線形代数 · 第3回 · 動画3 · インタラクティブ教材

ガウス・ジョルダン法で逆行列を求める

I重要な公式

公式 名称 説明
[A∣I]→行基本変形[I∣A−1][A \mid I] \xrightarrow{\text{行基本変形}} [I \mid A^{-1}] ガウス・ジョルダン法 単位行列をつなげ、簡約し、逆行列を読み取る
Ek⋯E1A=IE_k \cdots E_1 A = I 基本行列 行基本変形はどれも、基本行列を左から掛けることと同じ
A−1=Ek⋯E1A^{-1} = E_k \cdots E_1 積としての逆行列 逆行列には、II に施したすべての行基本変形が積み重なっている
AA−1=A−1A=IAA^{-1} = A^{-1}A = I 検算 掛け算して、結果が正しいことを確かめる

II可視化1 — 行基本変形で A⁻¹ を組み立てる

左半分を II へ簡約していくあいだ、どの行基本変形も右半分に同じように施されます。右半分はそれを記録し、最後には A−1A^{-1} になります。

拡大係数行列 [A | I]

段階0 · 準備 [A | I]
ピボットは a11=1a_{11} = 1。その下の 22 を消去します:R2←R2−2R1R_2 \leftarrow R_2 - 2R_1。
段階1 · ガウス(前進消去)
R2←R2−2R1R_2 \leftarrow R_2 - 2R_1 が完了。ピボットは a22=1a_{22} = 1。その上の 33 を消去します:R1←R1−3R2R_1 \leftarrow R_1 - 3R_2。
段階2 · ジョルダン(後退消去)
左半分 =I= I。右半分 =A−1=[7−3−21]= A^{-1} = \begin{bmatrix} 7 & -3 \\ -2 & 1 \end{bmatrix}。

III可視化2 — 行列式 → 0 のときの逆行列

行列式 ad−bcad - bc が 0 に近づいていくと、A−1A^{-1} はどうふるまうでしょうか。

💡 一方の行がもう一方の行のスカラー倍なら、2つの行は一次従属で、必ず det⁡=0\det = 0 になります。このとき逆行列は存在しません。

IV可視化3 — A·A⁻¹ = I を確かめる

A A−1A\,A^{-1} の各成分は、AA の行と A−1A^{-1} の列の内積です。対角成分は 11、それ以外は 00 になります。

V確認クイズ

問1

A=[1327]A = \begin{bmatrix} 1 & 3 \\ 2 & 7 \end{bmatrix} として、[A∣I][A \mid I] にガウス・ジョルダン法を行っています。

ガウスの段階(前進消去)を終えると、拡大係数行列は次のようになります。 [131001−21]\left[\begin{array}{cc|cc} 1 & 3 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & -2 & 1 \end{array}\right]

ジョルダンの段階(後退消去)を完了させる行基本変形はどれですか。

✅ 正解です! 1行目から2行目の3倍を引いて、2つ目のピボットの上にある 3 を消去します。

❌ 惜しい! ジョルダンの段階では、ピボットの上に 0 を作ります。消去すべき成分は、(1,2) の位置にある 3 です。どの変形ならこれを 0 にできるでしょうか。

解答を見る

解答:

ジョルダンの段階では、各ピボットの上にある成分を消去します。2つ目のピボットは (2,2)(2,2) の位置にあり、値は 11 です。その上の (1,2)(1,2) の位置にある成分は 33 です。

これを消去するには:R1←R1−3⋅R2R_1 \leftarrow R_1 - 3 \cdot R_2

新しい1行目の各成分を確かめます。

  • 1列目:1−3(0)=11 - 3(0) = 1
  • 2列目:3−3(1)=03 - 3(1) = 0 ✓(消去できました!)
  • 3列目:1−3(−2)=71 - 3(-2) = 7
  • 4列目:0−3(1)=−30 - 3(1) = -3

結果:[107−301−21]\left[\begin{array}{cc|cc} 1 & 0 & 7 & -3 \\ 0 & 1 & -2 & 1 \end{array}\right]

答えは R1 ← R1 − 3·R2 です。

問2

正しいか誤りか:ガウス・ジョルダン法の途中でピボットの位置に 0 が現れたら、その行列は必ず特異(逆行列をもたない)である。

✅ 正解です! ピボットが 0 でも、行を入れ替えれば解決できることがよくあります。この方法が行き詰まるのは、その列のピボットより下に 0 でない成分が一つもないときだけです。

❌ 惜しい! 行を入れ替えるとどうなるか考えてみましょう。ピボットが 0 でも、直せる場合があるのではないでしょうか。

解答を見る

解答:誤り。

ピボットの位置に 0 があっても、行列が特異だとは限りません。行を入れ替えて、0 でない成分をピボットの位置に持ってくればよいのです。行の入れ替えも、正当な行基本変形の一つです。

行列が特異になるのは、その列の現在のピボットの位置か、それより下に、0 でない成分が一つもないときだけです。

例:A=[0110]A = \begin{bmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{bmatrix} は (1,1)(1,1) の位置に 0 がありますが、行を入れ替えると [1001]\begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} になります。この行列は可逆で、しかも自分自身が逆行列です!

問3

ガウス・ジョルダン法を使って、A=[2513]A = \begin{bmatrix} 2 & 5 \\ 1 & 3 \end{bmatrix} の逆行列を求めてください。A−1A^{-1} はどれですか。

✅ 正解です! A−1=[3−5−12]A^{-1} = \begin{bmatrix} 3 & -5 \\ -1 & 2 \end{bmatrix} です。AA−1=IAA^{-1} = I を計算すれば確かめられます。

❌ 惜しい! [A∣I][A \mid I] を用意して、行基本変形を一つずつ丁寧に行ってみましょう。符号には特に注意してください!

解答を見る

解答:

[A∣I][A \mid I] を用意します。 [25101301]\left[\begin{array}{cc|cc} 2 & 5 & 1 & 0 \\ 1 & 3 & 0 & 1 \end{array}\right]

行を入れ替えて、ピボットを 1 にします。 [13012510]\left[\begin{array}{cc|cc} 1 & 3 & 0 & 1 \\ 2 & 5 & 1 & 0 \end{array}\right]

ガウスの段階 — R2←R2−2R1R_2 \leftarrow R_2 - 2R_1: [13010−11−2]\left[\begin{array}{cc|cc} 1 & 3 & 0 & 1 \\ 0 & -1 & 1 & -2 \end{array}\right]

定数倍 — R2←−R2R_2 \leftarrow -R_2: [130101−12]\left[\begin{array}{cc|cc} 1 & 3 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & -1 & 2 \end{array}\right]

ジョルダンの段階 — R1←R1−3R2R_1 \leftarrow R_1 - 3R_2: [103−501−12]\left[\begin{array}{cc|cc} 1 & 0 & 3 & -5 \\ 0 & 1 & -1 & 2 \end{array}\right]

よって A−1=[3−5−12]A^{-1} = \begin{bmatrix} 3 & -5 \\ -1 & 2 \end{bmatrix} です。

検算:AA−1=[2(3)+5(−1)2(−5)+5(2)1(3)+3(−1)1(−5)+3(2)]=[1001]AA^{-1} = \begin{bmatrix} 2(3)+5(-1) & 2(-5)+5(2) \\ 1(3)+3(-1) & 1(-5)+3(2) \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} ✓

問4

[A∣I][A \mid I] にガウス・ジョルダン法を行うとき、ガウスの段階(前進消去)だけを終えたところで止め、左半分が上三角形になっているとします。この時点で、右半分は何を表していますか。

✅ 正解です! 右半分には、それまでに行った変形がすべて記録されています。前進消去だけを終えた時点では Ek⋯E1E_k \cdots E_1 が入っていて、まだ逆行列そのものではありません。

❌ 惜しい! 右半分は II から始まり、行基本変形をすべて積み重ねていきます。ガウスの段階を終えただけでは、左半分は II ではなく上三角形です。つまり、手順はまだ終わっていません。

解答を見る

解答:

ガウスの段階までに、基本行列 E1,E2,…,EkE_1, E_2, \ldots, E_k(前進消去の各ステップ)を左右両方に施しています。

Ek⋯E1 [A∣I]=[ Ek⋯E1A  ∣  Ek⋯E1I ]E_k \cdots E_1 \, [A \mid I] = [\,E_k \cdots E_1 A \;\mid\; E_k \cdots E_1 I\,]

  • 左半分:Ek⋯E1A=UE_k \cdots E_1 A = U(上三角行列 — まだ II ではない)
  • 右半分:Ek⋯E1⋅I=Ek⋯E1E_k \cdots E_1 \cdot I = E_k \cdots E_1(前進消去で使った基本行列の積)

これは逆行列そのものではありません。ジョルダンの段階でさらに基本行列 Ek+1,…,EmE_{k+1}, \ldots, E_m を施し、UU を II まで簡約し終えます。左半分が II に等しくなったときに初めて、右半分は A−1=Em⋯E1A^{-1} = E_m \cdots E_1 に等しくなります。

正解は前進消去で使った基本行列の積です。

正解数:0 / 4