線形代数 · 第6回 · 動画3 · インタラクティブ教材

行列の零空間:Ax = 0 の解をすべて求める

I重要な公式

公式 名称 説明
N(A)={x∈Rn:Ax=0}N(A) = \{x \in \mathbb{R}^n : Ax = 0\} 零空間(核)の定義 AA によって零ベクトルに送られるベクトル全体
A(v+w)=Av+AwA(v + w) = Av + Aw 分配法則 加法について閉じていることを証明する鍵
A(cv)=c(Av)A(cv) = c(Av) スカラーをくくり出せる性質 スカラー倍について閉じていることを証明する鍵
零空間 ⊆Rn\subseteq \mathbb{R}^n、列空間 ⊆Rm\subseteq \mathbb{R}^m 次元の規則 nn = 列の数、mm = 行の数

II可視化1 — 行列という機械

AA にベクトルを入れてみます。零ベクトルでない xx のうち、0\mathbf{0} になって出てくるのはどれでしょうか。

💡 チャレンジ:列は c3=c1+c2\mathbf{c}_3 = \mathbf{c}_1 + \mathbf{c}_2 を満たしています。x1c1+x2c2+x3c3=0x_1\mathbf{c}_1 + x_2\mathbf{c}_2 + x_3\mathbf{c}_3 = \mathbf{0} となる重みはいくつでしょうか。

III可視化2 — 行簡約で零空間を求める

自由列が1つなら特殊解が1つ得られ、そのスカラー倍が N(A)N(A) を埋め尽くします。

💡 特殊解 (−1,−1,1)(-1,-1,1) は −(1,1,−1)-(1,1,-1) にほかなりません。向きが同じなので、N(A)=span⁡{(1,1,−1)}N(A) = \operatorname{span}\{(1,1,-1)\} です。

IV可視化3 — 部分空間と、それを平行移動した直線

Ax=0Ax=\mathbf{0} の解は原点を通る直線をなします。Ax=bAx=\mathbf{b} の解は、その直線を原点から外へずらしたものです。

💡 2本の直線は同じ方向 (1,1,−1)(1,1,-1) をもち、決して交わりません。Ax=bAx=\mathbf{b} の直線は、N(A)N(A) を特解の1つ p=(1,0,0)\mathbf{p}=(1,0,0) まで平行移動したものです。

V確認クイズ

問1

行列 A=[112213314415]A = \begin{bmatrix} 1 & 1 & 2 \\ 2 & 1 & 3 \\ 3 & 1 & 4 \\ 4 & 1 & 5 \end{bmatrix} を考えます。次のベクトルのうち、零空間 N(A)N(A) に入っているのはどれですか。

✅ 正解です! (2, 2, -2) = 2·(1, 1, -1) は零空間の基底ベクトルのスカラー倍なので、N(A) に入っています。

❌ 惜しい! 零空間は (1, 1, -1) のスカラー倍全体です。どの選択肢がこのベクトルのスカラー倍になっているか、確かめてみましょう。

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解答:

零空間は N(A)={c(1,1,−1):c∈R}N(A) = \{c(1, 1, -1) : c \in \mathbb{R}\} です。選択肢を1つずつ確かめます。

  • (1, 0, 0): Ax=(1,2,3,4)≠0Ax = (1, 2, 3, 4) \neq 0 ✗
  • (2, 2, -2):これは 2⋅(1,1,−1)2 \cdot (1, 1, -1) です。検算:1(2)+1(2)+2(−2)=01(2)+1(2)+2(-2)=0、2(2)+1(2)+3(−2)=02(2)+1(2)+3(-2)=0 などとなり、Ax=(0,0,0,0)Ax = (0,0,0,0) ✓
  • (1, -1, 0): Ax=(0,1,2,3)≠0Ax = (0, 1, 2, 3) \neq 0 ✗
  • (0, 1, -1): Ax=(−1,−2,−3,−4)≠0Ax = (-1, -2, -3, -4) \neq 0 ✗

2⋅(1,1,−1)2 \cdot (1, 1, -1) に等しいので、答えは (2, 2, -2) です。

問2

正しいか誤りか:4×34 \times 3 行列の零空間は R4\mathbb{R}^4 の部分空間である。

✅ 正解です! 零空間が住んでいるのは R⁴ ではなく R³ です(3つの列で決まります)。R⁴ に住んでいるのは列空間のほうです。

❌ 惜しい! よく考えてみましょう。零空間がどこに住むかを決めるのは、行の数と列の数のどちらでしょうか。

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解答:

誤りです。4×34 \times 3 行列の零空間は R3\mathbb{R}^3 の部分空間であり、R4\mathbb{R}^4 の部分空間ではありません。

規則は N(A)⊆RnN(A) \subseteq \mathbb{R}^n で、nn は列の数です。4×34 \times 3 行列には列が3つあるので、xx の成分は3つでなければならず、N(A)⊆R3N(A) \subseteq \mathbb{R}^3 となります。

列空間のほうは R4\mathbb{R}^4 に住んでいます(行が4つあるからです)。零空間と列空間は、まったく別の空間にあるのです。

問3

vv と ww がどちらも Ax=bAx = b(ただし b≠0b \neq 0)の解だとします。A(v+w)A(v + w) は何に等しいですか。

✅ 正解です! A(v+w) = Av + Aw = b + b = 2b です。b ≠ 0 なら 2b ≠ b なので、2つの解の和は解になりません。

❌ 惜しい! 分配法則を使いましょう:A(v+w) = Av + Aw。Av = b、Aw = b であることはわかっています。

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解答:

Av=bAv = b、Aw=bAw = b なので、分配法則を使います。

A(v+w)=Av+Aw=b+b=2bA(v + w) = Av + Aw = b + b = 2b

Ax=bAx = b(b≠0b \neq 0)の解の集合が部分空間ではない理由は、まさにここにあります。2つの解の和からは 2b≠b2b \neq b が得られるので、v+wv + w 自身は解ではありません。加法について閉じていないのです。

零空間と比べてみましょう。Av=0Av = 0 かつ Aw=0Aw = 0 なら、A(v+w)=0+0=0A(v+w) = 0 + 0 = 0 です。b=0b = 0 のときは、きちんと閉じているのです。

問4

列空間と零空間は、どの行列にも付いてくる2つの部分空間です。両者の違いを最もよく表しているのはどれですか。

✅ 正解です! これは重要な洞察です。生成元から組み上げることと、制約条件で削り出すこと。この2つが、線形代数全体で部分空間が現れる、互いに補い合う2つの方法です。

❌ 惜しい! 考え方の違いに注目しましょう。一方は部品から出発して組み上げ、もう一方は条件から出発してふるい分けます。

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解答:

正解は「列空間は生成元から組み上げられ、零空間は制約条件で削り出される」です。

これが、線形代数で部分空間が現れる2つの基本的な方法です。

  1. 列空間 — 生成元(AA の列)から出発して、その一次結合をすべて作ります。「部品はこれだけ。何が作れるだろう?」

  2. 零空間 — 制約条件(Ax=0Ax = 0)から出発して、それを満たすものをすべて集めます。「規則はこれだけ。何が当てはまるだろう?」

ほかの選択肢は、次の理由で誤りです。

  • 大きさの比較は、具体的な行列によって変わります
  • 2つは別々の空間に住んでいます:C(A)⊆RmC(A) \subseteq \mathbb{R}^m、N(A)⊆RnN(A) \subseteq \mathbb{R}^n
  • どちらも消去法で求められます

正解数:0 / 4