線形代数 · 第26回 · 動画3 · インタラクティブ教材

お椀から鞍へ:関数がどこで底を打つかをヘッセ行列が決める

I重要な公式

概念 公式 意味
勾配が 0 ∇f=0\nabla f = 0 臨界点の場所がわかる
ヘッセ行列(2 変数) H=[fxxfxyfxyfyy]H = \begin{bmatrix} f_{xx} & f_{xy} \\ f_{xy} & f_{yy} \end{bmatrix} 二階偏導関数を並べた行列
極小の判定 fxx>0f_{xx} > 0 かつ fxxfyy−fxy2>0f_{xx}f_{yy} - f_{xy}^2 > 0 HH は正定値
鞍点の判定 fxxfyy−fxy2<0f_{xx}f_{yy} - f_{xy}^2 < 0 HH は不定値
固有値による判定 固有値がすべて正:H>0H > 0 正定値と同値

二次式 f=ax2+2b xy+cy2f = a x^2 + 2b\, xy + c y^2 では、ヘッセ行列は定数になります: H=[2a2b2b2c]H = \begin{bmatrix} 2a & 2b \\ 2b & 2c \end{bmatrix}

II可視化1 — お椀か、鞍か、山か

ピボット 2a2a とヘッセ行列の行列式によって、原点が極小か、極大か、鞍点かが決まります。

💡 チャレンジ:a=2a = 2 と c=6c = 6 を固定したまま、bb をどこまで大きくすると、交差項が対角成分に打ち勝ってお椀が鞍に崩れるでしょうか?

III可視化2 — 主軸としての固有ベクトル

ヘッセ行列の固有ベクトルは等高線の主軸です。それぞれの固有値の符号が、その軸に沿った曲がり具合を表します。

💡 H=[2667]H = \begin{bmatrix} 2 & 6 \\ 6 & 7 \end{bmatrix} の成分はすべて正なのに、固有値の一つは負です。正定値かどうかを決めるのは成分の符号ではなく、行列式です。

IV確認クイズ

問1

f(x,y)=2x2+12xy+20y2f(x, y) = 2x^2 + 12xy + 20y^2 を考えます。原点でのヘッセ行列は次のとおりです: H=[4121240].H = \begin{bmatrix} 4 & 12 \\ 12 & 40 \end{bmatrix}.

原点は極小、極大、鞍点のどれでしょうか?

✅ 正解です! ピボット 4>04 > 0 かつ det⁡=16>0\det = 16 > 0 なので、HH は正定値です。

❌ 惜しい! ピボット fxxf_{xx} と行列式 fxxfyy−fxy2f_{xx}f_{yy} - f_{xy}^2 を確かめましょう。極小になるには、どちらも正でなければなりません。

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解答:

2 つの判定を両方とも当てはめます:

  • 左上のピボット:fxx=4>0f_{xx} = 4 > 0。
  • 行列式:det⁡H=4⋅40−122=160−144=16>0\det H = 4 \cdot 40 - 12^2 = 160 - 144 = 16 > 0。

両方の条件を満たすので、HH は正定値です。原点は極小で、曲面はお椀の形です。

問2

ある学生がこう主張しています:「行列 H=[2667]H = \begin{bmatrix} 2 & 6 \\ 6 & 7 \end{bmatrix} は、成分がすべて正なので正定値に違いない。」

正しいか誤りか?

✅ 正解です! det⁡H=14−36=−22<0\det H = 14 - 36 = -22 < 0 なので、HH は不定値(鞍点)です。

❌ 惜しい! det⁡H=2(7)−62\det H = 2(7) - 6^2 を計算してみましょう。本当に正でしょうか? 成分が正でも、正定値とは限りません。

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解答:

成分が正だからといって正定値になるわけではありません。行列式を計算します: det⁡H=2⋅7−62=14−36=−22<0.\det H = 2 \cdot 7 - 6^2 = 14 - 36 = -22 < 0.

行列式が負なので、HH は不定値です。固有値の一方は正、もう一方は負です。対応する曲面はお椀ではなく鞍の形です。

この学生は、成分をピボットや固有値と取り違えています。行列式の条件を必ず確かめましょう。

問3

関数 f(x,y)=2x2+12xy+7y2f(x, y) = 2x^2 + 12xy + 7y^2 について、原点でのヘッセ行列を求め、臨界点を分類してください。

HH の行列式はいくつで、原点はどの種類の臨界点でしょうか?

✅ 正解です! det⁡H=56−144=−88<0\det H = 56 - 144 = -88 < 0 なので、鞍点です。

❌ 惜しい! 符号に注意しましょう:det⁡H=fxxfyy−fxy2=4(14)−122\det H = f_{xx}f_{yy} - f_{xy}^2 = 4(14) - 12^2。交差項は符号をひっくり返すほど大きいでしょうか?

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解答:

二階偏導関数を計算します:

  • fxx=4f_{xx} = 4
  • fyy=14f_{yy} = 14
  • fxy=12f_{xy} = 12

したがって H=[4121214].H = \begin{bmatrix} 4 & 12 \\ 12 & 14 \end{bmatrix}.

行列式は det⁡H=4⋅14−122=56−144=−88.\det H = 4 \cdot 14 - 12^2 = 56 - 144 = -88.

det⁡H<0\det H < 0 なので、HH は不定値で、原点は鞍点です。曲面は、ある固有ベクトルの方向には上に曲がり、別の固有ベクトルの方向には下に曲がります。

問4

ヘッセ行列が正定値である二次式のグラフ z=f(x,y)z = f(x, y) を、水平な平面 z=1z = 1 で切ります。xyxy 平面にできる曲線はどんな形でしょうか?

✅ 正解です! 正定値 → 閉じた有界な等高線 → 軸が HH の固有ベクトルの向きにそろった楕円です。

❌ 惜しい! 正定値とは、曲面がどの方向にも上向きに曲がっているということです。お椀を水平に切ると、切り口はどんな形になるでしょうか?

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解答:

ヘッセ行列が正定値なら、曲面はどの方向にも上向きに曲がるお椀です。お椀を水平に切ると、閉じた曲線、具体的には楕円になります。

  • 楕円の軸は HH の固有ベクトルの向きにそろいます。
  • 半軸の長さは 2/λi\sqrt{2/\lambda_i} です。ここで λi\lambda_i は HH の固有値です。(動画では 1/λi1/\sqrt{\lambda_i} と言っていますが、これは二次形式の行列 M=H/2M = H/2 の固有値を使った場合の式です。f=xTMxf = x^T M x だからです。)

これに対して:

  • ヘッセ行列が不定値(鞍)なら、切り口は双曲線になります。
  • ヘッセ行列が退化していると、切り口は平行な 2 直線や放物線になることがあります。

等高線の形が、行列の性格を表す幾何的なしるしなのです。

正解数:0 / 4