線形代数 · 第29回 · 動画3 · インタラクティブ教材

列がすべてを語る:線形変換を行列にするたった一つの規則

I重要な公式

公式 名称 説明
A の第 j 列=[T(vj)]wA \text{ の第 } j \text{ 列} = [T(v_j)]_w 列の規則 入力の基底ベクトル vjv_j に TT を作用させ、出力の基底 ww で書く
Ax=[T(x)]wA \mathbf{x} = [T(\mathbf{x})]_w 行列と変換の対応 座標の上では、行列が TT をそのまま再現する
行列(S∘T)=BA\text{行列}(S \circ T) = B A 合成の規則 変換の合成 = 行列の積
P2=PP^2 = P 射影の性質 射影行列なら必ずこれを満たす

形の規則:T:Rn→RmT : \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m を表す行列は、mm 行(出力の次元)と nn 列(入力の次元)をもちます。

II可視化1 — 列は基底ベクトルの行き先

2×22\times 2 行列とは、TT が e1e_1 と e2e_2 を送る 2 つの行き先を、列として並べたものにすぎません。

III可視化2 — 1つの射影、2つの行列

直線への射影は1つの操作ですが、その行列は、どの基底で書くかによって変わります。

💡 固有ベクトルの基底での行列は、どの角度でも diag(1,0)\text{diag}(1, 0) のままです。この変わらない対角形こそ、対角化がもたらしてくれるものです。

IV可視化3 — 微分は行列である

微分は線形なので、基底 {1,x,x2}\{1, x, x^2\} のもとでは、係数ベクトルに作用する決まった行列として働きます。

💡 DD の列は、各基底ベクトルに ddx\tfrac{d}{dx} を作用させた結果です:1→01 \to 0、x→1x \to 1、x2→2xx^2 \to 2x。

V確認クイズ

行列を組み立てる列の規則を理解できているか、確かめましょう。

問1

線形変換 T:R2→R2T: \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^2 が次を満たすとします。 T(e1)=[3−2],T(e2)=[14].T(e_1) = \begin{bmatrix} 3 \\ -2 \end{bmatrix}, \quad T(e_2) = \begin{bmatrix} 1 \\ 4 \end{bmatrix}.

標準基底での TT の行列はどれですか?

行列を選んでください(成分は行ごとに表示):

✅ 正解です! 出力のベクトルが、そのまま行列の列になります。

❌ 惜しい! T(e1)T(e_1) と T(e2)T(e_2) は行列の行ではなく、列になることを思い出しましょう。

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解答:

列の規則によれば、行列の第 jj 列は、T(ej)T(e_j) を出力の基底で書いたものです。したがって:

  • 1列目は T(e1)=(3,−2)TT(e_1) = (3, -2)^T
  • 2列目は T(e2)=(1,4)TT(e_2) = (1, 4)^T

これらを列として並べると、次のようになります。 A=[31−24]A = \begin{bmatrix} 3 & 1 \\ -2 & 4 \end{bmatrix}

行ごとに読むと [[3,1],[−2,4]][[3, 1], [-2, 4]] です。

よくある間違いの [[3,−2],[1,4]][[3, -2], [1, 4]] は、出力のベクトルを列ではなく行として並べてしまったものです。

問2

R2\mathbb{R}^2 で、xx 軸(水平な直線 y=0y=0)への射影 TT を考えます。

標準基底 {e1,e2}\{e_1, e_2\} で TT を表す行列はどれですか?

行列を選んでください:

✅ 正解です! T(e1)=e1T(e_1) = e_1(そのまま)、T(e2)=0T(e_2) = 0(つぶれる)なので、列は (1,0)(1,0) と (0,0)(0,0) です。

❌ 惜しい! 標準基底ベクトルそれぞれに TT を作用させてみましょう。x 軸への射影で、e1=(1,0)e_1=(1,0) はどこへ行きますか? e2=(0,1)e_2=(0,1) はどこへ行きますか?

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解答:

列の規則を当てはめます。xx 軸への射影は、点 (x,y)(x, y) を (x,0)(x, 0) へ送ります。

  • T(e1)=T(1,0)=(1,0)T(e_1) = T(1, 0) = (1, 0) — もともと xx 軸上にあるので動きません。1列目は (1,0)T(1, 0)^T です。
  • T(e2)=T(0,1)=(0,0)T(e_2) = T(0, 1) = (0, 0) — 原点へつぶされます。2列目は (0,0)T(0, 0)^T です。

したがって、行列は次のとおりです。 P=[1000]P = \begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{bmatrix}

これは、45°の直線への射影を固有ベクトルの基底で書いた行列とたまたま同じであることに注目しましょう。xx 軸への射影にとっては、xx 軸の向きこそが固有ベクトルの基底だからです。標準基底は、はじめから直線にそろっています。

  • [[0,0],[0,1]][[0,0],[0,1]] は yy 軸への射影です。
  • [[1,0],[0,1]][[1,0],[0,1]] は単位行列です(射影していません)。
  • [[1/2,1/2],[1/2,1/2]][[1/2, 1/2], [1/2, 1/2]] は、標準基底で書いた45°の直線への射影です。

問3

正しいか誤りか:2つの行列の見た目が違う(成分が異なる)ならば、それらは必ず異なる線形変換を表す。

正しいか誤りか?

✅ 正解です! 異なる基底で表せば、異なる行列が同じ変換を表すことがあります。

❌ 惜しい! 動画の冒頭を思い出しましょう。見た目のまるで違う2つの行列が、どちらも45°の直線への同じ射影を表していました。

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解答:誤り。

行列とは、選んだ基底で表した変換です。基底を変えれば行列の成分は変わりますが、その下にある変換は同じままです。

動画の中心となる例では、45°の直線への射影は [1/21/21/21/2](標準基底)\begin{bmatrix} 1/2 & 1/2 \\ 1/2 & 1/2 \end{bmatrix} \quad \text{(標準基底)} で表されますが、同時に [1000](固有ベクトルの基底).\begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{bmatrix} \quad \text{(固有ベクトルの基底)}. でも表されます。

どちらの行列も、幾何学的には同じ射影を表しています。2つは基底変換で結ばれています。

要点:行列 = 変換 + 基底の選び方。どちらかの行列がより「正しい」ということはありません。

問4

DD を、≤2\leq 2 次の多項式から ≤1\leq 1 次の多項式への線形写像としての微分とし、基底には {1,x,x2}\{1, x, x^2\} と {1,x}\{1, x\} を使います。すると D=[010002].D = \begin{bmatrix} 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 2 \end{bmatrix}. です。

多項式 p(x)=7+2x−3x2p(x) = 7 + 2x - 3x^2 に DD を作用させます。pp の座標ベクトルは (7,2,−3)T(7, 2, -3)^T です。p′(x)p'(x) はどれですか?

導関数を選んでください:

✅ 正解です! 行列を掛けると (2,−6)(2, -6) になり、多項式に戻すと 2−6x2 - 6x です。

❌ 惜しい! D⋅(7,2,−3)TD \cdot (7, 2, -3)^T を1行ずつ計算し、出力の座標を基底 {1,x}\{1, x\} の多項式に戻しましょう。

解答を見る

解答:

行列に座標ベクトルを掛けます。 D[72−3]=[0⋅7+1⋅2+0⋅(−3)0⋅7+0⋅2+2⋅(−3)]=[2−6].D \begin{bmatrix} 7 \\ 2 \\ -3 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0 \cdot 7 + 1 \cdot 2 + 0 \cdot (-3) \\ 0 \cdot 7 + 0 \cdot 2 + 2 \cdot (-3) \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 2 \\ -6 \end{bmatrix}.

基底 {1,x}\{1, x\} での出力の座標 (2,−6)(2, -6) は、次を意味します。 p′(x)=2⋅1+(−6)⋅x=2−6x.p'(x) = 2 \cdot 1 + (-6) \cdot x = 2 - 6x.

直接確かめると、ddx(7+2x−3x2)=2−6x\frac{d}{dx}(7 + 2x - 3x^2) = 2 - 6x となり、一致します。

  • p′(x)=−6+2xp'(x) = -6 + 2x は係数は合っていますが、順序が逆です(定数項と1次の項を取り違えています)。
  • p′(x)=2−3xp'(x) = 2 - 3x は、x2x^2 を微分したときに出る係数 2 を忘れています。

VIまとめ

1つの規則から、3つの教訓:

  1. 行列 = 変換 + 基底の選び方。行列とは、座標を選んだときに変換が見せる姿です。基底を変えれば、行列も変わります。

  2. 固有ベクトルの基底 → 対角行列。いちばんすっきりした表現では固有値が対角線に並び、変換が実際に何をしているのかがあらわになります。

  3. 微積分は姿を変えた線形代数。微分は多項式に線形に作用するので、行列をもちます。基底への作用さえわかれば、すべてがわかります。

合言葉:基底ベクトルに TT を作用させる。結果を出力の座標で書く。それを列として並べる。

正解数:0 / 4