線形代数 · 第29回 · 動画1 · インタラクティブ教材

線形性を決める二つの規則

I重要な公式

公式 名称 説明
T(v+w)=T(v)+T(w)T(v + w) = T(v) + T(w) 加法性 和を変換したものは、変換したものの和に等しい
T(cv)=c T(v)T(cv) = c\,T(v) 斉次性 スカラー倍と変換は順番を入れ替えてよい
T(cv+dw)=c T(v)+d T(w)T(cv + dw) = c\,T(v) + d\,T(w) 線形性の統一規則 二つの規則を一つの式にまとめたもの
T(0)=0T(\mathbf{0}) = \mathbf{0} 零ベクトルの判定法 線形であるための必要条件(いちばん手っ取り早い判定)

II可視化1 — 線形性のテスト

線形性は、どのように選んでも T(cv+dw)=c T(v)+d T(w)T(cv + dw) = c\,T(v) + d\,T(w) が成り立つことを要求します。両辺は同じベクトルに行き着くでしょうか。

入力 — 先に一次結合をつくる

出力 — T(cv+dw) と cT(v)+dT(w) の比較

💡 すべての cc と dd で一致しなければなりません。一致しない組が一つでもあれば、TT が線形でないことの証明になります。

III可視化2 — 零ベクトルによる判定法

線形写像は原点を動かしません。平行移動は原点を (1,2)(1, 2) へ動かしてしまうので、見ただけで不合格です。

💡 この判定法に合格しても線形性の証明にはなりません。しかし不合格なら、その時点で線形でないと確定します。

IV可視化3 — 線形写像はどれも行列である

線形写像はどれも行列です。その列は、基底ベクトル ı^\hat{\imath} と ȷ^\hat{\jmath} の行き先にほかなりません。

💡 det⁡A\det A は、変換された単位正方形の符号つきの面積です。負の値なら写像は向きを反転させ、00 なら平面は直線につぶれます。

V確認クイズ

問1

線形性の加法性と斉次性の両方の規則を表す一つの式はどれですか。

✅ 正解です! この統一された式は、二つの規則を一度に表しています。

❌ 惜しい! 変換する前に各ベクトルをそれぞれのスカラーで倍し、右辺でもそのスカラーがそのまま残っている形を探しましょう。

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解答:

加法性は T(v+w)=T(v)+T(w)T(v + w) = T(v) + T(w)、斉次性は T(cv)=c T(v)T(cv) = c\,T(v) を述べています。この二つを組み合わせると次のようになります。

T(cv+dw)=T(cv)+T(dw)=c T(v)+d T(w)T(cv + dw) = T(cv) + T(dw) = c\,T(v) + d\,T(w)

この一つの式が、ベクトル v,wv, w とスカラー c,dc, d のあらゆる選び方に対して成り立つこと、それが線形性の定義のすべてです。

問2

平行移動 T(v)=v+v0T(v) = v + v_0 を考えます。ここで v0=(1,2)v_0 = (1, 2) は固定された非零ベクトルです。正しいものはどれですか。

✅ 正解です! いちばん手っ取り早い判定法(原点は原点に移らなければならない)で、平行移動はすぐに除外されます。

❌ 惜しい! 零ベクトルによる判定法を使いましょう。T(0)T(\mathbf{0}) は何になりますか。

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解答:

零ベクトルによる判定法を使います。

T(0)=0+v0=(1,2)≠0T(\mathbf{0}) = \mathbf{0} + v_0 = (1, 2) \neq \mathbf{0}

線形変換は 0\mathbf{0} を 0\mathbf{0} に送らなければならないので、TT は線形ではありえません。

加法性が破れることも直接確かめられます。 T(v+w)=v+w+v0一方でT(v)+T(w)=v+w+2v0T(v + w) = v + w + v_0 \quad \text{一方で} \quad T(v) + T(w) = v + w + 2v_0

右側には v0v_0 が一つ余分に現れています。平行移動は線形ではなく、アフィンと呼ばれます。

問3

T(v)=∥v∥T(v) = \|v\|(vv のノルム、つまり長さ)とします。vv は ∥v∥=3\|v\| = 3 を満たすベクトルとします。T(−2v)T(-2v) と −2⋅T(v)-2 \cdot T(v) を計算すると、どうなりますか。

✅ 正解です! ノルムは負にならないので、符号の反転についていけません。斉次性が破れます。

❌ 惜しい! ∥−2v∥=2∥v∥\|-2v\| = 2\|v\|(つねに 0 以上)ですが、−2⋅∥v∥-2 \cdot \|v\| では負の符号が残ることを思い出しましょう。

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解答:

ノルムはつねに 0 以上なので、 T(−2v)=∥−2v∥=2∥v∥=2⋅3=6T(-2v) = \|-2v\| = 2\|v\| = 2 \cdot 3 = 6

ところが、出力を −2-2 倍すると −2⋅T(v)=−2⋅∥v∥=−2⋅3=−6-2 \cdot T(v) = -2 \cdot \|v\| = -2 \cdot 3 = -6

6≠−66 \neq -6 なので、負のスカラー c=−2c = -2 で斉次性が破れます。したがって、T(0)=0T(\mathbf{0}) = 0 で判定法には合格するにもかかわらず、ノルムは線形変換ではありません。負のスカラーで破綻があらわになるのです。

問4

正しいか誤りか: T(0)=0T(\mathbf{0}) = \mathbf{0} ならば、TT は必ず線形である。

✅ 正解です! この判定法は必要条件ですが、十分条件ではありません。ノルムがわかりやすい反例です。

❌ 惜しい! 原点を動かさないのに、線形性の二つの規則のどちらかを破る変換を考えられますか。(ヒント:ノルムを考えてみましょう。)

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解答:

誤りです。条件 T(0)=0T(\mathbf{0}) = \mathbf{0} は線形性の必要条件ですが、十分条件ではありません。

反例:ノルム T(v)=∥v∥T(v) = \|v\| は T(0)=0T(\mathbf{0}) = 0 を満たしますが、すでに見たとおり、負のスカラーで斉次性が破れます。したがって TT は線形ではありません。

零ベクトルの判定法は、線形性を否定するには手っ取り早い方法です(T(0)≠0T(\mathbf{0}) \neq \mathbf{0} なら、間違いなく線形ではありません)。しかし線形であると確かめるには、すべてのベクトルとスカラーについて T(cv+dw)=c T(v)+d T(w)T(cv + dw) = c\,T(v) + d\,T(w) を確認しなければなりません。

正解数:0 / 4