決める

ピボット d1,d2d_1, d_2 の符号によって、xTAxx^{T}Ax の等高線は楕円、平行な直線、双曲線のいずれかになります。

楕円はお椀の等高線です。交わる 2 本の直線は鞍の形に、平行な直線は退化した谷の形に対応します。

III可視化2 — 平方完成 = 消去法

A=(266c)A = \begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 6 & c \end{pmatrix} での平方完成の各手順は、ガウスの消去法の一つひとつの手順とぴったり対応しています。

ステップ1 — 二次形式
xTAx=2x12+12x1x2+c x22x^{T}Ax = 2x_1^2 + 12x_1x_2 + c\,x_2^2
A=(266c)A = \begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 6 & c \end{pmatrix}
ステップ2 — ガウスの消去法
1 つ目のピボットは d1=a=2d_1 = a = 2、乗数は ℓ21=ba=62=3\ell_{21} = \tfrac{b}{a} = \tfrac{6}{2} = 3 です。
R2←R2−3R1R_2 \leftarrow R_2 - 3R_1
ステップ3 — 平方完成
2(x12+6x1x2)+c x222\big(x_1^2 + 6x_1x_2\big) + c\,x_2^2
=2(x1+3x2)2−18x22+c x22= 2\big(x_1 + 3x_2\big)^2 - 18x_2^2 + c\,x_2^2
平方の内側のずれ +3x2+3x_2 が、乗数 ℓ21\ell_{21} です。
ステップ4 — ピボットによる判定
xTAx=2(x1+3x2)2+(c−18) x22x^{T}Ax = 2\big(x_1 + 3x_2\big)^2 + (c - 18)\,x_2^2
ピボットは d1=2d_1 = 2、d2=c−18d_2 = c - 18 なので、A≻0  ⟺  c>18A \succ 0 \iff c > 18 です。c=18c = 18 では谷の形、それより小さいと鞍の形になります。

乗数は平方の内側のずれに、ピボットは平方の外側の係数になります。

IV確認クイズ

次の問題で理解を確かめましょう。

問1

次の対称行列を考えます。 A=(36614).A = \begin{pmatrix} 3 & 6 \\ 6 & 14 \end{pmatrix}. ガウスの消去法を使うと、2 つのピボットはいくつになりますか。

✅ 正解です! ピボットがどちらも正なので、AA は正定値です。

❌ 惜しい! それはピボットではなく、AA の対角成分です。2 つ目のピボットは消去のあとで変わります。

❌ 惜しい! 消去の手順を見直しましょう。c−bc - b ではなく d2=c−b2/ad_2 = c - b^2/a です。

❌ 符号の間違いです。 −2-2 ではなく d2=14−12=+2d_2 = 14 - 12 = +2 です。

❌ 惜しい! もう一度考えてみましょう。上の説明がヒントになります。

解答を見る

解答:

1 つ目のピボットは (1,1) 成分で、d1=3d_1 = 3 です。

乗数は ℓ21=6/3=2\ell_{21} = 6/3 = 2 です。1行目の 22 倍を2行目から引くと、新しい (2,2) 成分は次のようになります。

d2=14−2⋅6=14−12=2.d_2 = 14 - 2 \cdot 6 = 14 - 12 = 2.

同じことですが、d2=c−b2/a=14−36/3=14−12=2.d_2 = c - b^2/a = 14 - 36/3 = 14 - 12 = 2.

ピボットは 3 と 2 です。どちらも正なので、AA は正定値です。

問2

正しいか誤りか:対称行列 AA の成分がすべて正ならば、AA は正定値である。

✅ 正解です! 成分が正でも、正定値であるとは限りません。それを保証するのは、ピボットが正であることだけです。

❌ 惜しい! これはよくある落とし穴です。行列 (2667)\begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 6 & 7 \end{pmatrix} は成分がすべて正ですが、不定値です。

❌ 惜しい! もう一度考えてみましょう。上の説明がヒントになります。

解答を見る

解答:

誤りです。判定の基準は成分が正かどうかではなく、ピボットが正かどうかです。

動画に出てきた反例:A=(2667)A = \begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 6 & 7 \end{pmatrix} は成分がすべて正ですが、

d2=7−622=7−18=−11<0.d_2 = 7 - \frac{6^2}{2} = 7 - 18 = -11 < 0.

なので、AA は不定値です。実際、x=(−3,1)x = (-3, 1) を代入すると次のようになります。

xTAx=2(9)+12(−3)(1)+7(1)=18−36+7=−11.x^{T}Ax = 2(9) + 12(-3)(1) + 7(1) = 18 - 36 + 7 = -11.

正しい判定法:AA が正定値であるのは、ピボットがすべて正のとき、かつそのときに限ります。

問3

A=(26620)A = \begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 6 & 20 \end{pmatrix} について xTAxx^{T}Ax を平方完成すると、次の分解が得られます。

xTAx=2(x1+3x2)2+2x22.x^{T}Ax = 2(x_1 + 3x_2)^2 + 2 x_2^2.

平方の内側の係数 3 は、ガウスの消去法の言葉でいうと何にあたるでしょうか。

✅ 正解です! ピボットは平方の外側の係数に、乗数は平方の内側のずれになります。

❌ 惜しい! 1 つ目のピボットは 3 ではなく d1=2d_1 = 2(1 つ目の平方の外側の係数)です。

❌ 惜しい! 2 つ目のピボットは d2=2d_2 = 2(2 つ目の平方の外側の係数)です。

❌ 惜しい! det⁡A=2⋅20−36=4\det A = 2 \cdot 20 - 36 = 4 で、3 ではありません。

❌ 惜しい! もう一度考えてみましょう。上の説明がヒントになります。

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解答:

分解は次の形をしています。

xTAx=d1 (x1+ℓ21x2)2+d2 x22.x^{T}Ax = d_1\,(x_1 + \ell_{21} x_2)^2 + d_2\,x_2^2.

A=(26620)A = \begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 6 & 20 \end{pmatrix} の場合:

  • 1 つ目のピボット d1=2d_1 = 2(1 つ目の平方の外側の係数)
  • 乗数 ℓ21=b/a=6/2=3\ell_{21} = b/a = 6/2 = 3(1 つ目の平方の中にある内側のずれ)
  • 2 つ目のピボット d2=20−62/2=2d_2 = 20 - 6^2/2 = 2(2 つ目の平方の外側の係数)

つまり、3 は消去の乗数 ℓ21\ell_{21} です。(2,1) 成分を 0 にするために、1行目に掛けてから2行目から引く数のことです。

動画の決め台詞:ピボットは外に、乗数は中に。

問4

A=(1224)A = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} を考えます。その二次形式 xTAxx^{T}Ax を分類してください。

✅ 正解です! ピボットの一つが 0 なので、この二次形式はただ一つの平方 (x1+2x2)2(x_1+2x_2)^2 になります。0 以上ですが、直線 x1=−2x2x_1 = -2x_2 上では 0 です。

❌ 惜しい! 2 つ目のピボットは d2=4−4=0d_2 = 4 - 4 = 0 で、正ではありません。x=(−2,1)x = (-2, 1) を試すと xTAx=0x^{T}Ax = 0 なので、この二次形式は狭義に正ではありません。

❌ 惜しい! 分解すると完全平方 (x1+2x2)2(x_1 + 2x_2)^2 になるので、決して負にはなりません。

❌ 惜しい! 成分がすべて正で、x=(1,0)x = (1,0) のとき xTAx=1>0x^{T}Ax = 1 > 0 となるので、負定値にはなりえません。

❌ 惜しい! もう一度考えてみましょう。上の説明がヒントになります。

解答を見る

解答:

A=(1224)A = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 2 & 4 \end{pmatrix} に消去法を行います。

  • 1 つ目のピボット:d1=1d_1 = 1
  • 乗数:ℓ21=2/1=2\ell_{21} = 2/1 = 2
  • 2 つ目のピボット:d2=4−2⋅2=0d_2 = 4 - 2 \cdot 2 = 0

平方和への分解:

xTAx=1⋅(x1+2x2)2+0⋅x22=(x1+2x2)2.x^{T}Ax = 1\cdot(x_1 + 2x_2)^2 + 0 \cdot x_2^2 = (x_1 + 2x_2)^2.

平方なので決して負になりませんが、直線 x1=−2x2x_1 = -2x_2(0 でないベクトルからなる直線全体)の上では0 になります。したがって、この二次形式は半正定値です。

半正定値のしるしは、負のピボットではなく、欠けた(0 の)ピボットです。

正解数:0 / 4