線形代数 · 第27回 · 動画4 · インタラクティブ教材

対角化できないとき:すべての正方行列を表すジョルダン標準形

I重要な公式と性質

概念 内容
対角化 S−1AS=ΛS^{-1} A S = \Lambda — 一次独立な固有ベクトルが nn 本必要
ジョルダン細胞(ジョルダンブロック)Jk(λ)J_k(\lambda) 対角線に λ\lambda、そのすぐ上の対角線に 11 が並ぶ k×kk\times k 行列
細胞の個数と固有ベクトルの本数 ジョルダン細胞ひとつが生む固有ベクトルは、ちょうど 1 本
ジョルダン標準形 どんな正方行列 AA も A=MJM−1A = M J M^{-1} を満たす。JJ はジョルダン細胞を並べたブロック対角行列
相似によって変わらない不変量 2つの行列が相似になるのは、ジョルダン細胞のサイズが(並べる順番を除いて)一致するとき、かつそのときに限る

II可視化1 — ジョルダン細胞の解剖

細胞のサイズ kk がどれほど大きくても、ジョルダン細胞の固有ベクトルがちょうど 1 本なのはなぜでしょうか。

III可視化2 — 双子の行列のパズル

2つの冪零な 4×44\times 4 行列は、不変量が 1 つを除いてすべて一致します。では、なぜ相似ではないのでしょうか。

IV可視化3 — ジョルダン標準形の数値的な不安定性

対角成分を ε\varepsilon だけずらすと固有値が分かれ、ジョルダン細胞の構造は不連続に跳びます。

💡 この跳びは不連続なので、数値線形代数ではSVD(特異値分解)を使います。ジョルダン標準形は厳密な計算でしか扱えないのです。

V確認クイズ

問1

対角線に固有値 λ\lambda が 5 回くり返され、そのすぐ上の対角線に 11 が並ぶ、5×55 \times 5 のジョルダン細胞 J5(λ)J_5(\lambda) を 1 つ考えます。

この細胞には一次独立な固有ベクトルが何本あるでしょうか。

✅ 正解です! どんなに大きなジョルダン細胞も、生む一次独立な固有ベクトルはちょうど 1 本です。

❌ 惜しい! 対角線の λ\lambda から代数的重複度は 5 になりますが、すぐ上の対角線の 11 のせいでほとんどの座標が 0 に決まり、自由に動ける方向は 1 つだけです。

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解答:

J5(λ)−λIJ_5(\lambda) - \lambda I を計算します。対角線は 0 になり、0 でない成分がすぐ上の対角線の 11 だけという行列が残ります。

v=(v1,v2,v3,v4,v5)Tv = (v_1, v_2, v_3, v_4, v_5)^T として (J−λI)v=0(J - \lambda I)v = 0 を解くと、次が得られます。

v2=0,v3=0,v4=0,v5=0v_2 = 0, \quad v_3 = 0, \quad v_4 = 0, \quad v_5 = 0

自由なのは v1v_1 だけです。したがって零空間は1次元で、e1=(1,0,0,0,0)Te_1 = (1, 0, 0, 0, 0)^T で張られます。

重要な事実:どのジョルダン細胞も、サイズにかかわらず、生む固有ベクトルはちょうど 1 本です。

問2

正しいか誤りか: 2つの n×nn \times n 行列の固有値(代数的重複度も含めて)と一次独立な固有ベクトルの本数が同じなら、2つは必ず相似である。

✅ 正解です! 足りない不変量は細胞のサイズです。動画の双子の行列は、固有値も固有ベクトルの本数も一致するのに、相似ではない2つの行列の例です。

❌ 惜しい! 双子の行列を思い出しましょう。固有値も固有ベクトルの本数も同じですが、細胞のサイズの組が {2,2}\{2,2\} と {3,1}\{3,1\} で違うので、相似ではありません。

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解答: 誤りです。

動画の「双子の行列」がそのまま反例になります。どちらも 4×44 \times 4 で、どちらも固有値 00 を重複度 4 でもち、どちらも一次独立な固有ベクトルをちょうど 2 本もちます。ところが、

  • 行列1の細胞のサイズの組は {2,2}\{2, 2\}(2×2 の細胞 2 つ)
  • 行列2の細胞のサイズの組は {3,1}\{3, 1\}(3×3 の細胞 1 つ + 1×1 の細胞 1 つ)

2つの行列が相似になるのは、ジョルダン細胞のサイズが(並べる順番を除いて)一致するとき、かつそのときに限ります。細胞のサイズの組こそが完全な不変量で、固有値と固有ベクトルの本数だけでは足りません。

問3

6×66 \times 6 行列 AA の固有値はすべて λ=7\lambda = 7 で、一次独立な固有ベクトルはちょうど 3 本です。

AA の細胞のサイズの組としてありうるものは、次のうちどれでしょうか。

✅ 正解です! 固有ベクトルが 3 本なら細胞は 3 つで、4+1+1=64 + 1 + 1 = 6 は行列のサイズと一致します。

❌ 惜しい! 思い出しましょう。(一次独立な固有ベクトルの本数)=(ジョルダン細胞の個数)です。固有ベクトルが 3 本なら、サイズの合計が 6 になる細胞がちょうど 3 つ必要です。

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解答:

ジョルダン細胞の個数は、一次独立な固有ベクトルの本数に等しくなります。AA には固有ベクトルが 3 本あるので、細胞はちょうど 3 つです。細胞のサイズの合計は 66(行列のサイズ)でなければなりません。

選択肢を1つずつ確かめます。

  • {3,3}\{3, 3\}:細胞 2 つ、合計 = 6。固有ベクトルの本数 = 2。❌
  • {4,1,1}\{4, 1, 1\}:細胞 3 つ、合計 = 6。固有ベクトルの本数 = 3。正解です!
  • {5,1}\{5, 1\}:細胞 2 つ、合計 = 6。固有ベクトルの本数 = 2。❌
  • {6}\{6\}:細胞 1 つ、合計 = 6。固有ベクトルの本数 = 1。❌

合計 6 になる 3 つの細胞をもつのは {4,1,1}\{4, 1, 1\} だけで、固有ベクトルの本数と行列のサイズの両方に合っています。

問4

おなじみの対角化 S−1AS=ΛS^{-1} A S = \Lambda は、ジョルダン標準形のどの特別な場合にあたるでしょうか。

✅ 正解です! 1×1 のジョルダン細胞は対角線上の固有値ひとつにすぎないので、すべての細胞が 1×1 なら JJ は対角行列 Λ\Lambda になります。

❌ 惜しい! 1×11 \times 1 のジョルダン細胞がどんな形かを考えましょう。すぐ上の対角線はなく、固有値がひとつあるだけです。JJ のすべての細胞がそれほど小さかったらどうなるでしょうか。

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解答:

1×11 \times 1 のジョルダン細胞は、対角線上の固有値ひとつにすぎず、すぐ上の対角線の 11 はありません。JJ のすべての細胞が 1×11 \times 1 なら、JJ は対角線に固有値が並び、ほかはすべて 0 です。これはまさに対角行列です。

J=Λ=diag(λ1,λ2,…,λn)J = \Lambda = \text{diag}(\lambda_1, \lambda_2, \ldots, \lambda_n)

これが起こるのは、細胞の個数が nn に等しいとき、つまり一次独立な固有ベクトルの本数が nn に等しいときで、ちょうどおなじみの対角化可能の条件です。

対角化は、すべての細胞のサイズが 1×1 であるジョルダン標準形の特別な場合です。

正解数:0 / 4