線形代数 · 第6回 · 動画1 · インタラクティブ教材

ベクトル空間と部分空間:定義・例・大切な性質

I重要な公式

性質 条件 意味
加法について閉じている v,w∈S⇒v+w∈S\mathbf{v}, \mathbf{w} \in S \Rightarrow \mathbf{v} + \mathbf{w} \in S 和が集合の中にとどまる
スカラー倍について閉じている v∈S⇒cv∈S, ∀ c∈R\mathbf{v} \in S \Rightarrow c\mathbf{v} \in S,\ \forall\, c \in \mathbb{R} スカラー倍したベクトルが集合の中にとどまる
まとめた形(一次結合) cv+dw∈S, ∀ c,d∈Rc\mathbf{v} + d\mathbf{w} \in S,\ \forall\, c, d \in \mathbb{R} 一次結合がすべて SS の中にとどまる
零ベクトルのテスト 0∈S\mathbf{0} \in S どの部分空間も必ず原点を含む

II可視化1 — 一次結合について閉じている

原点を通る直線は部分空間です。その上のベクトルの一次結合 cv+dwc\mathbf{v} + d\mathbf{w} が、直線の外に出ることはあるでしょうか。

💡 どの cv+dwc\mathbf{v} + d\mathbf{w} も直線の上にとどまるので、この直線はまさにその上のベクトルが張る空間です。そして、この「閉じている」ことこそが、直線を部分空間にしています。

III可視化2 — 零ベクトルのテスト

部分空間は必ず 0\mathbf{0} を含みます。y=x+by = x + b が原点を通るのは、切片 bb がいくつのときでしょうか。

💡 c=0c = 0 とおくと 0⋅v=00 \cdot \mathbf{v} = \mathbf{0} となるので、どの部分空間も必ず原点を含みます。原点を含まない集合は、その時点で部分空間ではないとわかります。

IV可視化3 — 部分空間の和集合はなぜだめなのか

原点を通る直線は、どれも部分空間です。では、和 v+w\mathbf{v} + \mathbf{w} は2本の直線の和集合の中にとどまるでしょうか。

💡 和集合は閉じていませんが、2つの部分空間の共通部分は必ず部分空間です。ここでは、2本の直線は {0}\{\mathbf{0}\} でしか交わりません。

V確認クイズ

問1

次の集合のうち、R3\mathbb{R}^3 の部分空間ではないものはどれですか。

✅ 正解です! 平面 z=1z = 1 は零ベクトル (0,0,0)(0, 0, 0) を含まないので、部分空間にはなりえません。

❌ 惜しい! ヒント:零ベクトル (0,0,0)(0, 0, 0) を含まない集合はどれでしょうか。

解答を見る

解答:

平面 z=1z = 1 は零ベクトルを含まないので、部分空間ではありません。

  • 確認:(0,0,0)(0, 0, 0) は集合 {(x,y,1)}\{(x, y, 1)\} に入っているでしょうか。入っていません。zz 成分は 11 でなければなりませんが、零ベクトルでは z=0z = 0 です。
  • どの部分空間も必ず零ベクトルを含みます。 z=1z = 1 は原点を通らないので、この時点で失格です。

残りの3つの集合は、どれも (0,0,0)(0, 0, 0) を含み、加法とスカラー倍について閉じています:

  • xyxy 平面:(x1,y1,0)+(x2,y2,0)=(x1+x2, y1+y2, 0)(x_1, y_1, 0) + (x_2, y_2, 0) = (x_1+x_2,\, y_1+y_2,\, 0) — やはり z=0z = 0 ✓
  • zz 軸:(0,0,z1)+(0,0,z2)=(0,0,z1+z2)(0, 0, z_1) + (0, 0, z_2) = (0, 0, z_1+z_2) — やはり x=y=0x = y = 0 ✓
  • {0}\{\mathbf{0}\}:0+0=0\mathbf{0} + \mathbf{0} = \mathbf{0} ✓

問2

正しいか誤りか:R3\mathbb{R}^3 の2つの部分空間の和集合は、つねに R3\mathbb{R}^3 の部分空間である。

✅ 正解です! 2つの部分空間の和集合は、一般には加法について閉じていません。

❌ 惜しい! xyxy 平面のベクトルと zz 軸のベクトルを足すと、和はどこに来るでしょうか。

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解答:誤り

反例:R3\mathbb{R}^3 の中で、PP = xyxy 平面、LL = zz 軸とします。

どちらも部分空間です。では、和集合 P∪LP \cup L を考えます:

  • v=(1,0,0)∈P\mathbf{v} = (1, 0, 0) \in P ✓
  • w=(0,0,1)∈L\mathbf{w} = (0, 0, 1) \in L ✓
  • v+w=(1,0,1)\mathbf{v} + \mathbf{w} = (1, 0, 1)

(1,0,1)(1, 0, 1) は PP に入るでしょうか。入りません。z=1≠0z = 1 \neq 0 です。 (1,0,1)(1, 0, 1) は LL に入るでしょうか。入りません。x=1≠0x = 1 \neq 0 です。

和は (1,0,1)∉P∪L(1, 0, 1) \notin P \cup L なので、和集合は加法について閉じておらず、したがって部分空間ではありません。

問3

集合 S={(x,y,z)∈R3:x+y+z=0}S = \{(x, y, z) \in \mathbb{R}^3 : x + y + z = 0\} を考えます。SS は R3\mathbb{R}^3 の部分空間でしょうか。

✅ 正解です! 方程式 x+y+z=0x + y + z = 0 は原点を通る平面を表し、部分空間の3つのチェックをすべて通ります。

❌ 惜しい! 確かめてみましょう。(0,0,0)(0, 0, 0) は x+y+z=0x + y + z = 0 を満たすでしょうか。成分の和が 0 のベクトルを2つ足すと、結果の成分の和も 0 になるでしょうか。

解答を見る

解答:はい。原点を通る平面です。

零ベクトルのテスト:(0,0,0)(0, 0, 0):   0+0+0=0\;0 + 0 + 0 = 0 ✓

加法について閉じている:v1+v2+v3=0v_1 + v_2 + v_3 = 0 かつ w1+w2+w3=0w_1 + w_2 + w_3 = 0 である v=(v1,v2,v3)\mathbf{v} = (v_1, v_2, v_3) と w=(w1,w2,w3)\mathbf{w} = (w_1, w_2, w_3) を取ります。

v+w=(v1+w1,  v2+w2,  v3+w3)\mathbf{v} + \mathbf{w} = (v_1 + w_1,\; v_2 + w_2,\; v_3 + w_3)

(v1+w1)+(v2+w2)+(v3+w3)=(v1+v2+v3)⏟= 0+(w1+w2+w3)⏟= 0=0  ✓(v_1 + w_1) + (v_2 + w_2) + (v_3 + w_3) = \underbrace{(v_1 + v_2 + v_3)}_{=\,0} + \underbrace{(w_1 + w_2 + w_3)}_{=\,0} = 0 \;\checkmark

スカラー倍について閉じている:c∈Rc \in \mathbb{R} に対して:

cv=(cv1,cv2,cv3),cv1+cv2+cv3=c(v1+v2+v3)=c⋅0=0  ✓c\mathbf{v} = (cv_1, cv_2, cv_3),\quad cv_1 + cv_2 + cv_3 = c(v_1 + v_2 + v_3) = c \cdot 0 = 0 \;\checkmark

幾何的には、x+y+z=0x + y + z = 0 は R3\mathbb{R}^3 の中の原点を通る平面で、2次元の部分空間です。

問4

SS と TT がどちらも R3\mathbb{R}^3 の部分空間であるとき、次のうちつねに正しいものはどれですか。

✅ 正解です! どんな2つの部分空間でも、その共通部分は必ず部分空間です。これは線形代数の基本的な定理です。

❌ 惜しい! 思い出しましょう。どの部分空間も零ベクトルを含むので、S∩TS \cap T は少なくとも 0\mathbf{0} を必ず含みます。空集合になることはありません!

❌ 惜しい! 動画を思い出しましょう。和集合は一般にはうまくいきませんが、共通部分はつねに部分空間の性質を保ちます。

解答を見る

解答:S∩TS \cap T はつねに部分空間です。

証明の概略

v,w∈S∩T\mathbf{v}, \mathbf{w} \in S \cap T とします。すると:

  • v,w∈S\mathbf{v}, \mathbf{w} \in S で、SS は部分空間 ⇒\Rightarrow v+w∈S\mathbf{v} + \mathbf{w} \in S
  • v,w∈T\mathbf{v}, \mathbf{w} \in T で、TT は部分空間 ⇒\Rightarrow v+w∈T\mathbf{v} + \mathbf{w} \in T
  • したがって v+w∈S∩T\mathbf{v} + \mathbf{w} \in S \cap T ✓

スカラー倍についても同じ論法が使えます。cv∈Sc\mathbf{v} \in S かつ cv∈Tc\mathbf{v} \in T なので、cv∈S∩Tc\mathbf{v} \in S \cap T ✓

ほかの選択肢が誤りである理由

選択肢 誤りである理由
S∪TS \cup T は部分空間である 反例:xyxy 平面 ∪\cup zz 軸は加法について閉じていない
S∪T=S∩TS \cup T = S \cap T 一般には成り立たない(例:xyxy 平面 ∪ zz 軸 ≠ xyxy 平面 ∩ zz 軸)
S∩TS \cap T は空集合である どちらの部分空間も 0\mathbf{0} を含むので 0∈S∩T\mathbf{0} \in S \cap T。空集合になることはない!

正解数:0 / 4