線形代数 · 第27回 · 動画2 · インタラクティブ教材

見えない家族:無数の行列が同じ固有値をもつ理由

I重要な公式

公式 名称 意味
B=M−1AMB = M^{-1} A M 相似の関係 可逆な MM によって AA と BB は相似
A=SΛS−1A = S \Lambda S^{-1} 対角化 対角行列 Λ\Lambda と相似になる特別な場合
tr(A)=λ1+λ2\text{tr}(A) = \lambda_1 + \lambda_2 トレース = 固有値の和 相似によって変わらない
det⁡(A)=λ1λ2\det(A) = \lambda_1 \lambda_2 行列式 = 固有値の積 相似によって変わらない

II可視化1 — 変わらない固有多項式の放物線

A=(2112)A = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} を固定します。可逆な MM を変えるたびに、違う B=M−1AMB = M^{-1}AM が得られます。では、決して動かない数はどれでしょうか?

💡 トレースと行列式は相似によって変わらない不変量です。そのため、固有多項式 λ2−4λ+3=(λ−1)(λ−3)\lambda^2 - 4\lambda + 3 = (\lambda-1)(\lambda-3) 全体が、したがってその根も、可逆な MM をどう選んでも動きません。

III可視化2 — 固有値はそのまま、固有直線は動く

せん断による基底変換で、AA の各固有ベクトル xx は BB の固有ベクトル M−1xM^{-1}x に移ります。では、その固有値も一緒についてくるでしょうか?

A — 固有直線は固定

B = M⁻¹AM

IV確認クイズ

問1

AA は 2×22 \times 2 行列で、tr(A)=7\text{tr}(A) = 7、det⁡(A)=10\det(A) = 10 だとします。自分で選んだ可逆な MM を使って B=M−1AMB = M^{-1} A M を計算します。BB の固有値は何ですか。

正解です! tr(B)=7\text{tr}(B) = 7、det⁡(B)=10\det(B) = 10 なので、固有値は λ1+λ2=7\lambda_1 + \lambda_2 = 7 と λ1λ2=10\lambda_1 \lambda_2 = 10 を満たさなければならず、{2,5}\{2, 5\} となります。

惜しい! 固有値は相似によって変わらない不変量であること、そして(2×22 \times 2 行列なら)トレースと行列式だけで完全に決まることを思い出しましょう。

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解答:

トレースと行列式は相似によって変わらない不変量なので、BB のトレースと行列式は AA と同じです。 λ1+λ2=7,λ1λ2=10.\lambda_1 + \lambda_2 = 7, \qquad \lambda_1 \lambda_2 = 10. 足すと 77、掛けると 1010 になる2つの数は 22 と 55 です。したがって、BB の固有値は {2,5}\{2, 5\} です。可逆な MM をどう選んでも、また(トレースと行列式が一致している限り)AA の具体的な成分がどうであっても、これは変わりません。

問2

正しいか誤りか:AA と BB が相似な行列なら、両者は同じ固有ベクトルをもつ。

正解です! 固有値は変わりませんが、固有ベクトルは変換されます。Ax=λxAx = \lambda x なら B(M−1x)=λ(M−1x)B(M^{-1}x) = \lambda (M^{-1}x) です。

惜しい! これは典型的な落とし穴です。導出を見直してみましょう。固有ベクトルには M−1M^{-1} が掛かります。

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解答:

この主張は誤りです。動画の証明で示したとおり、Ax=λxA x = \lambda x なら、次が成り立ちます。 B(M−1x)=λ(M−1x).B (M^{-1} x) = \lambda (M^{-1} x). つまり、固有値 λ\lambda は保たれますが、固有ベクトルは xx ではなく M−1xM^{-1} x になります。

  • 固有値:相似な行列どうしで同じ。
  • 固有ベクトル:x↦M−1xx \mapsto M^{-1} x で対応する。一般には異なる。

これは幾何的にも納得がいきます。相似変換は基底変換なので、同じ実際の方向でも、新しい基底では違う座標で表されるのです。

問3

A=(2112)A = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix}、M=(1401)M = \begin{pmatrix} 1 & 4 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} とします。このとき M−1=(1−401)M^{-1} = \begin{pmatrix} 1 & -4 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} です。

B=M−1AMB = M^{-1} A M はどれですか。

正解です! B=M−1AM=(−2−1516)B = M^{-1}AM = \begin{pmatrix} -2 & -15 \\ 1 & 6 \end{pmatrix} です。AA とは似ても似つきませんが、固有値 11 と 33 は共通です。相似で変わるのは行列の見た目であって、スペクトルは決して変わりません。

惜しい! それは対角行列のいとこ Λ\Lambda で、固有ベクトル行列 SS を使った S−1ASS^{-1}AS に等しいものです。ここでの MM は(固有ベクトルとは関係のない)別のせん断なので、BB は対角行列になりません。

惜しい! まず AMAM を丁寧に計算し、それから左から M−1M^{-1} を掛けましょう。

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解答:

右から左へ計算します。

ステップ1:AMAM を求めます。 AM=(2112)(1401)=(2916).AM = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 4 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 & 9 \\ 1 & 6 \end{pmatrix}.

ステップ2:M−1(AM)M^{-1}(AM) を求めます。 M−1(AM)=(1−401)(2916)=(2−49−2416)=(−2−1516).M^{-1}(AM) = \begin{pmatrix} 1 & -4 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 2 & 9 \\ 1 & 6 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 - 4 & 9 - 24 \\ 1 & 6 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -2 & -15 \\ 1 & 6 \end{pmatrix}.

不変量の確認:tr(B)=−2+6=4=tr(A)\text{tr}(B) = -2 + 6 = 4 = \text{tr}(A)、det⁡(B)=−12−(−15)=3=det⁡(A)\det(B) = -12 - (-15) = 3 = \det(A) です。固有値はやはり 33 と 11 です。

問4

相似な行列が、背後にある「同じ」線形変換の記述だとみなされる理由をもっともよく表しているのはどれですか。

正解です! B=M−1AMB = M^{-1}AM は基底変換の公式です。MM は、背後にある同じ変換を表す2つの座標系のあいだの通訳です。

惜しい! 相似な行列は、成分がまったく違うこともあり(可視化1のとおり)、固有ベクトルも違います(問2で確かめたとおり)。より深い理由は、基底変換の幾何にあります。

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解答:

関係式 B=M−1AMB = M^{-1} A M は、まさに基底変換の公式です。AA がある基底で線形変換を記述しているなら、BB は、もとの基底と MM で結ばれた基底で、同じ変換を記述しています。

  • 変換は幾何的な実体です(伸縮、回転、せん断など)。
  • 行列は、その実体を座標で記述したものにすぎません。
  • MM は2つの座標系のあいだの通訳です。

だからこそ、固有値、つまり実際の伸び縮みの倍率は変わらないのです。固有値は変換そのものに属していて、特定の記述に属しているわけではありません。これに対して、成分は大きく変わりえます(可視化1のスライダーで確かめられます)。固有ベクトルも変わります。方向が新しい座標で表し直されるからです。

正解数:0 / 4