線形代数 · 第5回 · 動画1 · インタラクティブ教材

置換行列と PA = LU 分解

I重要な公式

公式 名称 説明
PA=LUPA = LU 普遍的な分解 どんな正則行列にも使える
P−1=PTP^{-1} = P^T 置換行列の逆行列 置換行列はすべて直交行列である
n!n! 個の置換行列 個数の公式 n×nn \times n 置換行列の個数
P=IP = I のときの A=LUA = LU 特別な場合 消去法で行の入れ替えが要らない

II可視化1 — 置換は AA の行をどう変えるか

置換行列は AA の行を並べ替えます。最初のピボットの位置に 0 でない成分が来る並べ方は、その一部だけです。

💡 チャレンジ:6通りの並べ方のうち、有効な最初のピボットが得られるのは4つです。得られない2つはどれで、それはなぜでしょうか。

III可視化2 — PA=LUPA = LU を一歩ずつ組み立てる

ピボットが 0 だと消去法は止まります。行の入れ替え PP で再開でき、PA=LUPA = LU がその全過程を記録します。

ステップ0 · ピボットが 0
a11=0a_{11} = 0:ピボットで割れないので、消去法が進みません。
ステップ1 · P をつくる
単位行列で R1↔R2R_1 \leftrightarrow R_2 を入れ替えて、PP をつくります。
ステップ2 · PA を計算
PAPA には有効なピボット (1,1)=1(1,1) = 1 があるので、消去を進められます。
ステップ3 · (3,1) を消す
ℓ31=21=2\ell_{31} = \tfrac{2}{1} = 2 なので、R3←R3−2R1R_3 \leftarrow R_3 - 2R_1 により [0,3,7][0, 3, 7] になります。22 を L31L_{31} に記録します。
ステップ4 · (3,2) を消す
ℓ32=31=3\ell_{32} = \tfrac{3}{1} = 3 なので、R3←R3−3R2R_3 \leftarrow R_3 - 3R_2 により [0,0,4][0, 0, 4] になります。33 を L32L_{32} に記録します。
ステップ5 · PA = LU
LL には乗数 2,32, 3 が、UU にはピボット 1,1,41, 1, 4 が入ります。

💡 実際には、PP が前もってわかっているわけではありません。消去法がピボット 0 で止まったときに、はじめて入れ替えが必要だとわかります。

IV可視化3 — なぜ P−1=PTP^{-1} = P^{T} なのか

置換を施してから、その転置を施すと、どの行も元の位置に戻ります。だから PTP=IP^{T}P = I です。

💡 PTP=IP^{T}P = I は、PP の列が正規直交であることを表しています。置換行列は、どんなサイズでもすべて直交行列です。

V確認クイズ

問1 · 置換行列の個数

4×44 \times 4 の置換行列はいくつありますか。

✅ 正解です! 4×4 の置換行列は 4! = 24 個あります。

❌ 惜しい! 個数は n!(n の階乗)です。n = 4 のときは、4 × 3 × 2 × 1 を計算しましょう。

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解答

n×nn \times n の置換行列の個数は n!n!(n の階乗)です。

n=4n = 4 のとき: 4!=4×3×2×1=244! = 4 \times 3 \times 2 \times 1 = 24

置換行列の1つ1つが、4つの行の並べ方の1通りに対応します。1行目は4か所のどこにでも置け、2行目は残りの3か所のどこか、というように続きます。

問2 · A = LU で足りるのはどんなときか

正しいか誤りか:分解 A=LUA = LU(置換行列 PP なし)は、どんな正則行列にも使える。

✅ 正解です! A = LU が使えるのは、行の入れ替えが要らないときだけです。普遍的な分解は PA = LU です。

❌ 惜しい! 消去法でピボットが 0 になったらどうなるか考えてみましょう。それでも A = LU は使えるでしょうか。

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解答

誤りです。A=LUA = LU が使えるのは、消去法で行の入れ替えが要らないとき、つまり行を並べ替えなくても、消去の途中で現れるピボットがすべて 0 でないときだけです。

ピボットが 0(または 0 に近い値)になったら、行を入れ替えなければなりません。置換行列 PP がその入れ替えを記録し、普遍的な分解 PA=LUPA = LU が得られます。

A=LUA = LU は、PA=LUPA = LU で P=IP = I(単位行列)となる特別な場合です。

問3 · 置換行列を見分ける

A=[011121279]A = \begin{bmatrix} 0 & 1 & 1 \\ 1 & 2 & 1 \\ 2 & 7 & 9 \end{bmatrix} のピボット 0 を直すために、1行目と2行目を入れ替えます。

この入れ替えを表す正しい置換行列 PP はどれですか。

✅ 正解です! 単位行列の1行目と2行目を入れ替えると、この P になります。

❌ 惜しい! P をつくるには、必要な行の入れ替えを単位行列に施します。入れ替えるのは1行目と2行目です。

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解答

1行目と2行目を入れ替えるには、同じ入れ替えを単位行列に施します:

I=[100010001]→R1↔R2P=[010100001]I = \begin{bmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{bmatrix} \xrightarrow{R_1 \leftrightarrow R_2} P = \begin{bmatrix} 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{bmatrix}

  • 選択肢 A は2行目と3行目を入れ替える(組が違う)
  • 選択肢 B は1行目と2行目を入れ替える ✓
  • 選択肢 C は1行目と3行目を入れ替える(組が違う)
  • 選択肢 D は単位行列で、入れ替えはまったくない

問4 · 乗数を計算する

行を入れ替えた後は PA=[121011279]PA = \begin{bmatrix} 1 & 2 & 1 \\ 0 & 1 & 1 \\ 2 & 7 & 9 \end{bmatrix} です。

最初の消去のステップ R3←R3−ℓ31⋅R1R_3 \leftarrow R_3 - \ell_{31} \cdot R_1 で、乗数 ℓ31\ell_{31} はいくつで、3行目は何になりますか。

✅ 正解です! 乗数は 2 で、3行目は [0, 3, 7] になります。

❌ 惜しい! 乗数 =(消したい成分)/(ピボット)= 2/1 = 2 です。3行目から1行目の2倍を引きましょう。

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解答

乗数は、消したい成分をピボットで割ったものです: ℓ31=a31a11=21=2\ell_{31} = \frac{a_{31}}{a_{11}} = \frac{2}{1} = 2

次に R3←R3−2⋅R1R_3 \leftarrow R_3 - 2 \cdot R_1 を計算します: [279]−2⋅[121]=[037]\begin{bmatrix} 2 & 7 & 9 \end{bmatrix} - 2 \cdot \begin{bmatrix} 1 & 2 & 1 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0 & 3 & 7 \end{bmatrix}

  • 1列目:2−2(1)=02 - 2(1) = 0 ✓(消えました!)
  • 2列目:7−2(2)=37 - 2(2) = 3
  • 3列目:9−2(1)=79 - 2(1) = 7

乗数 ℓ31=2\ell_{31} = 2 は、LL の (3,1)(3,1) の位置に記録されます。

正解数:0 / 4