線形代数 · 第26回 · 動画4 · インタラクティブ教材

数から形へ:3×3 行列が楕円体になるまで

I重要な公式

公式 名称 説明
A=QΛQTA = Q\Lambda Q^T 主軸定理 対称行列の分解
xTAx=1\mathbf{x}^T A \mathbf{x} = 1 楕円体の方程式 二次形式の等高線
長さi=1λi\text{長さ}_i = \dfrac{1}{\sqrt{\lambda_i}} 半軸の長さ 方向は qi\mathbf{q}_i、固有値は λi\lambda_i
det⁡(A)=λ1λ2λ3\det(A) = \lambda_1 \lambda_2 \lambda_3 行列式の恒等式 さらに trace(A)=∑λi\text{trace}(A) = \sum \lambda_i

動画で扱った行列: A=[2−10−12−10−12],λ1=2−2, λ2=2, λ3=2+2A = \begin{bmatrix} 2 & -1 & 0 \\ -1 & 2 & -1 \\ 0 & -1 & 2 \end{bmatrix}, \quad \lambda_1 = 2-\sqrt{2},\ \lambda_2 = 2,\ \lambda_3 = 2+\sqrt{2}

II可視化1 — 固有値が軸の長さを決める

固有ベクトルの基底で見ると、主断面は座標軸にそろった楕円になり、半軸の長さは 1/λi1/\sqrt{\lambda_i} です。

III可視化2 — 等高線は √c に比例して大きくなる

高さ cc を上げていくと、等高線 xTAx=c\mathbf{x}^T A\mathbf{x}=c の楕円は形を保ったまま c\sqrt{c} に比例して拡大します。

これは x3=0x_3=0 で切った、動画の AA の断面です。非対角成分の −1-1 のせいで、楕円は座標軸から 45°45\degree 傾きます。

IV可視化3 — 正定値性の 2 つの判定

A(t)=[2t0t2t0t2]A(t)=\begin{bmatrix} 2 & t & 0 \\ t & 2 & t \\ 0 & t & 2 \end{bmatrix} では、固有値による判定と左上の小行列式による判定が、そろって正定値性を示します。

正定値になるのは、ちょうど ∣t∣<2|t|<\sqrt{2} のときです。そこを越えると、最小の固有値と det⁡3\det_3 が同時に負になります。

V確認クイズ

問1

動画の行列 A=[2−10−12−10−12],A = \begin{bmatrix} 2 & -1 & 0 \\ -1 & 2 & -1 \\ 0 & -1 & 2 \end{bmatrix}, の 3 つの固有値は λ1=2−2\lambda_1 = 2 - \sqrt{2}、λ2=2\lambda_2 = 2、λ3=2+2\lambda_3 = 2 + \sqrt{2} です。

楕円体 xTAx=1\mathbf{x}^T A \mathbf{x} = 1 のいちばん長い半軸に対応するのは、どの固有値でしょうか?

✅ 正解です! 最小の固有値 → いちばん長い軸(長さ = 1/√λ だから)。

❌ 惜しい! 思い出しましょう:長さ =1/λ= 1/\sqrt{\lambda} なので、λ\lambda が大きいほど軸は短くなります。

解答を見る

解答:

固有ベクトル qi\mathbf{q}_i の方向の半軸の長さは 長さi=1λi.\text{長さ}_i = \frac{1}{\sqrt{\lambda_i}}.

これは λ\lambda の減少関数です。固有値が小さいほど、軸は長くなります。

  • λ=2−2≈0.586⇒\lambda = 2 - \sqrt{2} \approx 0.586 \Rightarrow 長さ ≈1/0.586≈1.31\approx 1/\sqrt{0.586} \approx 1.31(最長)
  • λ=2⇒\lambda = 2 \Rightarrow 長さ =1/2≈0.71= 1/\sqrt{2} \approx 0.71
  • λ=2+2≈3.414⇒\lambda = 2 + \sqrt{2} \approx 3.414 \Rightarrow 長さ ≈0.54\approx 0.54(最短)

最小の固有値 2−22 - \sqrt{2} が、いちばん長い軸を与えます。

問2

正しいか誤りか:行列 A=[2−10−12−10−12]A = \begin{bmatrix} 2 & -1 & 0 \\ -1 & 2 & -1 \\ 0 & -1 & 2 \end{bmatrix} の対角成分はすべて 2 なので、楕円体 xTAx=1\mathbf{x}^T A \mathbf{x} = 1 は球である。

✅ 正解です! 軸の長さを決めるのは対角成分ではなく固有値で、その固有値はすべて異なります。

❌ 惜しい! 軸の長さを決めるのは、対角成分ではなく固有値です。この行列には互いに異なる固有値が 3 つあります。

解答を見る

解答:誤り。

よくある落とし穴です! AA の対角成分は、軸の長さを直接は教えてくれません。 形を決めるのは行列の成分ではなく、固有値(長さ)と固有ベクトル(向き)です。

この AA の対角成分は 2,2,22, 2, 2 ですが、固有値は 3 つの異なる数 2−22 - \sqrt{2}、22、2+22 + \sqrt{2} です。したがって、この楕円体は球ではなく、 3 本の軸の長さがすべて異なる、いびつな楕円体です。

球になるには、3 つの固有値がすべて等しくなければなりません。対角成分が等しいからといって、 そうなるとは限りません。

問3

同じ行列 AA に消去法を使うと、3 つのピボットは 22、32\tfrac{3}{2}、 43\tfrac{4}{3} になります。これらのピボットの積はいくつで、何に等しいでしょうか?

✅ 正解です! ピボットの積は行列式に等しくなります(= 固有値の積 = 4)。

❌ 惜しい! ピボットを掛け合わせると、(トレースではなく)行列式になります。そして det⁡(A)=\det(A) = 固有値の積です。

解答を見る

解答:

ピボットを掛け合わせます: 2⋅32⋅43=2⋅3⋅42⋅3=4.2 \cdot \frac{3}{2} \cdot \frac{4}{3} = \frac{2 \cdot 3 \cdot 4}{2 \cdot 3} = 4.

LU 分解では、(行の交換がなければ)AA の行列式はピボットの積に等しくなります。 実際、 det⁡(A)=λ1λ2λ3=(2−2)⋅2⋅(2+2)=2(4−2)=4.\det(A) = \lambda_1 \lambda_2 \lambda_3 = (2 - \sqrt{2}) \cdot 2 \cdot (2 + \sqrt{2}) = 2(4 - 2) = 4.

ピボット、左上の小行列式、固有値という 3 つの見方がすべて一致します。 トレース(対角成分の和)は 66 で、これは固有値の積ではなく和に等しくなります。

問4

3×33 \times 3 の対称行列 BB の固有値は λ1=4\lambda_1 = 4、λ2=4\lambda_2 = 4、 λ3=1\lambda_3 = 1 です。等高線 xTBx=1\mathbf{x}^T B \mathbf{x} = 1 はどんな形でしょうか?

✅ 正解です! 2 つの等しい固有値と 1 つの異なる固有値からは、ラグビーボール形の回転楕円体ができます。

❌ 惜しい! 異なる固有値の個数を数えましょう:2 つは等しく(4,44,4)、1 つは違います(11)。このパターンで形が決まります。

解答を見る

解答:

3 つの固有値はすべて正なので、BB は正定値で、等高線は 有界な楕円体です。

半軸の長さは次のとおりです:

  • q1\mathbf{q}_1 の方向:1/4=1/21/\sqrt{4} = 1/2
  • q2\mathbf{q}_2 の方向:1/4=1/21/\sqrt{4} = 1/2
  • q3\mathbf{q}_3 の方向:1/1=11/\sqrt{1} = 1

2 本の軸の長さが等しく、1 本だけが違います。幾何学的には、これはラグビーボール形 (回転楕円体ともいいます)です。q1,q2\mathbf{q}_1, \mathbf{q}_2 の平面での断面は円で、q3\mathbf{q}_3 の方向に引き伸ばされています。

球になるには、3 つの固有値がすべて等しい必要があります。いびつな楕円体になるには、 3 つの固有値がすべて異なる必要があります。

正解数:0 / 4